自筆証書遺言とは|無効にならない書き方や例文を図で解説

自筆証書遺言とは、遺言を残す遺言者本人が自筆で作成した遺言書のことです。
自筆証書遺言は、遺言者の想いをそのまま自筆で残すことができる一方で、形式通りに作成しなければ無効となったり、保管方法によっては紛失や改ざんの危険性があります。
そのような場合は、法務局で運用している自筆証書遺言保管制度を利用するのが安心です。
この記事では、遺言書の種類など基本的な内容から、自筆証書遺言が無効にならないための形式や作成例、自筆証書遺言保管制度についてわかりやすく解説します。
目次
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言を残す遺言者本人が自筆で作成した遺言書のことです。
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
遺言書には、自筆のものの他にも、パソコンで作成するもの、口頭で伝えて公証人に作成してもらうものがあります。そのうち、自筆したものが自筆証書遺言です。
2019年には法改正が行われ、自筆証書遺言の相続財産の目録の作成については、自筆以外にもパソコンでの作成が可能となり、利用しやすくなりました。

自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言は、遺言者本人だけで作成でき、費用もかからないなどのメリットがあります。
一方で、形式不備による無効や、保管方法によっては改ざん・破棄・隠匿などの危険性があります。
以下では、自筆証書遺言のメリットとデメリットを解説します。
メリット
自筆証書遺言のメリットは以下のとおりです。
- 遺言者本人だけで作成できる
- 作成費用がかからない
- 本人が保管するため内容を知られる心配がない
遺言書の中には、公証人に作成してもらうものもありますが、自筆証書遺言は遺言者本人だけで作成できます。
費用がかからず、本人が保管するため、内容を知られる心配も少ないです。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットがあります。
- 形式不備などで無効になることがある
- 亡くなった後に発見されないことがある
- 保管方法によっては、他の相続人による改ざん、破棄、隠匿などの危険性がある
- 手が不自由など自署できない場合は作成できない
- 相続人は検認の手続きが必要になる
特に、自筆証書遺言が発見された場合には、相続人は家庭裁判所で検認の手続きが必要です。
検認とは、遺言者が亡くなった後に発見された遺言書を、家庭裁判所で相続人立ち会いのもと、内容の確認や偽造・変造を防止する手続きのことです。
検認を行わない場合、相続手続きが進められないだけでなく、5万円の過料(行政処分)が課されます。
ただし、自筆証書遺言保管制度を利用して、法務局で遺言書を保管する場合は、検認は不要です。
自筆証書遺言は、遺言者本人で作成・保管が可能で手軽である一方、形式不備による無効や、他の相続人が発見できない、紛失・改ざんや破棄、隠匿などの危険性があります。

遺言書の種類と違い
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
それぞれの違いを理解することで、自筆証書遺言のメリットやデメリットも理解しやすくなるでしょう。
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
作成者 | 遺言者本人 | 公証人 | 遺言者本人(代筆可) |
作成方法 | 遺言者が全文・日付・署名を手書きで記入し押印 | 公証人が作成し、公証役場に保管 | 自筆またはパソコン等で作成後、署名・押印し封印。公証役場で遺言書の存在を証明してもらう |
保管方法 | 本人が保管 | 公証役場 | 本人が保管 |
安全性 | 低(紛失・改ざんのリスクあり) | 高(形式・内容のミスが少ない) | 中(内容不備で無効の可能性あり) |
秘密性 | 存在・内容を秘密にできる | なし | 内容だけ秘密にできる |
費用 | 無料または低コスト | 有料(公証人手数料) | 有料(証明手数料等) |
証人の必要性 | 不要 | 2人以上の証人が必要 | 公証人1人・2人以上の証人が必要 |
検認の必要性 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言書の開封方法 | 封をされている遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立ち会いのもと開封 | 開封手続きは不要 | 必ず家庭裁判所で相続人などの立ち会いのもと開封 |
以下では、自筆証書遺言以外の遺言書と、自筆証書遺言との違いについてわかりやすく解説します。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が口頭で遺言の内容を伝えて、公証人が作成する遺言書のことです。
公証人は、裁判官や弁護士など司法試験に合格した人の中から、法務大臣が任命する法律のプロです。
公正証書遺言は、法律のプロである公証人が作成した公文書となるため、高い証明力があります。
公正証書遺言のメリット・デメリットは以下のとおりです。
公正証書遺言のメリット | 公証人が作成するため形式ミスの心配がない 公正役場で保管されるため、紛失や改ざんの危険性が低い 家庭裁判所の検認が不要 |
公正証書遺言のデメリット | 手続きが正式に行われたことを証明する証人2人が必要 作成費用が発生する |
自筆証書遺言と比較すると、公正証書遺言の方が形式ミスや改ざんなどの危険性がないため、検認も必要とされません。

秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたままで、公証役場で存在を証明してもらう遺言書のことです。
自筆証書遺言と違い、作成方法は自筆やパソコンなど制限がありません。
秘密証書遺言のメリット・デメリットは以下のとおりです。
秘密証書遺言のメリット | 作成方法は自筆・パソコン・代筆など制限がない 内容を秘密にできる 封をした状態で保管するため、改ざんや偽造を防止できる |
秘密証書遺言のデメリット | 証人2人以上と費用がかかる 本人が保管するため紛失の危険性がある 形式不備などにより無効となることがある 相続時に検認が必要になる |
自筆証書遺言と比較すると、作成方法に制限がなく内容を秘密にできますが、本人保管や形式不備の危険性、検認が必要になる点は同じです。
自筆証書遺言の書き方の例文
自筆証書遺言を作成する際は、どのように作成すればよいのでしょうか。以下では、自筆証書遺言の書き方の例文や封筒の書き方について解説します。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言を作成するにはいくつか要件を満たす必要があります。以下では、まず例文を紹介しますので、自筆証書遺言のイメージをつかむとよいでしょう。
書遺言
遺言者山田太郎は、次のとおり遺言する。
1.遺言者は、遺言者名義の次の預貯金を、妻 山田花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)〇〇銀行 〇〇支店 普通 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
(2)〇〇銀行 〇〇支店 普通 口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
2.遺言者は、遺言者名義の次の不動産を、長男 山田一郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)土地
所 在:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
地 目:宅地
地 積:〇〇平方メートル
(2)建物
所 在:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
家屋番号:〇番〇
家屋の種類:居宅
構 造:木造二階建
床面積:1階〇〇平方メートル
2階〇〇平方メートル
3.遺言者は、遺言者名義の次の金融資産(証券口座に保有する株式・投資信託等)を長女 山田桜(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)〇〇証券株式会社 普通株式〇〇株
預かり先:〇〇証券〇〇支店口座番号 〇〇〇〇〇〇〇
4.遺言者は、記載のない遺言者のその他一切の財産(動産、債権、残余財産などを含む)について、前記妻 山田花子に相続させる。
5.遺言者は相続の負担として、次の債務・費用を長男 山田一郎に負担させるものとする。
(1)遺言者が負担する〇〇銀行の借入金債務
(2)遺言者が負担する公租公課
(3)遺言者の葬儀、埋葬などの費用
6.遺言者は、本遺言の執行者として、長男 山田一郎を指定する。
付言事項
愛する妻 花子 には、これまで長年にわたり私を支えてくれたことに深く感謝しています。これからもどうか健康に気をつけて、穏やかな生活を送ってください。また、長男 一郎、長女 桜 に対しては、私の遺志を尊重し、互いに思いやりを持ちながら助け合い、円満に相続の手続きを進めてくれることを心から願います。家族皆が今後も良い関係を築き、笑顔の絶えない日々を過ごしてくれることが、私の何よりの願いです。
〇年〇月〇日
東京都〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 〇〇 〇〇(自署)㊞
付言事項(ふげんじこう)とは、遺言書に記載する法律行為以外の家族に伝えたいメッセージのことです。
自筆証書遺言は、この遺言書の内容すべてを手書きで作成し、作成日の日付、署名・押印が必要です。
なお、自筆証書遺言には、以下の内容を盛り込むことも可能です。
- 相続人以外(内縁関係の相手や孫など)へ遺産を残すこと
- 配偶者が自宅に住み続ける権利を確保する
- 事業の承継や事業に必要なものを継がせる
- 財産の一部の寄付
- 家族やペットの面倒を見ることや後見人選任のお願い
- 生前贈与を相続財産に加えないこと
- 相続人の廃除 など
例文は法務局でも紹介されているため、参考にするとよいでしょう。
遺言書を作成するにあたり、重要となる要件は後述します。

封筒の書き方の例
自筆証書遺言は、封筒に入れるという法律の定めはありません。しかし、封筒に入れておくと安心です。
用紙のサイズについても定めはありませんが、法務局に預ける際にはA4サイズと指定されています。
封筒の大きさは、遺言書がそのまま入る大きさか、二つ折り程度で入る封筒なら、家族が発見しやすいです。
封筒は以下のように処理しておくとよいでしょう。
- 封筒はのりで封をして、割り印(印鑑で封の部分に押印)しておくことで開封を防止
- 封筒の表には遺言書と自筆で明記しておく
さらに、封筒の裏には、以下の内容を記載します。
死後、遺言書は開封せず家庭裁判所に提出して、検認を行ってください
令和〇年〇月〇日(遺言書の作成日)
遺言者 山田太郎(氏名を自筆)
このように記載しておけば、家族が発見した際もスムーズです。

自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言の作成は、以下のような要件を満たす必要があります。
①遺言者本人が自筆で作成する
②作成日を明記する
③署名押印をする
④訂正は二重線で消して印を押す
⑤財産目録を添付する際も署名押印が必要
要件を満たさない遺言書は無効となる危険性があるため、必ず要件に従って作成しましょう。それぞれについて詳しく解説します。
遺言者本人が自筆で作成する
前述のとおり、自筆証書遺言は遺言者本人が自筆で作成しなければなりません。パソコンや他人の代筆では無効になるおそれがあります。
長期間保存するため、インクが消えないように、必ずボールペンや万年筆など消えにくい筆記用具を使用するとよいでしょう。
作成日を明記する
自筆証書遺言では、遺言書を作成した日を自筆で明記します。日付は、令和5年4月1日、もしくは2025年4月1日など、正確に記します。
複数の遺言が残っていて内容が異なる場合は、日付が新しいものが有効とされます。
署名押印をする
自筆証書遺言には、自筆で署名、押印が必要です。署名は、戸籍上の氏名をフルネームで明記します。
印鑑は、保管している間に印鑑が消えてしまわないように、長期間の保存に耐えられる実印と朱肉で押印するとよいでしょう。
訂正は二重線で消して印を押す
書遺言を自筆している場合、書き損じることもあります。訂正は可能ですが、以下のように訂正するのがルールです。
引用:法務省
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
訂正する際は、誤った箇所に取り消し線を引き、訂正した後で押印します。
さらに、訂正した箇所について、余白部分に、どの部分をどのように訂正したのか明記して、署名します。
ただし、この訂正ルールのとおりに修正しないと無効となる危険性があるため、訂正内容が多い場合は、書き直した方が安全です。
財産目録を貼付する際も署名押印が必要
財産目録とは、相続財産の内容がわかるようにまとめた書類のことです。遺言書には、財産目録を添付できます。
財産目録を添付した場合の遺言書の内容は以下のとおりです。
引用:法務省
遺言書は自筆である必要がありますが、財産目録だけはパソコンで作成しても問題ありません。
他にも、財産目録には通帳のコピーや、不動産登記事項証明書を添付することもあります。
しかし、財産目録を添付する際には、財産目録の全ページや、紙の裏表があるものには裏表両方の余白に、署名押印をする必要があります。
さらに、遺言書の本文と目録を突合しやすいように、番号を明記しておくとよいでしょう。
これは要件ではありませんが、用紙にページ数を書きホチキスなどでまとめたり、ページの境目に契印をしておくと、第三者の改ざんなどを防止できます。

自筆証書遺言を書く際の手順
自筆証書遺言を書く場合は、以下の手順で進めます。
①財産を洗い出し財産目録を作成する
②遺贈の内容を決める
③要件に従った遺言書を作成する
④自筆証書遺言を保管しておく
以下では、自筆証書遺言を作成する際の手順をわかりやすく解説します。
財産を洗い出し財産目録を作成する
まずは、相続の対象となる自分の財産を洗い出すことが重要です。以下の資料などを取り寄せて、財産を確認するとよいでしょう。
- 預金通帳や残高証明、取引明細
- 不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)
- 生命保険証書
- ゴルフ会員権の証書
- 証券会社や仮想通貨交換所の取引資料 など
なお、相続では借金などのマイナスの財産も相続されるため、消費貸借契約書などを確認して借金なども確認しておきましょう。
洗い出した財産は、財産目録の一覧表として作成し、自筆証書遺言に添付することで、遺産の漏れを防止し、スムーズな相続手続きに役立ちます。
遺贈の内容を決める
財産を把握したら、誰にどの財産をどの程度渡すのか、どのように遺贈するのか、内容を決めます。
例えば、不動産を相続させる場合は、そのまま相続させるのか、売却して換金して相続させるのか決めましょう。
さらに、特定の相続人にだけ相続財産を集中させるとトラブルの原因となります。
そのため、残された相続人のことを考え、バランスよく相続させるのが大切です。

要件に従った遺言書を作成する
遺言書の形式に不備があると、せっかく書いても無効になります。遺言書は全文を手書きで書き、作成日と氏名を明記し、押印が必要です。
財産目録を添付する場合は、パソコンでの作成が可能ですが、各ページに署名と押印を忘れないようにしましょう。
自筆証書遺言を保管しておく
最後は、作成した自筆証書遺言を保管します。保管場所について、法律の定めはありませんが、安全な場所に保管することが重要です。
一方で、発見しにくい場所に保管してしまうと、家族が発見できません。
一般的には以下の方法で保管することが多いです。
- 金庫・タンス・机の中などに保管する
- 信頼できる親族に預ける
- 法務局に預ける
- 弁護士に遺言書を作成してもらい預ける
- 銀行の貸金庫に保管する など
銀行の貸金庫を利用するケースもありますが、貸金庫の中身を確認するには、相続人全員の同意が必要になるなど手続きが煩雑です。
自筆証書遺言にかかる費用
作成費用
自筆証書遺言は、遺言者本人が作成するため、基本的には紙やペンの用意以外の費用はかかりません。
ただし、内容に不備があると無効になるおそれがあるため、法的に有効な遺言を残すには、弁護士などの専門家に依頼するとよいでしょう。
弁護士に依頼した場合の費用の相場は以下のとおりです。
- 遺言書の作成費用:10万円~20万円程度
- 遺言執行を依頼する場合:30万円~50万円程度
なお、自筆証書遺言は、弁護士が内容をまとめ、下書きした文章を自分で作成します。執行まで依頼する場合は、別途執行の費用がかかります。
誰に何をどの程度相続させればトラブルとならないのかなど悩んでいる場合は、弁護士に相談の上で進めるのが安心です。

保管費用
自筆証書遺言は、自宅で補完する場合には、保管費用はかかりません。
自宅以外で保管した場合にかかる費用は以下のとおりです。
- 銀行の貸金庫:年間1万円~3万円程度
- 信託銀行:基本保管料3万円程度、年間5,000円~6,000円程度
- 弁護士に依頼した場合:約1万円程度
- 法務局(後述):1通につき3,900円
自筆証書遺言保管制度とは
自筆証書遺言保管制度とは、2020年7月から開始された自筆証書遺言を法務局が保管する制度です。
この制度を利用することで、自筆証書遺言とその画像データを、法務局で安全に保管してもらえます。自筆証書遺言保管制度は、全国312か所の法務局で利用可能です。
以下では、自筆証書遺言保管制度についてわかりやすく解説します。
自筆証書遺言保管制度のメリット・デメリット
自筆証書遺言保管制度には以下のようにさまざまなメリットがあります。
- 法務局で安全に保管されるため、偽造や改ざん、紛失、盗難を防止できる
- 法務局の職員が形式を確認するため、無効な遺言書となりにくい
- 亡くなった際に通知されるため、相続人に発見してもらいやすい
- 法務局に預けることで、検認手続きが不要になる
- 保管費用が1通3,900円と他の方法よりも安い
一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 法務局で保管するために、定められた形式で作成する必要がある
- 遺言書本人が法務局で手続きする必要がある
- 住所や氏名が変更になった場合は届け出が必要
- 遺言書の内容は相談できない(あくまでも形式の確認のみ)
- 費用がかかる
デメリットもありますが、自筆証書遺言を安全に保管でき、無効になる危険性が少なく、検認が不要なのは大きなメリットです。
制度を利用する際の注意点
自筆証書遺言保管制度を利用する際は、法務局が指定する形式に沿った遺言書を作成する必要があります。
以下の様式のもと、自筆証書遺言を作成しましょう。
- 用紙サイズはA4、裏面は記載しない
- 余白は、上5ミリ、下10ミリ、左20ミリ、右5ミリが必要
- 遺言書本文、財産目録には、各ページに通し番号をでページ番号を記載する
- 複数ページでも綴じ合わせない
自筆証書遺言保管制度のホームページでは、上記の空白をわかりやすく示した用紙が公開されているため、印刷して使用するとよいでしょう。
法務局に遺言書を預ける際の流れ
自筆証書遺言保管制度を利用する場合の流れは、以下のとおりです。
①遺言者本人の住所地や本籍地、所有する不動産所在地のいずれかにある、遺言書保管所がある法務局(ここから検索可能)を探す
②法務局に電話かインターネットで事前に予約をする(インターネット予約はこちら)
③申請書や届出書を作成する(ダウンロードはこちら)当日法務局でも可能
④予約した日時に、法務局へ必要書類を持参して、申請書や届出書を提出する
⑤申請後に、保管証が渡される(再発行されないため保管に注意)
申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 自筆証書遺言
- 申請書
- 本人確認書類(官公庁から発行された顔写真付きの身分証明書、マイナンバーカードや運転免許証など)
- 本籍と筆頭者の記載がある住民票の写し(3か月以内に発行されたもの)
- 3,900円分の収入印紙
- 遺言書が外国語の場合は、日本語による翻訳文
自筆証書遺言に関するよくある質問
自筆証書遺言を法務局に預けるデメリットは?
自筆証書遺言を法務局に預けるデメリットは、遺言書の内容などは相談できない点や、細かい形式を守る必要がある点です。
さらに、遺言者本人が法務局で手続きを行わなければなりません。
ただし、形式は確認されるため不備となりにくく、安全性が高いことや、検認が不要などのメリットがあります。
自筆証書遺言のひな形は法務局でもらえる?
法務局では、自筆証書遺言のひな形の配布は行っていません。
理由としては、遺言の内容は人それぞれで異なるため、ひな形だけでは十分に対応できないためです。
ただし、法務局で管理するための形式が反映されたものなら印刷可能です。
さらに、作成例や記載要領などがインターネットにアップロードされているため、その内容を参考に作成するのも選択肢の一つです。
正確に作成したい方は、弁護士などに相談するか、公的機関のウェブサイトの記載例を参考にするとよいでしょう。

自筆証書遺言はパソコンで作成できる?
自筆証書遺言は全文を手書きする必要があり、パソコンやワープロで作成した遺言書は無効です。
ただし、2019年の法改正により、財産目録のみはパソコンで作成することが認められています。
その際も、各ページに遺言者の署名と押印を忘れずに行う必要があります。
手書きが困難な場合は、公証人が作成する公正証書遺言の利用も検討しましょう。
自筆証書遺言は誰に相談できる?
自筆証書遺言については、弁護士、司法書士、税理士、法務局などで相談可能です。
ただし、税理士は相続税に関すること、法務局は遺言書の形式について相談可能ですが、遺言書の内容については相談できません。
同様に、司法書士は遺言書の作成を主としておりますが、法律相談ができるのは弁護士法により弁護士のみと定められています。
弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 法務局 | |
遺言書の内容に関する相談 | 〇 | × | × | × |
遺言書を巡るトラブルの相談 | 〇 | × | × | × |
遺言書の保管 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
相続税 | △ | × | 〇 | × |
相続登記 | 〇 | 〇 | × | × |
そのため、遺言書に関するトラブルから、相続財産の配分、トラブルの防止、不動産にかんすることなど、幅広く相談するのであれば、弁護士への相談が望ましいです。


まとめ
自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆する必要がありますが、遺言者の想いを家族に伝えることができる遺言書です。
無効とならないためにも、形式を守ることはもちろん、安全性が高く検認が不要となる自筆証書遺言保管制度の利用も検討するとよいでしょう。
さらに、遺言書の不備や残された家族のトラブルを回避したい場合は、弁護士に相談して作成を進めるのが望ましいです。
相続に詳しい弁護士であれば、過去の経験から遺言書でトラブルになりやすいポイントを押さえた助言やサポートが可能です。
ネクスパート法律事務所でも、遺言書や相続トラブルの実績が豊富な弁護士が無料相談に対応しております。
遺言書でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。