遺言書の作成を弁護士に依頼するメリットと依頼すべきケースを紹介

「自分の死後、相続で揉めてほしくない」「法定相続人以外にも財産を譲りたい人がいる」などの理由から、遺言書を作成したいと考える人は多いです。
遺言書を作成しておけば、ご自身の意思に基づいて財産の行先や分け方を決められることに加え、法定相続人ではない人への遺贈もできます。
遺言書はご自身でも作成できますが、遺言は民法に定められた方法で行う必要があるため、不備があれば無効となる可能性があります。
この記事では、遺言書の作成を弁護士に依頼するメリットや、弁護士に依頼すべきケースなどを紹介します。
遺言書の作成について不安や悩みを抱えているなら、ぜひご一読ください。
目次
遺言書の作成を弁護士に依頼する6つのメリット
遺言書の作成を弁護士に依頼する主なメリットとして、以下の6つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
法的に不備のない遺言書を作成できる
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、法的に不備のない遺言書を作成できます。
遺言書には守らなければならない要件があり、以下のようなケースに該当する場合は無効となる可能性があります。
- 遺言の方式に不備がある
- 遺言の内容が不明瞭である
- 遺言の内容が公序良俗に反する
- 遺言作成時に遺言能力がなかった
- 第三者から遺言の作成を強要された
弁護士に依頼すれば、民法に定められた要件を満たした遺言書を作成できるため、遺言が無効になるリスクを回避できます。

適切な遺言の種類をアドバイスしてもらえる
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、適切な遺言の種類をアドバイスしてもらえます。
普通方式の遺言には、以下の3つの種類があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文(財産目録を除く)・日付・氏名を自筆して押印する遺言書です。
費用をかけずに作成でき、いつでも書き直せる簡便さがメリットといえますが、以下のようなデメリットもあります。
- 勝手に書き換えられたり、破棄されたりするおそれがある
- 遺言書の保管場所を相続人に伝えていなければ、遺言書が発見されないまま遺産分割協議が成立してしまうことがある
- 遺言者の死亡後、家庭裁判所による検認の手続きが必要となる(自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除く)
公正証書遺言
公正証書遺言とは、2人以上の証人立ち会いの下、遺言者が公証人に遺言の内容を述べて、公証人がそれを筆記して作成する遺言書です。
遺言書の原本は公証役場で保管されるため、勝手に書き換えられたり、隠されたりするおそれはありません。家庭裁判所による検認の手続きも不要です。
公証人が作成するため、遺言書が方式不備により無効になる可能性が低いこともメリットといえます。
公証人役場での手続き、2人以上の証人が必要となるため、相応の手間と費用がかかることはデメリットといえるでしょう。

秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言書です。
公証人や証人を含め本人以外は内容を確認できないため、遺言内容を秘密にできます。
遺言書を封筒に入れた状態で保管するため、勝手に書き換えられるおそれはありません。万が一、遺言執行前に開封された場合は、遺言書は無効となります。
全文自筆である必要がなく、パソコンなどで作成可能なこともメリットと言えます。
デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 公証人役場での手続きや2人以上の証人が必要になるため相応の手間がかかる
- 原本を公証役場で保管するわけではないので遺言書が発見されない可能性がある
- 保管方法によっては紛失・破棄・隠匿されるリスクがある
弁護士に依頼すれば、あなたが置かれた状況や目的に合わせた、適切な遺言の種類をアドバイスしてもらえます。
相続人の負担を軽減できる
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、相続開始後の相続人の負担軽減を期待できます。
遺言書には、どのような財産が、どこに、どれだけあるか一目でわかるように、財産目録を添付するのが一般的です。
遺言者本人は自らの財産を把握していますが、相続人となる配偶者や子などは遺言者の財産を正確に把握していないことが多いでしょう。そのため、財産目録には預貯金や株式、不動産などのすべての財産と、借り入れなどの債務を漏れなく記載しておくのが理想です。
財産は、その内容が特定できるように詳細に記載することが大切です。誤記や不明確な記載があると遺言が無効になったり、遺言の執行手続きがスムーズに進められなかったりするおそれがあります。
弁護士に依頼すれば、このようなリスクを軽減でき、結果として相続開始後の相続人の負担を軽減できる可能性があります。
相続トラブルを事前に防止しやすい
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、相続トラブルを事前に防止しやすいです。
遺言書は、残された人たちにあなたの思いを伝える最後の意思表示です。
しかし、分割配分があまりに偏っている場合は、他の相続人から不満が出ることが予想されます。たとえ法的に有効な遺言書だったとしても、遺言書の内容が不平等で遺留分を侵害していれば、遺留分の侵害を受けた相続人が、遺贈や贈与を受けた人に対して遺留分侵害額を請求する可能性があります。
そのため、遺留分を侵害しない範囲で遺言書を作成することが重要です。
弁護士に依頼すれば、遺留分を考慮した遺産分割配分をアドバイスしてもらえるため、相続トラブルを事前に防止しやすいといえます。

作成した遺言書を保管してもらえる場合がある
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、作成した遺言書を保管してもらえる場合があります。
あなたの最後の意思を伝えるべく遺言書を作成しても、相続人に発見してもらわなければ意味がありません。かといって、あまりに見つけやすい場所に保管すると、勝手に書き換えられたり、隠されてしまったりするおそれがあります。
法律事務所によって異なりますが、遺言書の作成と遺言執行をセットで弁護士に依頼した場合、遺言執行まで遺言書を保管してくれることが一般的です。
弁護士には守秘義務があり、職務上知り得た事実を第三者に漏らすことは原則禁止されているため、安心して預けられます。
保管場所がなくてお困りであれば、遺言書の作成を依頼した弁護士に保管してもらえないか尋ねてみても良いでしょう。
なお、遺言書の作成を依頼する弁護士を遺言執行者に指定しない場合は、弁護士に遺言書を預けられないこともあります。保管をしてもらえる場合でも別途費用がかかるのが一般的です。
遺言執行も依頼できる
遺言書の作成を弁護士に依頼すると、遺言執行も依頼できます。
遺言執行とは、遺言の内容を実現することです。
遺言は遺言者が亡くなった時点で効力が発生するため、相続人が遺言を執行することになります。しかし、相続預金の払い戻しや不動産を分配するには煩雑な手続きが多く、相続人の大きな負担になることが予想されます。相続人が多い場合は、新たなトラブルを引き起こしかねません。
遺言者と利害関係がない弁護士を遺言執行者に指定することで、相続人同士で対立するなどのトラブルを回避できるでしょう。
弁護士に遺言執行者も依頼すれば、遺言をスムーズに執行できます。
遺言書の作成を弁護士に依頼すべき3つのケース
遺言書の作成を弁護士に依頼すべき主なケースとして、以下の3つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
相続人が不仲で相続トラブルが発生する可能性が高い
相続人が不仲で相続トラブルが発生する可能性が高い場合は、遺言書の作成を弁護士に依頼することをお勧めします。
相続人の仲が悪い場合、相手の言うことが信じられない、そもそも話し合うことが難しいという理由で、遺産分割協議が進まないなどの相続トラブルが発生するケースは少なくありません。協議が進まなければ調停・審判など裁判手続きに駒を進めざるを得なくなります。
遺言書の作成を弁護士に依頼すれば、あらかじめ相続財産の分割方法を適切に決めておけるため、無用な争いを防ぎやすくなります。
相続人が多い・相続人の関係性が複雑
相続人が多い・相続人の関係性が複雑な場合は、遺言書の作成と遺言執行をセットで弁護士に依頼することをお勧めします。
遺言書を作成しても遺言執行者がいなければ、相続人らが協力して手続きを進めることになります。
前配偶者との間に子どもがいる、代襲相続が発生したなどのケースでは、相続関係が複雑になるため、相続人を見落としてしまったり、他の相続人が手続に協力してくれなかったりすることも起こり得ます。
遺言書の作成を依頼する弁護士を遺言執行者に指定しておけば、遺言の効力が発生した後、相続人の調査も任せられますし、相続人の協力が得られない場合でも遺言の執行を実現できます。
法定相続人以外に相続させたい人がいる
法定相続人以外に相続させたい人がいる場合は、遺言書の作成を弁護士に依頼することをお勧めします。
遺言は遺言者の最後の意思表示であるため、できる限り尊重されます。遺言の内容が優先されるため、法定相続人以外にも財産を遺贈できます。
しかし、前述のとおり、法定相続人の遺留分を侵害してしまうと、遺留分を請求される可能性が高いです。
遺言書の作成を弁護士に依頼すれば、遺留分に配慮した分割方法をアドバイスしてもらえるため、法定相続人以外への遺贈をトラブルなく行いやすくなります。
遺言書にまつわる弁護士費用と相場を紹介
遺言書にまつわる以下の4つの弁護士費用について、相場を交えて紹介します。
- 法律相談料
- 遺言書の作成費用
- 遺言執行者の報酬金
法律相談料
法律相談料とは、弁護士に依頼する前に法律相談をしたときに発生する費用です。
相談後に支払うのが一般的です。
法律相談料の相場は、30分につき5,000円程度です。
初回相談料を無料にしている事務所もあります。
遺言書の作成費用
遺言書の作成費用とは、弁護士に遺言書の作成を依頼したときに発生する費用です。
遺言の内容や相続財産の金額によって異なりますが、遺言書の作成費用の相場は10〜20万円程度です。
遺言執行者の報酬金
遺言執行者の報酬金とは、遺言執行者として指定した弁護士が執行業務を終了したときに支払う費用です。
相続財産の金額を基準として、それぞれの事務所の報酬基準に従い算出されます。
相続財産の金額により異なりますが、遺言執行者の報酬金の相場は、30〜100万円程度です。
固定報酬制を取り入れている事務所もあります。
報酬基準として、弁護士会の旧報酬基準を紹介しますので、参考にしてください。
- 300万円以下の場合:30万円
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:経済的利益の額×2%+24万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:経済的利益の額×1%+54万円
- 3億円を超える場合:経済的利益の額×0.5%+204万円
料金体系は事務所により大きく異なるため、依頼前に弁護士に確認することをお勧めします。
遺言書の作成は相続に関する知識・経験豊富な弁護士に依頼しましょう
遺言書の作成は、相続に関する知識・経験豊富な弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士には、それぞれ得意分野があります。相続問題に詳しい弁護士に依頼すれば、豊富な知識と実務経験を活かした適切なアドバイスが期待できます。あなたの状況を総合的に考慮した遺言書を作成できるでしょう。
遺言書の作成から相続トラブルまでワンストップで対応してもらえることは、弁護士に依頼する大きなメリットといえます。相続に関する知識・経験豊富な弁護士に依頼すれば、安心してすべての手続きを任せられるでしょう。
まとめ
生前に法的に有効な遺言書を準備しておけば、自分の死後に起こり得る相続トラブルを防ぎやすくなります。
円満な遺産分割を実現するためにも、遺言書の作成は弁護士に依頼することをお勧めします。
遺言書作成の依頼を検討しているなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。