遺言書作成で弁護士に依頼するメリットや選び方を解説

遺言書の作成はご自身でも可能ですが、弁護士に依頼することもできます。
このコラムでは、遺言書の作成を弁護士に依頼することで得られるメリット、および弁護士の選び方についてご説明します。
遺言書作成で弁護士に依頼するメリット
遺言書があれば、ご自身の死後ご遺族が円満な相続をしやすくなります。
遺言書作成を弁護士に依頼すると、以下のようなメリットが期待できます。
最適な遺言書の種類を選べる
遺言書にはいくつかの種類があります。その中で、一般的なのが自筆証書遺言と公正証書遺言です。弁護士は依頼者の状況を踏まえ、どの方法がよいかアドバイスします。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、後述する財産目録以外のすべてを遺言者が自筆で作成する遺言書です。
自筆証書遺言のメリットは、費用がほとんどかからずに作成できる点です。また、法務局で形式要件のチェックを受け、盗難や改ざんを防ぐために保管してもらえます。
しかし、本文をすべて自筆で書かなければならないため、人によっては負担になります。
また、法務局ではなく自宅などで保管している自筆遺言書は、遺言者が死亡したあと家庭裁判所で検認を受ける手間が相続人に発生します。
公正証書遺言
公正証書遺言は、以下の流れで作成します。
- 2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言の内容を口述
- 公証人が遺言を筆記
- 遺言者と立ち会いの証人、公証人が署名押印
公正証書遺言のデメリットは作成に相応の費用と手間がかかることです。
一方、メリットは次の3点です。
- 公正証書遺言は公証役場で保管されるため盗難や改ざんを防げる
- 公証人が作成していることから形式不備により無効となることは基本的にない
- 検認の手続きが不要
無効にならない遺言書を作成できる
遺言書には、以下のような形式要件が定められています。
- 自筆証書遺言の場合、財産目録以外は手書きで作成すること
- 日付を明記し、署名押印すること
- 自筆証書遺言を訂正するときは、訂正した箇所を付記したうえで署名し、本文中の訂正箇所に押印すること
- 単独の遺言であり、複数人(たとえば配偶者との共同作成)による遺言ではないこと
上記を満たさない場合、遺言書は無効です。
また、以下のような場合も無効となる可能性があります。
- 遺言書の内容が不明確である
- 特定の相続人が書かせたと思われるような内容である
遺言書を作成する際は、形式要件を守らなければなりません。弁護士のアドバイスを受けながら作成することで、無効にならない遺言書を作成できます。
相続人間のトラブルが発生しにくい遺言書を作成できる
相続人間のトラブルを避けるために、注意して頂きたいことがひとつあります。
それは、相続人の遺留分を侵害するような遺産の分け方にしないことです。
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に対して必ず残しておかなくてはならない遺産の相続割合のことです。
遺留分を有している法定相続人のことを遺留分権利者ともいいます。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した相続人に遺産の一部を返還するように請求できます(遺留分侵害額請求権)。
弁護士は法定相続人を調査したうえで、遺言書の内容が相続人の遺留分を侵害していないかチェックします。これにより、相続が発生したあとも、相続人間のトラブルを防ぐことが期待できます。
万一相続人同士のトラブルが発生しても、遺言執行者として迅速な解決を目指せる
せっかく遺言書を作成しても、その内容に納得がいかない相続人間のトラブルが発生し、遺言書の内容が実現されないようでは意味がありません。
そのような事態を防ぐために、あらかじめ遺言執行者を指定できます。
遺言執行者とは、遺言書の内容の実現を委任された人のことです。遺言者の代理人でもあります。
遺言執行者は、遺言の内容の実現について権限を持ちます。
遺言者は相続財産の管理や遺言の執行に必要な行為に関する排他的・独占的な権利と義務が認められています。相続人間でトラブルにある状態でも、遺言執行者による遺言の執行は妨げられません。
遺言執行者には弁護士を指定できます。遺言者と利害関係がない弁護士であれば、遺言執行者に適任です。
相続財産の調査を適切にすすめられる
通常、遺言書には本文と別に財産目録を添付します。
財産目録とは、財産や債務の一覧表のことです。
相続人は、被相続人の財産をすべて把握できているとは限りません。そのような中で相続が発生すると、相続人は被相続人の財産をすべて調査し確定する必要があります。
財産調査は金融機関や役所などで調査しなければならないことが多く、相続人にとって時間と手間がかかります。一方で、生前に財産目録を作成しておけば相続人の財産調査の手間を省けます。
財産目録には、財産を漏れなく記載する必要があります。中でも、土地を数多く保有している人は調査や記載に手間がかかります。
弁護士に依頼することで調査漏れのない財産調査が期待できます。
遺言書作成は弁護士に依頼した方がいいのか?
遺言書の作成を弁護士に依頼するかしないかは、判断に迷うところだと思います。
以下では、遺言書作成は弁護士に依頼した方がよい人・そうでもない人についてタイプ別にご説明します。
遺言書作成は弁護士に依頼した方がいいケース
相続財産や相続人が多いほど、手続きが煩雑になるおそれがあります。
以下の項目にあてはまる方は、弁護士への依頼をおすすめします。
- 法定相続人が多く、それぞれの関係が複雑
- 財産のうち、不動産が占める割合が多い
- 遺言書の内容に納得しそうにない相続人がいる
- 相続人の仲が悪く、遺言書があってもトラブルになりそう
- 遺言書の書き方がわからない
弁護士に依頼することで、有効な遺言書の作成と遺言の実現が期待できます。
遺言書作成を依頼する必要性が低いケース
法定相続人がいない、あるいは一人しかいない方は、あえて遺言書の作成を弁護士に依頼する必要はないでしょう。
ただし、法定相続人が誰もいないという方は、ご自身が亡くなったあとに財産の寄付などをする先を指定するために遺言書を作成した方がよいと考えられます。
一方で法定相続人が一人しかいないという方は、遺言書を作成する必要そのものがないのかもしれません。
遺言書作成を依頼する弁護士の選び方
弁護士を選ぶ際に見るべきポイントをご説明します。
相続分野に知見と経験のある弁護士か
大前提として、相続分野の実務経験が豊富な弁護士を選ぶようにしましょう。
取り扱い分野をホームページで公表している弁護士は多いので、依頼前に確認することをおすすめします。
無理なことは無理と言ってくれるか
弁護士に遺言書の作成を依頼したとしても、100%希望する結果の相続になるとは限りません。
たとえば、法定相続人がいるのにもかかわらず「愛人にすべての遺産を譲りたい」と望んでも、法定相続人全員が相続放棄をしないかぎりその希望は叶いません。
依頼者にとって本当に安心できる弁護士とは、「私に任せればすべてご希望通りにします」としか言わない弁護士ではなく、無理な依頼は理由の説明とともに無理と言ってくれる弁護士です。
料金体系は明確か
弁護士費用は弁護士や各法律事務所によって異なります。依頼後に思わぬ出費が発生するリスクを避けるためにも、料金体系がわかりやすい法律事務所に依頼するのが安心です。
遺言書作成を弁護士に依頼する流れ
最後に、遺言書作成を弁護士に依頼するまでの流れをご説明します。
お問い合わせ
遺言書の作成が終わるまでは、弁護士と数回打ち合わせすることもあります。これを考慮し、まずはご自宅等から通いやすいところにある事務所から探し、その中から相続分野を取り扱っている弁護士に絞り込んでみましょう。
相談したい弁護士が見つかったら、訪問アポイントのお問い合わせを入れてください。
アポイントの連絡時は、相談料の有無についても確認しておきましょう。
初回面談
初回面談では、遺言書の作成について考えていることやお悩みを弁護士にお話しください。
1回の面談で弁護士に相談できる時間は限られています。面談を有意義なものにするためにも、財産・相続人の状況だけでなく弁護士に相談したいことを事前にまとめておくことがおすすめです。
依頼するか・しないかのご判断
面談後、必要性を感じた場合は弁護士に依頼をしましょう。
まとめ
ご自身が亡くなったあとのために遺言書を作成しておくことは、ご家族への思いやりともいえます。円満な相続にするために、遺言書の作成は弁護士に依頼することをお勧めします。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。