相続財産の把握・相続人の確定
相続発生時、亡くなった方(被相続人)の遺言書がない場合や、遺言書があっても記載されている内容が財産の一部のみの場合は、相続人全員で遺産の分割について話し合う必要があります。
遺産分割協議では、誰がどのような割合や方法でどの遺産を引き継ぐのかを相続人全員で話し合います。
その際の注意点は以下のとおりです。
- 遺言書があれば、遺言書の内容に従って分けることが多い
- 遺言書がない場合は、民法で相続分の割合(法定相続分)が定められている
- 相続人全員の合意がなければ無効になる
- 相続人全員(受遺者、遺言執行者がいる場合には受遺者、遺言執行者の同意も必要です)の合意があれば、遺言書の内容や法定相続分とは違う割合でも良い
- 相続財産は、プラスのものだけではなく、債務や抵当権などマイナスのものもある
ここでは、遺産分割協議をする前にしておかなければならないことのうち、相続財産を把握するための方法と相続人の確定について解説します。
主な相続財産の把握方法
相続財産を把握する主な理由は以下の通りです。
- プラスの財産だけでなく、債務などマイナスの財産がないか確認するため
- 遺産分割協議をスムーズに行うため
- 相続税の申告が必要かどうか確認するため
相続財産の調査は、財産によって調べる方法が異なります。
不動産
ご自宅に、「登記済証」や「登記識別情報」などがあれば、どのような不動産を所有していたか確認できますが、一緒に暮らしていない場合は全ての把握は困難です。
不動産を所有していれば、納税者に届く固定資産の納税通知書で確認できますが、役所で「固定資産課税台帳(名寄帳(なよせちょう))」を取得した方が良いでしょう。固定資産課税台帳には、課税対象のものは未登記のものも載っています。
ただし、その市区町村にある情報しか載っていないので、各地に不動産を所有していた場合は、それぞれの市区町村に請求する必要があります。
現金・預貯金
何かあった時のために、現金をご自宅で保管している人もいます。財産の管理をされている方がいない場合は、後のトラブルを避けるために、できれば推定相続人全員か、第三者の立ち合いのもと、探してみましょう。
通帳やキャッシュカードなどがあれば、金融機関から残高証明書や入出金の履歴を取得しましょう。どこの金融機関に口座を持っていたか不明の場合は、郵便物などから推測し、金融機関に残高証明書などの発行を依頼する方法があります。
生命保険、有価証券など
保険証書などの書類が保管されていないか探してみましょう。証書などが見当たらない場合は、保険料の支払いや株の取引などで金融機関の口座を利用している方が多いので、口座の履歴で確認し、問い合わせてみましょう。
債務
金融機関やカード会社から支払請求書や督促状などが来ていないか確認しましょう。不動産を所有している場合は、登記事項証明書で抵当権が設定されているかどうか確認することができます。
被相続人が誰かの債務の保証人になっていることがあります。その場合は、契約書などが残っていないと把握することが困難なため、遺産分割協議を終えたあとで知ること事があります。
そのためにも、遺産分割協議をする際は、協議後に相続財産が発見された時のことも決めておきましょう。
相続人の確定方法
遺産分割協議は、相続人全員で協議を行う必要があります。そのために、相続人を調査する必要があります。
相続人とは、民法によってその範囲と順位が定められ、同順位の人が複数いる場合にはそのすべての人が相続人となります。なお、家庭裁判所で相続放棄の手続をした人や、欠格事由などがあれば、相続人からはずれる可能性があります。
相続人を確定するためには、戸籍の収集が必要です。
被相続人が死亡後、ずっと遺産分割協議をせずに放置したままの場合は、代襲相続や数次相続がおきている場合が多く、推定相続人の確定に時間がかかります。
戸籍の収集・確認
推定相続人を確定するためには、被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍類が必要となり、調停や訴訟になる場合は、相続人全員の戸籍謄本も必要になります。
戸籍は、本籍地のある市区町村で取得します。本籍地を変更していた場合は、各市区町村で取得する必要があるため、最新の戸籍から遡って戸籍を取得しながら過去の分を確認する必要があります。
「戸籍」とまとめて呼ばれることがありますが、以下のような種類があります。
戸籍謄本 | 日本国籍である個人について、氏名や生年月日、出生、婚姻などの身分関係が記録された公文書のことで、「戸籍抄本」は、必要な人の一部分だけのもののこと |
除籍謄本 | 結婚や離婚、死亡、転籍などによって、在籍している人が誰もいなくなった状態の戸籍のこと |
改製原戸籍 | 法改正により戸籍の改製が行われる前の古い戸籍のこと |
戸籍の附票 | 本籍地の市町村と特別区が戸籍の編製と同時に作成し、その戸籍に在籍している間の住所等の履歴を記録する公文書のこと |
弁護士による戸籍の収集
弁護士や司法書士等は、依頼された案件について、定められている業務を遂行するために、「職務上請求」という方法を利用し、戸籍謄本等の交付を請求できます。(戸籍法10条の2第3項)
相続人が多い方や、本籍地を複数回変更している方の場合は、戸籍の収集に時間がかかります。また、コンピュータ化される前の戸籍は内容が手書きで読みにくい場合もあるので、個人で必要な戸籍を短時間で収集するのは大変です。遺産分割協議などを弁護士に依頼する際は、手続に慣れている弁護士に戸籍の収集から依頼を検討されてはいかがでしょうか。
まとめ
相続が発生した時、相続人が多い方や、相続人同士が疎遠な状態になっている方がいる場合の遺産分割協議は、時間がかかり、協議が進みづらくなります。
弁護士に依頼することで、コミュニケーション不足によるすれ違いや、トラブルを未然に防げます。相続の手続は相続財産によっても注意点が異なるため、まずは専門家に相談することをお勧めいたします。
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