遺言書の相談先9つ|相談できること相談の流れをわかりやすく説明

遺言書は、自力で作成できますが、法的に有効な遺言書を作成するには、法律知識が不可欠です。
相続トラブルを避けるためにも、遺言書の作成にあたっては専門家に相談することをおすすめします。
この記事では、遺言書作成を相談できる専門家や窓口について解説します。
遺言書の作成をご検討中の方は、ぜひご参考になさってください。

例えば…
・遺言書を作成する方であれば、相続人同士のトラブルにならない内容の遺言書作成をサポート
・遺言書の内容に問題があった場合の相続人の方であれば、遺産分割協議をなるべく円満に進めるためのサポート
遺言書に関してお困りの方は一度無料相談をご利用ください。
目次
遺言書の作成を相談できる窓口9つ
ここでは、遺言書の作成を相談できる専門家や窓口とそれぞれの特徴を解説します。
弁護士|遺言・相続に関するあらゆる問題に対応してもらえる
遺言書をめぐって争いが起きる可能性が高いケースでは、事前に遺言書作成について弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、相続トラブルなどの紛争問題において、依頼者の代理人として交渉や裁判を行えます。紛争解決のエキスパートである弁護士に相談すれば、将来の紛争を未然に防ぐために必要なアドバイスを受けられます。
相続問題を積極的に取り扱う事務所であれば、税理士や司法書士などの他士業とも連携していることが多いため、遺言・相続に関するサポートをワンストップで受けられる可能性があります。
司法書士|不動産登記を見据えた遺言書作成の支援を受けられる
司法書士は不動産登記の専門家であるため、不動産をお持ちの方に有効な相談相手です。
不動産の相続方法や将来の相続登記を見据えた遺言書の起案について相談できます。
行政書士|気軽に遺言書の作成支援を受けられる
行政書士は、書類作成や許認可を主に行う専門家です。
遺言内容がある程度決まっていて、その内容に沿った遺言書を起案してもらいたいときや、様式のチェックを依頼したい場合に有効な相談先です。
他の専門家と比べて相談料や遺言書作成費用がリーズナブルであるのも特徴です。
相続トラブルの心配がなく、書類作成のみ気軽に相談したい方におすすめです。
税理士|相続税に関するアドバイスが受けられる
税理士は、税務書類の作成や税務申告を行う税金の専門家です。
遺言書作成時に相続税や贈与税を試算したい場合や、残された方の税負担をなるべく軽減したい場合などには、税理士への相談が有効です。
公証役場|公正証書遺言や秘密証書遺言の作成について相談できる
公証役場では、公正証書遺言や秘密証書遺言の作成について無料相談に応じてもらえます。
ただし、公証役場では個別具体的な事情に応じた遺言内容の相談などには応じていません。
遺言により相続対策をしたい場合や、将来の相続トラブルを予防したい場合には、あらかじめ専門家に相談したうえで、公証役場に依頼するのが安心です。

各弁護士会の法律相談センター|遺言や相続の一般相談や弁護士紹介に対応
各都道府県の弁護士会には、遺言や相続に関する相談窓口が設置され、無料電話相談や面接相談(初回のみ無料)が実施されています。
遺言や相続に関する一般的な相談や各弁護士会に所属する弁護士の紹介に対応しています。
面接相談は、2回目以降は30分5,500円(税込)がかかるのが一般的です。
法テラス|遺言や相続の一般相談に対応・適切な相談窓口を案内してもらえる
法テラス(日本司法支援センター)では、電話やメールなどで相談内容を確認したうえで、適切な相談窓口を案内してもらえます。
相談料や紹介料が無料なので、遺言書の作成を誰に相談すればよいか分からない方におすすめの相談先です。
参考:相続・遺言|法テラス
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
市町村役場の法律相談|遺言や相続の一般相談に対応
全国各地の市町村役場では、定期的に無料の法律相談が実施されています。市民相談を利用すれば、遺言書の作成について無料で弁護士に相談できます。
ただし、市町村役場の法律相談は相談時間が限られているため、個別の事情に応じた具体的なアドバイスは期待できません。
金融機関|遺言書の作成補助・寄託・遺言執行のサービスを受けられる
一部の都市銀行や信託銀行は、遺言書の作成からその内容実現までを一括支援する有料サービスを提供しています。
金融機関の遺言信託サービスでは、次のようなサービスを受けられます。
- 遺言書の作成補助(コンサルティング)
- 遺言書の寄託(保管)
- 遺言執行業務
金融機関の遺言信託サービスを利用する場合は、取引手数料として30万円~110万円の費用がかかるのが一般的です。
高額で広範囲な金融資産をお持ちの方で、定期的な遺言書の見直しや資産運用など長期的なサポートをお求めの方に有効な相談先の一つです。
遺言書の作成を専門家に相談した方がよいケースとは?
ここでは、遺言書の作成を専門家に相談した方がよいケースを紹介します。
次のようなケースでは、遺言書作成前に専門家の助言を受けることをおすすめします。
- 特定の相続人に特定の財産を相続させたい
- 法定相続分と異なる割合で相続させたい
- 法定相続人以外の人に遺贈したい
- 婚外子を遺言で認知したい
- 遺言で相続人を廃除したい
- 法的に不備のない遺言書を作成したい
ひとつずつ説明します。
特定の相続人に特定の財産を相続させたい
特定の相続人に特定の財産を相続させる旨の遺言書を作成する場合は、以下の点に注意しなければなりません。
- 遺言書の書き方によっては解釈が分かれトラブルが生じる可能性がある
- 他の相続人の遺留分を侵害するおそれがある
遺言の解釈をめぐって相続人が揉めないよう明確な遺言を作成するためには、法律知識を有する専門家のサポートが不可欠です。

法定相続分と異なる割合で相続させたい
法定相続分と異なる割合で相続させたい場合は、遺留分や特別受益などの関係を考慮しなければなりません。
偏った相続分の指定は、相続人間の不公平感を拭えず、将来の相続トラブルを招きかねません。
遺留分や特別受益に配慮した遺言書を作成するためには、法律知識を有する専門家のサポートが不可欠です。

法定相続人以外の人に遺贈したい
法定相続人以外の人に遺贈する場合は、以下の点に注意しなければなりません。
- 遺留分を侵害しないようにする
- 受遺者の税負担が大きくなる
- 遺言者より先に受遺者が死亡すると遺贈の効力がなくなる
法定相続人以外の人に遺贈すると、法定相続人にとっては遺産の取り分が減ることになるため、紛争が生じる可能性が高くなります。
お世話になった人に財産を残したいという気持ちで遺言を残しても、結果的に紛争に巻き込んでしまうおそれがあります。
無用な紛争に巻き込まないためには、遺留分に配慮した遺言書を作成したり、遺贈する相手への思いや遺贈する理由を伝える付言事項をしたためたりして、相続トラブルを未然に防ぐ必要があります。
法定相続人以外の人へ財産を残したい場合は、あらかじめ弁護士や税理士に相談しましょう。
婚外子を遺言で認知したい
婚外子を遺言で認知したい場合は、認知される子(未成年の場合はその親権者)の承諾と遺言執行者の指定が必要です。
遺言で認知する場合は、婚外子の存在を知らせていないときはもちろん、知らせている場合も相続分に変化が生じるので、家族への配慮も求められます。遺言により遺産分割方法を指定することで、婚外子と他の相続人が遺産分割協議を行わなければならない心理的負担を軽減できることもあります。
遺言認知を行う場合は、必ず専門家のアドバイスを受けましょう。
遺言で相続人を廃除したい
遺留分を有する推定相続人から虐待や重大な侮辱行為を受けた場合、遺言により当該推定相続人を廃除する意思を表示できます。
遺言による推定相続人の廃除を実現するためには、相続開始後に家庭裁判所の審判を経なければなりません。そのため、当該遺言で遺言執行者を指定し、家庭裁判所の審理で必要な程度に具体的な廃除事由を要約して記載するとともに、廃除の意思表示を明確に記載しなければなりません。
推定相続人を廃除できる要件は厳格に定められているため、専門家の助言を得て遺言書を作成することをおすすめします。
法的に不備のない遺言書を作成したい
遺言書の書き方には、法律に定められた要件があり、それらの要件を満たさない遺言書は無効となります。
要件や形式に不備があったために、遺言が無効となる事例も少なくないため、遺言書の作成に少しでも不安がある方は、専門家に相談することをおすすめします。
遺言書の作成を弁護士に相談・依頼した方がいい理由
ここでは、遺言書の作成を弁護士に相談・依頼した方がいい理由を解説します。
遺言書の内容を相談できる
遺言書の内容そのものに悩んでいるときに相談できるのは弁護士だけです。
司法書士や行政書士は、ご本人の意向に沿って遺言書作成をサポートするスタンスであるため、どのような内容にすべきかまではアドバイスしてもらえません。
弁護士であれば、相続トラブルを未然に防ぐ財産の分け方や、ご自身の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成する方法について、具体的なアドバイスができます。
法的に不備のない遺言書を作成できる
遺言書は自分で作成できますが、書き方が間違っていたり、証人の選び方が不適当だったりすると(秘密証書遺言の場合)、無効となる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、法的に不備のない遺言書を作成してもらえます。
相続トラブルを防止するためのアドバイスを受けられる
遺留分や特別受益を無視した遺言書や、解釈が分かれる曖昧な内容の遺言書は、将来の相続トラブルを招きかねません。
弁護士に相談・依頼すれば、将来の紛争を未然に防ぐために必要なアドバイスを受けられます。

公証人とのやり取りを任せられる
公正証書遺言を作成する場合は、公証人との事前に打ち合わせたり、証人を用意したりする必要があります。
弁護士に依頼すれば、証人の用意や公証人とのやり取りをすべて任せられます。遺言書において、依頼した弁護士を遺言執行者に指定すれば、相続開始後の遺言内容の実現もすべて任せられるので安心です。

遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の流れ
ここでは、遺言書の作成支援を弁護士に依頼した場合の手続きの流れについて解説します。
相談・依頼
遺言書の作成を相談したい弁護士を選び、電話またはメール等で面談を予約します。
予約時には面談の候補日時をいくつかピックアップしておくと良いでしょう。初回面談を無料としている事務所も多くありますが、念のため予約時に相談料を確認することをおすすめします。
初回面談では主に以下の点を尋ねられますので、あらかじめメモを用意すると良いでしょう。
- 遺言書を作成したいと思う理由・動機など
- 家族・親族関係(誰が相続人になるのか)
- 財産の内容・内訳など
遺言書作成に関して、気になる点や不明点があれば気軽に相談しましょう。
一般的には、面談中又は面談終了時に、弁護士費用等の見積もりを提示してもらえます。
気になる点がなければ、その場で委任契約を締結することもできますし、持ち帰って検討することも可能です。
必要書類の収集
委任契約締結後は、まず必要書類を収集します。
財産に関する資料を預かったり、推定相続人を調査するために戸籍謄本等を収集したりします。
遺言書案の作成
遺言内容を決めるために、詳細な打ち合わせを複数回行い、ご本人の意向に沿った遺言書案を弁護士が作成します。
公正証書の作成・調整
作成した遺言書案をもとに、公証人に公正証書の作成を依頼します。
公証人が作成した公正証書案を確認し、必要に応じて修正等を求めます。ご本人の意向に沿った公正証書案が完成したら、日程調整の上、証人2名を用意して公証役場に同行します。
遺言書の保管
公正証書原本は公証役場で保管され、遺言者本人には正本と謄本が交付されます。
ご希望に応じて弁護士が謄本を預かり保管します。保管料が発生する事務所もあります。
遺言の執行
遺言書の作成を依頼した弁護士を遺言執行者に指定した場合は、相続開始後、遺言書の内容を実現するために、遺言執行を行います。
遺言書の作成支援を弁護士に依頼した場合の費用
(遺言執行者に指定した場合は)執行費用遺言執行にかかる弁護士費用の相場は、遺言書に記載された財産の額に応じて異なりますが、30万円~200万円が目安です。
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の費用について解説します。
相談料
遺言書の作成を弁護士に相談した場合の相談料の相場は、30分5,500円(税込)が目安です。初回相談料を無料としている法律事務所もあります。
作成手数料
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の手数料の相場は、10~20万円です。
財産の額や推定相続人の数、事案の複雑さなどによって変動します。
公正証書作成手数料
公正証書遺言の作成手数料は、遺言書に記載する財産の額によって以下のとおり定められています。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
上記のほか、遺言公正証書原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。
正本及び謄本の交付については、1枚につき250円の割合の手数料が必要です。
日当
公正証書作成に際して、公証役場への同行の日当がかかることがあります。
日当の相場は、1日あたり3~5万円が目安です。
まとめ
遺言書を作成する場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。
遺言・相続分野に精通している弁護士に依頼すれば、他士業(司法書士や税理士等)と連携し、登記や税務の観点を取り入れた遺言書の作成をサポートしてもらえます。
遺言書の作成をご検討中の方は、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。遺言・相続の知識や実務経験が豊富な弁護士が、遺言書の作成から遺言内容の実現までを全力でサポートします。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。