遺言書の相談ができる9つの窓口を紹介|弁護士へ依頼すべき例は?

遺言書は自分自身で作成ができますが、法律上の要件を満たしていない場合、無効となるおそれがあります。法的に不備のない遺言書を作成するために、専門家への相談をおすすめします。
この記事では、遺言書作成について相談できる9つの窓口について紹介します。
弁護士に相談すべきケースやその際の手順についても解説しますので、参考になさってください。
遺言書の相談ができる9つの窓口|目的別に紹介
遺言書に関する相談は、目的に応じて適切な窓口を選ぶことが重要です。
遺言書について相談できる主な窓口は、以下のとおりです。
弁護士|法的な助言を受けながら遺言書を作成したい
遺言書の書き方など形式面だけでなく、内容面についても相談したい場合は、弁護士への相談が適切です。
単に形式を整えるだけでなく、将来のトラブルを未然に防ぐための内容設計についても、法的な助言ができるのは弁護士だけです。
特に家族関係が複雑な場合や、親族の仲が悪い場合は、弁護士に相談したほうがいいでしょう。弁護士であれば、親族同士がもめない遺言書の作成をアドバイスできます。
相続人以外に財産を譲りたい、子どもの認知をしたいなど、相続人の間でトラブルが起きそうな遺言書の作成を考えている場合は、弁護士のアドバイスを受けながら進めるのが望ましいです。
司法書士|不動産登記を見据えた遺言書を作成したい
不動産の相続や遺贈を内容とする遺言書を作成する場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。
相続登記の義務化に伴い、相続によって不動産を取得した人は3年以内に相続登記の申請をしなければいけません。司法書士であれば、相続登記を見据えた遺言書作成のアドバイスが可能です。
特に権利関係が複雑な不動産がある場合は、遺言執行において登記手続きを確実に進められるように、司法書士のアドバイスを受けながら遺言書を作成したほうがよいでしょう。
行政書士|決まった内容をもとに遺言書を整えたい
すでに遺言書の内容が決まっていて、それをもとに遺言書を調えて要式のチェックをしてもらいたい場合は、行政書士に相談するとよいでしょう。
行政書士は他の士業に比べると比較的費用が安いです。相続人同士でトラブルになるリスクが低ければ、書類作成についてのみアドバイスを受けるとよいでしょう。
税理士|相続税対策を考えた遺言書にしたい
相続税対策を考えた遺言書にしたい場合は、税理士に相談するとよいでしょう。
相続税は、遺産の総額が一定額を超えると課税されますが、その基準や控除等の特例について、アドバイスを得られます。
相続税が課税されるかどうかが不明確な場合でも、税理士に相談し、財産の評価や相続税の可能性を事前に把握することで、相続人の予期せぬ税負担を避けられるでしょう。
特に高額な遺産がある場合や、相続人が複数いる場合には、税理士のアドバイスを受けながら遺言書を作成することが有効です。
公証役場|公正証書遺言を作成したい
公正証書遺言を作成したいと考えるなら、公証役場に相談しましょう。
定期的に公証人による無料相談を開催している公証役場もありますので、上手に利用すると良いでしょう。
ただし、公証人には、遺言書の内容をどうすべきかなどの法律相談はできません。
遺言書の内容をどうすべきか、法的アドバイスが必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
各弁護士会の法律相談センター|弁護士の紹介を受けたい
弁護士の紹介を受けたい場合は、各都道府県にある弁護士会の法律相談センターに相談しましょう。
電話相談が無料で提供されているセンターもあります。
各弁護士会によって扱いが異なりますので、お住まいの近くにある法律相談センターに問い合わせてみましょう。
法テラス|自分に合った相談窓口を案内してほしい
自分に合った相談窓口を案内してもらいたい場合は、法テラスに相談するとよいでしょう。法テラスは国が設立した公的な法人で、問合せ内容に応じて適切な相談窓口を案内してもらえます。収入等の条件によって利用制限はありますが、無料法律相談も開催しており、相談した弁護士にそのまま依頼もできます。
市町村役場の法律相談|無料で気軽に相談したい
遺言書に関する基本的なことを相談したい場合は、市区町村役場の法律相談を利用しましょう。定期的に相続・遺言書に特化した相談日を設けている役所もあります。
ただし、市区町村役場の法律相談は相談時間が限られているため、個別具体的なアドバイスは期待できない場合が多いです。
金融機関|遺言信託等のサービスを利用したい
遺言信託等のサービスを利用したい場合は、信託銀行等の金融機関に相談しましょう。
遺言書の作成、保管、遺言の執行をトータルでサポートしてもらえます。
ただし、金融機関の遺言信託サービスを利用する場合は、手数料として30万円から100万円ほどがかかることが一般的です。
遺言書の作成を弁護士に相談・依頼したほうがよいケース
遺言書の作成を弁護士に相談・依頼したほうがよいケースについて解説します。
特定の人に財産をすべて渡したい
特定の人に財産をすべて渡したいと考えているなら、弁護士に相談・依頼したほうがよいでしょう。
法律上、配偶者、子ども(直系卑属)、親(直系尊属)には、遺留分として最低限遺産の取得が保証されています。特定の人に多くの財産を残したい思いで作成した遺言書が、遺留分を有する相続人の権利を侵害すると、財産を受け取った人が、遺留分侵害額請求などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
こうしたトラブルを避けるためにも、弁護士に相談し、適切な遺言書を作成することが重要です。
遺言書の作成に自信がない
自分自身で遺言書の作成をするのに自信がない場合は、弁護士に相談・依頼したほうがよいでしょう。
遺言書は、法律上、決められた要式があり、それを満たしていなければ無効になります。
せっかく作成した遺言書が無効になったら残念ですので、自信がない方はぜひ弁護士に相談・依頼をしてください。
妻以外の女性との間に子どもがいる
妻以外の女性との間に子どもがいる場合は、遺言書の作成にあたり弁護士に相談・依頼をしたほうがよいでしょう。
いわゆる内縁関係にある女性との間に認知している子どもがいるケースや、離婚歴があって前妻との間に子どもがいるケースです。
現在の妻やその子どもたちにとっては、直接相続に関して話し合いをしたくない相手である場合が多いので、トラブルを避けるためにも弁護士のアドバイスを受けて遺言書を作成したほうがよいでしょう。
認知したい子どもがいる
認知したい子どもがいる場合、弁護士に相談・依頼をして遺言書を作成したほうがよいでしょう。
生前は事情があって認知ができなかったものの、遺言書で認知を検討する方もいらっしゃるでしょう。遺言認知をすればその子どもは遺産の相続ができます。
遺言認知をする場合は遺言執行者が必要なので、弁護士に相談・依頼をしたほうがよいでしょう。
相続人以外の人に財産を残したい
相続人以外の人に財産を残したい場合、弁護士に相談・依頼をして遺言書を作成したほうがよいでしょう。
例えば、内縁の妻に財産を渡したい場合、遺言書にその旨を記しておけば財産を残せます。ただし、この場合も遺留分の問題が生じますので、そうしたトラブルが起きないよう弁護士にアドバイスをもらいながら遺言書の作成をしたほうがよいでしょう。
財産を特定の団体等に寄付したい
財産を特定の団体等に寄付したい場合は、弁護士に相談・依頼をして遺言書の作成をしたほうがよいでしょう。
社会貢献をしたい、特定の団体に恩返しをしたいなどさまざまな思いがあると思います。ご自身の思いを遂げるためには、相続人の遺留分に配慮した遺言書の作成が必要です。
財産のすべてや一定の割合を示す包括遺贈ではなく、特定の遺産を寄付する特定遺贈を選択した望ましい場合もあり、法律面や税務面で注意すべき点もあります。
そのため、弁護士のアドバイスを得ながら遺言書を作成したほうがよいでしょう。
財産を相続させたくない人がいる
相続人の中で、財産を相続させたくない人がいる場合は、弁護士に相談・依頼して遺言書を作成したほうがよいでしょう。
例えば、素行が悪い子どもに財産を一切渡したくない場合などです。
この場合、子どもの遺留分に配慮しつつ、遺言書の内容を慎重に検討した方がよいでしょう。
会社の経営権や事業を特定の人に承継させたい
会社の経営権や事業を特定の人に承継させたい場合は、弁護士に相談・依頼して遺言書を作成したほうがよいでしょう。
特定の親族に事業を承継させたい場合、遺産相続のトラブルが起きる可能性が高いです。
例えば、遺留分の問題が生じないように株式については遺留分請求をしない旨の合意をするなど、対策が必要となります。
将来の相続トラブルを避けるために弁護士のサポートは不可欠となるでしょう。
遺言書の内容を確実に実現したい
遺言書の内容を確実に実現したいと考えるなら、弁護士に相談・依頼をしましょう。
遺言書の内容を実現するには、遺言執行者を選任したほうがよいです。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する責任を負う人です。
相続人の間で対立やトラブルが起きる可能性がある場合は遺言執行者を選任したほうがよいでしょう。遺言書で子どもの認知や特定の相続人から相続権を奪いたい場合は遺言執行者の選任が必須です。
遺言執行者は誰でもなれますが、弁護士を遺言執行者に指定すると安心です。
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の流れ
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合、以下のような流れに沿って行います。
自筆証書遺言と公正証書遺言の共通部分と、それぞれ特有の流れを解説します。
自筆証書遺言・公正証書遺言【共通】
自筆証書遺言と公正証書遺言で共通している流れは、以下のとおりです。
弁護士を探す
遺言・相続分野を得意とする弁護士を探しましょう。
ホームページを開設している弁護士も多いため、どのような案件に力を入れているか、遺言や相続に関する案件をどの程度手掛けているか確認をしましょう。
相談の予約をする
弁護士を見つけたら、相談の予約をしましょう。
初回の相談を無料で対応している事務所もありますので有効に利用しましょう。
財産や家族関係のヒアリングを受ける
初回の相談で、財産や家族関係のヒアリングを受けます。
その際には、戸籍謄本や財産の目録をまとめて持参するとスムーズに話が進みます。
遺言書の内容を決めて文案を作成する
弁護士と相談しながら、遺言書の内容を決めて文案を作成します。
誰にどの財産を譲るかなど、ある程度自分の考えをまとめて、法的に問題がないか弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言の場合は、以下の流れで行います。
作成した文案をもとに自分で遺言書を清書する
弁護士のアドバイスを受けながら作成した文案をもとに、自分で遺言書の清書をします。
自分で保管するor法務局で保管手続きを行う
作成した遺言書を自分で保管するか、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する手続きをとります。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言の場合は、以下の流れで行います。
公証役場に文案や必要書類を提出する
公証人が事前に確認できるように、公証役場に遺言書の文案や必要書類を提出します。
公証人と日程を調整する
公証人と幾度か打ち合わせをして、公正証書遺言作成の準備が整ったら、遺言書を作成する日程を公証人および証人2人と調整をします。
公証役場で公正証書を作成する
日程が決まったら、証人2人とともに公証役場を訪れて、公正証書を作成します。
公証人が遺言内容を読み聞かせ、内容に間違いがないか確認をします。
問題がなければ遺言者と証人が署名押印をします。その際に遺言者は実印と印鑑証明書が必要です。
手数料を納め正本および謄本の交付を受ける
公証役場に手数料を納め、正本および謄本の交付を受けます。
手数料はあらかじめ公証人から伝えられるので、準備をしておきましょう。
まとめ
遺言書は、作成方法を間違えると無効になりますので、事前に専門家に相談することをおすすめします。
遺言・相続分野に精通している弁護士に依頼すれば、司法書士や税理士等と連携し、登記や税務の観点を取り入れた遺言書の作成がサポートできます。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。
公正証書遺言作成、遺言書案の作成や手続きの説明など、リーズナブルな費用で対応しておりますので、ぜひご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。