遺言書の書き方や作成上のルール・注意点を種類別に解説

法的に有効な遺言書を作成するためには、遺言書の種類や作成上のルールを正しく理解することが必要です。
遺言書の作成を考えていても、具体的にどのように書けば良いのか、知識がなく悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、遺言書の基本や作成上のルール・注意点を種類別に解説します。
目次
遺言書とは
ここでは、遺言書の概要や種類・特徴について解説します。
遺言書の基本
遺言とは
遺言とは、遺言者が自己の死後における財産関係や身分関係についてする最終の意思表示です。
遺言書とは
遺言書とは、遺言を書面にしたものです。
遺言は契約と異なり、遺言者の一方的な意思により効力を生じる単独行為であり、常に遺言者の死亡後に効力を生じるので、遺言書の作成には民法で一定の厳格な方式が定められています。
遺言書の種類と特徴
遺言には、以下の種類があります。
特別方式による遺言は、普通方式によることができない場合(事故・災害・伝染病などで身に危険が迫っているとき等)に認められます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。
民法改正により、2019年1月13日からは、自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成できるようになりました。
自筆証書遺言は、最も簡便な方式であり、遺言者が文字さえ書ければ作成できます。
ただし、自筆証書遺言には以下のデメリットもあります。
- 紛失・隠匿・毀損・改変などのおそれがある
- 方式不備により無効となることもある
- 内容が不完全なために効力が疑われたり、解釈が争われたりすることがある
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が作成する公正証書によってする遺言です。
法律の専門家である公証人が、遺言者から遺言の内容を聴き取って、その内容を整理しつつ作成するため、遺言内容が明確で証拠力も高い遺言方法です。
公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されるため、滅失・毀損・隠匿・改変のおそれもありません。

秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の存在自体は明らかにしておきながら、遺言の内容は秘密にしておくために行う遺言です。
自筆証書遺言と異なり、遺言書を自筆する必要はなく、パソコンやワープロ、点字機を利用して書いても問題ありません。
一般危急時遺言
一般危急時遺言は、疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った人について認められる遺言です。
3人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明し、証人の1人がそれを文章に書き起こす方法で作成します。
書き起こした内容を遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各証人が確認・署名押印します。
一般危篤時遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から裁判所に遺言の確認請求をしなければ効力が生じません。
難船危急時遺言
難船危急時遺言は、船舶が遭難した場合に、その船舶中にいて死亡の危急が迫った人について認められる遺言です。船舶遭難者遺言とも呼ばれます。
2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明し、証人がその内容を筆記して署名押印します。
難船危急時遺言も、家庭裁判所に遺言の確認を求めなければなりませんが、期間制限はありません。
伝染病隔離者遺言
伝染病隔離者遺言は、伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる人が、警察官1人と証人1人以上の立ち会いのもと行う遺言です。
伝染病に限らず、一般社会との交通が事実上又は法律上制限されている場所にいる人も対象となると解されています。
例えば、次のような人も伝染病隔離者遺言を行えます。
- 地震や洪水などで交通が遮断された所にいる人
- 刑務所内に収容されている人
なお、特別方式は例外的な方式なので、一般的には、普通方式で行われることがほとんどです。
種類別|法律で定められた遺言書の作成ルール
遺言書の作成方法は、民法で厳格な方式(形式)が定められており、その方式を守らない遺言は無効となります。
遺言書の詳しい書き方や例文は、以下関連記事をご参照ください。
ここでは、普通方式の3つの遺言書を作成する上で、押さえておくべきルールを解説します。
自筆証書遺言の作成ルール
自筆証書遺言を作成するときは、以下の3つのルール(方式)を厳守しましょう。
- 遺言者が、遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書する
- 遺言書の日付は、作成年月日を特定できるように記載する(〇年〇月吉日等はNG)
- 遺言書に必ず押印する(押印は実印・認印・指印のいずれでも可)
遺言書が複数枚にわたる場合は、これを綴ってその間に契印するのが一般的ですが、契印がなくても1通の遺言書として作成されたものであることが確認できれば、有効であると解されています。
なお、次の場合は、添付書類の全ページにも署名・押印が必要です。
- 財産目録をワープロやパソコン等で作成する場合
- 財産目録に代えて預金通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付する場合
公正証書遺言の作成ルール
公正証書は、原則として、公証役場で作成します。遺言者が老齢等で公証役場に出頭するのが困難な場合は、遺言者の自宅や病院、老人ホームなどに公証人が赴いて作成できることもあります。
公正証書遺言の作成ルール(方式)は、以下のとおりです。
- 証人2人以上の立ち会いがあること
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述(口頭で説明)すること
- 公証人が遺言者の口述を筆記すること
- 公証人が筆記した内容を遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること
- 遺言者及び証人が、筆記が正確なことを証人した後、各自署名押印すること
- 公証人が、適式な手続きに従って作成したことを付記して署名押印すること
なお、以下の人は証人になれません。
- 未成年者
- 推定相続人・受遺者及びこれらの配偶者・直系血族(祖父母・両親・子・孫など)
- 署名ができない人
秘密証書遺言の作成ルール
秘密証書遺言の作成ルール(方式)は、以下のとおりです。
- 遺言者が、遺言者自身又は第三者の記載した遺言書に署名押印すること
- 遺言者が、遺言書を封筒に入れ、遺言書に押印した印鑑で封印する
- 遺言者が、公証人1人と証人2人以上の前で封筒を提出する
- 封筒提出時に、自己の遺言であることと筆者の氏名住所を申述する
- 公証人が遺言書提出の日付と遺言者の申述を封紙に記載する
- 遺言者、証人、公証人が、封紙に署名押印する
秘密証書遺言は、上記の要件全てを満たさないと無効ですが、それが自筆証書遺言の方式を充たしている場合は、自筆証書遺言としての効力を有します。
遺言書を作成する際の注意点
遺言書を作成しておくことは、相続手続きの円滑化や相続人間のトラブル予防に有効ですが、遺言書の内容によっては、逆に相続トラブルの種になることもあります。
ここでは、遺言書を作成する際の注意点について解説します。
遺留分に注意する
遺言者は、遺言により、自己の財産を法定相続分にとらわれず自由な割合で相続人に相続させたり、相続人以外の者に遺贈したりできます。
しかし、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分(いりゅうぶん)が認められています。遺留分とは、法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に最低限保証されている相続分です。
民法は、遺留分を優先しているため、遺言者が希望したとおりに財産を譲れない可能性があります。遺言が、遺留分を侵害する内容であると、不公平感が強まって、相続人間にトラブルが生じる可能性もあります。
そのため、遺言書を作成する際には、以下の点に気を付けなければなりません。
- 遺留分を考慮した内容を検討する
- 遺留分侵害額請求を想定した対策を講じておく
遺言と遺留分の関係については、以下関連記事をご参照ください。

特別受益を配慮する
相続人の一部に、被相続人から遺贈を受けたり、婚姻や養子縁組あるいは生計の資本として生前贈与を受けたりしているケースがあります。
これらの遺贈や生前贈与で被相続人から特別に受けた利益を特別受益といいます。
特別受益がある場合、遺贈や贈与によって受けた利益を度外視して遺産を分割すると、他の相続人との間に不公平が生じます。
そのため、民法は、相続人間の公平と図るために、特別受益を相続財産の前渡しと考えて、相続開始時の財産に特別受益の額を加えたものを遺産分割の対象としています。相続開始時の財産に特別受益の額を加算することを、特別受益の持ち戻しといいます。
生前贈与や遺贈により、特定の人に財産を譲っても、遺産分割で特別受益の持ち戻しがなされれば、各相続人の具体的相続分は平等となります。
これでは、特定の人により多くの財産を与えたいという遺言者の希望を実現できません。そのような場合は、被相続人の意思表示により、特別受益の持戻し免除できます。
持ち戻しの免除の意思表示に特別の制限はありませんが、後日、特別受益の有無や程度が争われる場合に備えて、遺言書に以下の事項を記載することをおすすめします。
- 特別受益に該当する具体的事実(贈与のなされた年月日・生前贈与の内容等)
- 特別受益の持ち戻しを免除する旨
相続税を試算する
遺言書の作成前に、現状の財産に対する相続税を試算することも重要です。
相続税がかかるのかどうか、かかる場合はいくらになるのかを把握することで、遺産分割に伴うトラブルを回避したり、相続人の負担を軽減できたりします。
相続税評価額の合計が基礎控除額を下回ると、相続税は発生しません。基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
相続が発生すると10か月以内に相続税の申告・納税が必要となるため、事前に相続対策を講じておくと良いでしょう。
基礎控除額を上回る場合も、特例の適用により、相続人の負担を軽減できる場合もあります。
遺言執行者の指定を検討する
相続開始後に遺言内容を実現することを、遺言執行といいます。
遺言執行は、相続人が自ら行うのが原則ですが、相続人間の意見の不一致や相続人の非協力などによって、遺言執行を迅速にできないケースもあります。
このような場合、遺言により遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者が単独で手続きできるので、スムーズに遺言内容を実現できます。
遺言がある場合にも、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割を行えます。
しかし、当該遺言で遺言執行者を指定している場合は、遺言執行者の同意がなければ、遺言と異なる内容の遺産分割を行えません。
そのため、遺言執行者の指定は、相続人が遺言と異なる内容の遺産分割を行うことへの制約を課す役割にもなります。

遺言書の検認とは?
ここでは、遺言書の検認について解説します。
遺言書の偽造・変造を防止するための手続き
遺言書の検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるともに、遺言執行前に遺言書を保全し、後日の変造や隠匿を防ぐために行う手続きです。
遺言が有効か否かを確定する手続きではありません。
検認手続きが必要なのは自筆証書遺言と秘密証書遺言
遺言書の保管者は、相続開始後遅滞なく家庭裁判所に検認の請求をしなければなりません。
検認手続きが必要になる遺言書は、次の2つです。
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
公正証書遺言は、検認の手続きが不要です。
封がされた遺言書は検認前の開封NG
封がされた遺言書は、検認前に開封してはいけません。そのままの状態で検認期日に家庭裁判所に提出します。
検認期日当日は、出席した相続人の立ち会いのもと、裁判官が遺言書を開封して(封がされているものの場合)、遺言書の内容等を確認します。

遺言書は公正証書で作成した方が良い?
ここでは、公正証書遺言を作成するメリットや作成までの流れについて解説します。
公正証書遺言を作成するメリット
公正証書遺言を作成するメリットは、主に以下のとおりです。
- 滅失・毀損・隠匿・改変を防げる
- 外形的な要件で無効となる可能性がない
- 検認手続きが不要
- 聴覚・言語機能に障害がある方も利用できる
滅失・毀損・隠匿・改変を防げる
公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されるため、滅失・毀損・隠匿・改変のおそれがありません。
外形的な要件で無効となる可能性がない
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言者から遺言内容を聴取して、これを整理しつつ作成するため、外形的な要件で無効となる可能性がありません。
検認手続きが不要
公正証書遺言は、家庭裁判所における検認手続きが不要です。
聴覚・言語機能に障害がある方も利用できる
平成11年民法改正により、聴覚・言語機能に障害がある方も公正証書遺言が利用できるようになりました。
口述に代えて手話通訳や公証人との筆談により、読み聞かせに代えて手話通訳や遺言書の閲覧の方式によって、公正証書遺言を作成できます。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言を作成するまでの流れは、概ね以下のとおりです。
- 遺言書の案を作成する
- 公証人に遺言書案を開示して事前打ち合わせを行う
- 公正人が作成した公正証書案を確認・修正する
- 内容が固まったら公正証書を作成する日時を調整する
- 作成当日、遺言者と証人2名が公証役場へ出向く
- 公証人が遺言者の本人確認・口述・意思確認を行う
- 遺言者と証人2名が署名押印する
- 公証人が作成した証書である旨を付記して署名押印する
- 公正証書遺言の完成
弁護士に依頼すれば原案の作成や公証人とのやり取りも一任できる
ご自身で公正証書遺言を作成するのが不安な場合は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、遺言者の意向を反映させた遺言書案を作成してもらえます。
公証人とのやり取りや証人の手配も任せられ、作成当日も公証役場に同行してもらえます。
遺言書の効力
ここでは、遺言書の効力について解説します。
遺言により効力を生ずる事項は14つもある!
遺言により効力を生ずる旨を定めた事項を、法定遺言事項といいます。
法定遺言事項には、主に次の14つがあります。
- 認知
- 遺贈
- 未成年者の後見人指定・未成年後見監督人の指定
- 推定相続人の廃除・廃除の取消し
- 相続分の指定・指定の委託
- 遺産分割方法の指定・指定の委託
- 遺産分割の禁止
- 相続人相互間の担保責任の定め
- 遺言執行者の指定・指定の委託
- 祖先の祭祀主宰者の指定
- 持ち戻し免除の意思表示
- 信託の設定
- 保険金受取人の変更
- 一般財団法人の設立
法定遺言事項以外の事項は、遺言で意思表示をしても、法律上の効果はありません。
例えば、遺言によって借財をする、遺言によって抵当権を設定することは認められません。
ただし、遺言上の処分として法的な効果はもたないものの、付言として以下のような事項を遺言書に記載できます。
- 葬儀の執行や納骨の指示
- 遺言の動機や心情
- 財産処分の理由
- 相続人等に対する感謝の言葉
遺言書の効力が争われる3つのパターン
以下のような場合は、遺言書の効力が争われる可能性があります。
- 遺言者に遺言能力がない場合
- 遺言の形式的要件を欠く場合
- 遺言書の作成に第三者が関与していることが疑われる場合
遺言者に遺言能力がない場合
遺言能力がない状態で作成された遺言は、無効となります。
遺言能力とは、自分のする遺言の内容およびその結果生じる法的効果を理解・判断できる能力です。
遺言書が作成されたときに、遺言者に遺言能力が備わってなかったことが疑われると、相続開始後、法定相続人や受遺者など間で遺言書の有効性を巡って争いが生じるおそれがあります。
遺言の形式的要件を欠く場合
自筆証書遺言の場合、形式的要件を充たしていなければ、遺言書の効力は生じません。
自筆証書遺言が無効になるのは、次のようなケースです。
- 財産目録以外の本文もパソコンで作成されている
- 日付が書かれていない、あるいは日付が不明確である
- 署名や押印がない
遺言書の作成に第三者が関与していることが疑われる場合
遺言書の偽造や変造が疑われる場合や、遺言書が本人の自筆で書かれていても、第三者に無理矢理書かされたことが疑われる場合にも、遺言書の有効性を巡って争いが生じることがあります。
遺言書の無効を争う場合の対応方法
遺言書自体の有効性を争う場合は、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申立てます。
調停(話し合い)で解決できないことが明らかな場合には、調停を申立てず、地方裁判所(又は簡易裁判所)に遺言無効確認訴訟を提起することも可能です。
遺言が無効である旨の判決が出された場合は、当該遺言は無効となります。

法務局に遺言書を預ける遺言書保管制度とは?
ここでは、自筆証書遺言書保管制度について解説します。
自筆証書遺言を法務局に預けられる制度
自筆証書遺言保管制度とは、2020年7月10日に創設された制度であり、自筆証書遺言を法務局に預けると、以下の期間、遺言書を適正に保管してもらえる手続きです。
- 原本:遺言者死亡後50年間
- 画像データ:遺言者死亡後150年間
参考:自筆証書遺言書保管制度|法務省 (moj.go.jp)
遺言書保管制度を利用するメリット
遺言書保管制度を利用する主なメリットは、以下のとおりです。
- 紛失・破棄・改ざん・隠匿を防げる
- 保管申請時に外形的なチェックが受けられる
- 画像データとしても保管される
- 家庭裁判所の検認手続きが不要になる
紛失・破棄・改ざん・隠匿を防げる
遺言書保管制度を利用すれば、原本が法務局に保管されるため、遺言書を紛失するおそれがありません。
相続人や利害関係者に遺言書を破棄されたり、隠匿・改ざんされたりすることも防げます。
保管申請時に外形的なチェックが受けられる
遺言書の保管申請時には、遺言書保管官に、民法が定める自筆証書遺言の方式を充たしているかチェックしてもらえます。そのため、外形的な要件で無効となるリスクを低くできます。
画像データとしても保管される
遺言書保管制度では、画像データとしても長期間適正に保管・管理されるため、摩擦や汚損などで遺言書が読めなくなることもありません。
家庭裁判所の検認手続きが不要になる
自筆証書遺言の場合、原則として、相続開始後、速やかに家庭裁判所に検認を請求しなければなりません。しかし、遺言書保管制度を利用した場合は、この検認手続きが不要になります。
登記や各種手続きには、家庭裁判所の検認済み証書の代わりに、法務局が発行する遺言書情報証明書を利用できます。
保管申請の手続きの流れ
遺言書の保管申請の手続きの流れは、概ね以下のとおりです。
- 自筆証書遺言を作成する
- 保管申請をする遺言保管所を決める
- 遺言書の保管申請書を作成する
- 保管申請の日時を予約する
- 遺言書保管所に出向き、保管申請をする
- 保管証を受け取る
自筆証書遺言を作成する
民法で定められた方式に従って、自筆証書遺言を作成します。
保管申請時に保管管理官に、外形的なチェックを受けられますが、遺言の内容に関する相談や質問はできません。
自筆証書遺言の作成に不安がある方は、別途、弁護士に相談することをおすすめします。
保管申請をする遺言保管所を決める
次のいずれかの遺言書保管所の中から遺言書を預ける保管所を選びます。
- 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
ただし、追加で保管の申請をする場合、2通目以降は最初に預けた遺言書保管所にしか保管を申請できません。
遺言書の保管申請書を作成する
法務省のホームぺージ(以下参照)から、保管申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。
参考:保管申請書(自筆証書遺言書保管制度)|法務省 (moj.go.jp)
保管申請の日時を予約する
自筆証書遺言と保管申請書の準備が整ったら、希望する日時で保管申請の日時を予約します。
予約方法には、次の2通りがあります。
- 法務局手続き案内予約サービス専用ホームページで予約する
- 予約を取りたい遺言書保管所への電話又は窓口で予約する
遺言書保管所に出向き、保管申請をする
予約した日時に遺言書保管所に出向き、保管申請を行います。
保管申請には、以下の書類が必要です。
- 遺言書(ホチキス止め不要、封筒不要)
- 保管申請書
- 住民票の写し(3か月以内のもの、本籍地記載あり、マイナンバーや住民票コードの記載なし)
- (遺言書を外国語で作成した場合)遺言書の日本語による翻訳文
- 顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 手数料(遺言書1通につき3,900円分の収入印紙、法務局で購入可)
保管証を受け取る
保管申請手続きが終了すると、保管証が発行されるので受領して大切に保管します。
保管証は、再発行ができないので紛失しないよう注意しましょう。
参考:遺言書の保管申請手続き|法務省 (moj.go.jp)
遺言書作成にかかる費用
ここでは、遺言書作成にかかる費用について解説します。
自筆証書遺言の作成費用
自筆証書遺言の作成には、費用がかかりません。
ただし、弁護士などの専門家に作成支援を依頼する場合は、手数料として別途10~20万円程度の費用がかかります。
秘密証書遺言の作成費用
秘密証書遺言の作成には、公証役場に支払う手数料として1万1,000円が必要です。
ただし、弁護士などの専門家に作成支援を依頼する場合は、手数料として別途10~20万円程度の費用がかかります。
公正証書遺言の作成費用
公正証書遺言の作成には、公証役場に支払う手数料として数千円~数万円程度がかかります。
公正証書遺言の作成手数料は、遺言書に記載する財産の額によって以下のとおり異なります。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
遺言公正証書原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。
正本及び謄本の交付については、1枚につき250円の割合の手数料が必要です。
弁護士などの専門家に作成支援を依頼する場合は、手数料として別途10~20万円程度の費用と日当(公証役場への同行・1日あたり3~5万円)がかかります。
遺言書作成を弁護士に相談する3つのメリット
ここでは、遺言書作成を弁護士に相談する3つのメリットを紹介します。
形式不備で遺言書が無効となるおそれを回避できる
遺言書は自分でも作成できますが、形式面に不備があると、無効となる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、法的に不備のない遺言書案を作成してもらえるため、形式不備で遺言書が無効となるリスクを回避できます。
相続トラブルを未然に防げる
特定の相続人に生前贈与を行っている場合や、遺言で相続人以外の人に遺贈しようと考えている場合は、相続開始後、相続人や受遺者間で争いが生じる可能性があります。
特定の相続人になるべく多くの遺産をあげたいと考えて遺言を残しても、相続税が膨らみ、逆に相続人に負担をかけてしまうこともあります。
弁護士に相談・依頼すれば、このような相続トラブルを未然に防ぐために必要なアドバイスを受けられます。
公正証書遺言作成もサポートしてもらえる
公正証書遺言を作成する場合は、公証人との事前打ち合わせや証人の用意が必要です。
弁護士に依頼すれば、それらの手続きをすべて任せられます。
依頼した弁護士を遺言執行者に指定すれば、相続開始後スムーズな遺言執行を期待できます。


まとめ|遺言書作成時は弁護士のサポートを受けると安心
法的に有効な遺言書を作成し、ご自身の希望を実現させるためには、遺言書作成上のルールを正しく理解することが必要です。
この記事を読んで、遺言書の作成に少しでも不安を感じる方は、弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所では、リーズナブルな料金設定で遺言書の作成をサポートしております。
遺言書の作成をご検討中の方は、お気軽に当事務所までお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。