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相続における養子縁組の扱いは?相続人の範囲や相続トラブルの注意点

養子は、相続において実子と同じように相続人となり、遺産を受け取ることができます。

ただし、養子縁組の種類や人数によっては、法定相続分の取り扱いや相続税に影響が出るケースもあり、他の相続人との間でトラブルになることもあります。

この記事では、相続における養子の扱いについて、次の点を解説します。

  • 養子縁組の種類と相続における位置づけ
  • 相続順位・法定相続分における養子の扱い
  • 養子に関する相続税の注意点
  • トラブルにつながりやすい養子縁組の注意点

養子縁組の種類

相続では、誰の相続人になるのかを把握しておくことが重要です。

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があり、それぞれで成立する親子関係の範囲や、相続に関わる対象者が異なります。

ここでは、両者の違いと、それが相続に与える影響について整理します。

普通養子縁組

普通養子縁組は、実の親との親子関係を残したまま、養親との間にも新たな法律上の親子関係を築く制度です。

この制度により、養子は実親・養親のどちらに対しても法定相続人となるため、それぞれが亡くなった際には双方の遺産について相続権を持つことになります。

たとえば、実の父母と養父母の両方に財産がある場合、養子はそれぞれの相続に関わる可能性があります。

このように、親子関係が2つの家系にまたがる点が普通養子縁組の特徴です。

他の相続人との関係性にも影響する場合があるため、制度の仕組みを理解しておくことが重要です。

特別養子縁組

特別養子縁組は、実親との法的な親子関係を完全に終了し、養親とのみ親子関係を結ぶ制度です。

これは、実質的に養親の実子と同様の扱いを受ける制度であり、家庭裁判所の審判によって成立します。

通常、6歳未満の子どもを対象とし、実親による養育が困難な場合や、子どもの福祉の観点から特別養子縁組が必要とされる場合に利用されます。

相続の面では、養子は養親の相続人となる一方で、実親の相続権は一切持たなくなるのが大きな特徴です。

たとえば、特別養子縁組をした子どもが成人後に実の父母のどちらかが亡くなったとしても、法律上は親子関係が消滅しているため、相続権は認められません。

このように、特別養子縁組は親子関係を一方に限定する制度であるため、相続上の取り扱いも普通養子縁組とは大きく異なります。

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相続順位と法定相続分

相続においては、誰が相続人となるのか、どの程度の割合で遺産を受け取るのかといった基本的なルールを把握しておくことが重要です。

これらは民法で定められており、相続順位と法定相続分という2つの考え方に基づいて判断されます。

ここでは、相続制度の基本となる相続順位と法定相続分について整理しておきます。

相続順位

相続では、被相続人の死亡時点で、誰が相続人となるかが民法で定められています。

この相続順位は以下のとおりで、配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人は順位に応じて決まります。

相続順位 相続人の範囲 配偶者との関係
第1順位 子(実子・養子を含む)、代襲相続人(孫など) 配偶者と子が共同相続人になる
第2順位 直系尊属(父母・祖父母など) 子がいない場合に、配偶者と直系尊属が相続人に
第3順位 兄弟姉妹(および代襲相続人である甥・姪など) 子・直系尊属がいない場合に、配偶者と共同相続

このように、配偶者は常に相続人となり、その他の相続人は子→直系尊属→兄弟姉妹の順で優先されます。

たとえば、子どもがいる場合は親や兄弟姉妹には相続権がなく、代わりに子ども(または孫)が相続人になります。

普通養子・特別養子を問わず、養子は第一順位の子に含まれるため、養子も他の実子と同じく、優先的に相続権を持つことになります。

法定相続分

相続は民法によって、相続人ごとの法律上の取り分(=法定相続分)が定められています(民法第900条)。

これは遺産をどう分けるかを決める際の基本となるルールです。

法定相続分に従って必ず遺産を分けなければならないわけではありませんが、遺産分割協議で意見がまとまらない場合などには、この割合が基準として用いられます。

以下は、主な相続人の組み合わせごとの法定相続分です。

相続人の組み合わせ 配偶者の取り分 その他の相続人の取り分
配偶者と子(実子・養子) 1/2 子全体で1/2(人数で等分)
配偶者と直系尊属(父母・祖父母) 2/3 直系尊属全体で1/3(人数で等分)
配偶者と兄弟姉妹 3/4 兄弟姉妹全体で1/4(人数で等分)
配偶者のみ 全額
子のみ 全額 子全体で等分

配偶者と実子1人・養子1人がいる場合、配偶者が1/2、実子と養子がそれぞれ1/4ずつを相続する形になります。

相続における養子の扱い

養子縁組をした場合、養子は実子と同じように相続人となり、遺産の取り分についても差はありません。

加えて、養子の人数に制限はなく、相続人の数が増えることで分割の割合に影響を及ぼす可能性もあります。

ここでは、養子の法的な扱いや取り分、人数制限の有無について確認しておきましょう。

養子は実子と同様法定相続人になれる

法律上、養子は子として扱われるため、相続順位では実子と同様に第一順位の相続人となります。

これは民法第887条に定められており、養子であっても、実子と同じように被相続人(亡くなった人)の遺産を相続する権利があります。

(民法第887条:子及びその代襲者の相続権)
1 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、相続権を失ったとき、又は排除によって相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
3 前項の規定により相続人となるべき者が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

引用:民法第887条 – e-Gov

養子縁組の種類によって、相続できる範囲は以下のように異なります。

  • 普通養子縁組
    実親との親子関係を残したまま、養親との親子関係も成立
    相続権は 実親・養親の両方に対して発生
    それぞれの遺産を相続できる可能性がある
  • 特別養子縁組
    実親との法的な親子関係は終了
    相続権は 養親のみに対して発生
    実親の遺産は相続できない

つまり、養子縁組をしていれば、相続において不利になることは基本的にありません

この点は、他の相続人との関係性や遺産分割の場面でも重要になるため、相続の基本前提としてしっかり押さえておく必要があります。

養子の取り分も実子と変わらない

養子は法定相続人になれるだけでなく、遺産の取り分(法定相続分)についても実子と同じ扱いを受けます。

たとえば、実子1人・養子1人という場合、相続分はそれぞれ2分の1ずつとなるのが原則です。

養子だからといって相続分が減らされることはなく、実子と対等に相続を受けることができます。

遺言などの特別な指定がない限り、取り分の差は生じないという点を押さえておきましょう。

相続上養子は何人でも相続人になれる

相続手続きにおいて、養子が何人いても相続人になれる点は、法律上明確に認められています。

根拠となる民法の条文は以下の通りです。

民法第727条
養子は、実子と同じ身分を有する
→ 養子も実子と同等の扱いを受けると明記

民法第887条第1項
被相続人の子は、第一順位の相続人となる
→ 養子もこの子に該当し、第一順位の法定相続人になる

相続人の数には制限がないため、たとえ養子が10人以上いても、すべて相続人として認められます。

ただし、相続税の計算に含められる養子の人数には上限があります。

相続の手続き上の相続人の数と、相続税の法定相続人の数は分けて考える必要がある点に注意しましょう。

養子が相続する際の相続税の扱い

養子が相続人となる場合、相続税の計算にどのような影響があるのかは、実親や養親を持つ養子にとって重要なポイントです。

相続税の算出においては、養子に関して特別な制限が設けられています。

ここでは、養子が相続する際の相続税上の扱いや制限、そして注意点について整理します。

相続税には基礎控除額がある

相続税は、遺産を受け取る人すべてにかかるわけではありません。

遺産の総額が基礎控除額を超える場合にのみ、相続税の課税対象となります。

この基礎控除額は、次のような計算式で算出されます。

相続税の基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば、相続人が配偶者と子ども2人(合計3人)の場合、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3)=4,800万円となります。

この金額までの遺産には相続税がかかりません。

加えて、この法定相続人の数には、養子も条件を満たせば含まれるため、養子の有無によって控除額が変わることがあります。

基礎控除額の計算に含まれる養子には制限がある

養子は、相続税の基礎控除額を計算するうえで、法定相続人としてカウントできる場合があります。

ただし、含められる養子の人数には次のような上限が定められています相続税法第15条)。

  • 実子がいる場合:養子は1人まで
  • 実子がいない場合:養子は2人まで

たとえば、子どもが実子1人・養子2人というケースでは、基礎控除に含められるのは実子1人と養子1人までです。

これは、相続税対策として養子縁組が乱用されるのを防ぐためのルールです。

養子の人数によって控除額が変わる可能性があるため、注意しましょう。

相続税の計算上制限を受けないケース

相続税の計算上、基礎控除にカウントできる養子の数には上限がありますが、この制限を受けずにカウントできるケースもあります。

たとえば、以下のような場合です。

  • 養子が実子をすでに亡くしている親の孫であり、代襲相続人となる場合
  • 養子が特別養子として認められている場合
  • 養子が相続人となるべき子がいない場合の後継者として、法律上やむを得ないと判断されるケース
  • 配偶者の実子を養子とした連れ子養子の場合

これらはいずれも、実質的に相続人となることが当然と考えられる関係性として、制限の例外に該当します。

たとえば、自分の再婚相手の子(連れ子)を養子にした場合は、元々の家族構成上、相続人として自然に想定される立場です。

相続税の計算では、単なる養子の数ではなく、その背景や関係性が重要になります。

養子が孫だと相続税は二割加算される

相続税では、孫を養子とする孫養子は、例外的に相続税が2割加算される仕組みがあります相続税法第18条)。

これは、養子となった孫が財産を直接受け取ることで、課税の回数を減らせるという節税対策を防止するための法律です。

  • 本来の相続順序(親→子→孫)が崩れ、孫に直接相続が移ることで、子世代の相続税が免れるケースが発生する
  • このような「一代飛ばし」での節税を防ぐため、2割加算により課税の公平性を保つ制度的措置

ただし、この加算には以下のような例外もあります。

【代襲相続人である孫】
→ すでに相続人資格を代襲している孫は、加算の対象外になります

【代襲でなく単に養子にされた孫(いわゆる孫養子)】
→ この場合は加算対象となります

相続税の加算対象になるかどうかは、家族関係や養子縁組の事情によって異なるため、注意が必要です。

相続トラブルになる養子縁組の注意点

養子縁組は、親子関係を法律上明確にする制度であり、相続の場面でも重要な意味を持ちます。

しかし、節税対策としての養子縁組や、十分な理解がないままの縁組は、他の相続人の不信感を招いたり、後々の法的な争いの火種になったりするおそれがあります。

ここでは、相続に関連して注意すべき養子縁組のポイントについて整理します。

節税目的の養子縁組は認められない

養子縁組には、相続税の節税効果を期待できる側面があります。

法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額も増える仕組みのため、課税対象となる遺産の額を抑えることができるからです。

しかし、節税のためだけを目的とした養子縁組は、制度の本来の趣旨に反するものとして、税務署から否認される可能性があります

同居や扶養などの実態がなく、単に書面上だけで養子縁組が行われた場合、形式的な縁組と判断されることがあります。

この場合、相続税の基礎控除の拡大が認められず、追徴課税を受けるおそれもあります。

加えて、他の相続人から不自然な縁組とみなされ、相続トラブルに発展することも少なくありません。

節税目的が背景にある場合でも、親族間の信頼関係や相続後の対応を含め、慎重に判断することが重要です。

養子縁組をすると扶助義務などが発生する

養子縁組をすると、法律上の親子関係が成立します。

これにより、相続権を得るだけでなく、扶助義務(ふじょぎむ)と呼ばれる生活支援の義務も発生します。

扶助義務とは、家族が経済的に困窮したときに、一定の生活支援を行う法的な義務です。

たとえば、養親が高齢で収入がなくなった場合、養子には経済的な援助をする責任が生じることがあります。

養子縁組は遺産をもらう権利だけでなく、生活を支える義務も含むということです。

加えて、養子が未成年であれば、養親がその扶養責任を負うことにもなります。

相続税対策として一時的に養子にするなど、短期的な目的で養子縁組を行うと、こうした扶養義務が後々問題になることもあります。

養子縁組は、相続の手続きではなく、親子関係に関する重要な法的契約であることを理解しておくことが大切です。

一度養子にすると離縁の手続きが必要

養子縁組は、一度成立すると自動的に解消されることはなく、解消するには正式な離縁の手続きが必要です。

離縁には以下の2種類があります。

  • 協議離縁:当事者の合意によるもの(市区町村への届け出)
  • 裁判離縁:合意できない場合に、家庭裁判所で判断を仰ぐ方法

注意が必要なのは、相続人を増やすために自分の子どもの配偶者や、再婚相手の連れ子と養子縁組をしたケースです。

その後、子ども夫婦が離婚したり、自分が再婚相手と離婚したとしても、養子縁組だけが残ることになります。

この場合も離縁の手続きをしなければ、親子関係が続き、相続権や扶助義務といった法的な関係も残ったままとなります。

養子縁組は一時的な節税対策や形式的な関係では済まず、将来的なリスクも踏まえた慎重な判断が求められます。

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まとめ

養子は法律上、実子と同様に相続人となり、相続分にも差はありません。

ただし、養子の人数や立場によっては、相続税の計算上で制限や加算が生じるケースもあるため、注意が必要です。

加えて、節税対策としての養子縁組にはリスクもあり、扶助義務の発生や離縁の手続きの必要性など、法的な影響を十分に理解したうえで行うことが重要です。

相続や養子縁組に関して不安がある場合は、相続に詳しい弁護士に相談し、適切な対応をとることが望ましいでしょう。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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