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遺言書の効力とは|効力が争われるケースや無効を争う方法も解説

遺言書の効力とは?法的効力を持つ14事項を解説
家族のために遺言書を作成したいと考えているため、遺言書にはどんな効力があるのか知りたい方は多いと思います。
この記事では、遺言書が持つ14個の法的な効力と、遺言書が無効にならないための注意点について解説します。

目次

遺言書が法的効力を持つ14の遺言事項とは?

遺言書の効力が法的に認められるのは、民法などで定められた法定遺言事項です。これらは、財産に関すること・身分や家族に関すること・遺言の執行に関することの3つに分類できます。

財産に関すること|①遺贈

遺贈とは、遺言書によって遺産の全部または一部を、相続人や相続人ではない第三者に対して無償で贈与することです。遺言者の財産を対象とするため、公序良俗に反しない限りどのように処分するかは自由です。遺贈は、特定の財産を指定する特定遺贈と遺産の割合で指定する包括遺贈に分けられます。

財産に関すること|②相続分の指定・指定の委託

遺言書で、共同相続人の全部または一部について、法定相続分と異なる割合で相続分を定め、その指定を第三者に委託できます。遺言書で指定すれば、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が定まります。ただし、相続分が指定されただけでは、個々の財産が誰に帰属するか確定しません。そのため共同相続人は指定された相続分に基づいて、改めて遺産分割を行わなければいけません。

財産に関すること|③遺産分割方法の指定・指定の委託

遺言書によって、具体的な遺産分割の方法を指定でき、第三者への委託も可能です。特定の財産(例えば「長男に自宅の土地建物を相続させる」など)の帰属を明確に定められます。ただし、遺言により分割方法が指定されていても相続人全員が遺言執行者の同意を得た上で合意した場合、遺言書の内容と異なる遺産分割ができます

財産に関すること|④遺産分割の禁止

遺言書により、相続発生日から最長5年間遺産分割を禁止できます。相続人の中に未成年者がいる場合や相続紛争が予想される場合、一定期間遺産の現状維持を図るために検討される効力です。禁止期間中に遺産分割が行われた場合、原則として無効となります。

財産に関すること|⑤持ち戻し免除の意思表示

遺言書で、持ち戻し免除の意思表示ができます。特別受益(生前の遺贈や贈与)を受けた相続人がいる場合、相続人間の公平を図るため、その利益分を遺産分割時の相続財産に組み入れて精算する特別受益の持ち戻しが行われます。遺言者は、この持ち戻しを免除する旨の意思表示を遺言により行えます。

財産に関すること|⑥相続人相互間の担保責任の定め

遺言書で、共同相続人が取得した財産に瑕疵(欠陥)があった場合に、他の相続人との間で損失をどう補い合うか(担保責任)について定められます。

財産に関すること|⑦信託の設定

遺言書で、特定の財産を信頼できる個人や法人(受託者)に託し、特定の目的に従って管理・運用させる信託を設定できます。

財産に関すること|⑧一般財団法人の設立

遺言書によって一般財団法人を設立し、財産をその法人の基本財産に拠出できます。

財産に関すること|⑨保険金受取人の変更

生命保険の受取人変更は遺言で行うことができます。
遺言の効力発生後、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が保険会社へ所定の届出を行います。
遺言執行者がいない場合は、相続人が届出を行うのが一般的です。

身分・家族関係に関すること|⑩認知

遺言書で、婚姻関係にない女性との間に生まれた子(非嫡出子)を自分の子であると認知ができます。遺言による認知は、遺言者の死亡と同時に効力が発生し、法的な親子関係が生じます。

身分・家族関係に関すること|⑪推定相続人の廃除・取消し

遺留分を持つ推定相続人(子、直系尊属、配偶者)に虐待や重大な非行があった場合、その人から相続権を奪う廃除を、遺言によって請求できます。以前行った廃除を取り消す意思表示も可能です。ただし、遺言で相続人の排除を行う場合は必ず遺言執行者を選任しなければいけません。遺言執行者が家庭裁判所に請求し、審判により効力が生じます。

身分・家族関係に関すること|⑫未成年後見人・未成年後見監督人の指定

遺言者自身が未成年者の親権者である場合、遺言書で未成年者の後見人や、後見人を監督する人を指定できます。

身分・家族関係に関すること|⑬祖先の祭祀主宰者の指定

遺言書で、お墓や仏壇、系譜などの祭祀財産を管理し、祭祀を主宰する人(祭祀主宰者)を指定できます。

遺言の執行に関すること|⑭遺言執行者の指定・委託

遺言書で、遺言の内容を実現するために必要な手続き(不動産の登記、預貯金の解約、認知の届出など)を行う人(遺言執行者)を指定したり、その指定を第三者に委託したりできます。

遺言書が無効になる3つのケースは?

せっかく遺言書を作成しても、効力が認められなければ意味がありません。遺言書の効力が争われたり無効となったりするケースは、主に以下の3つです。

遺言者に意思能力(遺言能力)がない場合

遺言書を作成した時点で、遺言者に遺言能力がなければ、その遺言書は無効です。
遺言能力とは、遺言の内容や、それによって生じる法律効果(誰にどの財産が移るか)を正しく理解し、判断できる能力です。認知症の進行によってこの能力が失われていると判断され、遺言書の効力が争われる事例が多いです。遺言能力は『作成時点』の判断能力で個別に判断され、年齢や診断名のみで一律に否定されるものではありません。裁判所が遺言能力を判断する主な要素は以下のとおりです。

  • 病状の程度
    医師の診断書や医療記録から、認知症などの精神上の障害の有無、内容、病状の程度を判断します。中度から高度のアルツハイマー型認知症と判断され、遺言書が無効とされた判例もあります。遺言書を作成した前後に言動や行動に異常がなかったかも判断材料となります。
  • 遺言の内容
    遺言書の内容が、家族間のトラブルを避けるためや特定の人物への感謝といった合理的な理由に基づいて作成されたか、遺言者と受遺者の関係性で遺贈の動機に合理性があるかどうかが判断要素となります。

法律で定められた形式的要件を満たしていない場合

遺言書は、法律で厳格に作成方式が定められており、この要件を一つでも満たさないと効力は認められません。主に自筆証書遺言で、以下の理由により無効となるケースがあります。

  • 本人の自筆で作成されていない(ただし、財産目録は各頁に署名押印があれば自筆でなくても有効)
  • 日付の記載がない、または作成日が特定できない
  • 署名や押印がない
  • 夫婦など2名以上が同一の用紙に遺言を遺している

遺言書の偽造・詐欺・脅迫が疑われる場合

遺言書の全文が第三者によって偽造された場合や一部が書き換えられた場合は、自書の要件を満たさないため無効です。筆跡鑑定などによって、遺言書が本当に遺言者本人の筆跡であるかどうかが争われることもあります。
遺言者本人が書いたものであっても、第三者による詐欺や脅迫によって、本人の意思に基づかずに書かされた遺言書も無効です。

複数の遺言書が見つかった場合はどうなる?

遺言書が2通以上見つかった場合、民法では、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなすと定めています。

作成日が新しい遺言が優先される

遺言書の内容が矛盾する(抵触する)場合、作成日の新しい遺言書の内容が優先されます。これは、遺言者の最後の意思を尊重するという趣旨に基づいています。

抵触しない部分は前の遺言も有効となる

内容が抵触しない部分については、前の遺言書も効力を持ち続けます。例えば、先の遺言書でA不動産を長男にと指定し、後の遺言書でB預金を長女にと指定した場合、両方の効力が有効です。

方式による優劣はない

公正証書遺言書と自筆証書遺言書のように方式が異なる遺言書が抵触した場合でも、公正証書遺言だから優先されるということはありません。あくまで作成日の新しい遺言書が優先されます。ただし、後の遺言書に日付の記載がない、または作成時に遺言能力を喪失していたなど、そもそも後の遺言書自体が無効である場合は、前の遺言書の効力がそのまま有効となります。

遺言書の効力に争いがある場合の対応策は?

相続人の間で遺言書の効力について「無効ではないか」と争いが生じた場合、以下の手続きで法的な判断を求められます。

遺言無効確認調停を申し立てる

裁判で遺言の無効を主張する前に、まずは家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てて、話し合いの場を持ちます。
調停では、裁判官や調停委員を交えて、遺言書作成時の状況や遺言者の意思能力の有無などについて、当事者間で協議を進めます。話し合いで全員の合意が得られれば、その調停調書の内容をもって遺言書の効力について決着がつきます。

遺言無効確認訴訟を提起する

調停で合意に至らなかった場合は、地方裁判所(または簡易裁判所)に遺言無効確認訴訟を提起し、裁判所の判決を求めます。
裁判で、遺言無効の判決が確定した場合、その遺言書は最初からなかったものとして扱われます。その後に、相続人全員で改めて遺産分割協議を行うか、遺産分割調停や審判に進みます。

まとめ

遺言書は、あなたの財産をめぐる争いを未然に防ぎ、大切な人を守るための最終意思です。その遺言書の効力が法的に認められ、あなたの願いが実現されるためには、法定遺言事項の範囲内であることと、厳格な形式要件を満たしていることが不可欠です。高齢になってからの遺言書作成は、遺言能力の有無を巡って争いになりやすいため、できるだけ早い時期から準備を進めましょう。
遺言書の作成を検討中の方や、すでに見つかった遺言書の効力について少しでも疑問や不安を感じたら弁護士にご相談ください。専門家にご相談いただくことで、遺言書の効力を確実にし、後のトラブルを防ぐための最適なサポートを受けられます。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に実績のある弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、遺言書に関するお悩みを抱えていらっしゃる方は、一度ご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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