遺産分割とは?不公平な遺産分割を避けるための知識を解説

相続が発生したときに気になることのひとつが、「自分はどのくらい遺産をもらえるのだろう?」ということだと思います。
遺産を相続できる割合は、相続人の数だけパターンがあるといっても過言ではありません。
このコラムでは、遺産分割と相続割合の基本的な考え方についてご説明します。
目次
遺産分割とは
被相続人の相続人が一人しかいない場合、原則としてその相続人が全ての遺産を単独で取得します。
しかし、相続人が何人もいる場合はそのかぎりではありません。
相続が発生すると、すべての遺産はいったん共同相続する形となります。つまり、遺産は共同相続人が共同で所有(共有)することになるのです。
遺産を共有している状態では、各共同相続人の都合で使用・処分することはできません。使用・処分の都度、ほかの相続人の同意が必要になり、不便です。
この共有状態を解消して、遺産を相続人がそれぞれ自分の名義で所有できるようにするために分割する手続きを遺産分割といいます。
遺産分割手続きが完了すると、各相続人は自分名義の遺産を自由に使用・処分できます。
遺産を相続するときの分け方
次に、遺産の分け方についてご説明します。
遺言書がある場合の分け方
自身の死後、相続人同士で争いにならないよう、生前に遺言書を作成している人も多くいます。
遺言書には「▲▲銀行の預金◦◦万円は誰々に相続させる」というように、被相続人の生前の意思が記載されています。
相続が発生したら、まず遺言書があるかどうかを確認してください。
遺言書の内容が民法の定める様式や内容に沿ったものであれば、遺言書の内容は法的に保護されます。遺言書があればその内容に従って遺産分割するのが基本です。
遺言書の破棄・書き換え・偽造に対しては、法的なペナルティが課されます。
なお、遺言書はいくつかの書式があります。
もし、自宅などで保管している自筆証書遺言であった場合、家庭裁判所で遺言の内容が有効なものかどうか確認する検認の手続きが必要になります。
遺言書がない場合の分け方
遺言書が無い場合、あるいは遺言書が無効とされた場合は、法定相続人の間で遺産分割協議を行い、合意したうえで遺産を分けることになります。
なお、遺言書があったとしても、遺言執行者(遺言書でその内容の実現を任された人)の合意があれば、遺産分割協議で合意した内容で遺産を分けることができます。
また、被相続人が遺言書で遺産分割協議を禁止していた場合でも、相続が発生したあと5年が経過すれば、遺分割協議をすることができます。
法定相続人で分ける
法定相続人とは、民法上相続人になれる被相続人の親族のことです。
法定相続人は、被相続人と血縁関係がある血族です。そして、優先順位は以下のように決められています。
- 常に相続人…配偶者
- 第1順位…子ども(養子や胎児を含む)、孫(代襲相続の場合)
- 第2順位…両親、祖父母(相続発生時に両親が死亡している場合)
- 第3順位…兄弟姉妹、甥姪(代襲相続の場合)
代襲相続人とは
代襲相続とは、被相続人の子どもや兄弟姉妹が相続開始前に死亡・相続廃除・欠格に該当した場合に、その子ども(被相続人の孫や甥姪)が親(被相続人の子どもや兄弟姉妹)の相続順位で遺産を相続することです。
ただし、配偶者や直系尊属には代襲相続が認められていません。
また、相続人が相続放棄した場合は代襲相続が認められません。
相続人になれない人
被相続人と義理の親、義理の兄弟姉妹、愛人関係にある人は法定相続人に該当しません。
また、以下のような人はたとえ被相続人の親族であっても、相続人になれません。
- 相続を放棄した人…家庭裁判所を通じて相続放棄した人は、最初から相続人ではないものとされます。
- 相続欠格者…被相続人を故意に死亡させたり、遺言書の変造を行うなどをしたりした相続人は、欠格者として相続人の地位を失います。
- 廃除された相続人…被相続人に虐待や重大な侮辱、あるいは犯罪などの著しい非行があることから、被相続人の申し立てにより家庭裁判所から廃除が認められた相続人のことです。
遺産分割協議で分ける
遺産分割協議とは、遺産を誰が・何を・どのくらい相続するのか、法定相続人同士で話し合って決めることをいいます。
遺産分割協議がまとまったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書の作成は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、遺産分割協議書を作成すると以下のようなメリットがあります。
- 相続人の間で合意した・していないのような水掛け論を防ぐ効果がある
- 複数人いる相続人の中から特定の相続人が不動産を相続する場合など、不動産の相続登記で必要になる場合もある
なお、ひとりでも相続人を欠いた状態で成立した遺産分割協議は無効になります。
また、遺産分割協議がまとまったあとで新たな遺産が見つかった場合は、遺産分割協議の一部または全部についてやり直さなければならなくなることがあります。
このため、遺産分割協議を行う前は、相続人や遺産について十分な調査が必要です。後から余計な手間を取らないようにするためにも、弁護士に調査を依頼することがおすすめです。
遺留分に注意しよう
遺留分とは?
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が最低限取得できる遺産の割合のことです。
遺留分の対象になる遺産は?
相続発生時の遺産すべてが遺留分の対象になります。
もし遺産に借金がある場合、それを預貯金や不動産などの財産から差し引いた分が遺留分の対象となります
ただし、被相続人が契約者かつ被保険者で、受取人をほかの相続人としている生命保険の死亡保険金は、受取人の固有財産とされるため遺留分の対象にはなりません。
遺留分は代襲相続される
遺留分制度は、法定相続人の制度を前提としています。したがって、相続放棄・欠格・廃除
によって相続する権利を失った相続人には、遺留分は認められません。
この場合、代襲相続人や後順位の相続人が遺留分の権利を持つことになります。
侵害された相続人は遺留分の返還を請求できる
遺留分を侵害された相続人には、遺留分侵害額請求権があります。遺留分の権利を侵害し多めの遺産を相続したほかの相続人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
遺産を分割・相続できる割合
法定相続割合とは?
民法は、遺言書で相続割合が指定されていない場合に相続割合の目安として法定相続割合を定めています。
詳細や計算方法は後述しますが、法定相続割合は相続人の状況によって変わります。
遺留分の割合とは?
遺留分権利者とその割合について、民法では以下のように定めています。
- 兄弟姉妹には遺留分はなし
- 直系尊属(両親や祖父母)が相続人の場合は遺産の3分の1
- それ以外の場合は2分の1
遺産を分割・相続するときの計算方法
以下では、民法に定められた法定相続割合について、いくつかのパターンに分けてご説明します。
配偶者と子どもが相続人の場合
2分の1ずつとなります。子どもが複数人いる場合、配偶者が2分の1を取得し、2分の1を子どもの間で均等に分けます。もし被相続人の子どもに非嫡出子(婚姻外で生まれた子ども)がいた場合でも、嫡出子と非嫡出子は同じ相続割合です。
配偶者と被相続人の直系尊属が相続人の場合
配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1になります。直系尊属が父母の2名いる場合、3分の1を均等に分けます。被相続人の父母がすでに他界している場合は祖父母が相続人になりますが、この場合も父方・母方の区別はなく3分の1を均等に分けます。
配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1になります。複数の兄弟姉妹間では4分の1を均等に分けます。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の両方を同じくする相続分の半分になります。
たとえば、両親と子ども2人の4人家族で、父親が1億円の遺産を残し亡くなったとします。
法定相続割合で分けた場合、配偶者である母親は5000万円・2人の子どもは2500万円ずつ相続することになります。
一方で遺留分は各相続人あたり2分の1ずつとなりますので、母親が2500万円・2人の子どもがそれぞれ1250万円ずつとなります。
まとめ
相続割合は、ほかの相続人との間でそれを巡りトラブルになりやすいものです。
相続割合を巡ってトラブルになってしまったときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。