遺産分割調停中にやっていけないことは何か?【弁護士が解説】

遺産分割は、相続人同士の不満がぶつかりやすく、なかなかまとまりにくいものです。
では、遺産分割が調停で行われる場合、どのようなことに気をつけるべきでしょうか。
今回は、遺産分割調停中にやってはいけないことについて解説します。
目次
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、遺産の分け方について相続人同士で合意ができない場合に、家庭裁判所に申立てをすることによって行われる手続です。
主に男女各1名ずつの調停委員が各相続人の主張を聴き取ったり、解決策を助言したりして、遺産分割に関する合意の成立を目指します。
遺産分割調停の流れ
遺産分割は、以下の流れで行われます。
遺産分割調停の申立て
1人以上の相続人が他の相続人らを相手取って、家庭裁判所の遺産分割調停を申立てます。
調停期日の指定
申立てが受理されてから1~2か月の間に第1回の調停が設定され、全ての相続人に通知されます。調停は平日の日中に実施されます。
調停期日
調停期日には、指定された時間までに家庭裁判所に出頭します。
多くの場合は、申立人、相手方と別れて調停室に入り、調停委員に自分の主張を話したり、相手方の主張を教えてもらったり、解決のための助言を受けたりします。
調停期日は、ほとんどの場合1回では終わらず、調停成立あるいは不成立の目途が立つまで複数回実施されます。
調停成立または不成立
調停期日における話し合いにより、遺産分割に関する合意が相続人間でできれば調停が成立します。
成立した調停は確定判決と同じ効力をもちます。そのため、調停が成立し、例えば、相手方から申立人に対して一定の金銭を支払うことになったにもかかわらず、これを怠った場合には、預貯金や所有不動産などが差し押さえられる可能性があります。
調停手続の中で遺産分割に関する合意が調わない場合、調停は不成立で終了し、自動的に審判手続に移行します。
遺産分割調停でやってはいけないこと
遺産分割調停においてやってはいけないことは、主に以下の4つです。
無断欠席や遅刻
無断欠席や遅刻を一度しただけで不利な結果になることはありませんが、これを繰り返すと、自分の意向が考慮されず不利な結果になるリスクが高まります。
感情的な主張や言動
相続人同士の人間関係が良好でないことも少なくないため、遺産分割調停では、不満が爆発してしまいがちです。
相手方に不満をぶつけて罵倒する言動や感情的な主張を繰り返すと、調停の成立が難しいと調停委員に判断されて調停が不成立になる可能性が高まります。
感情的な言動は控えましょう。
他の相続人の主張に耳を貸さない
調停を成立させるためにはお互いに譲り合うことが必要です。
そのため、自分の主張を押し通すのではなく、他の相続人の主張にも耳を傾ける必要があります。
他の相続人の主張に耳を貸さない態度をとり続けると、調停委員に調停成立が難しいと判断され、調停が不成立になる可能性が高まります。
嘘をつく
自分に有利な結果を導くために嘘をつくことは、絶対にしてはいけません。
嘘をついても他の話との整合性がとれなかったり、証拠と適合しなかったりすることなどから他の相続人や調停委員にバレてしまいます。
当然のことながら、他の相続人や調停委員からの信頼を失います。
そうすると、調停が不成立となったり、自分に不利益な結果が招かれたりするリスクが高くなります。
欠席せざるを得ない場合の対応
調停が行われる裁判所が遠方である、日中は仕事をしているなどの理由により、調停への出席が難しい場合も少なくありません。
そのような場合の対応方法について、以下で解説します。
裁判所に期日変更を申立てる
指定された期日がどうしても都合が悪いものの、他の日程であれば平日の日中に出席できる、日程の調整が可能な場合には、裁判所に期日変更を申立てられます。
期日変更の申立てをしても、これを変更するかどうかは裁判官の裁量であるため、必ずしも変更が認められるわけではありません。
特に遺産分割調停は当事者の人数が多くなる場合があるため、ひとりの相続人の都合のみでは期日の変更をしないこともあります。
しかし、変更を申し立てておけば、少なくとも無断欠席とは評価されません。
電話会議やテレビ会議での参加を上申する
裁判所から遠方に居住しているため現地での出席が難しい場合には、法律で認められている電話会議、テレビ会議での参加の申し出が可能です。
最近は、電話会議やテレビ会議での調停実施が拡大しているので、申し出が認められないことは滅多にありません。
電話会議やテレビ会議には、最寄りの家庭裁判所に出向いて、裁判所のシステムを利用して参加することとなります。自宅からは参加できません。
弁護士に依頼して代わりに出席してもらう
遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、代理人として代わりに出席してもらえます。
調停での話し合いの内容や次回期日までにすべきことなどは、弁護士から報告してもらえるので、次回期日にどのような主張をするかも検討できます。
なお、司法書士には遺産分割の代理権は認められておらず、代理人として出席できるのは弁護士に限られます。
遺産分割を有利に進めるためのポイント
遺産分割を有利に進めるためのポイントを、以下で解説します。
主張の事前準備
自分が調停でどのような主張をしようと考えているのかを、調停の前に整理しましょう。
理路整然とした主張は、調停委員にも受け入れてもらいやすく、調停を有利に進めやすくなります。
証拠の整理
調停は話し合いの席ではありますが、やはり自身の主張に説得力を持たせるためにはこれを裏付ける証拠が必要となります。
ただし、証拠を大量に、あるいは五月雨式に提出しても、どの主張と関連するものなのか明らかでなければ意味がありません。
自分の主張に必要な証拠を整理して提出することが必要です。
他の相続人の主張に耳を傾ける
先ほど他の相続人の主張に耳を貸さずに自身の主張を押し通そうとすると、調停不成立になる可能性が高くなると述べました。
調停は話し合いにより遺産分割の問題を解決する場であるため、お互いに相手の意見を聞いて、可能な範囲で譲り合うことも必要です。
他の相続人の主張に耳を傾ける姿勢を示すことは、調停委員に対して、話し合いの余地がある人だという印象を与えることとなり、自身の主張も組み入れてもらいやすくなります。
遺産分割に巻き込まれたくない時の選択肢~相続放棄
相続人らと関わりあいたくない、遺産分割が煩雑で参加したくないなどの事情がある場合には、相続放棄をする方法もあります。
相続放棄は、相続が開始されたことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申立てをして行うものです。申立てが受理されれば、相続開始時に遡って相続人ではなかったことになるので、遺産分割手続に参加する必要はなくなります。
ただし、相続放棄をすると、一切の遺産を受け取れなくなるので、慎重に検討しましょう。
さいごに
遺産分割調停は、相続人同士の日ごろの不満が爆発しやすい場であるため、関わり合いになりたくないと無断で欠席をしたり、感情的になって自分の主張を一方的に繰り返したりする人も少なくありません。
しかし、相続により財産を得ることは相続人の権利であることから、誠実に向き合うことが必要です。感情的になったからといって良い結果が得られるわけでもありません。
相続人の顔を見たくない、煩雑な手続に参加したくない方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、どのような主張が合理的であるかアドバイスができ、主張を裏付ける証拠の整理をして、代理人として調停に出席できます。依頼者の方の煩わしさを軽減できます。
ネクスパート法律事務所は遺産分割に精通した弁護士が揃っております。遺産分割でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。