【手続別】遺産分割の必要書類一覧|協議・調停・審判の必要書類

複数の相続人がいて、遺産の全部について有効な遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決めなければなりません。
相続人間で話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停や審判で解決する方法があります。
これらの遺産分割の手続きには、どのような書類が必要なのでしょうか。
この記事では、遺産分割に必要な書類を、協議・調停・審判の手続き別に解説します。
遺産分割前後の各種相続手続きに必要な書類も紹介しておりますので、ぜひご参考になさってください。
遺産分割協議に必要な書類
ここでは、遺産分割協議に必要な書類を解説します。
遺産分割協議に必要な書類は、以下のとおりです。
- 遺言書がある場合は遺言書と検認済証書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票または戸籍の附票
- 相続放棄した人がいる場合は相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書
- 相続財産に関する資料
- 相続財産目録
- 特別受益や寄与分を証明する書類
- 印鑑登録証明書
ひとつずつ説明します。
遺言書がある場合は遺言書と検認済証書
遺産分割協議を行う前に、遺言書の有無を確認します。
自筆証書遺言や秘密証書遺言がある場合は、家庭裁判所に検認の申立てを行い、相続人全員で内容を確認します。公正証書遺言の場合も、その内容を相続人全員で確認しましょう。
遺産の全部について有効な遺言書が残されている場合は、原則として遺言の内容に沿って遺産を分けるため、遺産分割協議を行う必要がありません。
遺言書に記載のない財産がある場合や、相続分のみが指定されている場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割協議を成立させることも可能です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
相続人を確定するために、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍・除籍・改製原戸籍謄本を取得します。戸籍の記載事項を確認し、誰が相続人になるか、養子縁組や認知等により親族が把握していない相続人がいないか等を詳しく調べます。
被相続人の住民票除票または戸籍の附票
遺産分割協議書に、被相続人の最後の住所地を記載する必要があるため、被相続人の住民票(除票)を取り寄せます。
被相続人の本籍地がわからない場合は、本籍地の記載のある住民票を取得すれば確認できます。
相続開始から一定期間が経過して住民票が消除されている場合は、戸籍の附票を取得します。
相続人の戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本を取得します。本来相続人となる子や兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっている場合は、亡くなった子や兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本も必要です。
相続人の住民票または戸籍の附票
相続人の範囲が判明したら、その所在を確認するため、相続人の住民票を取得します。
住所地が分からない場合は、戸籍の附票を取り寄せることで確認できます。
相続放棄した人がいる場合は相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書
相続人の中に、相続放棄した人がいる場合は、家庭裁判所が発行する相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書の写しをもらいましょう。
相続放棄をした人は、その相続に関して初めから相続人ではなかったことになるため、遺産分割協議に参加できません。

相続財産に関する資料
遺産分割協議を行うにあたり、遺産の範囲を確認するために、相続財産調査を行います。被相続人が相続開始時に有していた財産の内容や評価額が分かる資料を収集します。
具体例は、以下のとおりです。
- 不動産:登記事項証明書・固定資産納税通知書、固定資産評価証明書等
- 預貯金:通帳または預金残高証明書・取引明細表等
- 債権:契約書等
- 有価証券:取引残高報告書・残高証明書等
- 債務:借用書、債権者からの請求書等

相続財産目録
相続財産の範囲を把握できたら、相続財産目録を作成します。相続財産目録の作成は必須ではありませんが、作成しておくと以下のようなメリットがあります。
- 相続人全員が相続財産の全容を一目で把握できるため円滑に協議を進められる
- 遺産分割協議書の作成時に使用できる
- 相続税申告の際にも利用できる
特別受益や寄与分を証明する書類
特別受益の主張
相続人の一部が被相続人から生前贈与や遺贈(特別受益)を受けている人がいる場合は、特別受益分を相続財産に加算し(持ち戻し)て、具体的相続分を算定・調整できることがあります。
特別受益を相続財産に持ち戻すためには、特別受益を受けていない相続人が主張しなければなりません。主張の裏付けとなる特別受益の時期と金額等を明らかにする証拠も必要です。
寄与分の主張
相続人の中に被相続人を介護や看護をしたり、無償で家業を手伝ったりして、被相続人の財産の維持と増加に貢献(寄与)した人がいる場合は、寄与分を主張できます。
寄与分の主張が認められれば、本来の相続分より多く遺産を取得できます。
寄与分の主張は、寄与をした相続人が行わなければならず、証拠書類として以下の事項を明らかする資料を準備する必要があります。
- 寄与行為があったこと
- 寄与行為が特別の寄与と評価できること
- 寄与行為により被相続人の財産の維持または増加があったこと
印鑑登録証明書
遺産分割協議書には、相続人全員の署名・押印が必要です。押印は実印ではなく認印でも有効ですが、以下の手続きでは、相続人全員が実印で押印した遺産分割協議書の提出が求められます。
- 相続税申告
- 不動産の相続登記
- 金融機関の相続手続き(名義変更、預貯金の払い戻し等)
そのため、遺産分割協議書の押印は実印で行い、相続人全員の印鑑証明書を添付するのが一般的です。

遺産分割調停の申立てに必要な書類
ここでは、遺産分割調停の申立てに必要な書類について解説します。

遺産分割調停の申立てに必要な書類は、以下のとおりです。
- 遺産分割調停申立書・当事者目録・遺産目録
- 相続関係を明らかにする書類
- 遺産の内容を明らかにする書類
- その他
ひとつずつ説明します。
遺産分割調停申立書・当事者目録・遺産目録
遺産分割調停の申立ては、口頭でも可能ですが、実務上は書面によって申立てます。
申立書・当事者目録・遺産目録は、各地の家庭裁判所窓口または裁判所ウェブサイトから申立書の用紙を入手して、必要事項を記入します。
相続関係を明らかにする書類
遺産分割調停の申立てでは、相続関係(身分関係)を明らかにするため、以下の書類を提出します。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(3か月以内の原本)
- 被相続人の住民票除票(廃棄済の場合は戸籍の附票)
- 相続人全員の住民票(3か月以内の原本)
- 相続関係図
相続関係図(被相続人と共同相続人との相続関係が一目で分かるようにした図)は、申立人または代理人が作成します。分かりやすく正確に記載されていれば、手書きでも、どのような形式でも構いません。
遺産の内容を明らかにする書類
分割を求める遺産の内容や評価額(残高、査定額等)を明らかにする資料を提出します。
提出書類の具体例は、以下のとおりです。
- 不動産:登記簿謄本または登記事項証明書、固定資産評価証明書(3か月以内のもの)
- 預貯金:通帳・証書または残高証明書の写し
- 有価証券等:預かり証、残高証明書等
- 自動車:登記事項証明書または車検証の写し
その他
その他、必要に応じて以下の書類を提出します。
- 遺言書の写し
- 相続税申告書の写し
- 委任状
ひとつずつ説明します。
遺言書の写し
遺言書がある場合は、遺言書の写しを提出します。自筆証書遺言や秘密証書遺言がある場合は、遺産分割調停の申立てに先立ち、家庭裁判所の検認手続きを経て、検認済み証書も併せて提出します。
相続税申告書の写し
相続税申告を行った場合は、相続税申告書の写しを提出します。
委任状
弁護士に遺産分割調停の手続きを依頼した場合は、委任状を提出します。
調停申立てに必要な書類の詳細は、下記関連記事をご参照ください。

遺産分割審判の申立てに必要な書類
ここでは、遺産分割審判の申立てに必要な書類を解説します。
遺産分割審判の申立てに必要な書類は、以下のとおりです。
- 遺産分割調停申立書・当事者目録・遺産目録
- 相続関係を明らかにする書類
- 遺産の内容を明らかにする書類
- その他
ひとつずつ説明します。
※調停から審判に移行した場合は、改めて審判申立書や添付書類を提出する必要はありません。
遺産分割審判申立書・当事者目録・遺産目録
遺産分割審判申立書・当事者目録・遺産目録は、各地の家庭裁判所窓口または裁判所ウェブサイトから申立書の用紙を入手して、必要事項を記入します。
相続関係を明らかにする書類
遺産分割審判の申立てでは、相続関係(身分関係)を明らかにするため、以下の書類を提出します。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(3か月以内の原本)
- 被相続人の住民票除票(廃棄済の場合は戸籍の附票)
- 相続人全員の住民票(3か月以内の原本)
- 相続関係図
相続関係図(被相続人と共同相続人との相続関係(身分関係)が一目で分かるようにした図)は、申立人または代理人が作成します。分かりやすく正確に記載されていれば、手書きでも、どのような形式でも構いません。
遺産の内容を明らかにする書類
分割を求める遺産の内容や評価額(残高、査定額等)を明らかにする資料を提出します。
提出書類の具体例は、以下のとおりです。
- 不動産:登記簿謄本または登記事項証明書、固定資産評価証明書(3か月以内のもの)
- 預貯金:通帳・証書または残高証明書の写し
- 有価証券等:預かり証、残高証明書等
- 自動車:登記事項証明書または車検証の写し
その他
その他、必要に応じて以下の書類を提出します。
- 遺言書の写し
- 相続税申告書の写し
- 委任状
ひとつずつ説明します。
遺言書の写し
遺言書がある場合は、遺言書の写しを提出します。自筆証書遺言や秘密証書遺言がある場合は、遺産分割審判の申立前に家庭裁判所の検認手続きを経て、検認済み証書も併せて提出します。
相続税申告書の写し
相続税申告を行った場合は、相続税申告書の写しを提出します。
委任状
弁護士に遺産分割審判の手続きを依頼した場合は、委任状を提出します。
遺産分割前後の各種相続手続きに必要な書類
ここでは、遺産分割前後の各種相続手続きに必要な書類を解説します。
遺言書の検認に必要な書類
遺言書の検認申立てに必要な書類は、以下のとおりです。
- 遺言書検認申立書(家庭裁判所窓口または裁判所ウェブサイトから入手)
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
代襲相続が発生している場合は、上記に加え、被代襲者(本来の相続人)の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本を提出します。
参考:遺言書の検認 | 裁判所 (courts.go.jp)
相続税申告に必要な書類
相続税申告に必要な書類は、以下のとおりです。
- 相続税申告書(税務署または国税庁ホームページから入手)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺言書又は遺産分割協議書の写し
相続する財産の内容に応じて、下表の書類の提出も必要です。
財産の種類 | 必要書類 |
---|---|
不動産 | 不動産全部事項証明書
固定資産評価証明書 地積測量図または公図の写し 賃貸借契約書(借家がある場合) |
預貯金 | 金融機関の預金残高証明書
被相続人の過去5年分の通帳の写し 定期預金の既経過利息計算書 |
上場株式・投資信託 | 残高証明書
配当金の支払通知書 |
非上場株式 | 過去3期分の決算書
税務申告書(法人税・地方税・消費税) |
生命保険金・死亡保険金 | 生命保険金支払通知書
生命保険証書 解約返戻金証明書 |
死亡退職金 | 退職金の支払通知書または源泉徴収票 |
自動車 | 登録事項証明書または車検証 |
貴金属などの動産類 | 購入時期や購入金額などが分かる資料
査定書 |
ゴルフ会員権 | 会員権証書、証書 |
相続放棄の申述に必要な書類
相続放棄の申述に必要な書類は、以下のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
申述人の続柄に応じて、上記書類に加え、下表の書類も提出します。
申述人の続柄 | 必要書類 |
---|---|
被相続人の子 | 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等
|
被相続人の子の代襲者
(孫・ひ孫) |
・被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等
・被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本等 |
被相続人の父母・祖父母 | ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・被相続人の子が死亡している場合は、その子の出生から死亡までの戸籍謄本等 ・被相続人の直系尊属が死亡している場合は、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本 |
被相続人の兄弟姉妹 | ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・被相続人の子が死亡している場合は、その子の出生から死亡までの戸籍謄本等 ・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等 |
被相続人の兄弟姉妹の代襲者
(甥・姪) |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・被相続人の子が死亡している場合は、その子の出生から死亡までの戸籍謄本等 ・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等 ・被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本 |

相続登記に必要な書類
不動産の相続登記に必要な書類は、ケースによって異なります。
代表的なケースの必要書類は、下表のとおりです。
原則必要書類
(法定相続の場合) |
①被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
②被相続人の本籍地の記載のある住民票除票(または被相続人の戸籍の附票) ③相続人全員の現在戸籍謄本 ④相続人の本籍地の記載のある住民票の写し(または相続人の戸籍の附票) ⑤登記簿謄本(登記事項証明書) ⑥固定資産税課税明細書(または固定資産評価証明書・評価通知書) |
---|---|
遺産分割協議による場合 | ①上記原則必要書類一式
②遺産分割協議書(相続人全員による署名・実印の押印があるもの) ③相続人全員の印鑑証明書 |
遺言による相続の場合 | ①上記原則書類一式(ただし、被相続人の戸籍は死亡の事実の記載のある戸籍のみでOK)
②遺言の方法によって以下の書類 ⑴自筆証書遺言による場合 ・検認済自筆証書遺言 ・上記遺言関係に関する書類 ⑵公正証書遺言による場合 ・公正証書遺言(正本・謄本) ・上記遺言関係に関する書類 ⑶遺言執行者が選任されている場合 ・遺言執行者の選任審判書 |
遺産分割調停・審判による場合 | 家事審判書または調停調書の謄本
※被相続人の死亡を証する書面(戸籍謄本など)や、相続人であることを証する書面(戸籍謄本など)は原則添付不要 |
参考:不動産の所有者が亡くなった|法務局 (moj.go.jp)
預貯金の払い戻し・名義変更に必要な書類
預貯金の払い戻し・名義変更に必要な書類は、以下のとおりです。
- 金融機関所定の書式
- 被相続人名義の預貯金通帳・証書、キャッシュカード等
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の実印・印鑑証明書
- 遺産分割協議書・遺言書・調停調書謄本・審判書謄本及び確定証明書(ある場合)
金融機関によっては、必要書類が異なる場合があります。

自動車の名義変更に必要な書類
自動車の名義変更手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本または住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人代表者の印鑑証明書
- 自動車検査証
証券会社の手続きに必要な書類
有価証券等の相続手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
- 各証券会社・株式発行会社等所定の書式
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
証券会社によって、必要書類が異なる場合がありますので、手続きの詳細や必要書類は事前に証券会社に問い合せましょう。
まとめ
遺産分割には、様々な書類が必要です。
遺産分割協議や調停・審判に必要な書類、各種相続手続きに必要な書類の収集は、専門家に依頼できます。
弁護士に依頼すれば、書類の収集・作成だけなく、交渉や裁判所の手続きも丸ごと任せられます。
遺産分割に必要な書類の収集が少しでも難しいと感じられた方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。