遺言とは|遺言の意味や種類と遺言を残すメリット等を解説

近年では、遺言書キットやエンディングノートなどを書店で見かけることも多く、遺言の活用が増加していますが、そもそも、遺言は、何のために書くのでしょうか?
遺言にはどんな種類があり、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
この記事では、遺言の意味や種類・特徴、遺言を残すメリット・デメリットを解説します。
目次
遺言とは|遺言者の最終の意思表示
遺言とは、遺言者が自己の死後における財産関係や身分関係についてする最終の意思表示であり、その意思表示に一定の法律効果が与えられるものです。
遺言は、契約とは異なり、遺言者の一方的な意思により効力を生じる相手方のいない単独行為です。
人がその意思に基づいて権利義務関係を形成できる原則(私的自治の原則)を権利主体の死亡後まで拡張する意味を有し、自らの私的生活関係について、死後の状況まで自己決定できることに意義があります。
つまり、遺言は、相続開始後の財産・権利義務の承継について、ご自身の意思を反映させるための手段と言えます。
遺言の種類と特徴
遺言は、常に遺言者の死亡後に効力を生ずるので、遺言者に真意を確かめる機会がありません。
そのため、遺言の作成については一定の厳格な方式が求められ、そのうちいずれかの方式に従ってすべきものとされています。
民法は、下表のとおり普通方式の遺言と特別方式の遺言を認めています。
普通方式 | 特別方式 |
・自筆証書遺言
・公正証書遺言 ・秘密証書遺言 |
・死亡危急者遺言
・伝染病隔離者遺言 ・在船者遺言 ・船舶遭難者遺言 |
特別方式の遺言は、遺言者が普通方式によって遺言ができるようになった時から6か月間生存するときに、当然に失効します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が、遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言です。
民法改正により、2019年1月13日以降は、すべてのページに遺言者本人の署名・押印があれば、遺言書に添付する財産目録をワープロやパソコンで作成できるようになりました。
財産目録に代えて、預貯金通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付しても差し支えありません。
自筆証書遺言は、最も簡便な方式であり、遺言者が文字さえ書ければ作成できます。
ただし、自筆証書遺言には以下のデメリットがあります。
- 方式不備により無効となることもある
- 紛失・隠匿・毀損・改変などのおそれがある
- 内容が不完全なために効力が疑われたり、解釈が争われたりすることがある
公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が遺言内容を公証人に伝え、公証人がそれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。
公証人が、遺言者から遺言の内容を聴き取って、その内容を整理しつつ作成するため、遺言内容が明確で証拠力も高い遺言方法です。
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、滅失・毀損・隠匿・改変のおそれもありません。
聴覚・言語機能に障害がある方も、口述や閲覧等に代えて、手話通訳や公証人との筆談等・遺言書の閲覧の方式により、公正証書遺言を作成できます。

秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の存在自体は明らかにしながら、遺言の内容は秘密にするために行う遺言です。
自筆証書遺言と異なり、遺言書を自書する必要はなく、パソコンやワープロ、点字機を用いて作成しても差し支えなく、日付の記載も必要とされていません。
遺言書の存在を公証人と証人に証明してもらえますが、遺言書の原本を公証役場が保管するわけではないので、保管方法によっては紛失・隠匿のおそれがないとはいえません。
遺言内容に公証人が関わることがないので、後日、遺言の解釈や法的効力が問題となる可能性があります。
死亡危急者遺言
死亡危急者遺言は、病気その他の理由で死亡の危急に迫った人について認められる遺言です。
一般危急時遺言とも呼ばれます。
3人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明し、証人の1人がそれを文章に書き起こす方法で作成します。
死亡危急者は、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に遺言の確認請求をしなければ効力が生じません。
伝染病隔離者遺言
伝染病隔離者遺言は、伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる人が、警察官1人と証人1人以上の立ち会いのもと行う遺言です。
伝染病に限らず、一般社会との交通が事実上または法律上制限されている場所にいる人も対象となると解されています。
例えば、次のような人も伝染病隔離者遺言を行えます。
- 地震や洪水などで交通が遮断された所にいる人
- 刑務所内に収容されている人
在船者遺言
在船者遺言は、船舶中にある人が、船長または事務員1人及び証人2人以上の立ち会いをもって行う遺言です。
ここにいう船舶は、航海で航行しているものに限りますが、船舶中にあれば、それが航海中か停泊中かを問いません。
船舶中にある人には、船員のほか乗客や一時的乗船者も含まれます。
船舶中にある人と同様に隔離された空間にあって、普通方式の遺言が困難な人(例:航行中の飛行機内にいる人)もこの規定の類推適用を受けます。
船舶遭難者遺言
船舶遭難者遺言は、船舶の遭難により死亡の危急が迫った人について認められる遺言です。
難船危急時遺言とも呼ばれます。
2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者が口頭で遺言内容を説明し、証人がその内容を筆記して署名押印します。
難船危急時遺言も、家庭裁判所に遺言の確認を求めなければなりませんが、期間制限はありません。

遺言を残すメリット
遺言を残す主なメリットは、以下のとおりです。
相続人の負担を軽減できる
有効な遺言があれば、相続人の負担を軽減できます。
相続人が複数いて遺言がない場合は、共同相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。相続人間に感情的な対立があると、遺産分割協議が進まないことがあります。
遺言がある場合は、原則として遺言の内容に従って遺産を分割できるため、共同相続人全員が集まって協議をする手間や精神的な負担を軽減できます。
財産の行き先や分け方を決められる
遺言を残すことで、自分が亡くなった後の財産の分け方や誰にどの財産を残したいのかを自由に決められます。
財産を適切に分配することで相続人間の争いも予防できます。
相続人以外の人にも財産を渡せる
遺言を残すことで、相続人以外の人にも財産を渡せます。これを遺贈といいます。
内縁の妻や生活の世話や療養看護をしてくれた息子の嫁にも遺産を渡したい場合などには、遺贈を検討すると良いでしょう。
相続人に自分の意思を伝えられる
遺言には、残された家族への想いやメッセージも記載できます。
残せる財産が十分でなくとも、感謝の言葉を残すだけで相続人が報われることもあります。
相続人間の対立を予防することも期待できます。
遺言を残すデメリット
遺言を残すデメリットは、以下のとおりです。
内容によっては相続人間に不和が生じるおそれがある
特定の相続人に優先的に財産を相続させる場合など、不公平な内容の遺言を作成すると、相続人間に不和が生じるおそれがあります。
法定相続分と異なる割合で相続させたい場合は、遺留分や特別受益などの関係を考慮しなければなりません。相続トラブルを未然に防ぐ遺言書を作成するためには、法律知識を有する専門家のサポートが不可欠です。
遺言の作成に費用や手間がかかる
公正証書遺言を作成する場合は、一定の費用がかかり公証人との打ち合わせ等にも手間がかかります。
遺言書の作成支援を専門家に依頼する場合は、別途10万円~30万円程度の費用が発生します。
遺言が無効となると相続人の負担が増える
遺言書は法律が定めた方式に従って作成しなければなりません。
ご自身で遺言書を作成した場合、その方式に不備があると無効とされるおそれがあります。方式に不備がなくても内容が不完全であると、解釈が争われることもあります。
遺言の効力や解釈が争われる場合、最終的には民事訴訟での解決を図らなければならないことがほとんどです。遺言が無効とされた場合は、相続人らはあらためて遺産分割協議を行わなければなりません。
効力や解釈が争われる余地のない遺言書を作成するためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
遺言内容|遺言書にはどんなことを書いてもいい?
民法は、遺言の明確性を確保するとともに、後日の紛争を予防するため、遺言事項を限定しています。
ここでは、法定遺言事項と付言事項について解説します。
法定遺言事項とは
民法その他の法律は、遺言により効力を生ずる旨を定めた事項(法定遺言事項)を明文化しています。法定遺言事項は、以下のとおりです。
身分関係に関する事項 | ・認知
・未成年者の後見人指定・未成年後見監督人の指定 |
相続の法定原則の修正 | ・推定相続人の廃除・廃除の取消し
・相続分の指定・指定の委託 ・遺産分割方法の指定・指定の委託 ・特別受益の持ち戻し免除 ・遺産分割の禁止 ・相続人相互間の担保責任の定め |
遺産の処分に関する事項 | ・遺贈
・相続させる遺言 ・信託の設定 |
遺言の執行に関する事項 | ・遺言執行者の指定・指定の委託 |
その他 | ・祖先の祭祀主宰者の指定
・保険金受取人の指定・変更 ・一般財団法人の設立 |
各遺言事項の詳細は、下記関連記事をご参照ください。

付言事項とは
遺言により法的効果が生ずる事項は限定されていますが、遺言者は、付言として、法的効果が生じないことを明らかにした上で、以下のような事項を遺言書に記載できます。
- 遺言を書いた動機
- 葬儀や納骨に関する希望
- ペットの飼育に関する希望
- 財産の配分の理由
- 遺族等に関する感謝の気持ち
遺言者が率直な言葉で上記のようなメッセージを残せば、遺言者の気持ちが相続人に伝わるので、相続人間の紛争を回避し、遺言の円満・円滑な実現を図る上で有益です。
遺言認知|遺言で子どもを認知するにはどうすればいい?
ここでは、遺言認知の概要・方法について解説します。
遺言認知とは
認知とは、法律上の婚姻関係にない父母の間に生まれた子(非嫡出子)を、自己の子と認めて法律上の親子関係を発生させる行為です。認知は、戸籍法の定めにより届け出ることによってする要式行為であり、認知がない限り法律上の父子関係は認められません。
何らかの事情で生前の認知ができない場合には、遺言によって認知を行えます。これが遺言認知です。
認知する子が成人している場合は本人の承諾が必要で、胎児を認知する場合は母親の承諾が必要です。
遺言認知をしたら戸籍に反映される?
遺言による認知の場合、遺言執行者はその就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添付して、戸籍法に従ってその届出をします。
遺言で認知する場合は遺言執行者の指定が必要
遺言による認知の届出は、遺言執行者しかできないので、当該遺言で遺言執行者を指定するのが適切です。遺言執行者の指定がない場合は、相続開始後、利害関係人の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
遺言認知をするときの遺言書の書き方
子を認知する遺言と胎児を認知する遺言の文例を紹介します。
子を認知する遺言
第〇条 遺言者は、〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日生、本籍:〇〇県〇〇市〇〇町〇番)を認知する。 第〇条 遺言者は、〇〇〇〇に次の預貯金を相続させる。 〇〇銀行 〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇〇〇〇 第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇番 職 業 弁護士 氏 名 〇 〇 〇 〇 生年月日 昭和〇〇年〇月〇日 |
胎児を認知する遺言
第〇条 遺言者は、〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生、本籍:〇〇県〇〇市〇〇町〇番)の胎内に在る子(以下、「胎児」という。)を認知する。 第〇条 遺言者は、前条の胎児に次の預貯金を相続させる。 〇〇銀行 〇〇支店 定期預金 口座番号〇〇〇〇〇 第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。 住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇番 職 業 弁護士 氏 名 〇 〇 〇 〇 生年月日 昭和〇〇年〇月〇日 |
遺言寄付は相続税の節税効果がある?|遺贈寄付の注意点
遺贈寄付とは、社会貢献に役立てることなどを目的に、遺言により遺言者の財産の一部または全部を特定の団体や個人に無償で贈与することです。
ここでは、遺贈寄付により節税メリットを受ける方法や遺贈寄付の注意点について解説します。
相続税の節税メリットを受ける方法
相続税は、相続または遺贈により財産を取得した個人に課される税です。
そのため、遺言により国・地方公共団体や法人に財産を遺贈しても、財産を取得した団体等には原則として相続税は課税されません。
例外として、遺言による持分の定めのない法人への寄付が、相続税を不当に減少させるために行われた行為とみなされるときは、その法人に相続税が課税されます。
相続人は、相続または遺贈により取得した財産を自身の意思で寄付できます。
相続人が相続財産を特定の団体に遺贈寄付をすると、寄付した財産に相当する金額については相続税が非課税となる特例が定められています。
例えば、相続財産のうち100万円を国や地方自治体に寄付した場合には、相続税の計算上、寄付した100万円を遺産総額から控除できます。
ただし、相続税の節税メリットを受けるためには、非課税の特例の対象となる団体に寄付しなければなりません。
非課税の特例の対象となるのは、以下の団体です。
- 国や地方公共団体
- 公益を目的とする事業を行う特定の法人
- 認定非営利活動法人(認定NPO法人)
参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁 (nta.go.jp)
所得税の寄付金控除も受けられる
遺言者が遺言により寄付をした場合、その寄付先が個人の場合は、原則として譲渡所得税が課税されません。
相続人が相続または遺贈により取得した相続財産を国や地方公共団体または特定の公益法人等に寄付した場合には、所得税の確定申告で寄付金控除を受けられます。
遺贈寄付の注意点
遺贈寄付を検討する際は、以下の点に注意しましょう。
寄付する団体にはあらかじめ何を遺贈するのか伝えておく
寄付する団体には、あらかじめ何を寄付するのかを伝えておくことが大切です。
遺贈寄付の予定を伝えていなければ、受け取りを拒否されることもあります。
遺留分に留意する
兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺産の最低限の取り分として遺留分が認められています。
遺言により国や地方公共団体または特定の公益法人等に全財産を寄付する旨の遺言を書いても、相続人が遺留分侵害額請求権を行使すれば、その寄付は遺留分を侵害する限度で失効します。つまり、相続人が遺留分を主張すれば、寄付を受けた団体等は遺留分侵害額に相当する金銭を支払わなければなりません。
寄付先へ迷惑をかけないためには、遺留分の侵害しない範囲での寄付に留めましょう。
包括遺贈ではなく特定遺贈にする
包括遺贈とは、遺言者が相続開始時に有する財産の全部または割合で示した一部を遺贈の対象とするものです。
特定遺贈とは、特定の財産を相続財産から離脱させて特定の者(受遺者)に承継させる遺言状の処分です。
包括受遺者は、基本的に相続人と同じ法的地位に立つため、共同相続人全員の合意により遺言と異なる遺産分割を行う際には、遺産分割協議への参加を求められる可能性があります。
寄付を受ける団体は、遺産分割協議への参加や相続人間のトラブルに巻き込まれることを避けたいでしょう。寄付先に迷惑をかけないためには、特定遺贈にするのが適切です。
遺言書保管制度とは?
ここでは、遺言書保管制度の概要・メリットと保管申請手続きの流れを解説します。
自筆証書遺言を法務局に預ける制度
自筆証書遺言保管制度とは、自筆証書遺言を法務局に預けると、以下の期間、遺言書を適正に保管してもらえる手続きです。
- 原本:遺言者死亡後50年間
- 画像データ:遺言者死亡後150年間
2020年7月10日に創設された新しい制度です。
参考:自筆証書遺言書保管制度|法務省 (moj.go.jp)
遺言書保管制度を利用するメリット
遺言書保管制度を利用する主なメリットは、以下のとおりです。
- 保管申請時に外形的なチェックが受けられる
- 紛失・破棄・改ざん・隠匿を防げる
- 家庭裁判所の検認手続きが不要になる
- 画像データとしても保管される
保管申請時に外形的なチェックが受けられる
遺言書の保管申請時には、遺言書保管官に、民法が定める自筆証書遺言の方式を充たしているかチェックしてもらえます。そのため、外形的な要件で無効となるリスクを軽減できます。
紛失・破棄・改ざん・隠匿を防げる
遺言書保管制度を利用すれば、原本が法務局に保管されるため、遺言書を紛失するおそれがありません。相続人や利害関係者による隠匿・改ざん等も防げます。
家庭裁判所の検認手続きが不要になる
自筆証書遺言は、相続開始後、家庭裁判所の検認手続きを経なければなりませんが、遺言書保管制度を利用すれば、この検認手続きが不要になります。
登記や各種手続きには、家庭裁判所の検認済み証書の代わりに、法務局が発行する遺言書情報証明書を利用できます。
画像データとしても保管される
遺言書保管制度では、画像データとしても長期間適正に保管・管理されるため、摩擦や汚損などで遺言書が判読不能となる心配もありません。
保管申請の手続きの流れ
遺言書の保管申請の手続きの流れは、概ね以下のとおりです。
- 自筆証書遺言を作成する
- 保管申請をする遺言保管所を決める
- 遺言書の保管申請書を作成する
- 保管申請の日時を予約する
- 遺言書保管所に出向き、保管申請をする
- 保管証を受け取る
自筆証書遺言を作成する
民法で定められた方式に従って、自筆証書遺言を作成します。
保管申請時に保管管理官に、外形的なチェックを受けられますが、遺言の内容に関する相談や質問はできません。
自筆証書遺言の作成に不安がある方は、別途、弁護士への相談をおすすめします。
保管申請をする遺言保管所を決める
次のいずれかの遺言書保管所の中から遺言書を預ける保管所を選びます。
- 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
ただし、追加で保管の申請をする場合、2通目以降は最初に預けた遺言書保管所にしか保管を申請できません。
遺言書の保管申請書を作成する
法務省のホームページ(以下参照)から、保管申請書をダウンロードし、必要事項を記入します。
参考:保管申請書(自筆証書遺言書保管制度)|法務省 (moj.go.jp)
保管申請の日時を予約する
自筆証書遺言と保管申請書の準備が整ったら、希望する日時で保管申請の日時を予約します。
予約方法には、次の2通りがあります。
- 法務局手続き案内予約サービス専用ホームページで予約する
- 予約を取りたい遺言書保管所への電話または窓口での予約する
遺言書保管所に出向き、保管申請をする
予約した日時に遺言書保管所に出向き、保管申請を行います。
保管申請には、以下の書類が必要です。
- 遺言書(ホチキス止め不要、封筒不要)
- 保管申請書
- 住民票の写し(3か月以内のもの・本籍地記載あり、MNや住民票コードの記載なし)
- (遺言書を外国語で作成した場合)遺言書の日本語による翻訳文
- 顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 手数料(遺言書1通につき3,900円分の収入印紙・法務局で購入可)
保管証を受け取る
保管申請手続きが終了すると、保管証が発行されるので受領して大切に保管します。
保管証は再発行ができないので、紛失しないよう注意しましょう。
参考:遺言書の保管申請手続き|法務省 (moj.go.jp)
遺言相談はどこにするのがおすすめ?|遺言の作成を相談できる窓口
ここでは、遺言の作成を相談できる専門家や公的機関を紹介します。
弁護士
遺言をめぐって相続争いが起きる可能性がある場合には、弁護士への相談をおすすめします。紛争解決のエキスパートである弁護士に相談すれば、将来の紛争を未然に防ぐために必要なアドバイスを受けられます。
相続問題を積極的に取り扱う事務所であれば、税理士や司法書士などの他士業とも連携していることが多いため、遺言・相続に関するサポートをワンストップで受けられる可能性があります。
司法書士
司法書士は不動産登記の専門家であるため、不動産をお持ちの方に有効な相談相手です。
不動産の相続方法や将来の相続登記を見据えた遺言書の起案について相談できます。
行政書士
行政書士は、書類作成や許認可を主に行う専門家です。
遺言内容がある程度決まっていて、その内容に沿った遺言書を起案してもらいたいときや、様式のチェックを依頼したい場合に有効な相談先です。
他の専門家と比べて相談料や遺言の作成費用がリーズナブルであるのも特徴です。
相続トラブルの心配がなく、書類作成のみ気軽に相談したい方におすすめです。
税理士
税理士は、税務書類の作成や税務申告を行う税金の専門家です。
遺言の作成時に相続税や贈与税を試算したい方や相続人の税負担をなるべく軽減したい方は、税理士のサポートを受けましょう。
公証役場
公証役場では、公正証書遺言や秘密証書遺言の作成について無料相談に応じてもらえます。
ただし、公証役場では個別具体的な事情に応じた遺言内容の相談には応じていません。
遺言により相続対策をしたい場合や、将来の相続トラブルを予防したい場合には、あらかじめ弁護士に相談した上で、公証役場に依頼するのが安心です。
各弁護士会の法律相談センター
各地の弁護士会には、遺言や相続に関する相談窓口が設置され、電話相談(無料)や面接相談(初回のみ無料)が実施されています。
遺言や相続に関する一般的な相談や各弁護士会に所属する弁護士の紹介に対応しています。
法テラス
法テラス(日本司法支援センター)では、電話やメールなどで相談内容を確認し、適切な相談窓口を案内してもらえます。
相談料や紹介料が無料なので、遺言の作成を誰に相談すればよいか分からない方におすすめの相談先です。
参考:相続・遺言|法テラス
市町村役場の法律相談
全国各地の市町村役場では、定期的に無料の法律相談が実施されています。市民相談を利用すれば、遺言の作成について無料で弁護士に相談できます。
ただし、市町村役場の法律相談は相談時間が限られているため、個別の事情に応じた具体的なアドバイスは期待できません。
金融機関
一部の都市銀行や信託銀行は、遺言の作成からその内容実現までを一括支援する有料サービスを提供しています。
金融機関の遺言信託サービスでは、次のようなサービスを受けられます。
- 遺言の作成補助(コンサルティング)
- 遺言書の寄託(保管)
- 遺言執行業務
金融機関の遺言信託サービスを利用する場合は、取引手数料として30万円~110万円の費用がかかるのが一般的です。
高額で広範囲な金融資産をお持ちの方で、定期的な遺言書の見直しや資産運用など長期的なサポートをお求めの方は、遺言信託サービスの利用を検討してみても良いでしょう。

遺言の作成に費用はいくらくらいかかる?
ここでは、遺言作成費用と専門家に依頼した場合の報酬の相場を紹介します。
自筆証書遺言の作成費用
自筆証書遺言の作成には、費用がかかりません。
秘密証書遺言の作成費用
秘密証書遺言の作成手数料は、定額で1万1,000円です。
公正証書遺言の作成費用
遺言公正証書の作成手数料は、遺言の対象となる財産の価額に応じて算定されます。
手数料算出の基準は、以下のとおりです。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円を超え3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
遺言公正証書の原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により、4枚(法務省令で定める横書きの証書は3枚)を超えるときは、1枚毎に250円の手数料が加算されます。
正本と謄本の交付にも1枚につき250円の割合の手数料が必要です。
専門家に遺言作成を依頼する場合の費用
弁護士の場合
遺言の作成を弁護士に依頼した場合の手数料は、財産の額や事案の複雑さなどによって変動します。
一般的な財産(数百万円程度の預貯金と自宅不動産を所有している場合等)の処分について、遺言書を作成する場合は10~30万円程度となるのが一般的です。
資産総額が数千万~数億円に及ぶ場合には、数百万円程度の手数料がかかることもあります。
司法書士の場合
遺言の作成にかかる司法書士費用の相場は、7~15万円程度です。定額の料金体系を設定している事務所が多いですが、財産の額や事案の複雑さによっては相場より高額になることもあります。
行政書士の場合
遺言の作成にかかる行政書士費用の相場は、5~10万円程度です。定額の料金体系を設定している事務所が多いですが、財産の額や事案の複雑さによっては相場より高額になることもあります。
税理士の場合
遺言の作成にかかる税理士費用の相場は、10~50万円程度です。財産の額や事案の複雑さによっては相場より高額になることもあります。
遺言の作成を弁護士に依頼するメリットは?
ここでは、遺言の作成を弁護士に依頼するメリットを紹介します。
遺言の内容を相談できる
遺言書の内容そのものに悩んでいるときに相談できるのは弁護士だけです。
他の専門家は、ご本人の意向に沿って遺言の作成をサポートするスタンスであるため、どのような内容にすべきかまではアドバイスしてもらえません。
弁護士であれば、相続トラブルを未然に防ぐ財産の分け方や、ご自身の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成する方法について、具体的なアドバイスができます。
法的に不備のない遺言書を作成できる
遺言書は自分で作成できますが、方式に不備があったり、証人の選定が不適当だったりすると(秘密証書遺言の場合)、無効となる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、法的に不備のない遺言書を作成してもらえます。
相続人間のトラブルが発生しにくい遺言書を作成できる
遺留分や特別受益を無視した遺言書や、解釈が分かれる曖昧な内容の遺言書は、将来の相続トラブルを招きかねません。
弁護士に相談・依頼すれば、将来の紛争を未然に防ぐために必要なアドバイスを受けられます。

公証人とのやり取りを任せられる
公正証書遺言を作成する場合は、公証人との事前打ち合わせや証人の用意が必要です。
弁護士に依頼すれば、公証人とのやり取りを任せられます。遺言者ご自身で証人を用意できない場合は、弁護士が証人を確保してくれます。

遺言執行も依頼すれば迅速に遺言内容を実現できる
遺言執行者がいない場合は、相続人全員が手続きに関与するため、遺言内容に納得できない相続人がいると協力を得られず、相続手続きが停滞するおそれがあります。
相続人の一人が遺言執行者に指定されている場合も、他の相続人に不正を疑われたり、手続きが遅いと不満を述べられたりするなど相続人間に紛争が生じるおそれがあります。
遺言執行も弁護士に依頼すれば、このようなリスクを回避できます。弁護士であれば、知識や経験に基づきスムーズに遺言内容を実現できるので、安心して任せられるでしょう。

まとめ
遺言を残すデメリットのほとんどは、弁護士に遺言書作成支援を依頼することで解消できます。
遺言の活用によるメリットを最大限享受するためには、弁護士のサポートを受けるのが不可欠と言っても過言ではありません。
当事務所では、リーズナブルな料金設定で遺言書の作成をサポートしております。

遺言の作成をご検討中の方は、ネクスパート法律事務所にお気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。