二次相続とは|一次相続との違いや相続税対策・早見表を紹介

二次相続とは、一度目の相続(一次相続)で残された親が亡くなった時に起きる相続のことです。
二次相続では、一次相続を含めた高額な遺産を相続することになり、相続人が減ることで相続税の基礎控除枠が減り、税負担が大きくなる特徴があります。
そのため、一次相続では、二次相続を見据えた相続税対策を行うことが重要です。
この記事では、二次相続の概要から相続税の負担やシミュレーション、税負担を軽減するポイントを解説します。
二次相続とは
残された親の死亡で起きる相続のこと
二次相続とは、一度目の相続で残された親が亡くなった時に起きる相続のことです。
例えば、父が亡くなった後、父の遺産を相続した母が亡くなったときに起きる相続が二次相続です。
二次相続では、以下の特徴があります。
- 最初の相続で相続した遺産を含めた財産を相続し高額になりやすい
- 財産が高額、特例が適用されないなどで相続税の負担が大きくなりやすい
- 親が亡くなっているため、子ども同士でトラブルが起きやすい
このような特徴があるため、最初の相続の際に、二次相続を見据えた対策が大切です。
一次相続と二次相続との違い
一次相続とは、一家の中で片方の親が亡くなったときの相続のことです。
そして、一次相続で残された親が亡くなったときの相続を二次相続と言います。
一次相続と二次相続には、相対的に以下の違いがあります。
一次相続 | 二次相続 | |
法定相続人の数 | 配偶者もいるため多い | 配偶者がいない |
相続する人 | 子どもがいる場合は、配偶者と子ども | 残された子ども もしくは次の順位の相続人 |
適用できる特例 | 多い | 少なくなる |
相続税負担 | 少ない | 多い |
なお、一次相続の法定相続人は、配偶者と子どもですが、二次相続では配偶者が亡くなるため、残された子ども同士で相続が行われる点に特徴があります。
ただし、これは子どもがいる場合に限られます。
子ども同士兄弟がいても、亡くなっている子どもがいる場合は、さらにその人の子ども(亡くなった人の孫)に相続権が移ります(代襲相続)。
さらに、子どもがいない場合、相続順位は亡くなった人の親、親がいなければ祖父母に移り、祖父母がいなければ亡くなった人の兄弟姉妹に移ります。
一次相続との違いは、誰が相続人となっても、税金の負担が大きくなりやすい点です。
子ども同士が相続人となった場合に、トラブルが起こりやすくなる可能性があります。

よく似た相次相続とは
相次相続(そうじそうぞく)とは、一次相続から10年以内に二次相続が起きるなど、相続が相次いで発生することです。
二次相続が発生した時期が、一次相続から10年以内であった場合は相次相続と言えます。
似た言葉に数次相続がありますが、これは、遺産分割中に相続人が亡くなり、新たな相続が発生することです。
なお、10年以内に相次相続が発生すると、前回相続税を納税した相続人は、相次相続控除が受けられる場合があります。
二次相続は相続税の負担が大きい
二次相続は、一次相続に比べて以下のように、相続税の負担が大きくなることが少なくありません。
- 一次相続に比べると基礎控除額が減り負担が大きい
- 死亡保険金・死亡退職金の非課税額が減る
- 配偶者税額軽減や小規模宅地等の特例が適用されないことも
以下で詳しく解説します。
一次相続に比べると基礎控除額が減り負担が大きい
二次相続では、一次相続に比べると、相続税の基礎控除額が減る可能性があるため、その分相続税を多く収める負担が生じやすいです。
相続税には基礎控除がありますが、この額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算されます。
一次相続では、配偶者も含まれるため相続人の数が多くなり、控除額が増えます。
しかし、二次相続では通常、相続人は子どものみになり控除額が減少します。
さらに、一次相続で引き継いだ遺産を含めて相続することになり、遺産総額も大きくなる分、税負担が重くなる傾向にあります。

死亡保険金・死亡退職金の非課税額が減る
生命保険金や死亡退職金を相続した場合の相続税にも、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。
一次相続では相続人が多ければ非課税枠も広がりますが、二次相続では相続人が減ることが多いため、この非課税額も減少します。
結果として、課税対象となる金額が増え、相続税が高くなるリスクがあります。

特例が適用されない可能性がある
相続税には、配偶者税額軽減(相続税の配偶者控除)という特例があります。
配偶者税額軽減を適用すれば、配偶者は1億6,000万円、もしくは法定相続分で相続した金額のどちらか大きい額まで相続税が控除されます。
一次相続であれば、配偶者にすべて遺産を相続してもらい、相続税を大幅に控除することも可能ですが、二次相続では配偶者も亡くなっているため、この特例は適用されません。
とはいえ、一次相続で、配偶者に遺産を相続してもらうと、二次相続のとき、子どもが困ることになります。
もう一つは、自宅の土地の評価額を最大80%減額できる小規模宅地等の特例が、適用されない可能性がある点です。
小規模宅地等の特例が適用できる人は、配偶者、亡くなった人の同居親族、3年以上借家に住んでいる親族です。
一次相続では、配偶者が自宅を相続すれば、自宅の評価額を8割引きとして相続できます。
一方、二次相続では、配偶者と同居していた親族か、3年以上借家に住んでいる親族にしか適用されません。
すでに持ち家を持っている子どもには適用されません。

兄弟間でトラブルになるおそれがある
これは相続税とは異なりますが、二次相続では兄弟間でトラブルになるおそれがあります。
相続を巡り兄弟間で対立があっても、親がいればまだ間を取り持ってくれていたかもしれません。
しかし、間を取り持つ親が亡くなってしまうと、兄弟同士で対立する可能性があります。
兄弟同士、争う気がなくても、兄弟の家族やそれぞれの配偶者の考え方もあるため、トラブルになるかもしれません。

二次相続と相続税のシミュレーションと早見表
実際に一次相続と二次相続では、どの程度相続税の負担が生じるのでしょうか。
一次相続と二次相続の相続税のシミュレーションや相続税の早見表は以下のとおりです。
一次相続の相続税のシミュレーション
実際に一次相続の相続税を計算してみます。
例えば、父が亡くなり、2億円の遺産を、配偶者・長男・次男の3人で分けるとします。
なお、相続税の基礎控除額は、遺産全体から差し引きます。
相続人は3人であるため、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)で4,800万円。相続税の課税対象は、2億円-4,800万円=1億5,200万円となります。
この金額を法定相続分で分け、相続税の税率を課税します。
配偶者 | 長男 | 次男 | |
法定相続分 | 7,600万円 (遺産の半分) |
3,800万円 (配偶者の残りを兄弟で均等に分ける) |
3,800万円 |
税率 | 30% | 20% | 20% |
控除額 | 700万円 | 200万円 | 200万円 |
相続税 | 1,580万円 | 560万円 | 560万円 |
この3人の相続税の総額は2,700万円です。この総額を、実際に相続した割合に当てはめて、相続人で分けることになります。
実際の相続で、配偶者が非課税となる1億6,000万円、残りを子どもで分けた場合は、割合は下記のとおりです。
配偶者:1億6,000万円(80%)→相続税は2,160万円(ただし配偶者控除で0円)
長男:2,000万円(10%)→相続税は270万円
次男:2,000万円(10%)→相続税は270万円
二次相続のシミュレーション
二次相続の場合は、配偶者が相続した1億6,000万円を、子ども2人で半分にして相続します。
相続人は2人であるため、3,000万円(+600万円×2人)=4,200万円が基礎控除額となり、相続税の課税対象は、1億円6,000万円-4,200万円=1億1,800万円となります。
この金額を法定相続分で分け、相続税の税率を課税します。
長男 | 次男 | |
法定相続分 | 5,900万円 | 5,900万円 |
税率 | 30% | 30% |
控除額 | 700万円 | 700万円 |
相続税 | 1,070万円 | 1,070万円 |
実際の取り分も半分である場合、相続税はそれぞれ1,070万円となります。
一次相続で配偶者が80%相続しておらず、法定相続分で分けた場合でも相続税は560万円で済んでいました。
二次相続では、相続した遺産は2億円よりも少ないものの、相続人が減ったことで、相続税の負担が大きくなりました。
これが一人っ子となると、1億6,000万円に対して相続税が課税され、相続税は4,700万円になります(税率40%、控除額1,700万円)。
もちろん、相続税にはさまざまな特例があるため、それらが適用されれば、相続税の負担は軽減できる可能性はありますが、特例がなければ、二次相続の負担が大きいことがわかります。
二次相続の相続税の対策方法
二次相続では、相続税の負担が大きくなりがちですが、適切な対策を講じることで軽減できます。
特に一次相続では、二次相続も踏まえて、対策を講じておくとよいでしょう。
以下では、二次相続の相続税の対策方法をいくつか紹介します。
生前贈与を検討する
両親や残された配偶者が、子どもや孫に生前贈与を行えば、相続分となる遺産を減らすことができます。
さらに、生前贈与は毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからないため、数年にわたって子や孫に贈与すれば、贈与税をかけずに、財産を大幅に減らすことができます。
生前贈与には、住宅取得資金や教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与などについて、一定の条件を満たせば非課税となる特例もあります。
ただし、贈与者が亡くなった3~7年の生前贈与は相続税の課税対象となるため注意が必要です。
他にも、2,500万円まで非課税となる相続時精算課税制度もあります。
税理士に相談して計画的に贈与を行うとよいでしょう。

子どもが多く相続する・自宅を相続する
二次相続では相続人の数が減ることで、税負担が大きくなります。
そのため、一次相続の時点で、配偶者への相続を最低限に減らし、二次相続の負担軽減を検討するとよいでしょう。
さらに、一次相続の時点で親と二世帯住宅にしておけば、相続が発生した際に、親と同居していた子どもは小規模宅地等の特例を適用して、自宅の価値を8割引きとして相続が可能です。
収益物件や値上がりする財産は子どもが相続する
一次相続で配偶者が、賃貸アパートなどの収益物件や値上がりする財産を相続すると、配偶者の財産が増えた状態で二次相続を行うことになります。
そのため、収益物件や値上がりする財産を子どもが早い段階で相続したほうが、二次相続時の相続財産を減らすことができます。

小規模宅地等の特例の条件を満たす
小規模宅地等の特例が適用されると、自宅の評価額が最大80%減額されて、相続税が課税されます。
小規模宅地等の特例は、配偶者のほか、亡くなった人の同居親族や3年以上借家に住んでいる親族が、相続後10か月間自宅に住むなどの条件を満たした際に適用されます。
相続税の負担を減らすためには、一次相続の段階で、残された親と同居するなど条件を満たしておくのも一つの方法です。

相次相続控除を適用する
一次相続と二次相続が10年以内に発生した場合には、相次相続控除が利用できる可能性があります。
相次相続控除は、短期間に続けて相続税を支払うことになる負担を軽減する制度です。
たとえば、父が亡くなった直後に母が亡くなったようなケースで、子どもが短期間に2度相続する場合に税額が軽減されます。
適用には要件がありますので、税理士への相談が安心です。
二次相続に関するよくある質問
二次相続の基礎控除枠は一次相続とどう違う?
基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)で計算されます。
一次相続では、配偶者も法定相続人となるため、控除枠が広くなりますが、二次相続では配偶者がいないケースが多く、相続人の数が減ることで基礎控除も少なくなります。
たとえば、一次相続で配偶者+子2人なら控除は4,200万円、二次相続で子2人のみなら控除は3,600万円に減ります。
二次相続は一人っ子と兄弟でどのように違う?
一人っ子の場合、遺産を一人で相続することになるため、全財産に対して相続税がかかります。
一方、兄弟が複数いれば相続税の基礎控除枠が大きくなり、その分相続税の負担は軽減されます。
二次相続が一人っ子の場合の節税対策は?
一人っ子が二次相続の相続人となる場合、相続税の負担が重くなりやすいため、早めの節税対策が大切です。
相続税の負担軽減は、一人っ子でも兄弟がいる場合でも変わりません。
そのため、生前贈与を活用して財産を段階的に移したり、一次相続で収益物件を子どもに相続させるなど、課税対象となる相続財産を減らすことがポイントです。
まとめ
二次相続は、一次相続よりも税金の優遇措置が少ないため、相続税の負担が重くなりがちです。
兄弟間の遺産分割でもめる原因にもなります。
一次相続の段階から将来の二次相続を見据えた対策が非常に重要です。
遺産が多い場合は特に、二次相続を見据えて、生前贈与や特例の活用、遺言書の準備などを通じて、家族が安心して相続できる環境を整えておくことが大切です。
二次相続に不安がある場合は、一次相続の段階から弁護士や税理士に相談しておくのが望ましいです。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。