遺産分割とは何か?進める上で重要な5つのポイントを解説
相続が発生したら、被相続人の遺産をどのように分けるか気になる方は多いと思います。
この記事では、主に以下のことを解説します。
- 遺産分割とは何か
- 4つの方法
- 手続きを進める上で重要な5つのポイント
- よくあるトラブル
目次
遺産分割とは?
遺産分割とは、被相続人の遺産を相続人間で分けることです。
相続人が一人だけであれば遺産分割は不要ですが、複数いる場合は、誰がどの財産をどの割合で取得するかを決める必要があります。被相続人が遺言書を遺している場合は、原則、遺言書の内容に従って遺産分割します。
遺言書がない場合、遺産はいったん相続人全員の共有財産となります。相続人同士が話し合い、誰がどの遺産をその割合で取得するか、合意した上で遺産を分けます。
これによって、遺産の共有状態が解消されます。
遺産分割の4つの方法とは?
遺産分割は、以下4つの方法があります。
| 分割方法 | 概要 |
|---|---|
| 現物分割 | 遺産を現物のまま分ける方法 |
| 換価分割 | 遺産を売却し、その売却代金を分ける方法 |
| 代償分割 | 相続人の一人が遺産を現物のまま相続し、他の相続人に対して代償金を渡す方法 |
| 共有分割 | 遺産を複数の相続人で共有する方法 |

遺産分割の3つの手続きとは?
遺産分割の手続きには、以下3つの方法があります。
- 遺産分割協議
- 遺産分割調停
- 遺産分割審判
遺産分割協議
遺産分割協議とは、裁判所の手続きによらず、相続人全員で遺産をどのように分けるか話し合うことです。
被相続人が遺言書を遺さなかった場合、相続人全員で協議を行い、どの遺産を誰が取得するかを決めます。相続人全員の合意が得られれば、協議が成立します。
合意した内容を反映した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印することが一般的です。

遺産分割調停
遺産分割調停は、遺産分割協議がまとまらなかった場合に利用できる家庭裁判所の手続きです。
遺産分割調停は、あくまでも話し合いでの合意を目的としています。
調停委員は、当事者からどのような遺産分割を望んでいるかヒアリングをし、中立の立場で当事者に解決案を提示しアドバイスします。
調停が成立したら調停調書が作成され、それをもとに相続手続きを行います。

遺産分割審判
調停が不成立になった場合は、自動的に遺産分割審判に移行します。
その際に特別な手続きは必要ありません。審判では、家庭裁判所の裁判官が、当事者の主張や提出された様々な資料の中から、職権で審判に資すると思われる書面を選択し、事実の調査をします。
当事者が、審判からの資料の提出や主張が尽くされた段階で、遺産をどのように分けるか審判を下します。
遺産分割を進める上で重要な5つのポイントとは?
遺産分割を進める上で重要なポイントは、遺言書の有無を確認するなど5つあります。
遺言書の有無を確認する
被相続人が遺言書を遺していないかどうか、確認をしましょう。
遺産の全部について行先を明記した有効な遺言書があれば、原則として、遺産分割協議は必要ありません。
遺言書の存在を知らずに遺産分割協議をし、その後に遺言書があることが判明した場合、当初の協議が無効になる可能性があります。

相談人を漏れなく洗い出す
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、相続人を漏れなく洗い出します。
被相続人の死亡の事実の記載がある戸籍から順番に遡り、改製原戸籍謄本や除籍謄本等を順次取得します。相続人全員の戸籍謄本や住民票等も取り寄せて、その生存と所在を確認します。
相続人が一人でも漏れると遺産分割協議は無効になるので、気を付けましょう。

遺産の全容を把握する
被相続人が遺した遺産の全容を把握しましょう。
例えば、被相続人が不動産を所有していたかどうかは、登記識別情報(権利証)や固定資産税の通知書で確認しましょう。
被相続人が取引していた金融機関がどこだったか、所有していたキャッシュカードや郵便物を調べて確認をしましょう。
遺産に調査漏れがあると、再び遺産分割協議を行わなければならないため面倒ですので、漏れがないように慎重に行います。

遺産の価値を適切に評価する
遺産の調査をしたら、評価を適切に行いましょう。
遺産の中に不動産や車、株が含まれている場合、評価額がわからないと公平に遺産分割ができないからです。
相続税申告・相続登記の期限に留意する
相続税の申告と相続登記の期限に留意しましょう。
相続税は、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行わなければなりません。定められた期限内に納付しなければ、延滞税が加算されます。
相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に行わなければいけません。正当な事由なく期限内に申請をしなければ、10万円以下の過料が課される可能性があります。

遺産分割でトラブルになる事例は?
遺産分割でトラブルになる主な事例は、以下の5つです。
遺産分割協議に参加しない相続人がいる
相続手続きに関わりたくない等の理由で、一部の相続人が遺産分割協議に参加しないケースがあります。
一人でも相続人が欠けると遺産分割ができません。相続人全員の合意がなければ遺産分割は成立せず、遺産分割調停の申立てを検討しなければなりません。
そうなると時間と手間がかかる点を伝え、出席を拒んでいる相続人に対して参加を促しましょう。

相続人の間で遺産の分け方について意見が食い違う
日頃から相続人同士の関係が良くない場合、遺産の分け方について意見が食い違う可能性があります。
主に以下の理由でもめるケースが多いので、心当たりがないか慎重に話し合いを進めましょう。
- 被相続人の世話をしてきたのにそれが反映されていない
- 相続人の一人が生前贈与を受けている

相続財産が不動産のみで分割方法でもめる
相続財産が不動産のみの場合、分割方法でもめるケースがあります。
現物分割、換価分割、代償分割、共有分割のいずれを選択すればよいか、それぞれの事情で異なるため慎重に判断しましょう。

相続人の一人が認知症等で話し合いができない
相続人の一人が認知症等で遺産分割協議ができないケースがあります。
この場合、家庭裁判所に後見人の選任を申立てなければいけません。
勝手に認知症の相続人の筆跡を真似て遺産分割協議書に署名・押印した場合は、罪に問われますので気を付けましょう。

相続人の一人が行方不明で連絡がとれない
相続人の一人が行方不明で連絡がとれないケースがあります。
調査を尽くしても所在が分からない相続人がいる場合、不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
行方不明になってから7年以上経過しているなら、失踪宣告の申立てが可能です。

遺産分割協議でお悩みの方は弁護士に相談を
遺産分割協議でお悩みの方は、ぜひ弁護士に相談・依頼をしてください。
遺産分割協議に参加しない相続人がいる場合、弁護士が代理人となって説得すれば応じる可能性が高いです。行方不明の相続人がいるなら、弁護士であれば不在者財産管理人等の申立てがスムーズにできます。
遺産分割協議は、当事者同士で行うと感情的な行き違いでトラブルになるケースが多々あります。法的な視点でさまざまなアドバイスが可能な弁護士が代理人になれば、もめることなく遺産分割協議ができる可能性があります。
まとめ
相続が発生し被相続人が遺言書を遺していなければ、遺産分割をしなければいけません。遺産が多い場合はもちろんのこと、めぼしい遺産が不動産のみでもトラブルになるケースがあります。
ぜひ弁護士のアドバイスを受けながら、滞りなく進めていただければと思います。
ネクスパート法律事務所には、相続を多数手掛けている弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。
