相続人調査マニュアル|戸籍の読み取り方を徹底解説!

相続が開始したら、相続人調査をしなければなりません。
相続人調査とは、相続関係者の戸籍を調べて、亡くなった方(被相続人)の相続人が誰であるのかを確定する手続きです。
相続人調査を怠ると、以下のようなトラブルが生じるおそれがあります。
- 相続人が漏れていると遺産分割協議が無効となる
- 必要な戸籍が全て揃っていないと相続登記や金融機関の手続きが進められない
相続が開始したら、できるだけ早い段階で相続人調査を行い、相続トラブルの原因を取り除きましょう。
この記事では、相続人調査の手順や具体的な調査方法について解説します。
相続人調査の方法が分からない方は、ぜひご参考になさってください。
目次
相続人調査とは|相続人調査が必要な理由
相続人調査が必要な理由は、以下のとおりです。
- 相続人を確定し、相続人全員で遺産分割協議を行うため
- 公的機関や金融機関への相続手続きにおいて相続関係を証明するため
相続人を確定し、相続人全員で遺産分割協議を行うため
相続人が複数いる場合は、有効な遺言がない限り、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
必要な調査を怠り、相続人に漏れがあるまま遺産分割協議を行うと、当該遺産分割協議は無効となります。

公的機関や金融機関への相続手続きにおいて相続関係を証明するため
相続登記や預貯金の払い戻し手続きでは、通常、次の書類の提出が求められます。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
相続人が1人だけの場合も、戸籍謄本等の収集に漏れがあると、手続きを進められません。



戸籍調査を進めていくと予期せぬ相続関係が判明することがあります。例えば、被相続人が密かに認知した子どもがいたり、養子縁組をしていたことが発覚したりするケースです。
相続トラブルの原因を作らないために、必ず相続人調査を行いましょう。
相続人調査の基礎知識①|相続人の確定方法
相続人を確定するためには、法定相続人の範囲や順位などを含めた法律上の基礎知識を把握しておかなければなりません。
法定相続人の範囲と順位
民法で定められた法定相続人は配偶者と血族相続人です。
血族相続人とは、被相続人の子、直系尊属(父母、祖父母など)および兄弟姉妹で、それぞれ相続順位が定められています。
被相続人の配偶者は、常に相続人となり、その相続順位は他の相続人と同順位となります。
第1順位(子)
被相続人に子がいる場合、その子は第1順位の相続人となります。実子・養子や嫡出子・非嫡出子の区分は問いません。
被相続人の子が以下のいずれかに該当する場合は、その子の直系卑属(被相続人の孫)が代襲相続し第1順位となります。
- 相続開始前に子が死亡したとき
- 子が相続人の欠格事由に該当したとき
- 相続人廃除により子が相続権を失ったとき
なお、子が相続放棄した場合は、代襲相続は発生しません。
第2順位(直系尊属)
第1順位の相続人がいない場合、被相続人の直系尊属(父母、祖父母等)が相続人となります。
直系尊属が複数存在する場合は、被相続人に近い者(父母)が相続人となります。
相続開始前に父母が死亡している場合は、その親(被相続人の祖父母)が相続人となります。
第3順位(兄弟姉妹など)
第1順位、第2順位の相続人がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
第3順位の相続人は、その子(被相続人の甥・姪)についてのみ代襲相続が発生します(再代襲はありません)。

相続欠格と相続廃除
相続欠格
民法所定の相続欠格事由に該当する者は、相続人になれません。
民法が定めた相続人の欠格自由は、以下のとおりです。
第891条【相続人の欠格事由】
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
引用:民法 | e-Gov法令検索
なお、被相続人の子が相続欠格事由に該当する場合は、その子(被相続人の孫)が相続人となります。
相続廃除
家庭裁判所による推定相続人廃除の審判がなされた場合、当該推定相続人は相続人になれません。
次のいずれかに該当する場合、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます。
- 推定相続人が被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたとき
- 推定相続人にその他著しい非行があったとき
なお、推定相続人廃除の意思表示は、遺言でなされることもあります。
相続放棄
相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
相続放棄した者については、代襲相続が発生しません。例えば、被相続人の子が相続放棄した場合は、孫が相続人になることはありません。

相続人の不存在
以下のいずれかに該当する場合、相続人不存在となります。
- 法定相続人が1人もがいない
- 法定相続人に相続人になれない理由(相続欠格・相続廃除・相続放棄)がある
相続人不存在の場合、利害関係人が家庭裁判所に対し、相続財産管理人選任を申立てます。
相続財産管理人が選任されると、相続債権者や受遺者に対して、債権の申出をなすべき旨の公告を行います。その後、相続人捜索公告の期間経過により相続人の不存在が確定します。
相続人不存在が確定後、被相続人と特別の縁故があった人から請求があった場合には、家庭裁判所が、特別縁故者に対して相続財産の全部または一部を与えることがあります。
次の場合、相続財産は、国庫に帰属します。
- 特別縁故者からの分与の請求がない場合
- 特別縁故者からの分与の請求が却下された場合
- 特別縁故者に相続財産を分与しても残余財産がある場合
なお、相続財産の中に共有不動産があり、かつ、特別縁故者がいない場合には、その不動産の被相続人の持分は他の共有者に帰属します。

相続人調査の基礎知識②|戸籍の種類や用語解説
戸籍の種類や戸籍に記載されている用語についても理解を深めましょう。
戸籍の種類
戸籍には、次の3つの種類があります。
- 現在戸籍
- 除籍
- 改製原戸籍
現在戸籍
現在戸籍とは、現に在籍している者がおり、使用されている戸籍です。
現在戸籍は、本籍として届け出た市区町村の戸籍簿に綴られて保管されています。
戸籍簿には多くの家族の戸籍が綴られているため、検索を容易にするために、地番もしくは街区符号の番号順に綴られています。
除籍
除籍とは、婚姻、養子縁組、死亡、転籍などにより最終的に在籍者が1人もいなくなった戸籍です。戸籍簿から除かれた除籍は、除籍簿に綴られて保存期限まで保管されます。
改製原戸籍
法律の改正により戸籍の様式が変わった場合、従前の様式で編製された戸籍を新様式の戸籍に改めるため、戸籍の作り直し(編成替え)が行われます。この編製替えを戸籍の改製といいます。
戸籍の改製により作り直された従前様式の戸籍を改製原戸籍(かいせいはらこせき・かいせいげんこせき)といいます。
改製原戸籍は、除籍とは別の改製原戸籍簿に綴られて保存期限まで保管されます。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
戸籍謄本
戸籍謄本とは、市区町村に保管されている戸籍の原本全部(全員の記載事項)を写した書面です。コンピュータ化された戸籍謄本は、戸籍全部事項証明書といいます。
戸籍抄本
戸籍抄本とは、戸籍の原本の一部(戸籍に在籍する特定の個人の記載事項)を抜粋して写した書面です。コンピュータ化された戸籍抄本は、戸籍個人事項証明書といいます。
戸籍に使われている用語の意味
戸籍を読み取るために最低限覚えておきたい用語を以下のとおり紹介します。
用語 | 意味 |
---|---|
筆頭者 | 現行戸籍の一番初めに記載されている人物のこと
※戸主との主な違いは、筆頭者は死亡しても筆頭者のままであること |
戸主 | 旧法戸籍の一番初めに記載されている人物のこと
※筆頭者との主な違いは、戸主が死亡すると、次の戸主が家督相続で選ばれて、新たに戸籍が作られること |
家督相続 | 戸主としての身分的地位と戸主の属する家の財産を単独で承継する相続形態のこと
一般的には長男が単独で家督相続人となる |
分家 | ある家の家族が戸主の同意を得て、その属している家を離れて、新たに一家を設立する行為
元の家を本家といい、新に設立した家を分家という 分家は本家と同じ氏を称し、新しい戸籍が作られて分家者がその戸主となる |
編製 | 戸籍を新しく作ること |
入籍 | 出生、婚姻、養子縁組等により、新たに戸籍に入ること |
転籍 | 本籍を別の場所に移すこと |
除籍 | 婚姻、養子縁組、死亡などにより戸籍から除かれること |
復籍 | 離婚により復氏した(旧姓に戻した)者が、婚姻前の戸籍に戻ること |
分籍
|
戸籍の筆頭者とその配偶者以外で成年に達している者が、現在の戸籍から抜けて、新たに戸籍を作り、自らが筆頭者となること |
再製 | 戸籍簿が長年の使用で汚れたり、火災などの災害にあったりしたために作り直すこと |
消除 | 戸籍の改製や転籍などで、全員が除籍されたことにより、戸籍が閉鎖されること |
相続人調査の手順・具体的な調査方法
相続人調査の手順や具体的な調査方法を解説します。
戸籍の取寄せ方と取得費用
戸籍謄本の取寄せ方と取得費用を紹介します。
市区町村役場の窓口で請求する場合
戸籍謄本(抄本)、除籍謄本、改製原戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取得できます。窓口に備え付けられている交付申請書に、氏名・本籍地・筆頭者・必要枚数・使用目的などを記入して提出します。
申請時には、以下のものが必要です。
- 印鑑(認印可)
- 請求者の本人確認書類 (運転免許証・マイナンバーカード・住民基本台帳カード等)
- 交付手数料
交付手数料は以下のとおりです。
- 戸籍謄本(戸籍全部事項証明):450円
- 戸籍抄本(戸籍個人事項証明):450円
- 除籍謄本:750円
- 改製原戸籍謄本:750円
代理人が請求する場合
請求者本人がやむを得ず役場に出向けない場合などには、委任状を書いて代理人に交付申請を依頼する方法もあります。
代理人が請求する場合は、以下のものが必要です。
- 印鑑(認印可)
- 本人からの委任状(代理人が本人と同じ戸籍に属する場合は不要)
- 代理人の本人確認書類 (運転免許証・マイナンバーカード・住民基本台帳カード等)
- 交付手数料
郵送で請求する場合
本籍地が遠方にある場合や、直接役場に出向くのが難しい場合には、郵便での請求が可能です。
本籍地の市区町村役場など、郵送請求担当窓口宛てに以下の書類を揃えて郵送します(送付先は役場のホームページなどで確認します。)
- 交付申請書(役場のホームページからダウンロード可)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・住民基本台帳カード等)の写し
- 交付手数料分の定額小為替
- 返信用封筒(請求者の住所と氏名を書き、返送にかかる切手を貼る)
定額小為替は、郵便局で購入できます。1通につき発行手数料として100円かかります。
相続人調査の具体的な手順
相続人調査の具体的手順は、以下のとおりです。
- 手順①|被相続人の死亡事実の記載がある戸籍謄本を取得する
- 手順②|記載事項をさかのぼり除籍・改製原戸籍謄本等を順次取得する
- 手順③|取得した戸籍を確認して誰が相続人になるのか調査する
- 手順④|相続人全員の戸籍謄本と住民票を取得する
手順①|被相続人の死亡事実の記載がある戸籍謄本を取得する
被相続人の死亡の事実が記載された戸籍(または除籍)謄本を取得します。死亡時の戸籍謄本を見れば、被相続人に配偶者がいるかどうかが確認できます。
被相続人の本籍地が分からない場合は、本籍地の記載のある住民票(除票)を取得すれば確認できます。住民票(除票)は、被相続人の最後の住所地の市区町村役場で取得できます。
手順②|記載事項をさかのぼり除籍・改製原戸籍謄本等を順次取得する
取得した被相続人の戸籍(または除籍)謄本の記載事項を確認し、前の除籍謄本や改製原戸籍謄本を順次取得します。原則として、被相続人の死亡時の戸籍から生まれた時点までの戸籍を間断なく取り寄せなければなりません。
戦災による戸籍の焼失や戸籍の保存期間の経過などにより、出生までの戸籍が取得できない場合は、戸(除)籍謄抄本の交付ができない旨の市町村長の証明書を取得しましょう。
被相続人の出生時までの戸籍が残っていなくても、生殖機能のある10歳くらいまでの戸籍が取得できれば、相続手続きに支障を及ぼすこともないでしょう。
手順③|取得した戸籍を確認して誰が相続人になるのか調査する
子の有無の調査
被相続人の出生から死亡までの戸籍を確認すれば、被相続人に子がいるかどうかが確認できます。被相続人の子が既に死亡している場合は、代襲相続・再代襲相続がありうるので、孫やひ孫の有無を確認します。
直系尊属の有無の調査
子や孫などの直系卑属がいないことが確認できれば、直系尊属(父母、祖父母等)の有無を調査します。被相続人の父母が存命の場合は、父母が相続人となります。父母が既に死亡している場合は、祖父母が存命であるかどうか順次戸籍を取得して確認します。
兄弟姉妹の有無の調査
被相続人に子や直系尊属がいないことが確認できれば、兄弟姉妹の有無を調査します。
具体的には、被相続人の父母(実父母・養父母)の出生までの戸籍をそれぞれ取り寄せます。
手順③|相続人全員の戸籍謄本と住民票を取得する
相続人全員の戸籍謄本(現在戸籍)を取得し、相続人の生存を確認します。
相続人の生存が確認できたら、相続人の所在を確認するために住民票を取得します。住所が分からない場合は、戸籍の附票を取得して住所を確認します。
戸籍の見方【相続人調査に欠かせない!】
明治5年に戸籍法が施行された後、時代とともに法律が改正され、以下のとおり戸籍の様式・書式が変更されました。
- 明治5年式戸籍
- 明治19年式戸籍
- 明治31年式戸籍
- 大正4年式戸籍
- 昭和23年式戸籍(現行戸籍)
- 平成6年式戸籍(コンピュータ化)
上記①の明治5年式戸籍は、戸籍の保存期間が経過したため廃棄処分され、現在では取得できません。②の明治19年式戸籍も、その多くが保存期間を経過しているため、現在の相続手続きではほとんど目にすることがありません。
ここでは、明治31年式戸籍以降の戸籍の見方を解説します。
明治31年式戸籍の見方
明治31年式戸籍は、明治31年7月16日から大正3年12月31日まで作られました。
明治31年式戸籍の様式は以下のとおりです。
この戸籍では、上記①、②、③を確認しましょう。
①の戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄には、以下の事項が記載されています。
- どのような原因で
- いつ戸主となり
- この戸籍が作られたのか
②の事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 死亡
- 家督相続(戸籍の抹消)
したがって、①と②を確認すると、この戸籍がいつ編製され、いつ抹消されたかが分かります。
戸主の従前戸籍を取得したい場合は、戸籍謄本等交付申請書に、本籍地欄に記載された本籍地を記入し、戸主の氏名欄に前戸主の名前を記載します。
戸主以外の家族の事項欄(③)に以下の事項が記載されています。
- 出生
- 養子縁組
- 婚姻
- 離婚
- 認知
- 死亡
例えば、記載されている家族が戸主の妻で、以下のような記載があれば、妻が婚姻によりどの戸籍から入籍したのかが分かります。
明治〇年〇月〇日〇〇県〇〇郡〇〇町〇〇番地戸主〇〇〇〇長女婚姻届出同日受付入籍 |
妻の従前戸籍を取得する場合は、戸籍謄本等交付申請書に上記太字欄の本籍地と戸主名を記載します。
大正4年式戸籍の見方
大正4年式戸籍は、大正4年1月1日から昭和22年12月31日まで作られました。
明治31年式戸籍にあった戸主ト為リタル原因及ヒ年月日欄が廃止され、戸主の事項欄に記載されるように変更されました。
大正4年式戸籍の様式は以下のとおりです。
この戸籍では、①及び②を確認しましょう。
①の戸主の事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 出生
- 養子縁組
- 婚姻
- 離婚
- 認知
- 死亡
- 家督相続
- 戸籍の改製
- 戸籍の消除
戸主の事項欄を確認すると、以下の事項が確認できます。
- この戸籍がいつ作られたか
- いつ改製されたか
いつ消除されたか
②の戸主以外の家族の事項欄には、その家族について、以下の事項が記載されています。
- 出生
- 養子縁組
- 婚姻
- 離婚
- 認知
- 死亡
現行戸籍の見方
現行戸籍は、昭和23年1月1日から作られ、同一戸籍内の各人に共通する事項を記載する欄として、以下の欄が新たに設けられました。
- 筆頭者氏名欄
- 戸籍事項欄
家制度が廃止されて、戸籍の編成も夫婦単位となり、以下のとおり様式も変更されました。
①の戸籍事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 新戸籍の編製に関する事項
- 転籍に関する事項
- 戸籍の全部の消除に関する事項
- 戸籍の全部に係る訂正に関する事項
- 戸籍の再製または改製に関する事項
戸籍の編製日と消除日が記載されているため、旧法戸籍に比べて、いつからいつまでの戸籍かが容易に判別できるようになりました。
②および③の身分事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 出生
- 認知
- 養子縁組
- 特別養子縁組
- 離縁
- 婚姻
- 離婚
- 親権または未成年者の後見に関する事項
- 死亡
- 失踪
- 配偶者の復氏
- 推定相続人の廃除に関する事項
- 入籍
- 分籍
- 国籍の得喪・選択宣言などに関する事項
- 氏の変更
- 名の変更
- 就籍に関する事項
- 性別の取扱いの変更に関する事項
コンピュータ化戸籍の見方
平成6年の戸籍法の一部改正により、これまで紙に記録し調製されていた戸籍は、磁気ディスクに記録し調製できるようになりました。これを戸籍のコンピュータ化といいます。
コンピュータ化の実施時期は、各市区町村の任意であるため、まだコンピュータ化していない市区町村もあります。
コンピュータ化戸籍の様式は以下のとおりです。
①の戸籍事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 新戸籍の編製に関する事項
- 転籍に関する事項
- 戸籍の全部の消除に関する事項
- 戸籍の全部に係る訂正に関する事項
- 戸籍の再製または改製に関する事項
②の戸籍に記載されている者の事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 戸籍に書かれている者の氏名
- 生年月日
- 父母(養父母)の氏名
- 父母(養父母)との続柄
戸籍に記載されている(いた)者が、婚姻や死亡により除籍になった場合は、上記サンプル画像のように、除籍と記載されます。
③の身分事項欄には、以下の事項が記載されています。
- 出生
- 認知
- 養子縁組
- 特別養子縁組
- 離縁
- 婚姻
- 離婚
- 親権または未成年者の後見に関する事項
- 死亡
- 失踪
- 配偶者の復氏
- 推定相続人の廃除に関する事項
- 入籍
- 分籍
- 国籍の得喪・選択宣言などに関する事項
- 氏の変更
- 名の変更
- 就籍に関する事項
- 性別の取扱いの変更に関する事項
【ケース別】相続人調査で収集する戸籍の範囲
ここでは、相続人調査で収集する戸籍の範囲をケース別に解説します。
すべてのケースで必要な戸籍
すべてのケースで必要な戸籍は、以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
被相続人の子が相続開始前に死亡している場合
被相続人の子が被相続人より先(または同時)に死亡している場合は、その子の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍謄本が必要です。
死亡した子の代襲相続人(被相続人の子や孫)の有無を調査するために必要です。
被相続人に子がいない場合
被相続人の父母・祖父母のうち誰かが存命の場合
被相続人の父母・祖父母のうち誰かが存命の場合は、既に死亡した父母または祖父母の死亡の事実の記載のある戸籍謄本を取得します。
被相続人の父母・祖父母が全員亡くなっている場合
被相続人の父母・祖父母が全員亡くなっている場合は、以下の戸籍を取得します。
- 被相続人の父母の出生から死亡まで連続した戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
- 被相続人の祖父母の死亡の事実の記載のある戸籍謄本
被相続人の父母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類は、被相続人の兄弟姉妹の有無を確認するために必要です。
被相続人の兄弟姉妹が全員亡くなっている場合
被相続人の父母・祖父母、兄弟姉妹が全員亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍謄本を取得します。
兄弟姉妹の代襲相続人(被相続人の甥・姪)の有無を調査するために必要です。
相続人調査のコツ
ここでは、相続人調査や相続手続きをスムーズに進めるコツを紹介します。
同一の市区町村役場で複数の戸籍謄本等を取れる見込みがある場合は一括請求する!
同一の市区町村役場で複数の戸籍・除籍・改製原戸籍謄本を取得できる見込みがある場合は、交付申請書の余白に、以下の旨を記載すると、同役場に存在する謄本類をまとめて取得できます。
(対象者の氏名)の出生から現在(死亡)までが分かる貴庁所有の全ての戸籍謄本類を各1通交付(郵送)してください。 |
相続関係図を作成すれば見落としを防げる!後の手続きにも便利!
戸籍謄本類を取り寄せたら、相続関係図を作成します。
相続関係図の作成は必須ではありませんが、作成しておくと以下のようなメリットがあります。
- 相続人の見落としを防げる
- 相続登記申請後、戸籍謄本などの原本還付を受けられる
- 金融機関の手続きに相続関係図の提出を求められた場合も速やかに対応できる
相続人調査を弁護士に依頼するメリットと費用
ここでは、相続人調査を弁護士に依頼するメリットと弁護士費用について解説します。
相続人調査を弁護士に依頼した方が良い理由
相続人調査は、相続人ご自身でも行えます。しかし、被相続人が転籍を繰り返していたり、収集した戸籍に手書きで書かれた古い戸籍が含まれたりすると、収集や判読が難しく見落としや漏れが生じてしまうこともあるでしょう。
相続人調査を弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットがあります。
- 手間のかかる戸籍の収集を代行してもらえる
- 戸籍を正確に判読し漏れなく相続人を特定してもらえる
- 自分で調査するよりもスピーディーに調査が完了する
相続人調査を弁護士に依頼すると良いケース
以下のような場合は、相続人調査を弁護士に依頼することをおすすめします。
- 戸籍の見方が分からない
- 忙しくて戸籍収集のための時間がとれない
- 相続人が大勢いる
- 相続関係が複雑で面識のない相続人がいる
- 被相続人が結婚・離婚を繰り返している
- 被相続人が養子縁組をしたと聞いている
- 被相続人が生前または遺言により子を認知した
相続人調査を弁護士に依頼した場合の費用
相続人調査の弁護士費用は、法律事務所や相続関係の複雑さによって異なりますが、10~20万円程度が一般的な目安です。事案によっては、金額が増減することもあります。
まとめ
相続が開始されたら、どのようなケースでも相続人調査が必要です。
相続人が自分たちしかいないと思われるような場合でも、調査をすると養子縁組した子や、認知した子の存在が発覚することもあります。
相続人が1人でも欠けると遺産分割協議が無効になるため、必要な調査を怠らず正確に相続人を把握しなければなりません。
戸籍の集め方がわからない方や戸籍の収集のための時間が取れない方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。
相続人調査のみのご依頼はもちろん、その後の遺産分割協議や名義変更等のお手続きをまとめてご依頼いただけるプランをリーズナブルな料金体系でご用意しております。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。