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相続放棄の期限|熟慮期間の起算点や期限後の対応も解説

相続放棄の熟慮期間は、当該相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月とされています。

この熟慮期間の起算点は、被相続人と相続人の続柄や状況によって異なるため、期限切れにならないためには、起算日を正しく知ることが重要です。

この記事では、相続放棄の期限(熟慮期間)や起算点、期限後の対応について解説します。

相続放棄をご検討中の方は、ぜひご参考になさってください。

 

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相続放棄の手続き期限は3か月|熟慮期間の起算点は?

相続放棄の熟慮期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月が原則です。例外的に、相続財産の全部または一部の存在を認識した時が熟慮期間の起算点として扱われることがあります。

【原則】自己のために相続の開始があったことを知った時

相続放棄の熟慮期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。

したがって、被相続人が亡くなったことや、自分に相続権があることを知らなった場合は、熟慮期間が進行しません。

次の4つのパターンを例に、熟慮期間がいつからスタートするのかを解説します。

  • 被相続人の配偶者や子が相続人となる場合
  • 再転相続が起こった場合
  • 相続人が未成年者または成年被後見人である場合
  • 先順位の相続人が相続放棄した場合

ひとつずつ説明します。

被相続人の配偶者や子が相続人となる場合

例えば、被相続人Aが亡くなった場合、通常であれば、被相続人の配偶者Bや子Cは、Aが亡くなったその日に、被相続人が死亡した事実と、BCが相続人になることを知ります。この場合の熟慮期間の起算点は、被相続人が死亡した日です。

再転相続が起こった場合

被相続人の子Cが、熟慮期間中に被相続人Aの相続の承認または放棄を行わないまま死亡した場合、Cの子(被相続人Aの孫)であるDが二次相続人となります。この場合の熟慮期間の起算点は、Dが被相続人Aの相続人になったことを知った時です。

相続人が未成年者または成年被後見人である場合

相続人が未成年者または成年被後見人である場合は、その法定代理人が相続の開始を知った日から熟慮期間が進行します。

例えば、未成年者が相続の開始を知らなくても、その法定代理人(親権者等)が知っていれば、親権者が相続の開始を知った日に熟慮期間がスタートします。

先順位の相続人が相続放棄した場合

被相続人の第1順位である子が相続放棄をすると、第2順位である被相続人の父母・祖父母に相続権が移ります。第2順位である被相続人の父母・祖父母が相続放棄すると、第3順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

先順位の相続人が相続放棄したことにより、次順位の人が相続人になった場合は、次順位の相続人が先順位の相続人が相続放棄した事実を知った日から熟慮期間がスタートします。

【例外】相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時

自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月を経過していても、以下のような特別な事情が認められる場合には、例外的に相続放棄の効力が認められることがあります。

  • 相続人が、被相続人に相続財産が全くないと信じていた
  • 被相続人に相続財産が全くないと信じたことについて相当な理由があった
  • 被相続人の生活歴・被相続人と相続人との交際状態等の事情からみて相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情があった

このような場合は、相続財産の全部または一部の存在を認識した時が熟慮期間の起算点となります。

例えば、3か月経過後に被相続人の債権者から返済を迫られることで相続債務が明らかになった場合、被相続人の生活歴や相続人との関係性、その他諸般の状況からみて、被相続人の借金の存在を知らなかったことについて相当な理由がある場合は、3か月経過後の申述であっても相続放棄の効力が認められる可能性があります。

相続放棄の期限を過ぎてしまった場合はどうすればいい?

ここでは、相続放棄の期限を過ぎてしまった場合の対応方法について解説します。

期限があることを知らなかったという言い訳は認められない

「法律で相続放棄の申述に期限が定められていることを知らなかった」という理由だけでは、期限後の申述は認められません。

裁判所に相続放棄の申述書を受理してもらうには、それ以外の理由が必要です。

期限後の相続放棄の申述に必要な資料

期限を超えた申述を、例外的に裁判所に受理してもらうためには、特別の事情があったことを証する資料を提出する必要があります。

例えば、被相続人と生前ほとんど交流がなく、被相続人が死亡した事実を3か月経過後に知った場合は、死亡の通知を受けた日を証する資料を提出します。

3か月経過後に、債権者からの督促等によって被相続人の債務が判明した場合は、債権者からの請求書や督促状などを提出します。

それらの証拠資料とともに、申述が遅れた事情を説明する書面(上申書)を提出します。上申書には、主に以下の点を記載します。

  • 被相続人との生前の交流の有無
  • 被相続人に相続財産が全くないと信じた理由
  • 相続財産の有無の調査が困難だった理由

相続放棄の期限を3か月以上に延長する方法

ここでは、相続放棄の期限を3か月以上に延長する方法を解説します。

期限前に相続放棄の期間伸長を申立てる

3か月以内に相続財産の調査が完了しない場合など、熟慮期間内に相続の承認・放棄を決定できない事情がある場合は、家庭裁判所に申立てることで、熟慮期間を伸長できます。

期間伸長の申立ては、相続人が自己のために相続が開始されたことを知った時から3か月以内に行います。裁判所に期間伸長が認められると、熟慮期間が1~3か月程度伸びます(裁判官の判断による)。

なお、期間伸長の申立ては、裁判所が期間伸長を認めるかどうかの決定を下すまで、1~2週間程度かかります。期間伸長を認めない旨の決定が出された時点で、3か月の熟慮期間を経過していると、相続放棄ができなくなります。

期間伸長を申立てる際は、このようなリスクを回避するため、日程に余裕を持って手続きすることが重要です。

相続放棄の期間伸長に必要な書類

相続放棄の期間伸長に必要な書類は、伸長を求める相続人と被相続人の続柄によって異なります。

続柄別の必要書類は、以下のとおりです。

申立人 必要書類
被相続人の配偶者 ①相続の承認または放棄の期間の伸長申立書

②被相続人の住民票除票又は戸籍附票

③伸長を求める相続人の戸籍謄本

④被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等) ①相続の承認または放棄の期間の伸長申立書

②被相続人の住民票除票又は戸籍附票

③伸長を求める相続人の戸籍謄本

④被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑤代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

被相続人の父母・祖父母等(直系尊属) ①相続の承認または放棄の期間の伸長申立書

②被相続人の住民票除票又は戸籍附票

③伸長を求める相続人の戸籍謄本

④被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑤被相続人の子(及びその代襲者)が死亡している場合は、その子(及びその代襲者)の出生から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑥被相続人の祖父母が申立てる場合は、被相続人の父母の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(甥・姪) ①相続の承認または放棄の期間の伸長申立書

②被相続人の住民票除票又は戸籍附票

③伸長を求める相続人の戸籍謄本

④被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑤被相続人の子(及びその代襲者)が死亡している場合は、その子(及びその代襲者)の出生から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑥被相続人の直系尊属(父母・祖父母)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

⑦代襲相続人(甥・姪)が申立てる場合は、被代襲者(被相続人の兄弟姉妹)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

参考:相続の承認又は放棄の期間の伸長 | 裁判所

相続放棄の期間伸長にかかる費用

相続放棄の期間伸長にかかる費用は、以下のとおりです。

  • 収入印紙800円分(相続人1人につき)
  • 連絡用の郵便切手(数百円程度・裁判所による)

熟慮期間内でも相続放棄できないケース

ここでは、熟慮期間内でも相続放棄できないケースについて解説します。

遺産分割協議が成立している場合

共同相続人間で遺産分割協議が有効に成立している場合は、その後に相続放棄することはできません。

遺産分割協議は、相続の法定単純承認事由に該当するからです。

ただし、遺産分割協議が成立した後に、被相続人に多額の借金があることが判明した場合などで、相続人が相続債務の存在を認識していれば、当初の遺産分割協議の成立はあり得なかったという場合は、当該遺産分割協議が錯誤により無効となることがあります。

遺産分割協議が無効であれば、法廷単純承認事由が発生しないので、多額の債務の存在を知ったときから3か月以内であれば相続放棄の申述が受理される可能性があります。

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相続財産を処分した場合

相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合は、相続放棄できません。

相続財産の処分行為は、相続の法定単純承認事由となるからです。

相続財産の処分にあたる行為の具体例は、以下のとおりです。

  • 不動産・動産その他の財産の売却・譲渡
  • 不動産・動産その他の財産の損壊・破壊
  • 預貯金の解約・払い戻し
  • 賃貸物件の賃料の取り立て・収受
  • 賃貸物件の解約・賃料振込先口座の変更
  • 株式の議決権行使

相続財産を隠匿・費消した場合

相続人が、相続財産の全部もしくは一部を隠匿したり、自らこれを消費したりした場合は、相続放棄できません。

相続財産の隠匿には、相続の限定承認を行った場合に、悪意で相続財産目録に財産を記載しなかったときも含まれます。

相続放棄後、被相続人の財産を処分した場合は、相続財産を隠匿・消費したものとして、相続を承認したこととなるため、相続放棄が無効となります。

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相続開始前には相続放棄できない

相続放棄は、相続開始後の熟慮期間内に行う必要があるため、相続開始前の相続放棄はできません。

期限後の相続放棄は弁護士に相談を!

ここでは、3か月経過後の相続放棄の申述を弁護士に依頼するメリットを解説します。

期限を過ぎていても相続放棄できるかどうかの見通しを説明してもらえる

期限を過ぎていても一定の条件を満たせば、相続放棄の申述が受理されることがあります。

弁護士に相談すれば、過去の判例などを踏まえて、申述が受理されるかどうかの見通しを説明してもらえます。

ご自身では期限が過ぎていると考えている場合でも、事情によっては熟慮期間であるケースも多くあります。相続放棄の知識や実務に精通している弁護士であれば、相続放棄の熟慮期間の起算点を的確に把握できます。

相続放棄が受理されるように尽力してもらえる

裁判所に期限を超えた申述を受理してもらうためには、特別の事情があったことを説明し、相続放棄が遅れた理由を理解・納得してもらわなければなりません。

弁護士に依頼すれば、裁判所への説明や資料の収集を適切に進めてもらえます。自分で行うより、相続放棄の実務に通じている弁護士に依頼した方が、裁判所に事情を理解してもらいやすくなります。

【前提】リスク回避のため期限前に相談するのが最善

期限後の申述が家庭裁判所に却下された場合、相続放棄不受理決定通知を受けた日の翌日から2週間以内に、即時抗告を申立てれば、高等裁判所で審理してもらえます。しかし、一度なされた家庭裁判所の決定は簡単に覆るものではありません。

相続放棄が却下されるリスクを最小限に抑えるためには、期限内に手続きを行うことが大切です。後悔しないためにも、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

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まとめ

相続を承認するか放棄するかを決めるための熟慮期間はあっという間に過ぎてしまいます。

被相続人と疎遠で相続財産の状況が分からない場合など、ご自身での判断が難しいこともあるでしょう。

弁護士に相談すれば、過去の判例を踏まえた適切なアドバイスが受けられ、必要書類の収集や申述書の作成をすべて任せられます。

相続放棄にご不安・お悩みをお抱えの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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