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相続人不存在とは|相続人がいない土地や登記・財産はどうなる?

相続人不存在とは

相続人不存在とは、亡くなった人に法定相続人がいない状態を指します。

相続人不存在の場合、家庭裁判所は相続財産清算人を選任し、相続財産の管理・清算を行います。

受遺者や特別縁故者などがいなければ、相続人不存在の財産は最終的に国庫に帰属します。

自分の知人が亡くなった場合、あるいは自分自身がなくなった場合に遺産はどうなるのだろうかと心配になる人もいるでしょう。

この記事では、相続人不存在の場合について以下の点をわかりやすく解説します。

  • 相続人不存在とは・相続人不存在となるケース
  • 相続人不存在となった財産が国庫に帰属するまでの流れ
  • 相続人不存在の場合、生前で対策しておくとよいこと

相続人不存在とは

相続人不存在とは、亡くなった人(被相続人)に法定相続人がいない状態のことです。

相続人不存在の財産は、そのまま放置されるわけではありません。

法律上、権利や義務の主体となれるのが法人であるため、所有者がいない財産は一時的に法人化されます。

(相続財産法人の成立)

第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

引用:民法第951条 – e-Gov

その後、相続財産の管理や清算を行う相続財産清算人が清算手続きを行った上で、最終的に国庫に帰属されます。

なお、2021年に相続人不存在として、国庫に帰属した財産は647億円にのぼりました。

参考:相続人なき遺産、647億円が国庫入り 21年度過去最高 – 朝日新聞

相続人不存在となるケース

法定相続人がいない

相続人不存在の代表的なケースは、法定相続人がいない場合です。法定相続人とは、民法で定められた相続できる権利を持つ親族を指します。

例えば、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などが該当します。

もしこれらの人が誰も存在しない、あるいはすでに亡くなっている場合、相続人不存在となります。

法定相続人となれる親族は以下のとおりです。

順位 相続人
常に相続人 配偶者
第一順位 被相続人の子ども(子どもがすでに亡くなっている場合は孫)
第二順位 被相続人の両親(両親がすでに亡くなっている場合は祖父母)
第三順位 被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は甥や姪)

法定相続人の範囲なお、相続人には、養子、養親、離婚した配偶者との間に生まれた子どもなども含まれます。

相続人が全員相続放棄した

法定相続人がいても、相続人全員が相続放棄をすると、結果として相続人不存在の状態になります。

相続放棄とは、相続権を完全に放棄することです。相続財産には、プラスの財産以外にも、借金などが含まれ、借金が多いようなケースで相続放棄を選択されることがあります。

相続放棄が行われると、放棄した相続人は最初から相続人ではなかったとみなされ、次の順位の相続人に相続権が移ります。

例えば、子どもが相続放棄をした場合、被相続人の両親に相続権が移ります。

しかし、相続人全員が相続放棄をすると、相続する人がいなくなり、相続人不存在として処理されることになります。

相続欠格・相続廃除で相続人がいない

相続人が相続欠格や相続廃除となり、結果として相続人がいなくなるケースもあります。

相続欠格、相続廃除は、不法行為により相続権を失うことです。

種類 概要 該当ケース
相続欠格 犯罪行為などがあった場合に適用され、自動的に相続権がはく奪される 被相続人を故意に殺害した場合、遺言書を偽造・変造した場合など
相続廃除 被相続人の意思によって、特定の相続人の権利を剥奪できる制度 被相続人への重大な虐待や著しい非行により、被相続人が生前に廃除を申し立てた場合など

相続欠格や相続廃除によって相続人がいなくなった場合も相続人不存在として処理されます。

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相続人不存在だと相続財産はどうなる?

相続人がいない場合でも、遺言により遺贈を受けた人や、特別縁故者がいれば遺産は特定の人に相続されます。

遺言書があれば特定の人に遺贈される

相続人がいない場合でも、遺言書が残されており、特定の人に財産を遺贈すると記されている場合は、特定の人に財産を譲れます(遺贈)。

遺贈は、特定の親族だけでなく、友人やお世話になった人、団体、法人など、誰に対しても遺贈が可能です。

遺贈により財産を受け取る受遺者がいれば、遺産は受遺者に相続されます。

特別縁故者がいれば財産分与される

特別縁故者とは、被相続人と特別親しい関係があった人のことです。

相続人が不存在の場合、被相続人との関係が認められた人は、特別縁故者として遺産の全部または一部を受け取れます(民法第958条の2)。

特別縁故者として認められる可能性があるのは、内縁や事実婚関係の人や、看護に努めてきた人などです。

相続人不存在が確定した後に、家庭裁判所に特別縁故者への相続財産分与を申し立てて認められれば、遺産が分与されます。

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受遺者も特別縁故者もいなければ国庫に帰属する

相続人も受遺者も特別縁故者もおらず、相続人不存在の場合、相続財産は最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。

国庫帰属とは、国が財産を引き受けることを意味し、これにより放置されることなく管理されます。

なお、特別縁故者に一部が分与され、残った相続財産も国庫に帰属することになります。

相続人不存在で財産が国庫に帰属するまでの手続き

相続人がいない場合、相続財産はどのように処理されるのでしょうか。

相続人がいないと財産が放置されてしまうのではと思う人もいるかもしれません。

法定相続人も、他に相続する人もいない場合は、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、適切に処理されます。

ここでは、財産が国庫に帰属するまでの流れを具体的に解説します。

利害関係者が相続財産清算人選任の申し立て

相続人が不在の場合、家庭裁判所に手続きを申し立てて、被相続人の財産管理や精算を行ってもらいます。

被相続人の利害関係人などが、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続財産清算人の選任を申し立てます。

相続財産清算人とは、相続人に代わり、相続財産の管理・精算を行う人のことです。

相続財産管理人は誰でもなれますが、法的手続きへの対応が必要であるため、家庭裁判所の地域の弁護士が選任されることが多いです。

相続財産清算人の申し立ては、以下の人が行います。

利害関係人 被相続人の特別縁故者

被相続人の成年後見人

被相続人に対して債権を持っている人(お金を貸していた人など)

相続放棄をした人(相続放棄をすると相続財産の保存が義務付けられる)

被相続人の不動産の共有者(被相続人と不動産を共有している人)

その他 市区町村役場

検察官

なお、被相続人の財産を相続放棄しても、その財産を保存する義務を負います。

例えば、土地を相続放棄しても、その土地を実際に占有している場合は、相続放棄をした人に土地を管理する義務が生じます。

ほかの相続人か相続財産清算人に引き継ぐことで、土地を管理する義務がなくなります。

相続人捜索の公告

相続財産清算人の選任が行われた後、相続財産清算人と相続人捜索の公告が行われます。

相続人捜索の公告とは、国が発行する官報という新聞のようなものに、相続人として名乗り出るよう掲載を行うことです。

相続人が現れた場合には、その人が相続することになります。

この間に、相続財産清算人は、財産目録を作成し、名義変更などを行います。

請求申し出の公告と弁済

相続財産清算人は、債権者と受遺者に請求申し出の公告を行います。

これは、例えば被相続人にお金を貸しているなどの債権者や受遺者(遺贈を受ける権利を持つ者)に対し、一定期間内に請求を申し立てるよう告知するための手続きです。

相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告は2か月以上と定め、この公告期間終了後に、請求を申し立てた債権者や受遺者に対して、被相続人の財産から支払いを行います。

相続人不存在の確定

相続人選任と相続人捜索の公告は、2021年の民法改正により、公告期間が10か月から6か月に短縮されました。

相続人捜索の公告から6か月経過しても相続人が現れない場合、相続人不存在が確定します。

なお、相続人不存在が確定した後に、特別縁故者が相続財産分与の申し立てを行った場合、家庭裁判所は審判を行って、特別縁故者への分与を行います。

特別縁故者への分与が行われた後で、被相続人と不動産を共有している人へ共有持分が帰属されます。

国庫への帰属

受遺者や債権者、特別縁故者、共有者への清算が終わると、最後に相続財産から相続財産清算人の報酬が支払われます。

なお、相続財産が十分でない場合は、相続財産清算人を選任した利害関係人が予納金の負担を求められることもあります。

そして、相続財産清算人の報酬が差し引かれて残った相続財産は、国庫に帰属します。

相続人不存在で相続人がいない土地はどうなる?

相続人不存在の土地はどのように処理されるのでしょうか?

特に近年では、相続人がいない土地が放置されて問題化しているケースも多く見られます。

実際には、相続人不存在であっても土地が放置されるわけではなく、法律に基づき適切な手続きが行われます。

受遺者や特別縁故者がいれば相続できる

相続人がいない場合でも、遺言書があれば、指定された受遺者がその土地を受け継ぐことができます。

さらに、相続人不存在であっても、特別縁故者が認められれば、特別縁故者となった人が被相続人の土地を取得できます。

共有者がいる場合は共有者へ帰属する

特別縁故者がいない場合や、特別縁故者への財産分与を終えた後に、相続財産が余っており、共有持分が含まれている不動産がある場合は、被相続人と不動産を共有している人に、共有持分の移転が行われます。

この場合、共有者は持分移転登記を行う必要があります。

しかし、特別縁故者への分与が優先されるため、相続財産が残されていない場合、共有持分は共有者へ帰属されません。

相続財産清算人が不動産登記を行い土地を処分する

相続人不存在の財産は、自動的に法人化されます。相続人不存在の場合、不動産のまま国庫に帰属することはできないため、不動産の売却が必要です。

そのため、相続財産清算人は不動産登記を行い、売却した金額を国庫に納めます。

相続人不存在の場合は生前対策が重要

相続人がいない場合、自分がこれまで築いた財産は国庫に帰属します。国庫に帰属する以外で、大切な人に財産を残す方法もあります。

以下では、相続人がいない場合に、他の人に財産を残す方法を解説します。

特定の人に生前贈与をする

相続人がいない場合でも、特定の人に自分の財産を残す方法はあります。亡くなる前に財産を贈りたいのであれば、生前贈与を検討するとよいでしょう。

生前贈与は、相続人以外の人、友人、知人、お世話になった人など誰にでも贈与可能です。

ただし、年間110万円を超えると、贈与を受けた人に贈与税の負担が生じます。

贈与をする場合は、贈与する相手にもあらかじめ相談し、年間110万円以内に収まるように計画的に贈与を行うと税負担が軽減できます。

さらに、特定の団体に寄付を行う方法もあります。

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遺言書を作成して遺贈する

遺言書を作成することで、特定の人に財産を遺贈できます。例えば、〇〇に財産を遺贈すると記しておけば、その人が受け取る権利を持ちます。

遺贈も生前贈与と同様に、知人、友人、お世話になった人、特定の団体(自治体、学校、NPO法人など)にも、遺贈が可能です。

遺贈した財産も、受遺者に相続税の負担が生じます。

しかし、相続人がいない場合の相続税の基礎控除額は3,000万円であるため、3,000万円までであれば贈与税の課税対象となりません。

なお、遺言執行者を指名しておくと、遺言のとおり財産を分けてもらえます。大切な人に財産を遺贈したい場合は、遺言書の作成も検討するとよいでしょう。

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家族がいない場合、自分が亡くなった後の手続きを誰かにお願いするのは気が引けます。誰かに頼めない場合は、死後事務委任契約を検討しましょう。

死後事務委任とは、葬儀や遺品整理、役所への届け出など、死後の手続きを代行してもらう契約です。

死後事務委任契約を行っておけば、こうした手続きを代行してもらえます。知人や友人だけでなく、弁護士や司法書士、社会福祉協議会、民間企業などに依頼できます。

信頼できる人や専門家に依頼しておくことで、安心して最期を迎えられます。

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この場合、相続財産清算人が選任された後、相続財産から債務の弁済が行われます。

弁済は以下の順序で行われます。

  • 優先権を有する債権者(税金などの支払いを受ける自治体)
  • 一般債権者(お金を貸している人など)
  • 受遺者
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この場合、まずは行方不明である相続人を捜索し、それでも発見できないときは、以下いずれかの手続きを行います。

不在者財産管理人の選任 行方不明の相続人に代わり財産管理を行う人
失踪宣告の申し立て 行方不明から7年以上経過している場合は、失踪宣告により法律上死亡したとみなす制度

手続きが複雑となるため、行方不明者がいる場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

まとめ

相続人不存在の場合、相続財産はそのまま放置されず、適切な精算を経て、残りは国庫に帰属します。

しかし、自分の築いた財産がそのまま国庫に帰属されるのは寂しいと感じる人は、元気なうちに知人や友人、お世話になった人に財産を贈るのも一つの選択肢です。

贈る相手がいない場合は、自治体や学校、NPO法人に寄付などを行う方法もあります。

ネクスパート法律事務所では、これまで数多くの方の生前贈与、遺言書、遺言執行の相談をお受けしてきました。

自分の財産をどうするか迷った場合は、当事務所にお気軽にご相談ください

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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