相続において失踪宣告の手続きを検討すべきケースは?流れも解説

相続人の一人と長年連絡が取れず、生死が分からない場合、相続手続きを進められません。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならないためです。
この記事では、失踪宣告手続きを検討すべきケースと手続きの流れ、よくある質問に対する回答について解説します。
目次
失踪宣告とは?
失踪宣告とは、生死不明な人や行方不明者を法律上死亡したものとみなす宣告をする家庭裁判所の手続きです。
失踪宣告が認められると、他の相続人は相続手続き等を進められます。行方不明の状態が続くと、財産の処分などができず、残された家族は不安定な立場に置かれます。
失踪宣告の手続きをすれば、こうした状況が解消される可能性があります。
相続において失踪宣告の手続きを検討すべきケース
相続において失踪宣告の手続きを検討すべきケースは、以下の2つです。
行方不明者が7年以上生死不明の場合
行方不明者が7年以上生死不明の場合、失踪宣告を検討したほうがよいでしょう。
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。行方不明になった人の生死が7年以上分からない場合に申立てる失踪宣告を、普通失踪といいます。
申立てが認められれば、行方不明者は死亡したものと扱われ、財産の処分等が可能になります。
戦争・船舶の沈没・震災などで1年間生死不明の場合
戦争や船舶の沈没、震災などで1年間生死不明の人がいる場合、失踪宣告を検討したほうがよいでしょう。
戦争や船舶の沈没、震災を理由に生死が分からなければ、特別失踪として認められる可能性があります。
失踪宣告の手続きの流れは?
失踪宣告の手続きはどのようにすればよいか、流れを以下で解説します。
家庭裁判所に申し立てる
行方不明者の最終住所地を管轄する家庭裁判所に対し、失踪宣告の申立てをします。
その際に必要な書類は以下のとおりです。
- 申立書
- 行方不明者の戸籍謄本
- 行方不明者の戸籍の附票
- 失踪を証する書類
- 申立人の利害関係を示す資料(親族等であれば戸籍謄本等)
申立てができるのは、以下のとおり、失踪宣告を求めることについての法律上の利害関係を有する人です。
- 配偶者
- 父母
- 推定相続人
- 財産管理人
- 受遺者
- 保険金の受取人に指定されている人
家庭裁判所が調査をする
失踪宣告の申立てがされると、家庭裁判所は申立人や親族に対する調査を行います。
状況によっては、追加書類の提出を指示される場合もあります。
失踪者に関する事項を官報に掲載する
家庭裁判所は調査をした後、失踪者に関する事項を官報に掲載します。
普通失踪の場合は3か月以上、特別失踪の場合は1か月以上にわたって、以下の内容が掲載されます。
- 失踪宣告の申立てがされたこと
- 本人に向けて生存していれば届出をしてほしいこと
- 行方不明者の生存を知っている人は届出をしてほしいこと
- 届出がなければ、失踪宣告が行われること
- 申立人の氏名・住所
- 行方不明者の氏名・住所・生年月日
家庭裁判所が審判を行う
行方不明者が生存している旨の申し出がなかった場合、家庭裁判所は失踪宣告の審判を行います。
失踪宣告の審判が決定したら、申立人に対して審判書が送付されます。
家庭裁判所は、行方不明者に対して失踪宣告がされた旨を官報へ掲載し、行方不明者の本籍地へ通知します。
失踪届を提出する
失踪宣告の審判が確定したら、申立人は10日以内に行方不明者の本籍地または申立人の住所地の役所に失踪届をしなければいけません。
この手続きをしなければ行方不明者が戸籍から除籍されないので、忘れずに行いましょう。
なお、失踪者が除籍された戸籍謄本を各機関に提出すれば相続手続きが進められます。
失踪宣告の手続きに関するQ&A
失踪宣告の手続きに関して、よくある質問とその回答を紹介します。
失踪宣告は審判確定までどのぐらいの期間がかかるか?
失踪宣告は、申立てから審判が確定するまで、半年から1年ほどかかるといわれています。
失踪宣告の手続きで費用はどのぐらいかかるか?
裁判所にもよりますが、合計で1万円前後の費用がかかることが一般的です。
失踪宣告の手続きに必要な費用は、以下のとおりです。
- 申立て費用:800円分の収入印紙
- 家庭裁判所との連絡用の郵券:数千円程度(裁判所によって異なる)
- 官報公告料:4,816円
- 戸籍謄本等の取得費用:千円から数千円
なお、弁護士等に手続きを依頼する場合は、別途費用がかかります。
失踪宣告の申立時に7年の起算点を証明する必要はあるか?
いつから行方不明になったのか、その起算点を証明する書類の提出は必須ではありません。
ただし、あまりにも不明確だと、不在者財産管理人の選任手続きを先行し、財産管理人から失踪宣告を行うよう求められることもあります。
そのため、いつ頃から行方不明になったのか、おおよその時期がわかる書類があれば、できるだけ提出した方がよいでしょう。
例えば、以下のような書類です。
- 警察へ捜索願を提出した日がわかるもの
- 受取人不明などで返送された郵便物
- 勤務先や学校の欠勤・欠席状況がわかるもの
7年という年月が経っていることもあり、行方不明になった日を証明する書類が残っていないケースも多いでしょう。
そのような場合には、当時の状況を説明した親族や知人等の陳述書を提出する方法もあります。
まとめ
相続人の一人が行方不明で、かつ、生死がわからないとなると相続手続きが進められず困ってしまいます。
失踪宣告の申立ては、こうしたことを解消する手段となりますので、長期間にわたって困っている方は、検討してみてはいかがでしょうか。
失踪宣告の申立てはご自分でもできますが、慎重に行わなければならないため弁護士ご依頼されることをおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、相続全般を得意とする弁護士が在籍しています。
相続人の一人と連絡が取れず相続手続きが進められないとお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。