遺産分割の費用|裁判所や専門家を利用した場合の費用もまとめて解説

遺産分割にかかる費用は、大きく分けて次の3つがあります。
- 必ずかかる費用(実費)
- 裁判所の手続きを利用した場合の費用(手続費用)
- 専門家に依頼した場合にかかる費用(弁護士費用、司法書士費用等)
それぞれの手続きにどのくらいの費用がかかるのか、ある程度見通しが立てられれば安心です。
この記事では、遺産分割の費用について、以下のとおり解説します。
- 遺産分割に必要な費用にはどんな種類がある?
- 遺産分割で不動産鑑定した場合に必要な費用
- 遺産分割の調停・審判で家庭裁判所に支払う費用
- 遺産分割を専門家に依頼する場合の費用
- 遺産分割の費用は誰が負担する?
- 葬儀や法事の費用は遺産分割で請求できる?
遺産分割にかかる費用が気になる方は、ぜひご参考になさってください。
目次
遺産分割に必要な費用にはどんな種類がある?
ここでは、遺産分割に必要な費用の種類について解説します。
遺産分割に必要な費用には、主に次の費用があります。
- 相続人調査に必要な費用
- 相続財産調査に必要な費用
- 裁判所の手続きを利用した場合の費用
- 専門家に依頼した場合の費用
ひとつずつ説明します。
相続人調査に必要な費用
相続人調査とは、戸籍謄本等を調べて相続人を確定する手続きです。被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を取り寄せて、相続人を調査します。
相続人調査に必要な費用は、数千円から数万円程度です。被相続人の戸籍の移り変わりや相続人の数によって異なります。取得する戸籍謄本等や住民票の数に、以下の金額を乗じて得た金額がかかります。
- 戸籍謄本:1通につき450円
- 除籍・改製原戸籍謄本:1通につき750円
- 住民票:1通につき200円~400円程度(市区町村によって異なる)
なお、郵送請求の場合は、上記に加えて定額小為替手数料(1通につき100円)と郵便代金(往復郵便料)がかかります。
相続財産調査に必要な費用
相続財産調査とは、被相続人が相続開始時に有していた財産を調べて、個々の財産を評価する手続きです。相続財産調査にかかる費用は、数千円から数万円程度です。相続財産の種類や取得を要する書類によって異なります。
相続財産調査において、取り寄せる可能性がある主な書面および費用は下表のとおりです。
財産の種類 | 書面の種類 | 費用 | 請求先 |
---|---|---|---|
不動産 | 名寄帳の閲覧 | 無料または有料
有料の場合は100円~300円程度 |
不動産所在地の市町村役場、または市税(都税)事務所等 |
不動産登記簿謄本の取得 | ①書面請求の場合:1通につき600円
②オンライン請求・送付の場合:500円 ③オンライン請求・窓口交付の場合:480円 |
不動産所在地の法務局 | |
固定資産評価証明書の取得 | 1通につき200円~400円
※自治体によって異なる |
不動産所在地の市町村役場または市税(都税)事務所等 | |
査定書 | 無料 | 不動産仲介業者 | |
預貯金 | 預貯金残高証明書 | 1通につき数百円~千円前後
※金融機関によって異なる |
金融機関 |
取引明細書 | 1通につき数百円
※金融機関によって異なる |
金融機関 | |
有価証券等 | 取引残高報告書
残高証明書 |
1通につき1,000円前後 | 証券会社 |
登録済加入者情報通知書 | 被相続人1人につき6,050円 | 証券保管振替機構 | |
債務 | 信用情報開示報告書 | 1通につき500円~1,000円 | 信用情報機関(CIC、JICC、KSC) |

裁判所の手続きを利用した場合の費用
共同相続人間で遺産分割の話し合いがまとまらない場合や、遺産分割協議ができない場合には、家庭裁判所の調停・審判手続きを利用できます。
調停・審判手続きを利用する場合は、裁判所に手続費用を支払う必要があります。
調停・審判に必要な費用の詳細は、後述します。
専門家に依頼した場合の費用
遺産分割の手続きの全部または一部を専門家に依頼した場合は、専門家への報酬(弁護士費用、司法書士費用)がかかります。
専門家に依頼した場合の費用の詳細は、後述します。

遺産分割で不動産鑑定した場合に必要な費用
不動産は、主に次の5つの評価額を用いて評価できます。
- 固定資産評価額
- 相続税申告評価額
- 地価公示価格
- 不動産仲介業者による査定
- 不動産鑑定士による評価
このうち、不動産鑑定士による評価は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて登録した不動産鑑定士により行われる鑑定評価であるため、最も客観性に優れ、信頼性の高い評価方法です。
ここでは、遺産分割で不動産鑑定した場合に必要な費用について解説します。
不動産鑑定の費用は不動産の種類によって異なる
不動産鑑定士による鑑定費用は、不動産の種類と鑑定評価額によって異なります。
鑑定評価額は、以下のように不動産の種類と鑑定評価額によって費用が異なります。鑑定評価額は5,000万円以下の場合の鑑定費用相場は、以下のとおりです。
- 土地(更地):20万円~30万円程度
- 建物:20万円~30万円程度
- 土地と建物:25万円~60万円程度
- マンション:30万円~60万円程度
- 賃料:30万円~60万円程度
不動産鑑定の費用を少しでも抑える方法
不動産鑑定士が行う鑑定には、正式な不動産鑑定と簡易鑑定の2つの方法があります。
簡易鑑定の場合は、正式な不動産鑑定に比べて費用が2~3割安く抑えられます。
正式な不動産鑑定は、鑑定基準が国に決められていますが、簡易鑑定は鑑定事務所によって基準が異なることがあります。しかし、簡易鑑定により作成された書面(不動産価格調査書、不動産価格意見書)も、一定の信頼性・妥当性が認められます。
裁判所や税務署に提出せず、個人的または相続人内部的に不動産の評価を知りたい場合に利用できます。
遺産分割の調停・審判で家庭裁判所に支払う費用
ここでは、遺産分割の調停・審判にかかる費用について解説します。
調停に必要な費用
遺産分割調停の申立てに必要な費用は、以下のとおりです。
- 収入印紙:1,200円分
- 連絡用郵便切手:数千円程度(裁判所によって異なる)
申立書に添付する戸籍謄本等や住民票、遺産の内容や評価を証する資料の取得に必要な費用(実費)が別途かかります。
その他、遺産の調査のために、金融機関や公的機関に対し、必要な事項について調査嘱託を行う場合には、往復の郵便費用として数千円程度がかかります。

審判に必要な費用
遺産分割審判の申立てに必要な費用は、以下のとおりです。
- 収入印紙:1,200円分
- 連絡用郵便切手:数千円程度(裁判所によって異なる)
申立書に添付する戸籍謄本等や住民票、遺産の内容や評価を証する資料の取得に必要な費用(実費)が別途かかります。
調停から審判に移行した場合は、改めて裁判所に審判申立書や手数料を提出する必要はありません。調停で郵便切手を使い切ってしまった場合などには、連絡用郵便切手の追納が必要となることがあります。
その他、遺産の調査のために、金融機関や公的機関に対し、必要な事項について調査嘱託を行う場合には、往復の郵便費用として数千円程度がかかります。
遺産分割を専門家に依頼する場合の費用
ここでは、遺産分割を専門家に依頼した場合の費用について解説します。
弁護士に依頼する場合
遺産分割に関する法律相談や一部の手続きを弁護士に依頼する場合の費用相場は、以下のとおりです。
- 法律相談料:30分5,500円~
- 相続人調査:10万円~20万円程度
- 相続財産調査:20万円~30万円程度
- 遺産分割協議書の作成:10万円~20万円程度
遺産分割交渉、調停・審判等を弁護士に依頼する場合は、経済的利益に応じて算出された着手金と報酬金がかかります。
着手金
着手金は、以下のとおり、経済的利益(取得を希望する遺産の額)に応じて算出します。
- 300万円以下の場合:8%
- 300万円超え3,000万円以下の場合:5%+9万円
- 3000万円超え3億円以下の場合:3%+69万円
- 3億円超えの場合:2%+369万円
交渉や調停の場合は、上記それぞれの金額に3分の2を乗じた金額に減額するケースもあります。ただし、着手金の最低額は、11万円(税込)となるのが一般的です。
法律事務所によっては、固定報酬が設定されていることもあります。
報酬金
報酬金は、以下のとおり、経済的利益の額(実際に取得した額)に応じて算出します。
- 300万円以下の場合:16%
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:10%+18万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円
- 3億円を超える場合:4%+738万円
交渉や調停の場合は、上記それぞれの金額に3分の2を乗じた金額に減額するケースもあります。法律事務所によっては、固定報酬が設定されていることもあります。
その他、事案に応じて以下の費用がかかります。
- 実費:交通費、裁判所費用、郵便代、戸籍謄本等の取得にかかった費用全額
- 日当:1日あたり3~5万円程度
司法書士に依頼する場合
司法書士に依頼する場合にかかる費用相場は、以下のとおりです。
- 相続人調査:5万円~10万円程度
- 相続財産調査:10万円~30万円程度
- 遺産分割協議書の作成:5万円~15万円程度
- 遺産分割調停・審判申立書の作成代行:10万円程度
- 相続登記:1件につき10万円程度
なお、司法書士は、遺産分割交渉や調停・審判の代理人になれないため、交渉や家庭裁判所の手続きについては、書面作成代行のみの対応となります。
遺産分割の費用は誰が負担する?
ここでは、遺産分割の費用は誰が負担するかについて解説します。
専門家に支払う費用は原則依頼者が負担する
専門家に支払う費用(弁護士費用や司法書士費用)は、共同相続人間で費用の負担者や負担割合を内部的に決定している場合でも、依頼した本人が支払うのが原則です。
裁判所費用は申立人が支払う
遺産分割調停や審判の申立てにかかる費用は、申立人が負担します。
共同相続人間で負担割合や負担者を決めることも可能
共同相続人全員の合意があれば、負担割合や負担者を自由に決められます。
相続人間に争いがない場合は、以下を専門家に依頼する前に、相続人間で費用の負担割合や負担者を話し合うと良いでしょう。
- 遺産分割協議に先立つ相続人・相続財産調査
- 共同相続人間で合意に至った内容に沿った遺産分割協議書の作成
葬儀や法事の費用は遺産分割で請求できる?
ここでは、被相続人の葬儀や法事にかかった費用を遺産から支出できるかどうかについて解説します。
葬儀費用や法事費用は遺産ではない
葬儀費用や法事費用は、被相続人の死亡後に発生する費用であるため、遺産分割の対象にならないと考えられています。
相続人全員の合意があれば遺産から払うことも可能
遺産分割協議や調停において相続人全員が合意すれば、遺産から支払うことも可能です。
相続人全員で分担することもできる
相続人全員の合意があれば、葬儀費用や法事費用を遺産分割の対象とせず、相続人全員で均等に分担することも可能です。
まとめ
遺産分割の手続きでは、以下の費用(実費)が必ずかかります。
- 相続人調査にかかる費用:数千円~数万円程度
- 相続財産調査にかかる費用:数千円~数万円程度
実費は、相続人の数や被相続人の戸籍の移り変わり、遺産の内容によって異なります。
遺産分割の手続きを専門家に依頼した場合は、数万円から数十万円の費用がかかります。専門家に支払う費用はかかりますが、手間や負担を軽減できて、スムーズに遺産分割を進められます。
ネクスパート法律事務所では、手続きを個別に依頼したい方や、全てを任せたい方など、ご要望に応じた料金体系をご用意しております。
遺産分割にお困りの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所の初回無料相談をご利用ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。