遺産分割に必要な費用は?知っておくべき費用の全体像を解説
相続が発生し遺産分割を行う場合、さまざまな費用がかかります。本記事では、遺産分割に伴い発生する費用の全体像とそれぞれの費用の相場を解説します。
目次
遺産分割で必ず発生する費用は?
遺産分割の手続きを進める上で、必ず公的書類等の取得費用がかかります。これらの書類収集費用は、相続人の人数や遺産の種類によって変動しますが、総計で数千円から数万円程度が目安となります。遺産分割協議を弁護士に依頼しない場合でも、依頼者が自身で負担する実費です。以下の表にまとめましたので、確認をしてください。
| 費用項目 | 内容 | 費用の目安(1通あたり) |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 除籍・改製原戸籍謄本を含む。相続人確定に必須。 | 450円~750円 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 相続関係の確認用 | 450円 |
| 相続人全員の住民票 | 現住所の確認用 | 200円~400円(自治体によって異なる) |
| 残高証明書 | 預貯金がある金融機関で発行可能 | 300円~1,000円程度 |
遺産分割で必要に応じて発生する費用は?
遺産分割で、必要に応じて発生する費用に関して解説します。
不動産に関わる費用
相続財産の中に不動産が含まれている場合、相続登記に関わるさまざまな費用等がかかります。
- 不動産登記事項証明書
相続登記を申請する前、現在の登記内容を確認するために不動産登記事項証明書の取得が必要です。請求方法によって金額が異なりますが、490円~600円程度かかります。 - 固定資産評価証明書
相続登記を申請する際の登録免許税を算出するために固定資産評価証明書の取得が必要です。不動産の所在地の市区町村の役所で発行可能です。手数料は市区町村によって異なりますが、200円~400円程度です。 - 相続登記申請時の登録免許税
遺産分割で不動産を相続した人は、3年以内に名義変更(相続登記)を行う義務があります。その際に相続財産の移転に伴う税金となる登録免許税が発生します。ただし、2027年3月31日までは免税措置があり、以下に該当する場合は登録免許税の支払いが免除されます。
| 登録免許税の支払いが免除される条件 | 具体的な事例 |
|---|---|
| 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合 | Aさんが所有する土地をBさんが相続しましたが、相続登記をしないままBさんが亡くなりました。Bさんの相続人Cさんは、AさんからBさんへの相続登記の申請をしなければなりませんが、その際に登録免許税の負担は免除されます。 |
| 不動産の価格が100万円以下の土地の場合 | 土地について相続(相続⼈に対する遺贈も含む)による所有権移転の登記又は表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記を受ける場合、不動産の価額が100万円以下の土地が登録免許税の免税の対象。なお、不動産の所有権の持分の取得に係るものは、当該不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価額となる。 |
遺産分割調停・審判の申立費用
相続人同士の協議で解決せず、家庭裁判所に調停または審判を申し立てる場合、以下の費用を裁判所に納めなければいけません。
- 収入印紙代|1,200円分
- 裁判所との連絡用の切手代として数千円程度(裁判所によって金額は異なる)
相続財産の中に不動産が含まれている場合は、不動産の鑑定費用がかかるケースもあります。
遺産分割調停や審判に進んだ場合、相続人間で不動産の評価額について合意が得られなければ、裁判所は中立な立場となる不動産鑑定士に鑑定を依頼するケースがあります。不動産鑑定費用の相場は、一般的に20万円から60万円程度です。この費用は原則として、鑑定を申し立てた相続人または共同相続人が裁判所に予納金として納めます。ただし、最終的な負担者は審判費用の一部として裁判所の判断によって決定されます。
弁護士費用
遺産分割の手続き全般を弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。弁護士費用は主に以下の4つで構成されています。
| 相談料 | 弁護士に相談したときに発生します。相場は30分あたり5,500円(税込)ですが、初回無料相談を実施している事務所もあります。 |
| 着手金 | 弁護士に事件の処理を依頼し、代理交渉や調停申立等を開始した時点で支払う費用です。案件の成功の可否にかかわらず返還されないのが原則です。相場は20万円~30万円程度ですが、遺産額や事案の複雑さに応じて金額が変動します。 |
| 報酬金 | 遺産分割問題が解決した際に支払う成功報酬です。この費用は、弁護士の活動によって依頼者が新たに得られた経済的利益の額に応じて計算されるのが一般的です。 |
| 実費・日当 | 裁判所への交通費や切手代、印紙代などの実費は、調停の場合で1万円~5万円程度が相場です。遠方での調停や審判では、弁護士の出張費(日当、1日あたり5万円程度が相場)が加算され、実費が10万円以上になる可能性もあります。 |
現在、弁護士報酬は自由化されていますが、多くの事務所では、旧日本弁護士連合会(日弁連)が定めていた報酬基準を参考に設定しています。報酬金は、弁護士が介入して得られた経済的利益(獲得財産額)に比例して計算されます。
実際の費用事例を参照すると、獲得できた経済的利益に対して、着手金と報酬金を合わせた弁護士費用(実費・日当を除く)の割合は、概ね15%~20%程度が目安です。
例えば、調停で1,500万円の経済的利益を獲得した場合、合計費用(実費除く)は約220万円です。もし弁護士に依頼せずに1,500万円を失っていた可能性を考慮すれば、費用は適正な権利獲得のための不可欠なコストかもしれません。
| 事例 | 経済的利益額 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) | 実費 | 合計(実費除く) |
|---|---|---|---|---|---|
| 遺産分割協議を依頼 | 1,000万円 | 22万円 | 129万8,000円 | 1万円 | 152万8,000円 |
| 遺産分割調停依頼 | 1,500万円 | 33万円 | 184万8,000円 | 3万円 | 220万8,000円 |
相続税申告に関する税理士費用
遺産総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。ご自身で相続税の申告はできますが、税理士に依頼する場合は税理士報酬が発生します。税理士報酬は、主に「遺産総額」に基づく基本料金と「遺産の複雑性」に基づく加算料金で構成されます。報酬は自由化されていますが、多くの税理士法人が遺産総額に応じた明確な料金体系を開示しています。以下の表は、遺産総額別・税理士報酬の基本料金の目安です。
| 遺産総額 | 基本料金(税抜) |
|---|---|
| ~4,000万円 | 13万円 |
| ~5,000万円 | 23万円 |
| ~7,000万円 | 33万円 |
| ~1.0億円 | 48万円 |
| ~2.0億円 | 78万円 |
| ~3.0億円 | 110万円 |
| 3.0億円以上 | 個別見積り |
基本料金に加え、遺産の複雑性に応じて以下の加算報酬が発生します。
- 土地の評価
土地の評価には専門的な知識が必要であり、1利用区分あたり5万円(税抜)の加算が一般的です。特に評価が複雑な土地は、報酬がさらに加算されます。 - 共同相続人
2人目以降の共同相続人に対して、1人あたり基本料金の10%が加算されます(ただし、加算は4人目までが上限となることが多い)。 - 非上場株式の評価
評価が複雑な非上場株式(未公開株式)が含まれる場合、1社につき15万円以上(税抜)の追加費用が発生するケースがあります。
まとめ
遺産分割にまつわる費用は多岐にわたります。特に高額な鑑定費用や長期的な紛争解決コストを最小限に抑えるための秘訣は、できる限り早期に弁護士に相談し、対応を依頼することです。弁護士が介入すれば、感情的な対立を防ぎ、法的な根拠に基づいた冷静な交渉が可能です。これにより高額な鑑定費用が発生する調停・審判段階への移行を回避できる可能性があります。
ネクスパート法律事務所は、相続全般を数多く手掛けた経験のある弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、遺産分割でお困りの方は一度お問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。
