土地・不動産の相続は誰に無料相談できる?市役所や弁護士を比較

土地(不動産)の相続で相談を検討した場合に、どの専門家に相談すればよいのか迷うことは少なくありません。
特に土地の相続では、土地の相続や取り分そのものに関するトラブルから、不動産の相続税の申告・納税、相続した土地の名義変更(相続登記)などさまざまな問題があります。
自分が何を相談したいのかによって、相談する専門家も異なります。
この記事では、土地・不動産の相続を無料で相談できる窓口をいくつか紹介します。自分の悩みに合った専門家に相談するとよいでしょう。
目次
土地・不動産の相続を相談できる専門家
土地・不動産の相続には、法律や税金、登記関係など手続きに伴うさまざまな問題が発生します。
そのため、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。ここでは、土地の相続に関して相談できる専門家を紹介します。
- 弁護士|土地・不動産の相続トラブル
- 司法書士|土地・不動産の相続登記
- 税理士|土地・不動産を含む相続税
- 行政書士|土地・不動産の相続の書類作成
弁護士|土地・不動産の相続トラブル
弁護士は、相続人同士のトラブル全般の対応が可能です。例えば、以下のような土地・不動産に関する悩みは弁護士に相談できます。
- 勝手に土地の相続を主張する人がいるが相続権があるのか
- 遺言書や他の相続人の主張に納得できない
- 値段のつかない土地を相続放棄したい
- 家族が亡くなり土地の分割方法で悩んでいる
- 遺産となる土地に他の相続人が住んでいるがどのように分けるべきか など
弁護士に相談することで、自分の法定相続分や適切な分割方法などの具体的なアドバイスが受けられます。
特に、相続人が複数人いて複雑な事案や、相続人同士金銭的な部分で折り合いがつかない場合は相談するとよいでしょう。
弁護士に依頼した場合は、依頼者の代わりに相続人と交渉を行ったり調停や裁判の対応を行います。
弁護士が交渉することで、他の相続人の主張を整理してもらい、それぞれが納得できる分割方法を提案してもらえるでしょう。
インターネットではこうした土地の相続に関する相談や回答が多数ありますが、自分のケースに合った回答を得るには弁護士に相談するのが得策です。

司法書士|土地・不動産の相続登記
司法書士は、土地の名義変更(登記)、遺言書から遺産分割協議書の作成、他にも手続きに必要な書類の取得、有価証券の名義変更などが対応可能です。
例えば、以下のような土地・不動産に関する悩みは司法書士に相談できます。
- 相続した土地の名義変更(相続登記)について相談したい
- 相続放棄の申請書、遺産分割協議書の作成などを相談したい
- 相続した土地がずっと名義変更されておらず一人で対応できない など
2024年4月からは、相続登記が義務化されました。2024年以降に発生した相続登記はもちろん、2024年以前に相続した土地も名義変更しなければなりません。
相続登記を行わないでいると、10万円の過料(行政罰)の対象となる可能性があります。
さらに、相続登記を行わないと、正式に土地の所有者として認められず、売却や活用できません。
しかし、何代にもわたり相続登記が行われない土地の場合、相続登記の手続きも難しくなります。
このような相続登記が難しい場合は、司法書士に相談するのがおすすめです。

税理士|土地・不動産を含む相続税
土地を相続すると、相続税がかかる場合があります。特に、相続した土地・不動産、建物の価値が高い場合は、相続税の負担が大きくなることもあります。
税理士は、税金の専門家であり、相続税の計算や申告をサポートしてくれます。
例えば、以下のような土地・不動産に関する悩みは税理士に相談できます。
- 土地を相続する場合に、相続税がかからないように節税したい
- 土地を贈与して相続税や贈与税を節税したい
- 土地の相続にかかる税金の相談や負担を軽減したい など
土地の相続では、相続税の他に登録免許税なども課税されるため、場合によっては税金の負担が大きなものとなります。
しかし、税理士に相談することで、非課税となる特例などのアドバイスが得られるため、税負担が軽減できるでしょう。
なお、相続税の申告・納税は、被相続人(亡くなった人)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
申告が遅れると延滞税などが加算されるため、早めの相談が必要です。
行政書士|土地・不動産の相続の書類作成
行政書士の主な仕事は、官公庁に提出する書類作成、遺産分割協議書・遺言書・財産目録などの作成、相続手続きに必要な書類の取得などが可能です。
相続人同士で遺産の分け方を話し合い、合意した内容を正式な書面にまとめる際に役立ちます。
相続人が多い場合や、遠方に住んでいるケースでは、書類のやり取りをスムーズに進めるためのアドバイスを受けることもできます。
特に、相続人同士で遺産分割協議に争いがない場合や、書類取得の手間を軽減したい場合に相談するのがおすすめです。

土地・不動産の相続について無料相談できる窓口
土地や不動産の相続に関する相談は、公的な機関で無料相談が可能です。
どの窓口に相談すればよいのか分からない人に向けて、それぞれの窓口の特徴と違いを解説します。
- 市役所・区役所|無料で相続全般を相談したい人
- 法律事務所|不動産の相続について専門的な回答がほしい人
- 法テラス|弁護士費用の負担ができない人
- 相続登記相談センター|相続登記について相談したい人
- 国税局・税務署|不動産の相続税を相談したい人
- 法務局|相続土地国庫帰属制度について相談したい人
- その他
市役所・区役所|無料で相続全般を相談したい人
市役所や区役所では、相続に関する無料相談が可能です。
市役所や区役所の特徴として、各種窓口で相続関連の書類に関する相談ができるほか、各市役所で行われている法律相談も利用可能です。
そのため、気軽に幅広い相談ができます。市役所や区役所における相続の無料相談については後述します。
法律事務所|不動産の相続について専門的な回答がほしい人
前述のとおり、弁護士は土地や不動産を含む相続トラブルに対応可能な法律の専門家です。
不動産の相続に関するトラブルや、法的な手続きについて詳しく知りたい場合は、法律事務所への相談が適しています。
特に、土地や不動産、相続問題に対応した実績がある弁護士であれば、これまでの経験から相続の見通しや注意点、専門的かつ具体的な助言が得られます。
弁護士への相談は、30分5,000円から1万円程度の相談料がかかりますが、近年は初回相談無料の法律事務所も多数あります。
当事務所でも初回相談は無料です。不動産が絡む相続トラブルを解決した豊富な実績がありますので、土地・不動産の相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

法テラス|弁護士費用の負担ができない人
法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した法律相談センターです。
法的な問題を解決するための相談窓口の案内だけでなく、一定の条件を満たした場合に同じ問題について3回まで無料相談ができます。
同様に、条件を満たした場合、相場よりも安い金額で弁護士や司法書士に依頼できます。
そのほか、費用の立て替え制度(民事法律扶助)を利用することで、費用を低額の分割払いが可能です。
法テラスは国が設立した機関であるため、全国に相談窓口が設置されています。士業の数が少ない地域でも相談できるメリットがあります。
弁護士や司法書士の費用の負担が難しい場合や、近隣に相談できる士業がいないような場合は、法テラスへの相談がおすすめです。
相続登記相談センター|相続登記について相談したい人
相続登記相談センターは、日本司法書士連合会が設置した、相続登記の相談窓口です。
フリーダイヤルから相談すると、自分の住まいの近くの司法書士に繋がることができます。
電話や対面相談、オンライン相談などで、相続登記に関する相談が可能です。
電話:0120-13-7832
受付:月曜日から金曜日午前10時~午後4時
※土日祝日・年末年始・お盆を除く
ただし、各都道府県の司法書士会によって、受付時間が異なる点には注意が必要です。
相続登記相談センターでは、相続登記の相談を主に、他にも遺言書や財産調査、遺産分割協議書などについても相談できます。
参考:相続放棄相談センター特設サイト – 日本司法書士連合会
国税局・税務署|不動産の相続税の制度を知りたい人
相続税の制度や申告手続きについて知りたい場合は、国税局や税務署で無料の電話相談が可能です。
ただし、具体的な相続税の計算や申告のサポートには対応できません。相続税の計算や申告は税理士に相談するとよいでしょう。
法務局|相続土地国庫帰属制度について相談したい人
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺言書により宅地や田畑、森林などの土地を相続した人が、一定の条件を満たす場合に、土地を手放して国に引き渡せる制度のことです。
相続した土地が活用できず管理が負担になっている場合は、この制度を利用することで、土地を手放すことができます。
概要 | |
相談できる人 | 土地の所有者、所有者以外の家族や親族 |
相談可能な内容 | 自分の所有する土地は手放すことができるのか
作成した申請書類に漏れがないか確認してほしい など |
相談方法 | 法務局・地方法務局の窓口での対面相談
電話相談 WEB・オンライン相談 |
相談時間 | 30分 |
なお、相談はこちらのホームページから事前予約が必要です。

その他
上記以外にも、地域の相続支援センターや司法書士会、税理士会などで無料相談を受けられる場合があります。
特に、自治体が主催する相続相談会は、専門家と直接話せる機会なので、早めに情報を収集しておくとよいでしょう。
なお、相続した土地の活用を相談したい場合はハウスメーカー、アパートやマンション経営なら不動産管理会社、不動産の売却なら不動産仲介会社などに相談できます。
ただし、民間の業者は営利目的であるため、必ず複数の業者に相談して、納得できる企業のサービスを受けるようにした方がよいでしょう。
土地・不動産の相続全般を無料相談するなら市役所がおすすめ
市役所や区役所では、相続に関する基本的な情報を無料で相談できます。
相続手続きの流れや、必要な書類についての案内を受けられるため、何から手をつければよいのかわからないという人におすすめです。
ただし、具体的な法的アドバイスや税務相談はできないため、詳細な対応が必要な場合は弁護士や税理士に相談する必要があります。
市役所で相談できる内容
市役所で相談できる内容は、主に相続の必要書類や書類の発行についてで、市役所で行っている法律相談を利用すれば、相続問題全般について無料で相談できます。
よくある遺産の取り分を巡って相続人同士で揉めているという相談から、誰に相談してよいかわからないという内容まで幅広い問題について相談可能です。
場所によっては、弁護士による法律相談以外にも、司法書士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士などに対して相談できる市役所もあります。
市役所で相談するメリット・デメリット
市役所でも無料法律相談には以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | 馴染みのある市役所で気軽に無料相談できる
法律相談以外にも役所で書類について相談できる 行政のサービスであるため信用できる |
デメリット | 相談回数や相談日時が限られている
限られた時間で具体的な助言を得られない可能性がある 弁護士などの専門家を指名できないため、実績がある専門家かどうかわからない |
市役所での相談は、幅広い問題について気軽に相談できる一方で、表面的・一般的な回答にとどまることが多いです。
市役所によっては同じ相談ができないこともあり、相続問題に詳しい専門家が回答してくれるかどうかはわかりません。
市役所の相談は、あくまでも一般的な回答として参考にし、具体的かつ専門的な回答を得たい場合は、弁護士などの専門家に直接相談するのがおすすめです。
市役所で相談する方法
市役所の法律相談で相談する方法は以下のとおりです。
- 対面相談や電話相談は電話や窓口での事前予約
- オンライン相談はホームページの予約フォームから予約する
インターネットで自分の住んでいる地域と市役所、法律相談などで検索すると相談案内のページを見つけられます。
土地・不動産の相続トラブルを相談する前の確認事項
土地・不動産の相続トラブルを相談する場合は、事前に準備をしておくと、限られた相談時間でスムーズに話を進めることができます。
以下では、相談前に確認しておくべき4つのポイントを解説します。
遺言書はあるかどうか
家族が亡くなりすでに相続が発生している場合は、遺言書の有無を確認しておきましょう。
遺言書がある場合は、遺言書の内容に沿って相続(遺産分割)が行われます。
遺言書の有無によって、相続分や対応が異なるため、亡くなった人の自宅や公証役場、法務局などに保管されている遺言書を探しておくのが望ましいです。

相続人を確認しておく
土地・不動産の相続を相談する前に、相続人となる人を確認しておくことも大切です。
遺言書が存在しない場合は、以下の順位で法定相続分に沿って遺産分割を行うことになります。
常に相続人となる人 | 亡くなった人の配偶者 |
第一順位 | 子ども(子どもが亡くなっている場合は孫) |
第二順位 | 亡くなった人の親(親が亡くなっている場合は祖父母) |
第三順位 | 亡くなった人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪) |
例えば、亡くなった人の子どもがすでに他界している場合は、その子どもである孫が相続人となります。
しかし、孫がいない場合は、相続権が亡くなった人の親に移ります。
このように相続権が移ることで、相続分も異なるため、具体的な助言を得るなら、相続人を確認しておくことが重要です。

相続する土地・不動産の資料を集めておく
相続する土地や不動産についても、あらかじめ調べて資料などを集めておくと、相談もスムーズで具体的な回答を得られます。
特に土地・不動産の相続では、土地に住んでいる人がいるのか、土地を分割できるのかなどによってトラブル発生を事前に予期できます。そしてそれに応じた助言が得られます。
さらに、土地や不動産の評価額がわかれば、どの程度の相続税が必要となるのか判断できるでしょう。
質問内容をまとめておく
専門家に相談する際、事前に質問を整理しておくと、相談時間を有効に使えます。いくつか質問したい内容をまとめて、優先順位をつけておくとよいでしょう。
他にも、相続人同士の関係などを図でまとめておくこともおすすめです。

土地・不動産の相続を相談するタイミング
土地・不動産の相続を相談するタイミングは、不安や疑問が生じたときです。
相続の悩みは相続発生前から相談しておくことで、いざ相続が起きても焦らず対応できます。
もし今すでに相続が発生している場合は、できる限り早く相談することをおすすめします。
土地の相続放棄は、家族の死亡を知った時から3か月以内と期限が定められています。
他にも相続税の申告期限は、家族の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
このように、相続が発生後は各種手続きの期限があり、遺産や相続人を確定する作業も発生します。早い段階で相談するようにしましょう。
まとめ
土地・不動産の相続は、以下の専門家に相談できます。
弁護士 | 土地・不動産を巡る相続人同士のトラブル |
司法書士 | 土地・不動産の相続登記 |
税理士 | 土地・不動産を含む相続税 |
行政書士 | 土地・不動産の相続の書類作成 |
それぞれの専門家は無料相談を受けていることも多いため、まずはこうした専門家に相談するのがおすすめです。
一方で、専門家への相談はハードルが高く緊張するという人や、今の悩みがどの専門家に相談すべきかわからないという人は、市役所・区役所の無料相談を利用するのがおすすめです。
専門家や無料相談を活用することで、きっと今の悩みが解決できるでしょう。
当事務所でも相続の無料相談に対応しています。特に、土地・不動産を巡る相続人同士のトラブルについて、豊富な解決実績がありますので、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。