建物はすべて登記しなくてはいけない?勘違いしがちな点を解説

建物を新築、増築、取り壊し(滅失)等をした場合、1か月以内に建物表題登記申請もしくは建物表題変更登記の申請をしなければいけません。これは、不動産登記法で義務付けられています。
この記事では、すべての建物は登記をしなければならないのかについて解説します。
登記をしなくてもいい建物を相続した場合や、本来登記すべき建物を未登記のまま相続した場合の対応方法も説明していますので、ご参照ください。
目次
建物はすべて登記をしなくてはいけないの?
すべての建物が登記申請の対象になるわけではありません。
登記ができる建物の条件は、以下のとおりです。
定着性がある建物
建物が地面に永続的に定着していると認められる建物は、登記をしなければいけません。
基礎工事が施工されていて、容易に移動ができない建物は原則登記が必要です。
外気分断性がある建物
屋根や壁によって外気と分断されている状態にある建物は、登記をしなければいけません。
一般には、外気遮断性が認められる場合が多く、屋根と3方向以上の耐久性のある外壁で囲まれている建物は登記が必要です。
用途性が明確な建物
用途性が明確な建物は、登記をしなければいけません。
屋根や壁があるだけでなく、人が住んだり作業したりするなど、何らかの目的で建てられた建物は、原則登記が必要です。
登記しなくてもよい建物とは?
登記をしなくてもよい建物の条件について、以下で解説します。
定着性がない建物
建物が土地に定着していないとみられる建物は、登記ができません。
例えば、コンクリートブロックの上に置かれた物置や住宅展示場のモデルハウスは、永続的に定着性があるとはいえないので、登記は不要です。
外気分断性がない建物
外気分断性がない建物は、登記ができません。
例えば、1方向しか壁がない屋根付きのガレージや駐輪場が該当します。
天井高が極端に低い建物
天井高が極端に低い建物は、登記ができません。
例えば、自宅の中にロフトがある場合等です。
登記をしなくてもよいと勘違いしがちな建物は?
登記をしなければならないのに、登記をしなくてもよいと勘違いしがちな建物について解説します。
敷地内に増築した建物
敷地内に増築した建物は、登記をしなければならないケースがあります。
例えば、玄関前のスペースを利用して屋根と3方向以上に壁を作って作業場を作った場合、定着性および外気分断性があり、用途性も明確なので、原則登記をしなければいけません。
土地に定着した倉庫や車庫
土地に定着した倉庫や車庫は、登記をしなければならないケースがあります。
コンクリートブロックにのせただけの倉庫であれば原則登記は不要ですが、永続的に土地に定着しているとみなされる場合は、原則登記をしなければいけません。
登記しなくてもよい建物を相続したら手続きは不要?
登記しなくてもよい建物を相続した場合、基本的に手続きは不要です。
ただし、登記しなくてもよい建物を、事業用の資産として減価償却額を法人税・所得税の損金の計算に入れている場合は、固定資産税の課税対象となるので、手続きが必要なケースがあります。
建物が所在する市区町村の役所に問い合わせましょう。
相続した未登記建物が本来登記すべき建物だったらどうなる?
相続した未登記建物が、本来登記すべき建物だった場合、通常の相続登記とは違う手順を踏まなければいけません。
建物の表題登記を申請する
相続した未登記建物が本来登記すべき建物だった場合、最初に、建物の表題登記の手続きをしなければいけません。
不動産の登記簿には表題部と権利部があり、新たに不動産が生じた際に最初に登記がされるのが表題登記です。表題登記をしなければ権利部の登記はできません。
表題登記は必ず行わなければならないのですが、実際には未登記の建物が存在します。
例えば、銀行のローンを利用せずに現金で建物を購入した場合、登記申請を忘れてしまい未登記のままになってしまう傾向があります。このような建物を売却したり相続したりするなど権利関係に変更が生じる場合、最初に表題登記をしなければ権利部の登記ができません。
表題登記は、建物図面及び各階平面図といった添付書類が必要となります。
古い物件の場合は紛失するなどそろわないケースがありますので、不動産の表示登記の専門家である土地家屋調査士に相談をしたほうがよいでしょう。
所有権の保存登記を申請する
建物の表題登記をしたら、所有権保存登記を申請します。
所有権保存登記とは、権利部に最初に行う登記です。
相続登記や第三者に売却した場合に行う所有権移転登記は、所有権保存登記をしなければ行えません。所有権保存登記の所有者は、表題部にある所有者と同じ名義でなければいけません。
相続登記を申請する
所有権保存登記をしたら、相続登記を申請します。
相続登記には遺産分割協議書や遺言書、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、亡くなった人の住民票の除票等の添付書類が必要となります。
なお、相続登記は所有権保存登記とはセットで申請ができます。
まとめ
建物はすべて登記申請をしなければいけないと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、登記ができる建物には条件があります。条件に満たない建物の登記申請は不要ですので、ぜひこの記事を参考にしていただければと思います。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。
初回相談は30分無料ですので、相続に関する困りごとがありましたら、一度ご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。