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遺言執行者が指定されていない場合、どのような手続きが必要なのか?

相続が発生したとき、遺言書の内容を実現するための手続きを担うのが遺言執行者です。

遺言書で遺言執行者が指定されていないとき、どうすればよいのでしょうか。

今回は、遺言執行者の指定がない場合の遺言執行や、遺言執行者の選任が必要なケースを解説します。

遺言執行者とは何か?

ここでは、遺言執行者とは何かについて解説します。

遺言内容を実現するために、遺言者により指定され、または家庭裁判所により選任された人を遺言執行者といいます。遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、そのために相当かつ適切と思われる行為ができます。

遺言執行者の役割は?

遺言執行者の役割は、相続が発生したときに遺言者の意思を実現することです。遺言執行者には広範な権限が与えられているため、同時に、それに相応した義務も負います。

遺言執行者の義務とともに、任務遂行の流れを解説します。

任務の開始(民法10071項)

遺言執行者は、就職を承諾したときから、直ちにその任務を開始しなければなりません。

遺言執行者に指定された人が、就職を承諾するか否かは、自由な判断に任せられ、承諾すべき義務はありません。

相続人全員に遺言の内容を通知する(民法10072項)

遺言執行者は、その任務を開始したら、相続人を調査・確定した上で、相続人全員に遺言執行者に就任したこと及び遺言内容を通知しなければなりません。

財産目録の作成・交付(民法1011条)

遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければなりません。

財産目録は相続人にとって重要な情報となるため、執行の対象となる財産を調査し、正確に作成します。相続財産の目録の作成が極端に遅れたり作成にあたって重大な過失があったりした場合は、損害賠償請求される可能性もあります。

相続人への報告(民法10123項)

遺言執行者は、相続人から求められたときは、いつでも遺言執行の状況等について報告しなければなりません。これを怠ると債務不履行となります。

受取物等の引き渡し(民法10123項)

遺言執行者は、遺言執行の任務遂行として、相続人のために関係者から受領した金銭その他の物や収受した果実、相続人のために自己の名をもって取得した権利を、相続人に引渡しないし移転しなければなりません。

このほか、遺言執行者は、遺言の執行にあたっては、善良な管理者としての注意管理義務をもって、その任務に当たらなければならないと規定されています(民法10123項)。この注意義務に違反すると、相続人に対して債務不履行の責任を負います。

注意義務の程度は、遺言執行に要求される専門知識や、遺言執行者の能力その他によって異なります。

遺言執行者は誰がなれるのか?

遺言執行者は未成年者、破産者以外は、誰でもなれます。特別な資格は必要ありません。遺言者の推定相続人から選んでもよいですし、弁護士などに依頼してもよいです。

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遺言執行者がいない場合はどうなるか?

ここでは、遺言執行者がいない場合はどうなるかについて解説します。

遺言執行者は必ず選ばなければいけないのか?

遺言執行者が指定されていなくても、遺言書の効力に影響はありません。遺言書の作成時に遺言執行者を必ず指定する必要はありません。

ただし、遺言書に次に挙げる遺言事項がある場合には、その遺言書で遺言執行者を指定するか、相続開始後、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければいけません。

相続人廃除・廃除の取消し

相続人廃除とは、被相続人が自分の財産を渡したくない人について、相続人の権利を奪うことを家庭裁判所に求め、これが審判で認められることにより、相続人から除外される制度です。

廃除を求められる対象となるのは、配偶者、直系尊属(両親や祖父母)、直系卑属(子どもや孫)です。遺留分を有しない兄弟姉妹は廃除の対象になりません。相続権を奪う非常に強い手続きとなるので、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたことや、推定相続人に対して著しい非行があったことが条件となり、単なる不仲ということではなく一般的にみて相続人としてふさわしくない事情が必要です。

相続人の廃除・廃除の取消しは、家庭裁判所に請求しなければならず、遺言で廃除・取消しの意思表示を行った場合には、遺言執行者によらなければ執行できません。

認知

認知とは、婚姻関係にない人との間に生まれた子どもを自分の子どもとして認め、法律上の親子関係を発生させることです。認知は、戸籍法の定めるところによって届け出る方法のほか、遺言でも行えます。

遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、届出をしなければならないと定められているため、遺言執行者によらなければ執行できません。

一般財団法人の設立

遺言によっても、一般財団法人を設立できます。具体的には、遺言者が、遺言で一般財団法人設立の意思表示を行い、定款に記載すべき内容を定め、遺言執行者が遺言の内容を実現します。

遺言で定めた事項を記載した定款を作成し、これに署名し公証人による認証を受け、一般財団法人設立のための財産を拠出して、設立の登記をできるのは、遺言執行者だけです。

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遺言執行者の指定・選任の流れとは?

遺言執行者の指定

遺言者は、遺言書で遺言執行者を指定できます。遺言書で遺言執行者を指定する人を決める方法もあります。

遺言執行者の選定

遺言書で遺言執行者が指定されてないときや、指定された遺言執行者が就職を拒否した場合もしくは死亡した場合などには、家庭裁判所に遺言執行者の選任審判を申し立てます。申し立て後、家庭裁判所が選任の要件を満たしていると判断した場合は、審判により遺言執行者を選任します。

なお、遺言執行者の選任申立てに際して、遺言執行者の候補者を推薦できますが、裁判所はこの推薦に拘束されることはありません。

遺言執行者が指定されていない場合でも、特段の支障がないケースとは?

ここでは、遺言執行者が指定されていなくても、特段の支障がないケースについて解説します。

遺言書に、相続人廃除や廃除の取り消し、認知、一般財団法人の設立に関する記載がなければ、遺言執行者を指定・選任する必要はありません。

相続人全員が、遺言の内容に納得し、手続きに協力的であれば、遺言執行者がいなくても特段の支障がないといえます。

相続人の中に法定相続分よりも多くの財産を相続する人がいる、相続人以外の人に財産を渡す旨の記載がある場合は、相続人・受遺者間でもめる可能性があるため、遺言執行者を指定・選任したほうがスムーズに遺言内容を実現できるかもしれません。

遺言執行者が指定されていないとき、弁護士に相談・依頼するメリットは?

ここでは、遺言執行者が指定されていないとき、弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。

遺言執行者を選びたい場合、的確なアドバイスができる

推定相続人同士が不仲だったり、推定相続人の中に認知症等によって意思能力を欠いた人がいたりすると、遺言の内容をスムーズに実現できないこともあります。

このようなリスクに備え、あらかじめ遺言執行者を指定したい場合には、弁護士に相談することで的確なアドバイスを得られるでしょう。

弁護士に遺言書の作成と遺言執行を併せて依頼すれば、不備のない遺言書を作成でき、相続開始後の手続きもスムーズかつ的確に進められるので安心です。

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弁護士を遺言執行者候補者として選任の申立てを依頼できる

相続開始後、相続人自らが遺言執行を行うことに障害や不安がある場合、弁護士に遺言執行者になってもらいたいと考えることもあるでしょう。

弁護士に、遺言執行者の選任申立てを依頼し、併せて候補者として推薦することに了承を得られれば、家庭裁判所への申立て時に、その弁護士を候補者として推薦できます。

ただし、遺言執行者は家庭裁判所が選任するものであり、裁判所は推薦に拘束されないため、必ず希望通りに選任されるとは限りません。

 

相続問題は弁護士への依頼でトラブルなくスピーディーに解決できます。

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まとめ

遺言執行者がいない場合、遺言書の内容を実現するには、相続人全員が手続きに関与しなければならないこともあります。遺言の内容に納得できない相続人がいると、協力を得られず、手続きが停滞するおそれもあります。

遺言書の作成時に、利害関係のない第三者である弁護士を遺言執行者に指定しておくと、相続開始後の手続きがスムーズになります。

遺言執行者の指定・選任の手続きについて、分からないことがあれば、弁護士に相談することをおすすめします。

ネクスパート法律事務所には、数々の相続手続きを経験した弁護士が在籍しているので、お気軽にご相談ください。知識や経験に基づきスムーズな遺言内容の実現をサポートいたします。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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