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相続人の廃除はどんな制度か?手続きの方法と注意点を解説

生涯をかけて大切に築いてきた財産は、愛する家族に相続させたいものです。

しかし、家族とはいえ、ひどい扱いを受け、目に余る行動が頻繁にあれば、自分の財産を渡したくないと感じてしまいます。

この記事では、財産を渡したくない家族がいる場合、どのような制度が利用できるかについて解説します。

相続人廃除とはどんな制度か?

ここでは、相続人廃除とはどんな制度かについて解説します。

相続人廃除とは、相続人から虐待や重大な侮辱を受けたり、相続人の行動に著しい非行があったりしたときに、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続権を奪う制度です。

相続人廃除ができるのは被相続人のみで、方法は2通りあります。一つは生前に家庭裁判所に申し立てる生前廃除、もう一つは遺言で廃除の意思表示を示す遺言廃除です。

相続人廃除ができる条件は?

相続人廃除は、相続人の相続権を失わせる強い効果がある制度です。そのため民法では、相続人廃除ができる条件を下記のように規定しています。

  • 被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある場合
  • 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

被相続人に対する虐待とは、日常的に暴力をふるったり耐え難い精神的な苦痛を与えたりすることです。重大な侮辱とは、被相続人に対して名誉を失墜させ感情を害する行為です。

著しい非行とは、重大な犯罪で有罪判決を受けたり、被相続人の財産を不当に処分したり、ギャンブルを繰り返して多額の借金をし、被相続人に借金の支払いを肩代わりさせたりすることなどが該当します。

相続人廃除ができる対象は?

相続人廃除ができる対象者は、遺留分がある推定相続人です。推定相続人とは、現時点で被相続人が亡くなった場合に相続人になる予定の人です。遺留分がある推定相続人とは、具体的には下記に当たる人です。

  • 配偶者
  • 直系尊属(父母、祖父母)
  • 直系卑属(子、孫)

相続人廃除の対象はあくまでも遺留分がある推定相続人なので、遺留分のない兄弟姉妹は対象になりません

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相続人廃除をしたらどうなるのか?

ここでは、相続人廃除をしたらどうなるのかについて解説します。

遺留分権を含む相続権がはく奪される

相続人廃除の審判が確定すると、廃除対象者の遺留分権を含む相続権がはく奪されます。

廃除の旨が戸籍に記載される

相続人廃除の審判が確定したら、申立人(被相続人または遺言執行者)は10日以内に戸籍の届出を行わなければなりません。この届出がなされることで、廃除された相続人の戸籍の身分事項欄に推定相続人廃除と記載されます。この記載は、相続人廃除の取り消しの審判が確定しないかぎり消えることはありません。

相続人廃除は代襲相続の原因となる

相続人廃除は代襲相続の原因となります。廃除の効力は、廃除された相続人の一身についてのみ生じるものなので、被廃除者の子や孫が代襲相続権を失うわけではありません。

廃除された推定相続人に子(子が死亡している場合は孫)がいる場合、代襲相続によって被相続人の財産を相続します。

相続人廃除の手続き方法は?取り消しはできるのか?

ここでは、相続人廃除の手続き方法と取り消しの方法について解説します。

被相続人が存命中にする生前廃除

申立先

生前廃除の手続きは、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをして審判を受けなければいけません。

申立てに必要な書類

相続人廃除の申立てには、下記の書類が必要です。

  • 推定相続人廃除の審判申立書
  • 申立人(被相続人)の戸籍の全部事項証明書
  • 廃除したい相続人の戸籍の全部事項証明書

申立てに必要な費用

相続人廃除の申立てには、収入印紙800円分と裁判所からの郵送費として郵便切手が必要です。郵便切手は裁判所によって金額が違うので、事前に確かめましょう。

戸籍の届出

相続人廃除が認められたら、10日以内に被相続人の所在地を管轄する市区町村または廃除された推定相続人の本籍地がある市区町村の役所に、下記の必要書類を提出します。

  • 推定相続人廃除届
  • 審判書の謄本
  • 審判の確定証明書

廃除された相続人の本籍地以外の役所で届出をする場合は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要です。

この届出によって、当該相続人が廃除された旨、戸籍に記載されます。

遺言により廃除の意思を表示する遺言廃除

遺言で推定相続人を廃除する意思を表示する遺言廃除も、家庭裁判所の審判によらなければ効力は、生じません。相続人を廃除する遺言書の文例や遺言廃除の手続きの流れは以下のとおりです。

相続人を廃除する遺言書の文例

遺言で推定相続人を廃除するには、遺言書に「〇〇を相続人から廃除する」と明記します。

遺言書には、下記の事項を簡潔に記載しましょう。

  • 誰を相続廃除するのか
  • その者を相続廃除する具体的な理由(どのような虐待が暴言、非行があったのか)
  • 遺言執行者を誰にするか

文例は、以下のとおりです。

第〇条       遺言者の長男A(平成〇年〇月〇日生)は、遺言者をしばしば侮辱し、遺言者を平手で叩く、足蹴にして暴行を加えるなど虐待を繰り返すので、遺言者は長男Aを相続人から廃除する。

第〇条       遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。

住所    東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号

職業    弁護士

氏名    〇 〇 〇 〇

生年月日  昭和〇年〇月〇日生

申立先

被相続人(遺言者)が亡くなったら、遺言の効力が生じます。廃除の意思の表示された遺言が効力を生じた後、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、推定相続人廃除の審判を申立てます。

申立人

遺言で相続人廃除をする場合は、遺言執行者が申立てを行います。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所による遺言執行者の選任を経てから申立てをします。

申立てに必要な書類

相続人廃除の審判申立てに必要な書類は下記のとおりです。

  • 相続廃除申立書
  • 被相続人の死亡の事実が記載された戸籍の全部事項証明書
  • 廃除したい推定相続人の戸籍の全部事項証明書
  • 遺言書の写し、または遺言書の検認調書謄本の写し
  • 家庭裁判所で選任された遺言執行者が申立てる場合は、遺言執行者選任の審判書謄本

申立てに必要な費用

申立てに必要な費用は、800円の収入印紙と裁判所からの郵送費として郵便切手が必要です。郵便切手は裁判所によって金額が違うので、事前に確かめましょう。

戸籍の届出              

相続人の廃除の審判が確定したら、遺言執行者が10日以内に廃除された者の本籍地がある市区町村または遺言執行者の所在地の市区町村の役所へ下記の書類とともに届け出をします。

  • 推定相続人廃除届
  • 家庭裁判所による審判書の謄本
  • 審判の確定証明書

この届出によって、当該相続人が廃除された旨、戸籍に記載されます。

相続人廃除は、取り消せる

相続人廃除は、相続人の相続権をはく奪するものですが、取り消しも可能です。その場合は被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に廃除の審判の取消しを申し立てます。被相続人が存命のうちにできますし、遺言で取り消しの意思表示をすることで死後の手続きも可能です。

相続人廃除をする上での注意点は?

ここでは、相続人廃除をする上での注意点について解説します。

相続人廃除は簡単に認められない

相続人廃除は、相続権を奪う強い制度である性質上、認められるケースは多くありません。例えば、2022年に全国の家庭裁判所が受理した相続人廃除及び廃除の取り消しの審判申立て件数は308件ですが、そのうち廃除または廃除の取り消しが認められたのは36件で、既済件数(178件)の20%程度となっています。

家庭裁判所は、本当に相続権をはく奪していいのか、慎重に判断を進めます。家庭裁判所は、原則として、廃除を求められた推定相続人の陳述を審問期日で聞かなければなりません。このとき、廃除を求められた相続人が虐待などについて否定する可能性があります。そのため十分な証拠を用意しなければいけません。

相続人廃除をしたあとでも遺贈ができる

被相続人は、廃除された相続人に対し、遺言によって財産を遺贈できます。なぜなら相続人の地位はなくなっても、第三者として遺贈を受ける権利があるからです。

相続人廃除を考えたときに弁護士に相談・依頼するメリット

ここでは、相続人廃除を考えたときに、弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。

相続人廃除をすべきか、的確なアドバイスができる

相続人廃除は、相続人から遺留分権を含む相続権をはく奪する強い制度です。そのため相続人廃除の申立てをしても認められない確率が高いです。

申し立ては家庭裁判所にするため、決して簡単な手続きではありません。

相続人廃除の申立てをすることで、これまで以上に廃除対象者との関係が悪化する可能性もあります。

弁護士に相談することで、本当に相続人廃除をすべきかどうか、ベストな選択なのかどうかを的確にアドバイスが得られます。

相続人廃除が認められるかどうかや有効な主張・立証の方法を把握できる

推定相続人廃除の申立てが受理されると、家庭裁判所で相続人廃除を認めるかどうかの審判が行われます。相続人廃除を認めてもらうには、審判期日において相応の理由について主張・立証しなければいけません。

弁護士に相談・依頼すれば、相続人廃除が認められるかどうかや、審判での適切な主張・立証の方法を把握できます。

生前廃除の手続きを任せられる

裁判所に提出する申立書には、相続人廃除を求める具体的な理由を記入し、裏付けとなる資料なども添付しなければなりません。

弁護士に生前廃除を依頼すれば、申立書の作成をはじめとした手続きを任せられます。

遺言書の作成と遺言執行をセットで依頼すれば円滑に手続きを進められる

弁護士に、遺言書の作成と遺言執行をセットで依頼することで、ミスなく遺言書の作成ができ相続発生後の手続きを円滑に進められます。

 

相続問題は弁護士への依頼でトラブルなくスピーディーに解決できます。

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まとめ

折り合いが悪かった家族に対して、自分の財産を渡したくないと考えるのはやむを得ないことでしょう。

しかし、相続人廃除は簡単に認められるものではありませんので、弁護士に相談することをおすすめします。相続人廃除がベストな選択なのかどうかを含め、的確なアドバイスができます。

弁護士に遺言書の作成支援を依頼し、併せてその遺言書で弁護士を遺言執行者に指定すれば、相続開始後は、遺言執行者としてスムーズに手続きできるので、相続廃除を考えたときは、弁護士に相談をしましょう。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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