遺言作成後に取得した財産の扱いはどうなる?

亡くなった人(以下、被相続人といいます)が遺言書を遺していたものの、遺言書に記載のない財産が見つかる場合があります。
被相続人が遺言書を作成した後に財産を取得した可能性が高いですが、このようなケースに遭遇したら相続人はどのように対応すればいいでしょうか。
この記事では、遺言作成後に取得した財産の扱いがどうなるか、さらに遺言作成後に新たに財産を取得したらどう備えればよいかについて解説します。
目次
遺言作成後に取得した財産の扱いはどうなるか?
ここでは遺言作成後に取得した財産の扱いはどうなるかについて解説します。
遺言書に特定の相続人にすべての財産を相続させると記載されている場合
遺言書に、特定の相続人にすべての財産を相続させる旨の記載があれば、遺言作成後に取得した財産が見つかった場合でも、指定された相続人は遺言作成後に取得した財産を含めた全財産について、遺言書に基づく相続手続きを進められます。
特定の相続人に遺産の全部を相続させる旨の遺言は、通常、遺言者死亡までに財産の変動があっても、相続人または受遺者に相続させられるものと考えられるからです。
もっとも、遺産の全部を特定の相続人に相続させる旨の遺言には、遺産の内容を具体的に記載しない場合と、主要な財産を個別具体的に記載して、それらの財産を含む遺産全部を相続させる旨記載する場合とがあります。
一部の主要な遺産を具体的に記載する意味としては、以下のことが考えられます。
- 不動産の相続登記や金融機関における預貯金の払い戻し・名義変更などの便宜
- 相続人や遺言執行者に遺産の内容を明らかにして漏れがないようにすること
このように、遺産の一部が明記されている場合でも、特定の相続人に遺産の全部を相続させる旨の記載があれば、指定された相続人はその遺言をもって、遺産の全部について相続手続きを進められると考えられます。
遺言書で財産の行先を細かく指定されている場合
遺言書で財産の行先を細かく指定されている場合や、遺言書に特定の財産を特定の相続人に相続させる旨の記載があるものの、以下の例文のように残余財産や将来取得する予定の財産に関する記載がない場合は、遺言作成後に取得した財産(遺言書に記載のない財産)について、相続人全員で遺産分割協議しなければいけません。
その他、遺言者が有する一切の財産を〇〇に相続させる。 |
遺言者が、〇〇を取得していたときは、当該財産を〇〇に相続させる。 |
例えば、次のような遺言書があったとします。
遺言書 遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言する。 第1条 遺言者は、A銀行〇〇支店の定期預金を遺言者の長男〇〇に相続させる。 第2条 遺言者は、次の不動産を遺言者の妻〇〇に相続させる。 (不動産の表示) ・・・・・省略・・・・・
令和〇年〇月〇日 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 〇 〇 〇 〇 印 |
この場合、遺言書に記載のあるA銀行の定期預金と不動産は、その内容のとおりに、各相続人に財産が承継されることになります。
しかし、遺言作成後に新たに取得した財産については、遺言書がないものとして相続手続きを進めなければなんりません。つまり、法定相続分どおりに分け合うか、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の承継先を決める必要があります。
遺言作成後、新たに財産を取得した場合に備える対応
遺言作成後、新たに財産を取得した場合に備える対応として、主に次の二つの方法があります解説します。
- 将来取得予定の財産も遺言の対象とする
- 遺言書を書き直す
将来取得予定の財産も遺言の対象とする
将来取得予定の財産も遺言書に記載できます。
ここでは2つの例を紹介します。
遺言書に特定の財産を誰に相続させるか記載したあと、以下のような一文を入れると、将来新たに財産を取得した場合の財産変動に対応ができます。
その他、遺言者が有する一切の財産を〇〇に相続させる。 |
遺言者が、将来財産を取得するのが予想できる場合があります。
例えば、遺言者の父親が亡くなったら取得する予定となっている不動産がある場合です。そうした状況が予測できているなら、以下のように、停止条件付の遺言をしておくのも一つの方法です。
遺言者が、遺言者の父〇〇から、下記の不動産の所有権を相続していたときは、当該不動産を、長男〇〇に相続させる。 |
遺言書を書き直す
遺言書は、遺言を書いた人が亡くなった時点で効力が発生します。
つまり、遺言書を書いてから十数年が経つこともあり、その間に遺言者をめぐる事情が変わる可能性があります。
自分が書いた遺言書がどのような内容だったのか定期的に確認をして、財産が増えていないか、自分の気持ちに変化がないかチェックしましょう。
もし遺言書の内容に問題があると感じたら、遺言書の書き直しを検討しましょう。
まとめ
遺言書は残された家族が困らないように導くための最後のメッセージです。
とても重要なものなので、心を込めて作成するのはもちろんのこと定期的に見直して自分の想いを正確に残しておきましょう。
遺言書は適切に書かなければ意味をなさない場合があります。せっかく書いた遺言書が無効になってしまうのは悲しいことです。できれば弁護士に相談して正確に自分の想いを書き記しておきましょう。
ネクスパート法律事務所では、遺言書の作成を含む相続全般に関わる相談を受け付けています。数々の相続案件を手掛けてきた弁護士が対応しますので、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。