公正証書遺言の遺言者が死亡したらやるべき4つのことを解説

亡くなった人が生前、公正証書遺言を作成したと言っていた場合、相続人は何をすべきでしょうか?
この記事では、公正証書遺言書の遺言者が亡くなった場合にやるべきことについて解説します。
目次
公正証書遺言の遺言者が死亡したら相続人に通知は来る?
公正証書遺言の遺言者が死亡しても、公証役場から相続人に通知は来ません。
公正証書遺言とは、遺言者本人が公証役場にいる公証人と証人2名の前で遺言の内容を口頭で告げ、公証人がその内容を筆記して、遺言者及び証人が筆記に間違いないことを確認した上で作成する遺言です。
公証役場は、公証人が作成した公正証書遺言の原本を保管しますが、遺言者が亡くなった際に通知する義務はありません。
そのため、遺言者が死亡しても通知は来ないです。
公正証書遺言についての詳細は、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。
公正証書遺言の遺言者が死亡したら何をすべきか?
公正証書遺言の遺言者が死亡したら、相続人がすべきことは以下の4つです。
遺言書を探す
亡くなった人が公正証書遺言を作成していたことが明らかなら、遺言書を探しましょう。
公正証書遺言書を作成した場合、一般的に遺言者本人は正本または謄本のいずれかを保管しています。
遺言者が大切なものを保管していた机やタンスの引き出し、金庫の中を探してみましょう。銀行の貸金庫を利用しているケースもありますので、よく利用していた銀行に問い合わせてみるのもいいかもしれません。
正本・謄本が見つからない場合は、公証役場の遺言検索システムを利用しましょう。どこの公証役場でも検索できるため、近隣の公証役場で公正証書遺言があるかどうかを確認します。
遺言検索システムを利用するには以下の書類が必要です。
- 利用する人の本人確認ができるもの
- 遺言者の死亡が証明できるもの
- 相続関係が分かるもの
なお、検索利用料は無料です。
遺言書の内容を確認する
公正証書遺言が見つかったら、内容の確認をしましょう。
公正証書遺言は、自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を除く)と違って家庭裁判所の検認が不要なため、その場で内容の確認が可能です。
法定相続人全員が目を通して、遺言者の意向をしっかり理解しましょう。
遺言検索システムを利用した場合、保管されている公証役場は分かりますが、遺言書の内容までは分かりません。公正証書遺言が保管されている公証役場に謄本を請求すれば、内容の確認が可能です。
遺言執行者の有無を確認する
公正証書遺言で、遺言執行者を指定していないかどうか確認しましょう。
遺言執行者とは、遺言者の死後、遺言の内容を実現するための権利・義務を負う人です。
遺言執行者が指定されていれば、相続手続きは遺言執行者が行います。
遺言執行者は必ず選ばなければいけないものではありませんが、遺言書に以下の内容が記載されている場合は、遺言執行者の指定または選任が必要です。
- 子どもの認知
- 相続人の廃除・取消し
- 一般財団法人設立のための財産の拠出
遺言執行者については、以下の記事で詳細を解説していますので、参考にしてください。

遺言書に従って相続手続きをする
遺言書の内容に従って、相続手続きをしましょう。
相続財産によって手続きはさまざまですので確認をしながら順番に進めていきましょう。
相続税の申告が必要な場合は、遺言者が死亡したことを知った日(通常は、遺言者の死亡の日)の翌日から10か月以内に行わなければなりません。
2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内、遺産分割によって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
このように申請の期限があるものは、優先的に行ったほうがよいでしょう。
相続手続きをしなければならない主なものについて、表にまとめましたので参考にしてください。
不動産 | 相続登記の申請手続き |
預貯金・有価証券等 | 名義変更の手続き |
車・バイクなど | 名義変更の手続き |
ゴルフ・リゾート会員権など | 名義変更の手続き |

公正証書遺言に納得できない場合にできることは?
公正証書遺言を見つけたものの、内容に納得ができないケースもあると思います。
その場合に相続人ができることは以下の3つです。
遺産分割協議をする
公正証書遺言があれば原則その内容で相続手続きを行いますが、相続人や受遺者全員が合意すれば、遺言と異なる遺産分割協議が行えます。
相続人以外に受遺者がいる場合は、その受遺者全員が同意していることが前提となります。
公正証書遺言で遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の同意も必要ですので気を付けましょう。
公正証書遺言の無効を訴える
遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を申立てて、公正証書遺言の無効を訴えます。
公正証書遺言の場合、要式不備により無効となるケースはほとんどありませんが、遺言書作成当時に遺言者に判断能力が十分にあったかどうかが争われることがあります。
この場合、裁判所が納得できる強い証拠が必要となります。
公正証書遺言の作成時に証人2名が必要ですが、以下の欠格事由に該当する人が証人になっていた場合に、公正証書遺言が無効と判断されます。
- 未成年者
- 推定相続人とその配偶者や直系血族
- 財産を譲り受ける人とその配偶者や直系血族
- 公証人の家族や4親等内の親族
- 公証役場の職員など
遺留分侵害額請求を行う
公正証書遺言で遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害額請求権を行使できます。
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に最低限保証された遺産の取得分です。例えば、すべての財産を愛人に相続させるというような内容が公正証書遺言に書かれていた場合に、遺留分侵害額請求権を行使して、受遺者・受贈者等に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅するので、迅速に行ったほうがよいでしょう。
遺留分侵害額の請求は、遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示を相手方にする必要があります。家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示とはならないため、調停の申立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。
遺言書の内容に納得できない場合に、相続人がどのように対応すればよいかは、以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。

まとめ
公正証書遺言は、自分の財産を思いどおりに相続人に渡したいときに有効な方法です。
公正証書遺言を作成したら、謄本や正本の保管場所を周りの人に知らせておきましょう。そうすれば、相続人もスムーズに手続きができます。
公正証書遺言の内容をめぐって、相続人同士がトラブルにならないように、弁護士に相談しながら公正証書遺言の作成をしたほうがよいでしょう。
ネクスパート法律事務所では、公正証書遺言の作成や、遺言書案の作成・手続き説明などのご相談を受け付けています。ぜひ一度お問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。