遺言書があっても遺産分割協議はできるのか?

亡くなった人が遺言書を遺していた場合、内容に納得ができない人もいるかもしれません。
その場合、相続人の間で遺言書の内容と異なる遺産分割協議はできるのでしょうか?
この記事では、遺言書があっても遺産分割協議ができる条件について解説します。
目次
遺言書と遺産分割協議の関係
遺言書がある場合、原則として個人の意思を尊重して、その内容どおりに相続手続きを進めるのが原則です。遺言書の存在を知らずに遺産分割協議をすると、その遺産分割協議は無効となる可能性があります。
遺産の全部について有効な遺言書があれば遺産分割協議は原則不要
亡くなった人(以下、被相続人)が法律で定められた方式に則って作成した有効な遺言書を遺している場合、原則として遺言書の内容どおりに相続手続きを進めます。
民法に定められた方式や要件を満たした遺言書に記載された内容は法定相続分のルールに優先するからです。
したがって、遺言書で遺産の全部について分け方が記されている場合は、遺産分割協議をせずに相続手続きを進められます。
ただし、遺言書がある場合でも、相続人全員での遺産分割協議が必要になるケースもあります。
例えば、以下のような場合です。
- 遺言書が民法で定められた方式や要件を満たしていない場合
- 遺言書によって分け方が決められていない財産がある
- 遺言書の内容が曖昧で解釈が分かれる場合
- 遺言書で相続分(割合)しか指定されていない場合 など
遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を行うと無効になる可能性がある
遺言書の存在を知らずに遺産分割協議をして、その後に遺言書の存在が明らかになると当該遺産分割協議が無効になる可能性があります。せっかく行った遺産分割協議が無駄にならないように、協議を行う前に、被相続人が遺言書を遺していないかどうか確認をしましょう。
相続人の一人が遺言書の存在や内容を隠して遺産分割協議をした場合も無効になります。
遺言書があっても遺産分割協議ができるか?
遺言書が遺されていたからといって、必ずしもその内容に従わなければならないわけではありません。
相続人全員が遺言の内容を知った上で、遺言と異なる内容で遺産を分割することを望んでいる場合は、合意により遺言と異なる内容での遺産分割が可能であるとされています。
遺言があっても遺産分割協議ができるその他の条件については、3章で詳述します。
遺言書があっても遺産分割協議ができる条件は?
相続人全員が、遺言書の内容を知った上で、遺言書の内容と異なる遺産分割協議をすることに合意すれば、遺言書の内容とは異なる内容の遺産分割も認められます。
ただし、相続人以外の者への遺贈がある場合や、遺言執行者いる場合には、受遺者・遺言執行者の同意も必要となります。
法定相続人全員が合意している
法定相続人全員が遺産分割協議に合意していれば、遺言と異なる遺産分割は可能です。
逆に言えば、一人でも反対している人がいたり、遺言書の存在を知らない相続人がいたりする場合は、遺産分割協議は行えません。
受遺者と遺言執行者が遺産分割協議に同意している
遺言書で法定相続人以外の者に財産を譲り渡す旨が記載されている場合は、財産を受け取る人(受遺者)の同意が必要です。
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄ができます。受遺者が遺贈を放棄すれば、遺贈の対象の財産は遺産に復帰し、遺言執行の対象から外れるため、遺産分割の対象となります。
遺言書で遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の同意も必要です。民法において、遺言執行者がいる場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為ができないと規定されているからです。
遺言執行者がいるときに、遺言と異なる内容の遺産分割協議を行う場合には、遺言執行者の同意または追認がない限り、その遺産分割協議は無効となる可能性があります。
遺言書で遺産分割を禁止していない
遺言書で遺産分割を禁止していなければ、遺言と異なる遺産分割協議を行えます。
遺言者は、遺言で、相続開始時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止できます。
遺産分割を禁止する旨の遺言があるのに、法定相続人全員の合意により遺産分割を実施した場合、遺言執行者がいるときには、この遺産分割協議は無効となります。
遺言執行者がいない場合は、当該遺産分割協議は有効に成立されると解されていますが、遺言者が遺言で遺産分割を禁止しているのであれば、その経緯や事情を踏まえて、遺言者の最終意思と相続人らの協議の自由との調整を図ることが大切です。
まとめ
生前、家族が遺言書を作成した旨を知らせるケースは意外に少ないかもしれません。元気なのに遺言書なんて縁起が悪い…とこの類の話を避ける人も多いでしょう。
しかし、最近は終活する人も多く、その場合は遺言書の作成を検討している人もいるかもしれません。もし遺言書を作成したのであれば、その旨を相続人となる予定の人に伝えておきましょう。遺言書の存在を知っていれば、万が一のときにスムーズに手続きを進められるメリットがあります。
遺言書を不備なく作成したいと考えている人は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ネクスパート法律事務所では、相続に関する案件を多数手がけている弁護士が在籍しています。初回の相談は無料で行えますので、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。