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遺産分割審判の流れ・費用|期日欠席のリスクと審判の強制力も解説

遺産分割調停が不成立となると、審判手続きに移行します。

審判手続きは、調停よりも裁判に近い厳格な手続きであるため、一般の方が専門家の助言を受けず自力で対応するのは困難です。

この記事では、遺産分割審判の流れや費用・注意点について解説します。

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遺産分割審判とは

ここでは、遺産分割審判について解説します。

遺産分割審判をするのはこんなとき

遺産分割審判は、交渉や調停で相続人全員の合意が成立する見込みがない場合に利用できる手続きです。

具体的には、以下のような場合に審判手続きが開始されます。

  • 遺産分割調停が不成立となったとき
  • 遺産分割調停を経ずに審判を申立てて裁判所に受理されたとき

遺産分割事件は調停を経ずに審判を申立てることも可能ですが、実務上、家庭裁判所は事件の受理にあたって、まず調停事件として申立てるよう指導することが一般的です。

調停手続きと審判手続きの違い

調停手続きと審判手続きの主な違いは、下表のとおりです。

遺産分割調停 遺産分割審判
手続きの進め方 当事者間の話し合いを前提に進められ、全員の合意により成立する 書面審理で手続きがすすめられ、裁判官が分割方法を指定する
調停委員の関与 あり なし
当事者が期日に同席するか 待合室が別々に用意され、調停室への入室も順番交代 審判廷に当事者が同席する
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審判前の保全処分とは

審判前の保全処分とは、審判の申立てから審判が確定するまでの間、相続関係者による財産の売却等により将来の権利の実現が困難にならないよう、家事審判の実行性を確保するためになされる暫定的措置です。

審判前の保全処分には、以下のような種類があります。

  • 仮差し押さえ
  • 仮処分
  • 財産の管理者の選任
  • その他必要な保全処分

家庭裁判所は、本案審判における金銭または特定物の給付命令の執行を保全するため必要があるときは、本案事件の申立人等の申立てにより、相続財産の仮差し押さえ、仮処分等の保全処分を命じられます。

遺産分割審判の申立費用と弁護士費用相場

ここでは、遺産分割審判の申立費用と弁護士費用の相場を紹介します。

申立費用

遺産分割審判の申立費用は、以下のとおりです。

  • 収入印紙:1,200
  • 予納郵券:数千円

予納郵券(郵便切手)の額や内訳は裁判所によって異なるので、事前に確認しましょう。

弁護士費用

遺産分割審判を弁護士に依頼する場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

相談料|305,500円程度

遺産分割審判を弁護士に相談した場合は、30分あたり5,500の法律相談料がかかります。

法律事務所によっては、初回相談料を無料とする事務所もあります。

着手金|経済的利益の28%程度

遺産分割交審判を弁護士に依頼する場合は、経済的利益(取得を希望する財産の価格)に応じて、以下の計算式で算出された着手金がかかるのが一般的です。

  • 300万円以下の場合:経済的利益の額×8%
  • 300万円超え3,000万円以下の場合:経済的利益の額×5%9万円
  • 3,000万円超え3億円以下の場合:経済的利益の額×3%69万円
  • 3億円超えの場合:経済的利益の額×2%369万円

最低着手金は、11万円(税込)程度となるのが一般的です。法律事務所によっては、固定報酬が設定されていることもあります。

報酬金|経済的利益の416%程度

報酬金は、以下のとおり、経済的利益の額(実際に取得した額)に応じて算出します。

  • 300万円以下の場合:経済的利益の額×16
  • 300万円を超え3,000万円以下の場合:経済的利益の額×10%+18万円
  • 3,000万円を超え3億円以下の場合:経済的利益の額×6%+138万円
  • 3億円を超える場合:経済的利益の額×4%+738万円

法律事務所によっては、固定報酬が設定されていることもあります。

その他|数千円~数万円程度

その他、事案に応じて以下の費用がかかります。

  • 実費:交通費、裁判所費用、郵便代、戸籍謄本等の取得にかかった費用全額
  • 日当:1日あたり35万円程度

遺産分割審判の流れ

ここでは、遺産分割審判の流れについて解説します。

審判の申立て

遺産分割審判の申立ては、被相続人の最後の住所地または相続開始地の家庭裁判所に対して行います。

遺産分割調停が不成立となり終了した場合は、調停申立時に審判の申立てがあったものとみなされるため、あらためて申立書を提出する必要はありません。

1回審判期日|審理手続きの開始

家庭裁判所は、全当事者に立ち会いの機会を与えたうえで第1回審判期日を実施します。

争点整理

争点整理は、原則として全当事者に立ち会い権を認め、対席方式で審理を行います。

主張書面や書証は、あらかじめ相手方に写しを交付します。

当事者間に争いのない事実等については、当事者で合意を成立させ、これを基礎に手続きが進められます。

事実の調査および証拠調べ

証拠調べは、当事者からの申請により裁判所が採否を決定します。

当事者本人の調べは、原則として陳述書や家事審判官(裁判官)の審問によりますが、当事者の請求により実施する場合は、尋問事項書を提出し、交互尋問方式で尋問が行われます。

第三者の調べは、当事者の立ち会いのもと証人尋問の方法で行われます。

家事審判官(裁判官)の職権調査は、補充的に行われます。

審判手続終結直前の調停案の提示

裁判所は、審判手続きが終結する直前に調停案を提示し、当事者間の合意による解決を試みます。調停成立の見込みがあれば、調停手続きに付されます。

審判手続きの終結

当事者間の合意による解決の見込みがなければ、当事者が最終的な主張・立証を行ったあと、裁判官が審判を下します。

遺産分割審判は、即時抗告ができるので、全当事者に告知されます。実務上は、審判書謄本を書記官による交付送達または特別送達で告知されます。

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遺産分割審判の申立てに必要な書類

ここでは、遺産分割審判の申立てに必要な書類を解説します。

申立書

審判の申立ては、調停と同じく口頭でもできますが、実務上は申立書を作成して提出します。

ただし、遺産分割調停が不成立となり審判に移行した場合は、申立書を提出する必要はありません。

添付書類

申立書には、証拠書類の原本または謄本を添付することが求められています。

通常、申立書に添付する書類には、以下のようなものがあります。

  • 遺産目録
  • 申立人および相手方全員の戸籍謄本(いずれも発行後3か月以内のもの)
  • 申立人および相手方全員の住民票
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
  • 不動産の登記簿謄本(3か月以内のもの)
  • 固定資産評価証明書(最新年度のもの)
  • 借地権・借家権を証明する文書
  • 預貯金等の残高証明書または通帳等の写し
  • 株式、社債、投資信託等の内容を示す文書
  • 委任状(弁護士に依頼する場合)

ただし、遺産分割調停が不成立となり審判に移行した場合は、調停で既に提出した書類を再度提出する必要はありません。

裁判所の運用や事案によっては、追加資料の提出を求められることもあります。

遺産分割審判に関するQA|不満でも無視や欠席はおすすめできません

ここでは、遺産分割審判に関するよくある質問とその回答を紹介します。

遺産分割審判の期日を欠席するとどうなる?

自分の言い分を聞いてもらえないまま審判が下される可能性がある

審判は、当事者の話し合いの場となる調停と異なり、裁判所が主導で行う手続きです。審判期日を欠席し、書面や証拠資料も提出しなければ、自分の言い分を聞いてもらえないまま不利な内容で審判が下される可能性があります。

やむなく欠席する場合の対応方法

やむを得ず欠席する場合は、事前に家庭裁判所に連絡しましょう。

特別な事情があれば、期日変更を申請することで、審判期日を変更してもらえることもあります。

弁護士に遺産分割審判の手続きを依頼すれば、代理人として審判期日に出席してもらえます。代理人が就いている場合も本人の出席が推奨されていますが、やむなく欠席する場合は、弁護士に対応を任せられます。

遺産分割審判を無視するとどうなる?|強制執行による審判内容の実現

遺産分割審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有します。そのため、審判の内容を履行しない場合は、強制執行によってその内容を強制的に履行させられます。

例えば、金銭の支払いを命じる審判が下されたのに、支払期日までに履行しなければ、預金や不動産が差し押さえられる可能性があります。

遺産分割審判に不服がある場合はどうすればいい?|即時抗告の申立て

遺産分割審判に不服がある場合は、即時抗告を申立てられます。

即時抗告の申立方法

審判内容に不服がある場合は、審判の告知を受けた日(審判書謄本の交付を受けた日)の翌日から起算して2週間以内に即時抗告を申立てなければなりません。

即時抗告の申立書は、高等裁判所宛てとし、原審家庭裁判所に提出します。

抗告審の審理

高等裁判所は、申立ての適否・理由の有無により、次のいずれかの裁判をします。

  • 却下
  • 棄却
  • 原審判の取消し

原審判を取り消す場合は、原則として原審判を原審家庭裁判所に差し戻します。

更なる事実の調査を要しない場合などは、高等裁判所が自ら審判に変わる裁判をすることもあります。

遺産分割審判は自分で手続きできる?

ここでは、遺産分割審判を自力で行えるかどうかについて解説します。

調停と異なり裁判に近い手続きであるため専門的な知識が必要

遺産分割審判は、話し合いを前提とする調停手続きと異なり、裁判に近い審理方式で手続きが進められます。

法律に基づく主張やその主張を裏付ける客観的な資料の提出が求められるため、書面作成能力や裁判官を説得するためのスキルが必要です。

特に相手方に弁護士が就いている場合などには、法的知識や経験の差が思いもよらない結果を生み、不利な条件で審判が下ることもありえます。

遺産分割審判は弁護士に依頼するのがおすすめ

遺産分割審判を有利に進めるには、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、自分の言い分に法的根拠があるかどうか正しく判断してもらえます。主張書面や証拠書類の作成・提出も全て任せられるため、手間や時間も省けます。

審判期日にも同席してもらえるので、ふとした発言内容が不利に働くリスクも軽減できます。

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まとめ

遺産分割審判では、相続人間の話し合いを前提とする調停手続きと異なり、裁判官が遺産分割方法を決定します。

審判では、法的な主張や客観的証拠の提出が必要であり、書類を作成する能力や裁判官を説得するスキルが求められます。

手続きを有利に進めるには、相続に詳しい弁護士によるサポートが不可欠です。

ネクスパート法律事務所では相続・遺産分割問題に積極的に取り組んでいます。お困りの方は、お気軽にお問合せください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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