遺産分割協議書はどこでもらえる?どこで作成できる?誰が作る?

亡くなった方の預金の解約や不動産の名義変更などの手続きにおいて、金融機関や法務局から遺産分割協議書の提出を求められることがあります。
普段目にしない遺産分割協議書について、「遺産分割協議書って何?」「遺産分割協議書はどこでもらえるの?」とお悩みの方も少なくないでしょう。
遺産分割協議書は、相続人全員で遺産の分け方について話し合った結果を取りまとめた書面です。法務局や税務署等の公的機関や銀行などの金融機関でもらえるものではありません。
この記事では、遺産分割協議書の手配にお悩みの方に向けて、以下の点を解説します。
- 遺産分割協議書はいつ、どこで作成するのか
- 遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家
- 相続開始から遺産分割協議書作成までの流れ
遺産分割協議書に関する知識を深める助けになれば幸いです。
目次
遺産分割協議書はどこでもらえる?いつ、どこで作成できる?
ここでは、遺産分割協議書とは何か、遺産分割協議書を作成するにはどうすればいいかについて解説します。
遺産分割協議書は公的機関等でもらうものではない
遺産分割協議書とは、相続人全員による遺産分割協議の結果(合意内容)を記載した書面です。
遺産分割協議は私文書であり、公的機関等で発行してもらうものではありません。
遺産分割協議書を作成するには
遺産分割協議書は、相続人の誰かが作成しても良いですし、専門家に作成を依頼しても構いません。
遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家は誰?
ここでは、遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家を紹介します。
行政書士
行政書士は、書類作成業務や許認可申請を代行する専門家です。
相続人同士で争いなく遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書の作成だけを頼みたい場合は、行政書士に依頼できます。
司法書士
司法書士は、不動産登記や商業登記、裁判所に提出書類の作成代行などを行う専門家です。
相続財産に不動産が含まれる場合は、遺産分割協議書の作成とともに、その後の登記申請も依頼できます。
弁護士
弁護士は、法律手続き全般を取り扱う専門家です。
遺産分割協議がまとまりそうになく、他の相続人との交渉が必要な場合は、遺産分割協議書の作成とともに、交渉の代理も依頼できます。
交渉や家事事件の手続きの代理を依頼できるのは、弁護士だけです。
相続開始から遺産分割協議書作成までの手順
ここでは、相続開始から遺産分割協議書作成までの手順を解説します。
遺言書の有無の確認
相続が開始したら、遺産分割協議を行う前に、遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書がある場合は、基本的には遺言書の内容に沿って相続手続きを進めるため、遺産分割協議を行う必要はありません。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺言の内容と異なる遺産分割も可能です。
相続人調査
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人が1人でも欠けた遺産分割協議は無効となるため、相続人調査をして相続人を確定します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得して、誰が相続人になるかを調査します。

相続財産調査
遺産分割協議を行うにあたり、遺産の範囲を確定しなければなりません。
被相続人が相続開始時に有していた財産を把握します。預金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や滞納公租公課などのマイナス財産も調査します。

遺産分割協議
相続人や遺産の範囲を確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
協議方法に決まりはありません。全員が一堂に会して話し合えるのが理想ですが、遠方に住む相続人がいて難しい場合は、電話やwebミーティングなどで協議を進めても構いません。
遺産分割協議が成立したら、その合意内容を明確にするために、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は自分で作成できる?
遺産分割協議書は、自分で作成することも可能です。
ここでは、遺産分割協議書の書き方やポイントについて解説します。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の書き方に、法的な決まりはありません。手書き・パソコンのいずれで書いても構いません。
押さえておきたいポイント
遺産分割協議書作成時に押さえておくべきポイントは、以下のとおりです。
- 被相続人の氏名・最後の住所・死亡日を記載し、被相続人を特定できるようにする
- 相続人の氏名・住所・生年月日を記載し、相続人を特定できるようにする
- 誰がどの財産を取得するか明確に記載する
- 不動産の表示は不動産登記事項証明書の記載どおりにする
- 預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を明記する
- 株式等は金融機関名・銘柄・株数(口数)・証券番号等を明記する
- 各相続人が氏名を自署し実印で押印する
- 遺産分割協議書が2ページ以上なら契印をする
- 協議書は共同相続人の人数分作成し各自の印鑑証明書を添付する
遺産分割協議書の書き方・ひな型については、下記記事をご参照ください。

自分で作成するデメリット
遺産分割協議書は、自分でも作成できます。
しかし、以下のようなデメリットもあります。
- 作成に手間と時間がかかる
- 遺産分割協議書に不備があると相続手続きが進められない
- 遺産分割協議書に記載のない遺産が判明した場合、やり直しが必要になることがある
当事者や遺産の表示に単純な記載ミスがあるだけでも、法務局や金融機関に手続きを受け付けてもらえないことがあります。
自分では不備なく作成できたつもりでも、思わぬことが原因で無効となり、もう一度遺産分割協議を行わなければならなくなるため、遺産分割協議書作成時は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼するメリット
ここでは、遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼するメリットを解説します。
協議書の不備による相続手続きの停滞を回避できる
遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼すれば、形式的不備により相続手続きができなくなるリスクを軽減できます。
遺産分割協議の成立後、新たに発見された遺産が発見された場合、その遺産の価格によっては、当初の遺産分割協議が無効となり、遺産分割協議をやり直さなければならないこともあります。
弁護士であれば、将来的生じうるトラブルを予測し、それらを防止する遺産分割協議書の作成が可能です。
相続人間でトラブルが生じたときも安心
遺産分割協議は、相続人全員の参加が必須です。普段関わることのない疎遠な相続人と話し合いをしなければならないこともあります。
遺産分割協議がまとまりそうになく、他の相続人との交渉が必要になった場合も、弁護士であれば交渉を代理できます。
協議書作成後の手続きも依頼すれば時間や手間が省ける
遺産分割協議書を作成し相続人全員の署名・押印を取り付けた後は、遺産分割協議書に基づき預金の解約手続き等を行います。
相続財産に不動産が含まれている場合は、相続登記が必要です。相続した財産の額によっては、相続税の申告・納税も行わなければなりません。
これらを他の専門家に個別に依頼すると、不動産登記については司法書士、税金については税理士に依頼する必要があり、時間や手間がかかります。
税理士や司法書士と提携している弁護士に依頼すれば、ワンストップで対応してもらえるため、時間や手間が大幅に省けます。
まとめ
遺産分割協議書は、相続人全員で合意した遺産分割協議の結果を取りまとめる書面であり、公的機関等でもらえるものではありません。
有効な遺産分割協議書を作成するためには、相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議における相続人全員の合意が不可欠です。
不備のない遺産分割協議書を作成することはもちろん、作成前の手順にも時間と手間がかかります。遺産分割協議書を作成する際は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。