遺産分割でもめる典型的な事例は?弁護士に依頼するメリットを解説
相続が始まったとき、「うちは大した財産もないし、兄弟仲も悪くないから大丈夫だろう」と考える方は少なくありません。
しかし実際には、遺産分割でもめるケースは想像以上に多く、規模に関係なくトラブルへ発展する可能性があります。特に感情や疑念が絡んだ場面では、わずかな行き違いから深刻な対立に発展することもあります。
この記事では、遺産分割でもめる典型的な要因やトラブルを避けるための考え方、問題が生じた際に弁護士へ相談するメリットについて、一般の方にも分かりやすく、かつ専門性を保ちながら詳しく解説します。
遺産分割でもめる原因は?典型的な事例を解説
遺産分割でもめる場合、その原因が1つに絞られることは少なく、家族の関係性や価値観、財産の内容などが複雑に絡み合っているのが一般的です。ここでは、遺産分割でもめやすい状況を、理解しやすい形で見ていきます。
感情的な対立が表面化してしまうケース
相続は日頃の人間関係が強く影響し、感情的な対立が表面化する可能性があります。
親族間の関係が希薄であったり、長年の不仲が存在していたりすると、協議の場で冷静さを保つことが難しくなります。普段からあまりコミュニケーションを取らない相続人同士の場合、譲り合う姿勢よりも、自分の主張を通したいという気持ちが前面に出やすく、その結果、話し合いが停滞します。
親からの支援の有無や家族内での役割に対する不満などが積み重なっていると「自分は損をしている」「兄弟姉妹ばかり優遇されていた」という思いが噴き出し、感情的な対立に発展しやすくなります。このように、現実の相続争いは金額だけの問題ではなく、家族の歴史や感情が深く影響していることが少なくありません。
特定の相続人が財産管理をしていたことによる不信感
相続財産を被相続人に代わって管理していたのが特定の相続人だった場合、他の相続人から「財産が正しく管理されていたのか」という疑念が生まれやすくなります。
例えば、同居していた子が預金通帳を管理していたり、介護を担当していたりする場合、他の相続人は財産状況について詳しい情報を得られないことがあります。その状態が続くと、預金が減っている理由や特定の支出の正当性について不信感が募り、「財産を隠しているのではないか」「生前に使い込みがあったのではないか」といった疑念へと発展してしまうのです。
実際に不正が行われているとは限らなくても、情報が十分に共有されていないだけで不信感は大きくなり、遺産分割でもめる原因となります。
不動産や非上場株式など分けにくい財産があるケース
遺産の中に物理的に分割が難しい財産が含まれると、協議は複雑化する傾向があります。不動産が典型例で、誰が相続するのか、評価額をどう決めるのか、売却するかどうかなど、多くの論点が生じます。
特に実家の住まいのように、家族の思い出が詰まった不動産では、「自分が住みたい」「売りたくない」などの感情が強くなり、意見の調整が困難になります。
非上場株式もまた、遺産分割を難しくする財産の一つです。市場価格が存在しないため評価が容易ではなく、事業承継の問題が絡む場合には法定相続分どおりに分けると事業の継続が難しくなることがあります。家業を守りたい相続人と、財産として評価したい相続人との間で思惑が合わず、協議が長引いたり対立が深まったりすることがあります。
遺言書の内容が不十分または不明確な場合
遺言書に記載されている財産が一部抜け落ちていたり、法的要件を満たしていない可能性があったりすると、相続人間で遺言書の効力を巡って意見が食い違うことがあります。また、特定の相続人に偏った内容が記載されている場合には、他の相続人が不公平感を抱き、遺産分割協議が紛糾する原因になります。
相続人の人数が多い・疎遠な親族が含まれているケース
相続人の人数が多くなるほど、話し合いは複雑になります。特に、疎遠になっている親族や、日頃ほとんど関わりのなかった人が相続人として関与する場合、情報共有の不足や価値観の違いが原因で協議が停滞することがよくあります。話し合いをまとめる役割を担う相続人が不在の場合、意見の集約が困難になり、遺産分割でもめる可能性が高くなります。
特別受益や寄与分を巡る意見の対立
生前に住宅購入の援助を受けていた、結婚時に高額な贈与を受けた、長期間にわたって介護を担っていた、家業に大きく貢献したなど、相続人同士で事情が異なる場合には、相続分をどのように調整するかについて意見が割れやすくなります。相続分を決める際には、特別受益と寄与分という考え方が関連します。これらは法的な知識が必要な論点でもあるため、主張の根拠が不明確な状態で議論が続くと、感情の対立が深まりやすい点も特徴です。


遺産分割でもめるとどのようなリスクがあるのか?
遺産分割のトラブルは、放置すると時間とともに深刻化する傾向があります。手続きが進まない状態が長く続くと、銀行口座が凍結されたままになり、生活費や事業資金に影響が出ることがあります。また、相続税の申告期限は原則として相続開始から10か月以内であり、遺産分割がまとまらないことで期限に間に合わない可能性も出てきます。
さらに、家族関係が悪化し、もはや話し合いができない状態になると、家庭裁判所による調停や審判に進まざるを得なくなることがあります。こうなると手続きが複雑になり、時間的・精神的な負担が大きくなります。
遺産分割でもめたときに弁護士へ相談するメリット
遺産分割でもめた場合には、弁護士へ相談することで、状況を改善できる可能性があります。特に相続トラブルは、感情面・法律面・手続面のすべてが絡み合うため、弁護士の関与によって冷静で合理的な進行が可能になります。以下でメリットについて説明します。
法的な視点から適切な解決方針を示してもらえる
弁護士であれば、法的な視点から適切な解決方針を示すことができます。
遺産分割でもめる理由は、財産の評価方法や相続分の考え方など、法律に関する理解不足が背景にあることが少なくありません。弁護士は、法的知識を踏まえて、現状に応じた的確な解決方針を示せます。
例えば、意見が対立している原因が特別受益や寄与分に関係している場合、それらがどのように適用されるのか、主張がどこまで成り立つのかを判断し、協議の方向性を整理します。また、遺産の範囲がはっきりしない場合には、預金取引の調査や不動産の評価など、事実確認の方法について助言することも可能です。
このように、法的な視点を踏まえて状況を客観的に分析することで、感情的な議論に流されず、合理的な解決への道筋を示すことができます。
相続人同士が直接対立しない環境を整えられる
弁護士であれば、代理人として遺産分割協議に参加できます。遺産分割で心身の負担が大きい点のひとつは、相続人同士が直接話し合わなければならないという点です。
長年積み重なった不満や感情が噴き出しやすく、協議が進まないばかりか、家族関係がさらに悪化してしまうこともあります。
弁護士が代理人として関与することで、相続人が直接顔を合わせる必要がなくなり、精神的な負担を軽減できます。弁護士が窓口となるため、互いの主張や希望を冷静に整理したうえで伝えることができ、話し合いが円滑に進むことが期待できます。
また、第三者である弁護士が入ることで、当事者同士では指摘しづらい点も適切に整理され、協議が建設的に進むことが少なくありません。
複雑で専門的な手続きを任せられる
弁護士であれば、複雑で専門的な手続きを任せられます。遺産分割でもめている場合、手続きが複雑になりやすく、多くの書類作成や調査が必要になります。弁護士に依頼することで、これらの実務的な作業を任せられます。
例えば、遺産分割協議書の作成は、内容に漏れがあると後々の相続手続きに支障が出る可能性があります。弁護士であれば、法的観点から必要な記載事項を整理して文書化し、協議内容を正確に反映した書類を作成します。
また、協議がまとまらず家庭裁判所での調停を検討する段階に入った場合には、申立書の作成や必要資料の収集、期日の出席などの負担も生じます。これらを弁護士がサポートすることで、相続人が手続きの複雑さに悩まされることなく、必要な対応を落ち着いて進めることができます。
事実関係の調査や財産の評価を適切に行える
弁護士であれば、事実関係の調査や財産の評価を適切に行うことができます。
遺産分割がもめる背景には、財産の範囲が明確でない、評価額に納得できない、といった問題が潜んでいることがあります。
弁護士に依頼すると、必要に応じて金融機関への照会、不動産調査、取引履歴の確認など、事実関係の把握に向けた調査を適切に進めることができます。
財産の評価があいまいなまま話し合いを続けると「公平に分けられていないのではないか」という不信感が生まれ、対立を深める原因になります。遺産の全体像を正確に把握したうえで協議を進めることで、納得感のある解決に近づくことができます。
まとめ
遺産分割でもめた場合、当事者同士で解決しようとすると感情的な対立がエスカレートし、家族関係の修復が困難になるリスクがあります。トラブルの兆候を感じたら、無理に一人で抱えず、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご連絡ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。
