相続で印鑑を押してくれない人がいる時に生じる問題は?対処法を解説

相続手続きをする際、他の相続人に印鑑を押してもらわなければならないケースがあります。
この記事では、印鑑を押してくれない相続人がいる時に生じる問題点と、その際の対処法やNG行動について解説します。
目次
相続で印鑑を押してくれない人がいる時に生じる問題は?
相続で印鑑を押してくれない人がいる時に生じる問題は、相続手続きが進められないことです。
例えば遺産分割協議で合意した後に作成する遺産分割協議書には、相続人全員の署名・押印が求められます。法定相続分どおりに手続きを進める場合でも、金融機関から所定の相続手続き依頼書に相続人全員の署名・押印が求められます。
相続人の中に印鑑を押してくれない人がいる場合は、相続手続きをスムーズに進められないことがあります。
相続で印鑑を押してくれないのはどんな理由があるか?
相続で印鑑を押してくれない人にはどんな理由があるのでしょうか。
考えられるのは以下の2点です。
相続手続きの内容に納得していない
印鑑を押してくれない理由として、相続手続きの内容に納得していない可能性があります。例えば、相続人全員で話し合いをせずに相続人の一人が勝手に相続の配分を決め、それを他の相続人に押し付けた場合や、代表者として特定の相続人が手続きをすることに納得していない場合などです。
相続手続きの進め方や内容に納得していない場合は、印鑑を押してくれないことがあるでしょう。
相続手続きの内容が理解できていない
印鑑を押してくれないもう一つの理由として、相続手続きの内容が理解できていない可能性があります。
この場合、そもそも相続手続きとは何か、なぜやらなければならないかを丁寧に説明する必要があります。
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合の対処法は?
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合の対処法は以下の3つです。
相続人全員で話し合う
相続人全員で話し合いをしましょう。
相続問題で不満が出る場合、話し合いが十分にされていないケースが多いです。
例えば、相続人の一人が勝手に相続財産を分けて遺産分割協議書を作成したら、他の相続人はなぜ一言も相談がないのだろうと疑問に思い不信感を抱くでしょう。これは日頃から仲の良くない親族だけに起こる問題ではなく、良好な関係を築いている親族間にも起こり得ます。
仮に、親が亡くなったら長男が率先してさまざまな手続きを進めるべきと考え、他の兄弟の意見を聞かずに遺産分割協議書を作成し署名・押印を迫ったとします。長男としては、相続手続きの負担を他の兄弟にかけないようにしようと気を利かせたつもりでも、他の兄弟からすればなぜ相続人全員で話し合った上で決めないのかと感じます。
親しい仲にも礼儀ありとの言葉が示すように、話し合いをせずに思い込みだけで手続きを進めることはやめましょう。
相続手続きに印鑑が必要な根拠を資料で示す
相続手続きに印鑑が必要な根拠を資料で示しましょう。
印鑑を押す重要性や責任の重さを実感している人は多いため、よく相続手続きの内容を理解できないまま印鑑は押せないとためらっている可能性があります。
例えば、金融機関からの依頼であれば印鑑を押さなければならない根拠を示した文書を提示したり、相続登記であれば法務局の公式ホームページを提示したりしたほうがよいでしょう。
調停を申立てる
どのような方法をとっても印鑑を押してくれない人がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てましょう。
調停を申立てれば調停委員が間に入るため、冷静に話し合いができる可能性があります。頑なに印鑑を押すのを拒んでいるのであれば、感情的になっている部分が大きいと思われますので、第三者が間に入るのは効果的かもしれません。
調停調書や審判書があれば、各財産の相続手続きでは、その財産を取得する相続人以外の押印は基本的に求められません。遺産分割調停については別記事で解説していますので、参考にしてください。
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合のNG行動は?
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合、絶対にやってはいけない3つのNG行動を解説します。
印鑑を押してくれない人に押印を無理強いする
印鑑を押してくれない人に対して、押印を無理強いするのは絶対にやめましょう。
「印鑑を押さないと〇〇をする」など脅迫めいたことを言って無理強いをしたら、脅迫罪などの罪に問われる可能性があります。たとえ相手がそれに屈して印鑑を押したとしても、後日遺産分割無効確認訴訟を起こされたら、遺産分割協議はなかったことになるかもしれません。
押印を強要しても何も解決にならないと肝に銘じてください。
相続手続き書類を偽造する
印鑑を押してくれない人の署名・押印を代わりにするなど、相続手続き書類を偽造するのは絶対にやめましょう。
例えば遺産分割協議書を偽造した場合、私文書偽造罪に問われる可能性があり、この場合は3か月以上5年以下の懲役を課せられます。
「バレないだろう…。」と軽い気持ちで書類を偽造しても得るものは何もありませんので気を付けましょう。
相続手続きそのものを放置する
印鑑を押してくれない人がいるため面倒になり、相続手続きそのものを放置するのは絶対にやめましょう。
相続手続きを放置したら起きる主な問題点は以下のとおりです。
相続税の申告期限に間に合わない
相続税の申告期限に間に合わない可能性があります。
相続財産の総額が一定の額以上あれば、相続税を申告・納付しなければいけません。
相続税の申告は相続開始から10か月以内に行わなければなりません。期限を過ぎると延滞税や不申告加算税が課せられます。
相続財産の活用ができない
相続手続きを放置した場合、被相続人が遺した相続財産の活用ができなくなります。
被相続人が所有していた銀行口座等や株、車などの名義変更をしないまま放置すると、活用できないのはもちろんのこと、預金に関しては5年から10年経過すると休眠口座扱いになる可能性があります。
相続人が増えて複雑になる
相続手続きを放置した場合、新たな相続が起きて相続人が増え、さらに手続きが複雑になる可能性があります。いくつもの相続が発生すると全く関わったことがない人とやり取りをしなければならないケースがあります。
こうしたことを避けるためにも相続手続きの放置はやめましょう。
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合は弁護士に相談を
相続で印鑑を押してくれない人がいる場合は、弁護士に相談をおすすめします。
弁護士であれば相続人の間で起きているトラブルの解決が可能で、印鑑を押してくれない人に対して、なぜ印鑑を押す必要があるかわかりやすく説明できます。親族間のトラブルは感情面が左右するケースが多いため、弁護士が間に入って説明をすれば、すんなり理解してくれる可能性もあります。
調停を申立てる場合、弁護士に依頼すれば手続きを任せられますし、調停に同行してもらいアドバイスを得られます。
複雑になってこじれる前に、ぜひ早い段階で弁護士に相談をしましょう。
まとめ
世の中全体に脱印鑑の動きはあるものの、まだまだ日本人にとって印鑑を押す行為は特別なものだといってよいでしょう。特に相続手続きは印鑑なしで進めるのはほぼ不可能です。押印を拒否している相続人がいればその理由を聞いて、なぜ押印が必要なのか丁寧に説明をしましょう。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に強い弁護士が在籍しています。相続問題でお悩みを抱えている方は、ぜひ一度お問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。