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成年後見人をつける5つのデメリットと親族後見人の4つのデメリット

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの精神上の障害が理由で、物事を判断する能力が十分ではない方に対し、本人の意思を尊重しながら法律的に支援する制度です。

家庭裁判所に選任された成年後見人が、本人の判断能力を補い、法律行為によって不利益を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりしないように援助します。

しかし、本人の判断能力が十分でなく成年後見制度の利用が必要な状況でも、後見人を選任することによって、本人や親族が抱えている問題をすべて解決できるとは限りません。

成年後見制度にも、デメリットが存在します。成年後見の利用を検討中の方は、デメリットも把握しましょう。

この記事では、成年後見制度のデメリットを解説します。

 

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成年後見人をつけるデメリット

ここでは、成年後見制度を利用するデメリットを解説します。

申立てに時間と手間がかかる

成年後見制度を利用するためには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てが必要です。

成年後見の申立てでは、さまざまな書類の提出が求められます。

裁判所所定の申立書式を作成するためには、本人の財産状況・親族関係の調査や、医師の診断書や親族の意見書の手配も必要です。

そのため、成年後見の申立準備にはある程度の時間がかかります。

申立後もすぐに成年後見人が選任されるわけではありません。申立てから後見人が選任されるまで標準的な事案でも13か月程度かかるため、準備段階を含めると46か月程度の期間を要します。

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後見人への報酬がかかる

成年後見人は、その事務の内容に応じて、本人の財産の中から報酬を受け取れます。

後見人の報酬額は、後見人からの報酬付与申立てにより、家庭裁判所が被後見人の資力その他の事情を勘案して審判で決定します。

成年後見人の報酬の目安は、下表のとおりです。

成年後見人の報酬の目安
基本報酬 管理財産額 1,000万円以下 月額2万円
1,000万円~5,000万円 月額3万円~4万円
5,000万円超 月額5万円~6万円
付加報酬 身上監護等に特別困難な事情があった場合 基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加
特別の行為(訴訟行為、調停手続、遺産分割協議、不動産の任意売却、不動産の賃貸管理等)をした場合 相当額の報酬を付加

後見人が親族でも専門職(司法書士や弁護士)でも報酬額の目安は同等で、いずれも報酬付与の申立てを行えますが、親族後見人は報酬を求めないケースも多いようです。

積極的な資産運用や相続税対策ができない

成年後見人は、本人の財産を安全かつ確実に管理しなければならないため、利益を求めた資産運用(元本割れリスクのある金融商品の購入等)ができません。

成年後見制度は、本人の財産を保護するための制度であるため、推定相続人の利益を図るための相続税対策もできません。

積極的な資産運用や相続税対策を目的とした財産管理を任せたい場合は、本人の判断能力が十分なうちに、家族信託を検討するのも一つの手段です。

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後見人は介護・看護等の事実行為ができない

成年後見人の職務は、被後見人の生活、療養看護(身上監護)及び財産の管理に関する事務を行うことです。これらの職務の遂行のため、後見人には代理権と取消権が与えられます。

財産の管理

財産の管理には、以下の一切の法律行為及び事実行為を含みます。

  • 財産の保存(現状維持)を目的とする行為
  • 財産の性質を変えない範囲で利用・改良する行為
  • 財産を処分する行為(一定の財産の処分には家庭裁判所の許可が必要)

財産管理の内容は、預貯金通帳や印鑑の保管、年金その他の収入の受領・管理などの日常的な事柄から、不動産等の重要な財産の処分まで多岐にわたります。

被後見人の生活、療養看護(身上監護)に関する事務

身上監護に関する事務は、具体的には以下のような行為です。

  • 介護契約の締結・解除、費用の支払い
  • 住居に関する契約の締結・解除、費用の支払い
  • 施設の入所契約の締結、施設の退所、費用の支払い、施設内の処遇の監視
  • 医療契約の締結・解除、費用の支払い
  • 教育・リハビリに関する契約の締結・解除、費用の支払い
  • 要介護認定や障害支援区分認定の申請、申請結果に対する不服申立て

後見人にできないこと

成年後見人が行う身上監護の内容は、生活、療養看護に関する事務とされています。事務は法律行為を指すものなので、事実行為は行えません(法律行為に付随した事実行為を除く)。法律行為でも、一身専属的な事項は成年後見人の権限に含まれません。

後見人ができないことの具体例は、以下のとおりです。

  • 日用品の購入その他日常生活に関する行為の取消し
  • 婚姻・離婚・養子縁組・認知・離縁・遺言などの身分行為
  • 医療行為(健康診断受診、予防接種、手術、延命治療、臓器移植等)の同意
  • 現実の介護行為や看護行為のような事実行為
  • 施設の入居に伴う身元保証、身元引受等
  • 被後見人の身体に対する強制を伴う事項(施設への入所の強制、入院・手術の強制等)

途中で利用をやめられない

成年後見の申立ては、家庭裁判所の許可なく取下げられません。選任された後見人に不満があっても、それを理由に申立てを取下げたり、特別な理由もなく後見人を解任したりできません。

成年後見制度の利用の動機となった問題が解決した後も、後見人の職務は本人が亡くなるまで若しくは判断能力が回復して後見開始の審判が取り消されるまで続きます。

親族が成年後見人になるデメリット

ここでは、本人の親族が成年後見人になるデメリットを解説します。

後見事務の負担が大きい

成年後見人は、本人の財産管理や身上監護の事務を行い、その事務の内容を定期的に家庭裁判所(または後見監督人)に報告しなければなりません。

通常は、年1回程度、家庭裁判所に後見事務報告書・財産目録・収支報告書(収支予定表)を提出します。定期的な報告以外にも、被後見人について生じた重要な事項については、随時家庭裁判所への報告が必要です。

報告書類の作成は、家庭裁判所や後見監督人への報告を目的とするだけでなく、後見事務の内容を振り返り、今後の後見事務の方針を立てる良い機会となります。

しかし、一般の方にとっては馴染みのない作業であるため、負担に感じることがあるでしょう。

法的トラブルへの対応が困難

被後見人が法的トラブルに巻きこまれた場合、親族後見人が法律の専門家でなければトラブルを適切に対処できないおそれがあります。

例えば、被後見人が消費者トラブルに遭った場合は、クーリング・オフ制度や消費者契約法・民法に基づく取消権の行使等の速やかな対応が必要です。適切に対応するためには、法律知識が不可欠です。

介護事故が発生した場合や虐待が発覚した場合も、後見人として具体的にどのように行動すべきかわからなければ、対応が遅れて事態が悪化する可能性もあります。

不正な財産使用のおそれ

最高裁判所の調査によれば、平成23年から令和3年までの成年後見人等による財産横領などの不正件数は4,550件にのぼり、被害総額は約289億円に及ぶことが判明しました。

上記不正件数のうち、95%は、専門職以外の人が後見人等に選任されたケースであることが明らかとなっています。

不正の原因はさまざまですが、親族後見人の場合は、「親の財産はいずれ自分がもらうもの」という考えから、悪意なく自分の財産と同じように使ってしまうケースが多く見られます。

親族が、後見人として求められる知識を有していなかったため、意図せず不正を行ってしまったケースも少なくありません。

親族との間に不和が生まれることも

親族が複数いる場合は、特定の親族が後見人になることで親族間に不和が生じることもあります。

例えば、後見人にならなかった親族が反感を抱いたり、被相続人の財産管理について意見が対立したりすることがあります。

専門家を成年後見人につけるメリット

ここでは、専門家(弁護士・司法書士)を成年後見人につけるメリットを解説します。

財産管理を全て任せられる

被相続人の財産が多額・多岐にわたる場合は、財産管理も煩雑になります。

弁護士や司法書士は、法律知識や裁判所へ報告などの各種手続きに精通しているため、被後見人の財産を適切に管理できます。

法的トラブルも適切に対処できる

判断能力が低下すると、法的トラブルに巻き込まれるリスクが高くなりますが、被後見人は自身がトラブルに遭遇したことに気付かない場合もあります。

弁護士が成年後見人についていれば、法的トラブルも適切に対処してもらえます。

親族による財産の使い込みを防げる

専門職後見人が選任されれば、被後見人の財産を全て管理してもらえるため、身近な人による財産の使い込みを防げます。

財産管理は、被後見人の財産と後見人自身の財産の混同を避けなければなりませんが、同居の親族等では家計の分離が難しいこともあるでしょう。

専門職の後見人は、基本的に被後見人の財産を本人名義のまま若しくは「〇〇成年後見人△△」名義として、後見人自身の財産と明確に分けて管理するため、財産の混同も防げます。

親族を成年後見人につけるメリット

ここでは、本人の親族を成年後見人につけるメリットを解説します。

本人の経済的負担を少なくできる

成年後見人の報酬は、後見人からの報酬付与申立てにより、家庭裁判所が被後見人の資力その他の事情を勘案して審判で決定します。

つまり、報酬を受け取るかどうか(報酬付与を申立てるかどうか)は、後見人の自由です。

親族後見人が報酬付与の申立てを行わなければ、報酬は発生しないので本人の経済的負担を軽減できます。

本人のプライバシーを守れる

成年後見人は、被後見人の財産や生活状況、心身の状況を把握しなければなりません。

例え専門家でも、第三者にプライベートを開示することに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。

親族が後見人になれば、第三者にプライベートを開示する必要はないため、本人のプライバシーを守れます。

専門職後見人ができないことをカバーできる

成年後見人は、医療行為に同意したり、食事や入浴を介助したり、入院時や施設入所時の保証人になったりできません。

ただし、親族が後見人であれば、後見人の立場としてではなく、親族の立場としてこれらの行為を行えることがあります。

専門職後見人が後見人の立場から対応できない範囲も、親族であれば親族の立場からカバーできる可能性があります。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が十分でない方を保護して支援する制度ですが、制度を利用するデメリットもあります。

成年後見制度の利用は、メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討されることをおすすめします。

遺産分割すべき財産があるのに、相続人の中に認知症等の精神上の障害により判断能力が十分でない方がいて、成年後見制度の利用を検討する方もいらっしゃるでしょう。

成年後見制度の利用が必要な相続手続きにお困りの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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