更新日:2022年8月19日 (金)

公開日:2022年8月19日 (金)

相続放棄はどのような流れで行えばよいか?

相続放棄はどのような流れで行えばよいか? 相続放棄はどのような流れで行えばよいか?

サマリー

被相続人が多額の借金を抱えていた場合、相続を承認すると、その返済義務まで相続人が引き継ぐことになります。
このリスクを回避するための手段の一つが相続放棄です。
相続放棄をした場合、被相続人の財産も負債も一切引き継がず、最初から相続人ではなかった扱いになります。
この記事では、相続放棄の流れについて解説します。

相続放棄を検討すべき具体的なケースは?

被相続人が多額の借金を抱えていたなど、相続放棄を検討したほうがよいケースがいくつかあります。

借金が多い場合

被相続人の借金がプラスの財産を上回ることが明らかな場合、相続放棄を検討したほうがよいでしょう。

遺産相続のトラブルを避けたい場合

他の相続人との話し合いが難航しそうだったり日頃から疎遠であったりするケースです。相続放棄をすれば、相続をめぐるトラブルに巻き込まれる可能性がなくなります。

特定の相続人に財産を渡したい場合

家業を継ぐ人や被相続人の介護を担っていた人など、特定の相続人に財産を継がせたい意向があるケースです。
後順位の相続人を含む他の相続人が相続放棄をすれば、相続手続きを円滑に進められます。
もっとも、以下のとおり、被相続人の財産を特定の相続人に引き継がせる方法もあります。

  • 特定の相続人が全ての財産を取得する旨の遺産分割協議をする
  • 他の相続人が特定の相続人に対して相続分を全て譲渡する

ただし、共同相続人間で、特定の相続人が全ての債務を相続するとの遺産分割協議を成立させたとしても、それをもって債権者に対抗できません。
このような場合に、財産の分散を避けつつ、財産を引き継がない他の相続人が債務の承継を免れたい場合などに、相続放棄を検討することがあります。

相続放棄が認められないケースは?

被相続人の財産の全部または一部を処分した場合、相続放棄ができなくなる可能性があります。
例えば、相続放棄を検討中に、被相続人名義の預貯金を私的に費消したり、遺品整理をして高価な骨董品や宝石を売却したりする行為が該当します。
これらの行為がある場合は、黙示的に単純承認を行ったと判断される可能性があるので、相続放棄を考えているなら避けましょう。

相続放棄手続きの流れは?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければいけません。期限を過ぎると、原則として相続放棄は認められなくなります。そのため、手続きの流れを正しく理解し、計画的に進めなければいけません。どのように手続きを進めていけばよいか解説します。

被相続人の財産調査をする

被相続人の財産を調査します。
預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産を調査するだけでなく、銀行や消費者金融からの借入、クレジットカードの債務、連帯保証人になっていないかなど、マイナスの財産についても調べます。
被相続人の財産調査は、相続放棄をするかしないかの判断材料になるので重要です。くれぐれも見落としがないように慎重に行いましょう。

家庭裁判所へ提出する書類を準備する

家庭裁判所に提出するための書類と申述にかかる費用を準備します。
標準的な必要書類は以下のとおりです。

  • 相続放棄申述書(家庭裁判所のウェブサイトからダウンロード可能)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 申述書に添付する印紙代(申述人1人につき800円)
  • 家庭裁判所との連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって違うので要確認)

申述人と被相続人の関係によっては、追加で書類提出を求められる場合があります。

家庭裁判所に申立てをする

必要書類と費用がそろったら、相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出します。
家庭裁判所の窓口に直接提出するだけでなく、郵送での提出も可能です。
ただし、近年は、郵便の配達に思いのほか日数がかかることもあります。
郵送提出の場合は、簡易書留やレターパックなど追跡が可能な郵便を利用することをおすすめします。熟慮期間が迫っている場合には、家庭裁判所に書類を持参して提出すると安心です。

裁判所から照会書が送付される

申述書の提出後、書類審査や事件関係人への照会などを行います。
多くの場合、家庭裁判所から申述人に対し、照会書が送付されます。
照会書には、主に以下の点を確認するための質問事項が記載されています。

  • 本当に相続放棄をする意思があるのか
  • 相続放棄の申述をする理由は何か
  • 熟慮期間の起算点はいつか
  • 法定単純承認に該当する行為はないか

回答所に必要事項を記入して、家庭裁判所に返送します。
熟慮期間が過ぎてから申立てをした場合は、家事審判官の審問が行われることが多いです。

相続放棄申述受理通知書を受領する

家庭裁判所の審理の結果、申述が受理されると、相続放棄申述受理通知書が届きます。
これで手続きは完了します。手続き完了まで、申述から1か月程度かかります。
相続放棄申述受理証明書が必要な場合は、手数料(1通につき収入印紙150円)を添えて、家庭裁判所に申請しましょう。

3か月の熟慮期間が迫っている場合は相続放棄を諦めるしかない?

3か月の熟慮期間が迫っている場合でも相続放棄が可能になるケースがあります。熟慮期間の起算点を再度確認し、相続の承認または放棄の期間の伸長申し立てを検討しましょう。

熟慮期間の起算点を再度確認する

熟慮期間の起算点を再度確認しましょう。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内の期限(熟慮期間)が設けられています。多くの場合、被相続人の死亡を知った日が起算点になります。
ただし、被相続人の兄弟姉妹が、被相続人の死亡から3か月以上経ってから、先順位の相続人(子や親)が全員相続放棄をした事実を知るケースがあります。この場合、先順位者の相続放棄を知った日から新たに3か月の熟慮期間が開始します。
3か月が経過しているからといって諦めずに、熟慮期間の起算点を確認しましょう。

相続の承認または放棄の期間伸長を申し立てる

3か月の熟慮期間の満了が迫っている場合、家庭裁判所に相続の承認または放棄の期間の伸長を申し立てましょう。
裁判所の判断によりますが、通常1〜3か月、最長で6か月程度の期間が延長されることがあります。必ず3か月の熟慮期間内に完了させましょう。
ただし、期間伸長を希望する場合は、期間伸長する必要性を具体的に説明する上申書などが必要です。上申書の作成は、弁護士のアドバイスを受けながら行うことをおすすめします。

まとめ

相続放棄は、被相続人が残した負債やトラブルから自分自身を守るために有効な手段です。
自分で手続きを進めることも可能ですが、意図しない行為で単純承認と判断され、相続放棄ができなくなるリスクがあります。3か月の熟慮期間内に申述しなければならないのもハードルが高いです。
相続放棄を検討されている方は、一人で悩まずに弁護士への相談をお勧めします。
ネクスパート法律事務所では、ご相談者様の状況を丁寧にヒアリングし、相続放棄が最適な選択であるかを判断いたします。

コラム監修者

寺垣 俊介

寺垣 俊介

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。

2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。

また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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