相続問題お悩みなら経験豊富弁護士相談

メールでのご相談はこちら

LGBTQ+の方々がパートナーの相続において直面する課題と対策

LGBTQ+の方々がパートナーの相続手続きにおいて直面する問題は、法的知識の不足から生じることが多いです。
日本では同性婚が認められていないため、同性カップルにとってはパートナー間での財産承継や権利保護に多くの障壁があります。

本記事では、LGBTQの方々が直面する相続に関する課題と、その対策を講じるための方法を解説します。

LGBTQ +の方々がパートナーの相続において直面する課題

LGBTQ +の方々がパートナーの相続において直面する最大の課題は、同性婚が法的に認められていないことです。このため、法律上の配偶者としての権利が与えられず、相続において不利益を被る可能性があります。

パートナーシップ制度では相続人の地位を得られない

パートナーシップ証明書を持っていても、法律上の配偶者にあたらず、相続人の地位は得られません。

日本では、東京都をはじめとした470を超える自治体で(2024101日現在)、パートナーシップ制度が導入され、自治体が同性カップルを証明したり、宣誓を受け付けたりするようになりました。

パートナーシップ制度を活用することで得られるメリットは、次のように多岐にわたります。

  • 自治体が運営する公営住宅等で家族としての同居が認められる
  • 病院での面会が許される
  • 生命保険の受取人にパートナーを指定できる
  • 勤務先で家族手当等の福利厚生制度を適用されることがある
  • 携帯電話会社の家族割りや民間向けの家族サービスを受けられることがある

しかし、パートナーシップ制度は各自治体の条例に基づくものであり、婚姻制度とは異なります。パートナーシップの宣誓をしても、相続権、所得税の配偶者控除・扶養控除、遺族年金の受給などの法的な権利義務は発生しません。

したがって、同性カップルはパートナーシップ制度を利用しても、相続人の地位は得られません。

民法上の親族でないため特別寄与料も請求できない

婚姻関係にないカップルは、パートナーの相続において特別寄与料を請求できません。

特別寄与料とは、相続人ではない親族が、故人に対し介護などの特別な貢献をした場合、故人の財産から貢献度に見合った金銭の支払いを受けられる制度です。しかし、婚姻関係にないカップルは法的には親族ではないため、この制度を利用できません。

そのため、パートナーが介護に尽くしていたとしても、法的な保護は受けられません。

関連記事
特別寄与料制度は、民法改正により2019年から設けられた新たな制度です。 これまで配偶者の親の介護をしたり、近くに住んでいるという理由でいとこに代わって伯父や伯母の面倒を見たりしてきた人は、相続人でないという理由で財産が […]

配偶者居住権が適用されない

近年改正された民法では、配偶者居住権が設けられ、配偶者が亡くなった場合でも居住を維持できる権利が保障されました。しかし、同性婚が認められていない現状では、この権利は同性カップルには適用されません。

関連記事
2020年4月、民法改正により配偶者居住権が新設されました。 今回の記事では、配偶者居住権ができた背景や内容、そしてメリット・デメリットについて解説します。 目次1 配偶者居住権とは?1.1 配偶者居住権ができた背景1. […]
関連記事
2020年4月1日にスタートした配偶者居住権は、亡くなった人が所有していた建物に残された配偶者が決められた期間(原則終身)無償で居住できる権利です。 この制度は、内縁関係(事実婚)にあった配偶者に適用されるのでしょうか? […]

上記のとおり、同性カップルはパートナーの相続において財産を承継できる権利は認められていません。
しかし、特別縁故者に該当する場合には、パートナーの財産を譲り受けられる可能性があります。

特別縁故者とは、故人に法定相続人がいない場合に、その遺産を受け取れる人です。故人と生計を同じくしていた人や、療養・看護に尽力した人などが該当します。

特別縁故者の代表例には、内縁関係にある当事者が含まれます。そのため、パートナーシップ制度を利用しているような深い結びつきがあるパートナーであれば、特別縁故者として評価される可能性が高いでしょう。

ただし、この制度は、法定相続人がいないことが前提です。

LGBTQ +カップルがパートナーに財産を残すための4つの対策

同性カップルが相続において不利益を被らないためにも、遺言や死因贈与の活用、養子縁組を検討しましょう。

遺言を残す

遺言は、同性カップルが自分の財産をパートナーに残すための最も有効な手段です。
遺贈は受遺者の制限が設けられていないため、法定相続人やその他の個人、団体等にも財産を譲り渡せます。

遺言書を作成することで、法律上の婚姻関係にない同性パートナーにも財産を残せます。

死因贈与を活用する

死因贈与を活用する方法もあります。
死因贈与とは、死亡を条件に財産を譲渡する契約です。

遺言者の一方的な意思表示で行う遺贈とは異なり、死因贈与は、財産を渡す側ともらう側の双方の合意(死因贈与契約)に基づきます。

たとえば、パートナーに自宅不動産を残したい場合、公正証書によって死因贈与執行者をパートナー(受贈者)と定めた死因贈与契約を締結し、始期付所有権移転仮登記をしておけば、贈与者の死後、パートナー(受贈者)が単独で本登記ができるため、残されたパートナー(受贈者)の権利を確保しやすくなります。

死因贈与を活用することで、財産を円滑にパートナーに渡せる可能性があります。

養子縁組を検討する

相続人として遺産を受け取る立場にこだわるのであれば、養子縁組をする方法もあります。
養子縁組によって養親子関係になった場合には、親または子として相続権を有します。

生命保険を活用する

保険会社によっては、自治体が発行するパートナーシップ証明書を提出することで、同性のパートナーを死亡保険金の受取人に指定できる場合があります。

死亡保険金は、指定された受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。
そのため、パートナーを死亡保険金の受取人に指定しておけば、まとまったお金を残せるでしょう。

LGBTQ +カップルが相続対策を講じる際の留意点

前章で挙げた相続対策を講じる場合は、いくつか留意すべき点があります。

以下で詳しく解説します。

遺贈・死因贈与では遺留分への配慮が必要

パートナーに財産を遺贈・死因贈与する際に気を付けたいのが、遺留分です。
故人に兄弟姉妹以外の相続人がいる場合、財産の全てをパートナーに遺贈すると、遺留分侵害額を請求される可能性があります。

兄弟姉妹以外の相続人には、法律上、最低限の相続割合である遺留分が保障されています。

遺贈や死因贈与によって、相続人が本来もらえるはずの財産がもらえないなどの状況となると、相続人がパートナーに対し、遺留分相当額の金銭の支払いを求める可能性があります。

例えば、亡くなった方の法定相続人が父のみだったとします。故人がパートナーに対して、総額3,000万円の全財産を遺贈する旨の遺言を残していた場合、相続人である父がパートナーに対して、遺留分侵害額請求権を行使すると、パートナーは故人の父に対して1,000万円を支払わなければなりません。

LGBTQ+の方々の中には、異性のパートナーとの結婚・出産を経た後に、セクシュアリティを理由に離婚する方も一定数いらっしゃるでしょう。法定相続人として子がいる場合、子の相対的遺留分は2分の1であるため、上記のケースでは故人の子に対して1,500万円を支払わなければなりません。

民法改正により201971日以後に発生した相続では、遺留分は金銭で支払わなければなりません。パートナーに遺贈した財産の大部分が不動産や株式等であった場合には、遺留分権利者に支払う現金を準備できない場合もあります。

そのため、パートナーに遺贈をする場合には、あらかじめ次のような対策も検討しましょう。

  • 遺留分を侵害しない遺言をする
  • 遺留分の支払いに備えて生命保険を活用する

養子縁組がパートナーシップ制度利用に与える影響に留意

養子縁組を行うことは有効な相続対策ですが、自治体によってはパートナーシップ制度との重複に制約を設けている場合があります。

たとえば、東京都ではパートナーシップに基づいて既に養子縁組をしている同性カップルも制度を利用できますが、他の自治体では養子縁組解消後にのみ宣誓を認めるケースもあります。

このため、養子縁組を検討する際には、自治体のパートナーシップ制度の要件を事前に確認しましょう。

相続対策は確実かつ迅速に!周囲へのカミングアウトも重要

「相続はまだ先の話だからゆっくり考えよう」と考える方も多いかもしれません。しかし、先延ばしにしていると相続権のないパートナーが財産を受け取れず、生活基盤を失う可能性もあります。

同性カップルにおける相続対策やカミングアウトの重要性を浮き彫りにした判例があります(大阪地裁令和3327日判決)。

45年間にわたり同居し、共同で事務所を経営していた男性カップルの一方(A)が亡くなった事例です。残されたパートナー(X)は、親族としての葬儀への出席を拒まれ、さらには事務所の賃貸借契約を解約され廃業に追い込まれました。

そのため、Xは、Aが生前に死因贈与を口頭で合意していたとして、全財産を相続した親族(Y)を相手取り、同契約に基づく所有権移転登記手続きと、各不法行為に基づく損害賠償を求めて訴訟を提起しました。
Xは、養子縁組をして双方の遺産を相続できるようにしようとしていた矢先にAが亡くなったとも主張しています。

しかし、裁判所は、次のような事実からAが全財産をXに死因贈与する明確な意思表示をしていなかったと認定しました。

  • Aは自身が同性愛者であることを親族(Yを含む)や周囲に隠していたこと
  • Aは知人・友人にXを弟と説明していたこと
  • Aは過去にXに対しA名義の財産はYに渡すと話していたこと
  • AがXとの養子縁組について「血縁のある者に話して納得させなければ話は進まない」旨の発言をしていたこと

そして、YAX間のパートナーシップ関係を認識していない以上、YXに対する不法行為も成立しないとして、Xの請求をすべて退けました。

この判例が示す通り、同性婚が法的に認められていない現状では、遺言書や死因贈与契約書の作成、養子縁組などの法的手続きを確実かつ迅速に進めることが不可欠です。それに加え、囲や親族へのカミングアウトも重要な要素となります。

残されたパートナーが法的・社会的に不安定な立場に置かれないよう、親族や周囲の理解を得ながら、確実かつ迅速に相続対策に取り組むことが大切です。

相続対策を専門家と相談しながら進めるべき2つの理由

LGBTQ+カップルが相続対策を進める際には、専門家と相談しながら進めることが大切です。

パートナーと親族間の揉め事を未然に防ぐため

パートナーに確実に財産を残すためには、トラブルの芽を事前に摘む工夫も欠かせません。
遺言や死因贈与を活用する際には、相続人の遺留分を侵害しないよう配慮することが大切です。

弁護士に依頼すれば、あなたの希望を最大限に叶えつつ、相続人が納得しやすいバランスを保つ方法を提案してもらえるでしょう。家族構成や財産状況が変わった場合には、遺言内容の見直しについてもアドバイスを得られます。

遺言書や契約書は、わずかな不備で無効になることも少なくありません。弁護士に依頼すれば、法的な要件を満たした文書を作成できるため、このリスクを大幅に減らせます。

弁護士を遺言執行者死因贈与執行者に指定しておけば、相続開始後の相続人とのやりとりを任せられます。これにより、パートナーが直接相続人と向き合う必要がなくなり、感情的な衝突や精神的な負担を軽減できます。

予期せぬ負担に困らぬよう税対策を検討するため

相続対策を講じる際は、税理士への相談も欠かせません。
遺贈や死因贈与、養子縁組によって、パートナーに財産を残す場合は、税負担が増す可能性があるからです。

たとえば、相続人以外への遺贈は、受遺者が負担する相続税額が2割加算になります。

不動産の遺贈を受けると、登記申請時に登録免許税がかかりますが、法定相続人とそれ以外の受遺者とでは、以下のとおり税率が異なります。

  • 相続人の登録免許税:4
  • 相続人以外の受遺者の登録免許税:2

したがって、遺贈や死因贈与、養子縁組によってパートナーに財産を残す場合には、それに伴う税額の増加を事前に把握し、その備えをすることが重要です。税理士と早期に相談し、適切な税対策を講じることで、残されたパートナーが予期せぬ税負担に困ることを防げます。

まとめ

LGBTQ+カップルが、パートナーの相続において不利益を避けるためには、専門家と連携しながら早期に対策を講じることが大切です。遺贈や死因贈与、養子縁組、生命保険などを活用し、保護を受けられるよう準備しましょう。

親族や友人知人にパートナーとの関係性を周知し、理解を得ることも大切です。

ネクスパート法律事務所は、ネクスパートアドバイザリーグループとして、税理士・司法書士などの他仕業と連携し、税務面のご相談についてもワンストップでの対応が可能です。

婚姻関係にないパートナーに財産を残すために、遺言書の作成をご検討中の方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。

 

相続問題は弁護士への依頼でトラブルなくスピーディーに解決できます。

実績豊富なネクスパートにお任せください!

メールでのご相談はこちら

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

相続問題は弁護士に依頼することでトラブルなくスピーディーに解決できます。

実績豊富なネクスパートにお任せください!

メールでのご相談はこちら