連帯保証人の地位は相続の対象となるか?該当する具体的な例を解説

被相続人が生前、連帯保証人になっていた場合に相続手続きにどのような影響があるでしょうか?
この記事では、連帯保証人の地位は相続の対象となるのかどうか、対象となる場合の負担割合や具体例について解説します。
目次
連帯保証人の地位は相続の対象となる?
連帯保証人の地位は、原則として相続の対象となります。
連帯保証人とは、主債務者が債務の履行を怠った場合に、代わりに債務を履行する義務を負う人(保証人)のうち、主債務者と同等の責任を負う人です。
被相続人が他人の債務を連帯保証していた場合、その地位は原則として相続の対象となります。
連帯保証人に相続人が複数いる場合の負担割合はどうなる?
相続人が複数人いる場合、連帯保証債務の負担割合はどうなるのか、以下で解説します。
法定相続分に従って相続する
相続人が複数人いる場合、各相続人は、それぞれの法定相続分に応じて連帯保証債務を相続します。
相続財産に金銭債務があるときは、相続の開始と同時に当然に分割され、各相続人が法定相続分に従って負担することになります。
最高裁判所は、連帯債務者の1人が死亡した場合も、その相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきとの判断を示しています(最高裁判所昭和34年6月19日判決)。
このような連帯債務に関する最高裁判決の考え方は、連帯保証債務についても適用されるものと考えられます。
例えば、被相続人が負担する連帯保証債務が1000万円で、相続人が配偶者と子2人だとします。この場合、配偶者が500万円(法定相続分2分の1)、子2人がそれぞれ250万円(法定相続分がそれぞれ4分の1)を、相続の開始と同時に当然に相続します。
遺産分割協議で特定の相続人が引き受けることも可能
遺産分割協議で、特定の相続人が連帯保証人の地位を引き受けることについて、相続人全員が合意した場合には、相続人間ではその合意が有効となります。
先に挙げた例でいえば、相続人全員の合意によって、配偶者が単独で連帯保証人の地位を引き受けるような場合です。
ただし、相続人間の合意に対外的な効力はありません。したがって、債権者から連帯保証債務の履行を請求された場合は、本来の相続分に応じた債務を履行する必要が生じます。
債権者の承諾を得た場合には、債権者との関係においても相続人間で合意した内容が有効となり、債務を引き受けた特定の相続人以外の相続人は債務を免れます。
相続人が連帯保証人の地位を承継するケースの具体例は?
相続人が連帯保証人の地位を承継する3つのケースについて解説します。
被相続人が第三者の借金の連帯保証人になっている
被相続人が第三者の借金の連帯保証人になっている場合、相続人は連帯保証人の地位を承継します。
例えば、被相続人が、その友人が金融機関から借り入れた借金の連帯保証人になっているケースなどです。
被相続人が第三者の賃貸借契約の連帯保証人になっている
被相続人が第三者の賃貸借契約の連帯保証人になっている場合、相続人は連帯保証人の地位を承継します。
賃借人である第三者が家賃を滞納して場合には、代わりに家賃の支払い義務を負います。
被相続人が極度額や期間の定めがある根保証契約の連帯保証人になっている
被相続人が極度額や期間の定めがある根保証契約の連帯保証人になっている場合、相続人は連帯保証人の地位を承継します。
根保証とは、継続的な取引関係から将来生じる不特定多数の債務を、主たる債務として保証するもので信用保証とも呼ばれます。継続的な売買契約によって生じる買主が将来負うべき債務を保証する場合や、銀行との間の当座貸越契約や手形割引契約など一定の取引関係から将来発生する債務を保証する場合などが挙げられます。
極度額の定めがない根保証契約の連帯保証人になっている場合は、特段の事情のない限り、その保証人の地位は相続人に承継されないと考えられています。ただし、相続開始前にすでに主債務が発生していた場合は、その保証債務は相続の対象となります。
被相続人が連帯保証人になっているか調査する方法は?
被相続人が連帯保証人になっているかどうか、調査する方法について解説します。
被相続人が所持している契約書を確認する
被相続人が所持していた契約書を確認しましょう。
被相続人の居宅内の書棚や机、タンスに契約書が保管されているかをチェックし、連帯保証人になっている契約がないかどうかを確認します。
被相続人のメールを確認する
被相続人が生前やり取りしていたメールを確認しましょう。
第三者から連帯保証人を引き受けるように依頼されていないかどうか、金融機関とのやり取りがないかどうかをチェックします。
被相続人が利用していた金融機関の口座を確認する
被相続人が生前利用していた金融機関の口座の取引履歴を確認しましょう。
入出金履歴を確認し連帯保証債務の履行と思われる支払いを行っていないかどうかをチェックします。
信用情報機関に照会する
被相続人が連帯保証人になっているかどうか、信用情報機関に照会をしましょう。
信用情報機関とは、日本国内で営業する銀行、貸金業者、クレジット会社が加盟している機関です。
顧客との取引履歴の情報を共有しているため、相続人が情報開示請求をすれば連帯保証人になっているかどうかがわかる場合があります。
信用情報機関は以下の3つです。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
連帯保証人の地位を相続したくない場合の方法は?
連帯保証人の地位を相続したくない場合、どのような方法を取ればよいか以下で解説します。
相続放棄をする
連帯保証人の地位を相続したくない場合は、相続放棄を検討しましょう。
相続放棄は、相続財産を一切承継しないための手続きです。相続放棄が認められれば、預貯金や不動産といったプラスの財産や借金などのマイナス財産を引き継ぐ権利が一切なくなります。そのため、プラスの財産とマイナスの財産の割合を見極めて、相続放棄をするかどうかを判断したほうがよいでしょう。
連帯保証人の地位を引き継いでも、プラスの財産が上回り支払い可能であれば、相続放棄をしないほうがいいかもしれません。
相続放棄を検討しているなら、原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に、裁判所に申述をして手続きを行わなければいけませんので、迅速に行いましょう。
なお、相続財産を使ってしまったなど、単純承認したと判断される場合は、相続放棄が認められませんので気を付けましょう。

限定承認をする
連帯保証人の地位を相続したくない場合、限定承認も選択肢の一つとなります。
限定承認とは、プラスの財産の範囲で債務を弁済して残った財産を相続する方法です。プラスの財産を上限として債務の弁済を行うので、負債を負わずに済むメリットがあります。
限定承認は、相続人全員で行わなければいけません。
相続人の一人が相続財産を使ってしまった場合は、単純承認をしたとみなされ限定承認が認められないので気を付けましょう。

まとめ
被相続人が連帯保証人になっていた場合、その地位が相続の対象となるため相続放棄をすべきかどうか悩む人もいらっしゃることでしょう。本文で述べたとおり、相続放棄をすると相続に関する一切の権利がなくなるため慎重に行わなければいけません。
そのため、弁護士に相談をして適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に強い弁護士が在籍しています。相続放棄に関する相談もお受けしていますので、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。