銀行の相続手続きの手順をわかりやすく解説

相続が発生するとさまざまな手続きが必要で、その一つが銀行での相続手続きです。
銀行での手続きや必要書類は、相続方法によって異なります。
この記事では、銀行で相続の手続きをする一般的な手順と、相続のケースごとの必要書類について解説します。
目次
銀行の相続手続きの手順は?
相続が発生してから口座解約・預金払い戻し等までの、銀行での相続手続の基本的な手順は、以下のとおりです。
- 銀行へ相続発生の連絡をする
- 必要書類を準備する
- 銀行窓口に必要書類を提出する
- 払い戻し等を受ける
銀行へ相続発生の連絡をする
相続が発生したら、亡くなった人(以下、被相続人といいます。)が口座を開設していた銀行に連絡をします。
その際に銀行側から、被相続人の取引内容や相続のケースに応じて、具体的な相続手続きの案内や必要書類についての説明があります。
相続発生の連絡をした時点で、被相続人の口座の取引に制限がかかります。
必要書類を準備する
銀行から説明された必要書類を準備します。
次に挙げる相続のケースによって用意する書類が違います。
- 遺言書がある場合
- 遺言書がない場合
それぞれのケースで必要な書類についての詳細は後述します。
銀行窓口に必要書類を提出する
必要な書類がそろったら、各銀行の窓口に提出をします。
準備した書類と併せて、各銀行所定の相続手続書類に、依頼内容を記入します。この書面には、相続のケースに応じて、法定相続人全員または口座の預金を相続する人の署名押印が求められます。
払戻し等を受ける
相続手続きに関する書類を提出した後、銀行が書類を確認します。
不備がなければ被相続人の口座から払い戻しが行われます。払戻しの手続きは数日かかる場合があります。
遺言書がある場合の銀行の相続の手続き
遺言書がある場合、先述した基本的な流れに入る前に、自筆遺言書と秘密証書遺言書であれば、家庭裁判所で検認手続きを受けなければいけません(公正証書遺言の場合、家庭裁判所の検認手続きは不要)。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、家庭裁判所での検認手続きは不要ですが、法務局で遺言書情報証明書を取得しましょう。
遺言執行者がいない場合
遺言執行者がいない場合は、その遺言により預金を受け取る人が銀行の相続手続きを行います。
預金を受け取る人が複数いる場合は複数名で手続きをするほか、代表者を決めて手続きを進められる場合もあります。
遺言執行者がいる場合
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が銀行の相続手続きを行います。
遺言執行者とは、遺言執行を行う人です。遺言者が遺言書で指定していることもありますが、遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、相続開始後、相続人等が遺言執行者の選任を申し立てて、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう方法もあります。

銀行の相続手続きにおける必要書類
銀行の相続手続きにおける必要書類は、遺言書がある場合と遺言者がない場合とで異なります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合の、必要書類は、概ね以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本
- 遺言書
- 検認済証明書等(公正証書遺言以外の場合)
- 預金を相続する人(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
- 預金を相続する人(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
- 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
- 銀行指定の書類等
※取引の内容や相続のケースによっては、ここでご案内する書類以外にも、追加で書類の提出を求められる場合があります。
被相続人の戸籍謄本
被相続人の出生から死亡まで繋がりが分かる戸籍謄本が必要です。
これによって被相続人の死亡を確認し、相続人が誰かを特定します。
戸籍謄本は1つで済む場合はほとんどありません。最初に被相続人の最終の本籍地で戸籍謄本を取得し、そこからさかのぼって出生までの戸籍謄本を取り寄せます。結婚や転籍をしている場合、死亡時の市区町村役場と違う役場で取得しなければならない可能性があります。
保存期間の経過や戦災による喪失などにより被相続人の出生までの戸籍謄本が手に入らない場合は、その旨の市区町村長の証明書を添付します。
銀行によっては、16歳の誕生日から死亡までの戸籍謄本が確認できればよいとしているところもあるため、手続きをする銀行に事前に確認しましょう。
遺言書
公正証書遺言の場合は、正本もしくは謄本を提出します。銀行側で原本を確認してコピーをとった後に返却してもらえます。
自筆証書遺言と秘密証書遺言書は、家庭裁判所で検認済みのものを提出します。
検認済証明書等(公正証書遺言以外の場合)
検認済証明書とは、家庭裁判所に相続人が集まって遺言書の内容を確認し、家庭裁判所で検認を受けたと証明するものです。
自筆証書遺言と秘密証書遺言書は、必ず検認済証明書を提出します。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は、家庭裁判所での検認手続きは不要です。法務局で遺言書情報証明書を発行してもらい、銀行に提出しましょう。
預金を相続する人(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
銀行の預金を相続する人の印鑑証明書が必要です。
遺言執行者が就任している場合は、遺言執行者が手続きを行うため、遺言執行者が自身の印鑑証明書を提出して手続きを進めます。
銀行によって違いはありますが、3か月から6か月以内に発行した印鑑証明書の提出を求められる場合が多いです。
なお、遺言書の内容によっては、相続人全員の印鑑証明書が必要となる場合があります。
遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合は、遺言執行者選任審判書の謄本を提出します。
遺言執行者選任審判書は、遺言執行者が遺言執行者の資格を有すると証明するための書類です。
銀行指定の書類等
預金の払戻しをするにあたって、各銀行所定の書類に必要事項を記入して提出します。
被相続人名義の預金口座の通帳、キャッシュカードも必要です。喪失等の場合は、各銀行所定の書類の指定欄にその旨を記入します。
遺言書がない場合
遺言書がない場合の必要書類は、概ね以下のとおりです。
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 被相続人の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
- 相続関係説明図
- 銀行指定の書類等
※取引の内容や相続のケースによっては、ここでご案内する書類以外にも、追加で書類の提出を求められる場合があります。
相続人の戸籍謄本・住民票
銀行の預金を相続する人の現在の戸籍謄本と住民票が必要です。
遺産分割協議書がない場合には、相続人全員の戸籍謄本と住民票を提出します。遺産分割協議により、その銀行の預金を相続する人が決まっている場合は、預金を相続する相続人の戸籍謄本と住民票を提出します。
被相続人の戸籍謄本
被相続人の出生から死亡まで繋がりが分かる戸籍謄本が必要です。
これは、被相続人の死亡と相続人を特定するために必要な書類です。
保存期間の経過や戦災による喪失などにより被相続人の出生までの戸籍謄本が手に入らない場合は、その旨の市区町村長の証明書を添付します。
銀行によっては、16歳の誕生日から死亡までの戸籍謄本が確認できればよいとしているところもあるため、手続きをする銀行に事前に確認しましょう。なお、相続が発生するとさまざまな手続きが必要となり、そのたびに戸籍謄本の提出が求められますので、原本は必ず返してもらいましょう。提出の際に、「原本還付を希望します。」と伝えると、後で返してもらえることがほとんどです。
遺産分割協議書
遺産分割協議で銀行の預金を誰が相続するか決めた場合は、それが明確に記載された遺産分割協議書を提出します。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印をし(実印)、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
相続人の印鑑証明書
銀行の預金を相続する人の印鑑証明書が必要です。銀行によって違いはありますが、3か月から6か月以内に発行した印鑑証明書の提出を求められる場合が多いです。
相続関係説明図
銀行によっては、相続関係説明図の提出を求められることもあります。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を一覧表にしたものです。家系図をイメージすれば分かりやすいでしょう。
法務局で法定相続情報一覧図を取得すると被相続人の戸籍謄本一式や相続関係説明図の提出が不要となります。
法定相続情報証明制度の利用についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
銀行指定の書類等
預金の払戻しをするにあたって、各銀行所定の書類に必要事項を記入して提出します。
被相続人が所有していた口座の通帳、キャッシュカードも必要です。喪失等の場合は、各銀行所定の書類の指定欄にその旨を記入します。
銀行預金の相続手続きに期限はあるのか?
銀行預金の相続手続きに期限はありません。
ただし、一定期間放置すると預金は休眠預金となる可能性があります。休眠預金とは2009年1月1日以降に行われた取引から10年以上入出金がない預金を指します。
休眠預金は引き出しが可能ですし、休眠預金に対して銀行は通知をしていますが、引っ越しした場合は通知が届かないケースもあります。休眠預金の手続きをしなければ預金保険機構に移管されて民間公益活動のために活用されます。
まとめ
昨今多くの人が銀行に口座を開設しているので、相続が発生するとほとんどの人が銀行で相続の手続きをしなければなりません。遺言書があるかないか、遺言執行者がいるかいないかなど、さまざまなケースによって手続きに必要な書類が違うため戸惑う方もいらっしゃるでしょう。
こうした相続に関する手続きが難しいと感じたのなら、弁護士に相談してみましょう。
銀行での相続手続きは期限がないとはいえ、相続に関連する手続きと一緒に進めるのが効率的です。弁護士であれば相続人に関する一連の手続きを代理人として進められます。
ネクスパート法律事務所では、相続に強い弁護士が在籍しています。初回の相談は無料で行いますので、分からないことがあればお気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。