成年後見人の費用はいくら?報酬の相場や費用の負担者を解説

成年後見制度の利用を検討している方の中には、申立てや成年後見人への報酬にどのくらいの費用がかかるのか不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
支援が必要なご本人や申立人に経済的余裕がない場合でも、成年後見制度は利用できるのでしょうか?
この記事では、成年後見制度の利用にかかる費用や、費用が払えない場合の対処法について解説します。
目次
成年後見人が選任されるまでに必要な費用
ここでは、成年後見の申立てに必要な費用を解説します。
申立費用|1万円程度
後見等開始の審判申立てには、以下の費用が必要です。
申立手数料
申立手数料として、800円分の収入印紙を納めます。
収入印紙は、申立てをする家庭裁判所内もしくは郵便局で購入し、申立書に貼って納付します。
郵便切手
申立時に、連絡用の郵便切手(3,000円~4,000円分程度)を納めます。
郵便切手の金額や内訳は家庭裁判所によって異なりますので、申立てをする家庭裁判所に確認しましょう。
登記手数料
申立時に、登記手数料として2,600円分の収入印紙を納めます。
平成23年4月1日に廃止された登記印紙を持っている場合は、当分の間、収入印紙に代えて登記印紙2,600円分を納めても構いません。
鑑定料|5〜10万円程度
家庭裁判所は、必要に応じて、本人の精神の状況について医師による鑑定を行います。
鑑定が行われる場合には、鑑定人への報酬として5万円~10万円程度の費用がかかります。
添付書類の取得費用
後見等開始の審判申立てに必要な書類の取得費用として、以下の費用がかかります。
資料 | 費用(相場) |
診断書 | 5,000円~1万円程度(医師により異なる) |
申立人及び本人の戸籍謄本 | 1通につき450円 |
本人及び後見人候補者の住民票又は戸籍の附票 | 1通につき200円~400円程度(市区町村により異なる) |
登記されていないことの証明書 | 300円 |
不動産登記事項証明書(不動産がある場合) | 1通につき600円 |
固定資産評価証明書(未登記の不動産がある場合) | 1通につき200円~400円程度(市区町村・市(都)税事務所により異なる) |
残高証明書等(預貯金通帳等を紛失している場合) | 1通につき1,000円程度(金融機関等により異なる) |

専門家に申立てを依頼した場合の報酬
後見等開始の審判申立てを、専門家(弁護士や司法書士)に依頼する場合は、専門家への報酬が発生します。
報酬額は、依頼する弁護士や司法書士によって異なりますが、10万円~30万円程度が目安です。
成年後見人の選任後にかかる費用|後見人の報酬
ここでは、成年後見人の報酬について解説します。
報酬額の目安
民法上、家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、報酬を与えられると定められています。報酬額を決めるにあたっては、家庭裁判所に裁量権が与えられています。
実務の算定実績を踏まえた標準的な報酬額の目安は、以下のとおりです。
基本報酬
基本報酬とは、成年後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬です。
基本報酬の目安は、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)に応じて、以下のとおり異なります。
- 管理財産額が1,000万円以下の場合:月額2万円
- 管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合:月額3万円~4万円
- 管理財産額が5,000万円を超える場合:月額5万円~6万円
付加報酬
付加報酬とは、成年後見人が被後見人のために特別な行為をした場合や身上監護等に特別困難な事情があった場合に付加される報酬です。
例えば、成年後見人が後見事務において、以下の特別な行為をした場合には、報酬付与審判の申立時に、特別な行為として家庭裁判所に報告します。
- 訴訟・非訟・家事審判
- 調停・訴訟外の示談
- 遺産分割協議
- 保険金請求
- 不動産の処分・管理
家庭裁判所は、これらの特別の行為を含めて報酬付与の審判を出します。
身上監護等に特別困難な事情があった場合は、基本報酬額の50%の範囲内で付加報酬が与えられることがあります。
報酬の決め方
家庭裁判所は、成年後見人及び成年被後見人の資力やその他の事情によって、成年被後見人の財産の中から相当な報酬を成年後見人に付与できます。
後見人の申立てにより裁判所が決定する
成年後見人に当然に報酬請求権を認める規定はなく、申立てがなされて初めて、家庭裁判所は報酬を与えるか否か、与える場合にはその額を審判で決定します。
親族が後見人に就任した場合には、報酬付与審判の申立てをしないケースもあります。その場合には、親族後見人に報酬を支払う必要はありません。
報酬付与申立ての方法
通常、成年後見人は年1回の家庭裁判所への定期報告に併せて、報酬付与審判の申立てを行います。定期報告は、毎年、成年被後見人の誕生日が属する月に行います。
具体的には、報酬付与の申立書に以下の事項を記載して、報酬付与事情説明書とともに管轄の家庭裁判所に提出します。
- 申立人(後見人)及び成年被後見人の本籍・住所・連絡先・氏名・年齢・職業等
- 申立ての趣旨(成年後見人報酬として相当額の付与を求める審判を求める旨)
- 申立ての実情(成年後見人の職務遂行の内容、経過、成年被後見人の収入・財産状況)
報酬付与の申立てには、以下の費用が必要です。
- 収入印紙:800円分
- 郵便切手:84円分
報酬付与の申立てに必要な費用は、成年後見人が負担します。
成年後見人に費用(報酬)を払うのはいつ?
ここでは、成年後見人への報酬支払時期について解説します。
原則は年1回
通常、成年後見人は年1回の家庭裁判所への定期報告に併せて、報酬付与審判の申立てを行います。そのため、成年後見人の報酬を本人の財産から支払うのは、原則として年1回です。
特別な事務所処理を行った場合
成年後見人が、訴訟や不動産の売却等の特別の行為をし、それらの後見事務にかかった費用が高額に及ぶ場合などには、定期報告時以外の時期に報酬付与審判の申立てを行うこともあります。
その場合は、家庭裁判所の報酬付与の審判がなされた後に、本人の財産から成年後見人の報酬を支払います。
後見申立費用や成年後見人の費用(報酬)は誰が払う?
ここでは、成年後見人の報酬の負担者について解説します。
申立てにかかる費用は原則申立人が負担する
後見等開始の審判申立てに必要な費用(申立費用・鑑定費用・添付書類の取得費用・専門家への報酬等)は、原則として申立人が負担します。
極めて例外的にではありますが、申立ての際に「申立費用は本人の負担とする。」と上申すれば、以下の費用を本人負担とする審判がなされる場合もあります。
- 申立手数料:収入印紙800円分
- 郵便切手:3,000円~4,000円分(家庭裁判所により異なる)
- 登記手数料:収入印紙2,600円分
成年後見人の報酬は本人(成年被後見人)が支払う
成年後見人の報酬は、本人(成年被後見人)の財産から支払います。
成年後見人の費用(報酬)を払えない場合は?生活保護受給中はどうなる?
生活保護受給者であるなど、申立費用や成年後見人への報酬を捻出できない場合は、どうすればよいのでしょうか?
ここでは、申立費用や成年後見人への報酬を払えない場合の対処法について解説します。
民事法律扶助制度を利用する
申立人に経済的余裕がない場合は、後見等開始の審判申立てを専門家(弁護士や司法書士)に依頼する場合に限り、一定の要件(資力・収入要件や審判の見込み等)を満たせば、法テラスの民事法律扶助を利用できる場合があります。
民事法律扶助制度を利用すれば、申立費用や鑑定費用、専門家への報酬を立て替えてもらえます。立て替えてもらった費用は分割して返済できます。
ただし、法テラスの民事法律扶助制度では、成年後見人の報酬は立て替えてもらえません。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
成年後見制度利用支援事業を利用する
成年後見制度利用支援事業とは、成年後見制度の利用が有用と認められる認知症高齢者、知的障害者および精神障害者で、成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難と認められる方に対し、市区町村長が被後見人等に代わって後見等開始の審判を申立てたり、申立てに要する経費及び後見人等の報酬の全部又は一部を助成したりする制度です。
利用対象となる方や助成の対象となるケースは、市区町村によって異なる場合があるので、本人の住所地の市区町村に確認しましょう。
公益信託成年後見助成基金を利用する
公益信託成年後見助成基金とは、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが発足した基金です。
親族以外の後見人が選任されている場合に、本人の財産が少なく、後見事務の内容に照らして適正な報酬を得ることが難しいケースで助成を受けられます。
助成される費用は、後見人の報酬(後見監督人の報酬を含む)で、被後見人1人につき、原則として月額1万円の助成を受けられます。助成金は、家庭裁判所の報酬付与の審判に基づいて交付されます。
最高で5年間助成を受けられますが、年度ごとに応募(申込)が必要です。応募の受付は、毎年4月の1か月間のみ行われています。
参考:成年後見助成基金 | 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート (legal-support.or.jp)
まとめ
成年後見の申立てにかかる費用は、原則として申立人が負担しなければなりません。
成年後見人への報酬は、本人(成年被後見人)の財産から支払います。
申立人や本人(成年被後見人)に経済的な余裕がない場合には、支援や助成を利用できる場合もあります。
経済的な事情から成年後見制度の利用を躊躇している方は、以下の制度の利用も併せて検討すると良いでしょう。
- 法テラスの民事法律扶助制度
- 市区町村の成年後見制度利用支援事業
- (公社)成年後見センター・リーガルサポートの公益信託成年後見助成基金
成年後見制度の利用をご検討中の方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。
※なお、当事務所では法テラスの民事法律扶助制度の利用を希望される方からのご相談は現在受け付けておりません。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。