不動産を相続放棄する際の注意点|相続放棄以外の解決方法もご紹介

相続財産総額のうち、不動産は大きな割合になることが多いです。
不動産は金融資産と異なり、以下の特徴があります。
- 個別性が強く、客観的な評価額をつけにくい
- マイナスしか生まない不良資産もある
- 分け方が難しい
- 不動産に対する考え方が相続人ごとに異なることが多い
- 様々な法律が関係してくる
相続財産に不動産があるときは、それを相続することが自分にとってプラスなのか見極める必要があります。
もし金融資産など他の財産を相続しても、その不動産を相続することがトータルでマイナスになる場合は、相続放棄のほか売却や寄付などが考えられます。
この記事では、相続財産に不動産がある場合に相続放棄をするときの注意点や相続放棄以外の解決方法を解説します。
相続財産に不動産があるときの注意点
相続財産に不動産があるときに、注意すべきポイントについて解説します。
不動産の保有にはコストがかかる
不動産を相続する場合は、コストがかかります。
名義変更にかかる登録免許税や相続税のほか、相続した不動産を保有しているだけで固定資産税や都市計画税(市街化区域)が課税されます。
税額の計算方法は以下の通りです。
- 固定資産税…固定資産税の課税標準額×4%(標準税率)
- 都市計画税…都市計画税の課税標準額×3%(制限税率)
(※住宅用地と新築の居住用建物には、固定資産税と都市計画税を軽減する特例あり)
固定資産税には、評価額に対する前年度課税標準割合が低い土地に対し段階的に税負担を引き上げていく仕組みが導入されています。つまり、地価が下落しても固定資産税が安くなるとは限らないのです。
上記のコストを支払ってでも、ご自身にとって不動産を相続する価値があるかどうか、よく検討してください。
建物を建てられないことがある
自分の土地だからといって、自由に建物を建てられるわけではありません。
土地に建物や工作物を建築するときは、その建築計画が建築基準法など関係法令・条例に適合するかどうか、着工前に役所の審査を受ける必要があります(建築確認申請)。建築確認申請が通らないと、土地に建物を建てることはできません。
建築基準法に定める面積・接道状況・隣地との高低差など土地の状況、あるいは所在地の都市計画などによっては、自分の思うような建物が建てられないばかりか建築自体できないことがあります。また、相続したときに建物が建っていても、それを取り壊してまた建物を建てられるとは限りません。
相続した後に建物を建てて活用したい場合、その不動産が建物を建築できる土地かどうか、専門家に相談しながら見極める必要があります。
売りたくても売れないことがある
不動産を売りたいと思っていても買い手が見つからなければ売れません。
買い手がつきにくい不動産の特徴として、以下が考えられます。
- 建物が建てられない
- 土地の地盤が弱かったり建物が違法建築であったりなど、所有すること自体がリスク
- 収益性が低い貸宅地
- 共有状態にあるなど権利関係が複雑
- 抵当権や質権が付着している
- 近隣地に嫌悪施設がある
いったん不動産を相続し売却を検討している場合は、そもそも買い手が現れる不動産なのか相続前に見極めておく必要があります。
管理責任を問われることがある
不動産を相続し自己の名義で所有すると、管理義務が生じます。
土地が崖崩れを起こしたり建物が崩落したりと、不動産の瑕疵(欠陥)原因で第三者に被害が生じたら、所有者が第三者に損害賠償しなければならないことがあります。
不動産の賃借人は損害の発生防止のために必要な注意をしていた場合は免責されますが、不動産の所有者は過失の有無に関係なく管理責任と損害賠償義務を負わなくてはなりません。
不動産を相続するときは、その後の管理義務を果たせるか慎重に検討してください。
相続手続きが面倒
相続手続きの全体像は次のとおりです。
- 役所や関係者への届け出
- 遺言書の有無の確認
- 戸籍謄本の取得
- 相続人と相続財産の調査
- 準確定申告
- 遺産分割協議と遺産分割(名義書き換え)
- 相続税の申告・納付
不動産の相続では相続財産の調査と遺産分割で特有の手間が発生します。
相続財産の調査
相続する不動産の調査は、対象不動産を漏れなく特定することから始めます。
土地であれば地番・建物であれば家屋番号を、権利証や登記事項証明書、固定資産税納税通知書から特定します。もし地番や家屋番号がわからない場合、あるいはは相続人がどのような不動産を所有しているか不明な場合は、役所や法務局で調べます。
地番や家屋番号を特定したら、それをもとに法務局で最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得してください。登記事項証明書からは、不動産の種類・所有者・所在・面積だけではなく、その不動産に第三者が設定した抵当権や差押登記などの状況がわかります。これを手掛かりに遺族が知らなかった被相続人(亡くなった人)の負債が発覚することがあり、相続放棄するかどうかの判断材料になります。

遺産分割(名義書き換え)
不動産の名義を被相続人から相続人に書き換える手続きを、相続登記といいます。
相続登記は、対象となる不動産を管轄している法務局に登記申請書などの必要書類を提出してから1~2週間程度かかります。また、このときに登録免許税の支払いが必要です。

不動産を相続放棄するときの注意点
不動産を相続放棄する前にチェックしておきたい注意点をご説明します。
相続放棄には決められた手続きが必要
被相続人の遺言が無い場合、相続財産は遺産分割協議により誰が・どの財産を・どの割合で相続するか決めます。
このときに「自分は何も相続しない」と明言し遺産分割協議書に明記したとしても、法的には相続放棄したことになりません。
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書および必要書類一式を提出し、照会書への回答を経て相続放棄申述受理通知書が交付されて成立します。
他の相続財産も放棄することになる
相続放棄すると、初めから相続人ではなかったことになり被相続人の財産は何も相続できなくなります。
相続する不動産がマイナスの価値しかなくても、それに見合う価値のある他の財産も相続できるのであれば、相続放棄を考え直した方が良いかもしれません。
相続放棄には期限がある
相続放棄をする場合、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月(熟慮期間)以内に、必要書類を揃えて家庭裁判所に手続きを申し立てなければなりません。
この3ヶ月間内に相続放棄の手続きを申し立てないと、原則として相続を単純承認したとみなされます。単純承認により、被相続人の財産だけでなく負債の弁済義務も相続することになります。
ただし、この3ヶ月間は相続財産や相続人の調査が難航しているなどの事情がある場合、家庭裁判所への申し立てにより延長が認められることがあります。
相続放棄は撤回できない
家庭裁判所に相続放棄申述が受理されると、原則として撤回できません。
ただし、以下の場合は例外的に取消しが認められることがあります。
- 未成年者など制限行為能力者による相続放棄の取消し
- 詐欺や脅迫による相続放棄の取消し
- 錯誤による相続放棄の取消し
他の相続人とトラブルになることも
相続の順位は、被相続人の続柄に応じて以下のように決められています。
- 常に相続人:配偶者
- 第1順位:直系卑属(子・孫)
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹
上の順位にいる相続人が相続放棄すると、下の順位の人に相続する権利が回ってきます。
誰にとってもマイナスの価値しかない不動産を相続放棄すると、その不動産を下の順位の相続人が相続人となります。相続放棄するときに他の相続人とのコミュニケーションが不十分だと、「いらない不動産を押し付けられた」と捉えた相続人とトラブルになる可能性があります。
また、これは逆の立場になることもあります。先順位の相続人が相続放棄したことを知らないまま3ヶ月間が経過し、マイナスの価値しかない不動産を相続することになっていたというケースもあります。
管理義務は残る
相続財産は被相続人からの名義変更が終わるまで相続人全員の共有財産であり、それまでの間は相続人全員に管理義務が発生します。
つまり、不動産については相続放棄しても特定の相続人による相続登記が終わるまで、あるいは相続人全員の相続放棄により国庫に帰属するまで、相続人全員の共有財産として管理義務が残ります。
相続放棄できないケースもある
共有状態にある相続財産の一部または全部を処分(消費)、隠匿すると、単純承認したとみなされ相続放棄できなくなります。
たとえば、相続したくない不動産があるため相続放棄を検討していても、被相続人の預金を少しでも自分のために使った場合は、その時点で相続放棄できなります。
不動産の相続放棄に関してよくある疑問
不動産の相続放棄に関してよくある質問をまとめました。
相続人全員が不動産を放棄したらどうなる?
相続人全員が相続放棄すると、相続放棄された不動産などの相続財産は法人化されたうえで、相続人または利害関係者の申し出により家庭裁判所に選任された相続財産管理人が精算します。
そして被相続人の債務整理などが終わって最終的に残った相続財産は、国庫に帰属します。
土地だけを相続放棄できるのか?
相続の対象は被相続人の財産・負債すべてが対象であり、財産・負債ごとの相続放棄は認められません。
価値のない不動産は相続放棄するけれど預貯金は相続する、というような相続人にとって都合のよい相続放棄はできません。
相続放棄以外で不動産を処分する方法
相続放棄以外で、不要な相続不動産を処分するための方法を3つご説明します。
第3者に譲る
相続する不要な不動産を第3者に手放すときは、まず隣地の所有者に声掛けしてみてください。
不動産業界で有名な格言に、「隣地は倍出しても買え」があります。
この根拠のひとつは、隣地と一団の土地になることで道路付けや形状が整い、土地の価値が上がるケースがあるためです。また、土地が広くなることで事業などに活用しやすくなるメリットが生じるケースもあります。
場所が不便などの背景で買い手が付きにくい不動産であっても、隣地の所有者であれば可能性があります。
国や市区町村等に寄付する
相続で受け取った財産を国や地方公共団体、一定の公益法人等に寄付すると、寄付した財産については相続税がかからない寄付金控除の制度があります。不要な不動産は、寄付することも検討のひとつです。
ただし、寄付を受ける側にとって不要な不動産は、寄付を申し出ても断られることがある点に注意してください。
相続土地国庫帰属法を利用する
相続財産に要らない不動産があるけど、相続放棄はしたくない・引き取り手が見つからない場合は、いったん相続して相続土地国庫帰属法を利用する手段があります。
相続土地国庫帰属法とは、相続した不要な土地を放棄し国庫に帰属させることを認める制度です。ただし、同法は無制限に活用できるわけではなく、以下の条件を満たした場合に適用が認められます。
- 建物や工作物、樹木その他の残置物がない更地であること
- 抵当権など担保権が付着していないこと
- 10年分の土地管理費用相当額(粗放的な管理で足りる原野であれば20万円、市街地200㎡の宅地であれば80万円)
- 土壌汚染が無いこと
- 通路のように、他人が使用している土地でないこと
- 土地の権利関係に争いがないこと
- 管理に必要以上の手間がかからないこと
まとめ|不動産の相続放棄は弁護士に相談
弁護士には不動産の調査や相続放棄の手続きだけでなく、トラブルになったときの対応も依頼できます。
不動産の相続放棄を検討するときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。