相続トラブルの原因と対策を解説

相続では、予想外のトラブルが発生することもあります。
この記事では、主に以下の点を解説します。
- よくある相続トラブルの原因
- 相続トラブルで具体的に困ること
- 相続トラブル防ぐ対策と対処法相続トラブル
トラブルを円満に解決するためにご参考いただければ幸いです。
相続トラブルの原因
早速、よくある相続トラブルの原因を見ていきましょう。
遺言書が見つからない
被相続人が法的に有効な遺言書を作成していれば、その内容に沿って遺産を分けるとトラブルは起こりにくいでしょう。
しかし、遺言書が作成されていない場合や、遺言書の保管場所がわからないような場合は、後述する遺産分割協議で遺産相続のことを決めなければなりません。相続人の主張が食い違う場合は、話し合いが長引くおそれがあります。
遺産の分割割合で揉める
遺言書が見つからない場合、遺産の分割割合は相続人が遺産分割協議を行い、誰が・何を・どの割合で分割するか話し合って決めます。
遺産分割協議は、相続トラブルの原因になりえます。なぜなら、遺産分割協議は多く遺産を相続したい、あるいは亡くなった人との思い出から自宅や仕事場を相続したいなど、各相続人の主張がぶつかり合うことがあるからです。
話し合いがまとまらなければ、調停や裁判になったり、相続人の関係性が悪化したりすることが考えられます。
不動産の分割方法
不動産の相続をめぐってトラブルになることも少なくありません。
不動産には同じものが存在しないので、現預金のように簡単に分割できません。1つの不動産を単純に相続人の数で分けたとしても、その価値は道路との接道状況や分割後の形状などによって大きく変わってきます。
だからといって共有状態にすると、かえって権利関係が複雑になりトラブルの種を残すことになりかねません。
不動産の価値が遺産の大半を占める場合の分割方法をめぐってトラブルになることもあり得ます。
このような場合、
・不動産を売却して現金化し、現金を相続分で分ける
・相続人の誰かが不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う
という選択肢があります。
前妻との子どもがいる
夫婦が離婚すると、相続発生時に被相続人の配偶者ではなくなるため、お互いの遺産を相続する権利はなくなります。
しかし、離婚する前に生まれた子どもが持つ相続権は無くなりません。
なぜなら、離婚した配偶者との間の子どもは、たとえ被相続人に親権がなかったとしても法律上の親子関係が継続するからです。
このため、別れた前配偶者との間の子どもは第一順位の相続人として遺産を相続する権利があるのです。
これは被相続人が再婚しており、再婚相手とのあいだに子どもがいる場合も同じです。
しかし、現在の配偶者とその子どもにとって、前妻の子どもに遺産が渡ることは納得いかないこともあるでしょう。そのような中で、前妻の子どもが遺産を相続する権利を主張しトラブルになることもあります。
認知された非嫡出子がいる
嫡出子とは、結婚した夫婦の間に生まれた子どものことです。
一方、法的に婚姻関係が無い男女の間で生まれた子どものことを、非嫡出子といいます。
よくあるケースとして、配偶者が知らないところで被相続人とその愛人のあいだにできた子ども、いわば隠し子が挙げられます。
もし被相続人が非嫡出子を認知していた場合、その非嫡出子は被相続人と法的な親子関係が認められ、遺産を相続する権利を持つことになります。
遺産を隠している相続人がいる
被相続人と同居していた相続人は、被相続人の財産の状況を知る機会は多いでしょう。一方、被相続人と年に数回程度しか会えない相続人は、被相続人の財産を把握するのは困難です。
このような立場を悪用し、相続人と近い距離で生活していた相続人の中には、たとえば通帳を隠すなどして被相続人の財産状況他の相続人に知られないようにし、内緒で自分の名義にしてしまうことがあるようです。
もちろん、このような行為は法的に無効です。しかし、遺産を隠している事実がわからない状態では、ほかの相続人は何も手を打つことができないことも事実です。
相続トラブルで困ることは?
解決まで時間がかかることも
これまで述べたように、相続のトラブルは個人の感情や利害が原因で起こるケースが多いものです。
そして、このような類のトラブルは解決に時間がかかる傾向があります。
どこかのタイミングでトラブルの当事者たちが妥協できればよいのですが、なかなかそうはいかないケースが多いことも事実です。
どうしても当事者同士で解決できない場合、家庭裁判所での調停や審判、トラブルの内容によっては裁判で解決を目指すことになります。
もちろん、家庭裁判所で解決を目指すことは、さらに時間と労力がかかることになります。
税務署は待ってくれない
遺産分割協議に期限はありません。極端な話ですが、当事者同士で遺産の分け方を決めたいのであれば何年でも何十年でも話し合い続けられます。
しかし、相続税の申告・納税期限は違います。相続税は被相続人が死亡し、相続が発生した日の翌日から起算して10ヶ月以内までに、申告・納付しなければなりません。
たとえ遺産の分け方が決まっていなくても、税務署は待ってくれません。
このような場合は、とりあえず法定相続割合で各法定相続人が遺産を相続したものとして、相続税を計算します。そして、各法定相続人が相続税を申告・納付します。
ただし、この状態では配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地等の特例のような税務上のメリットを受けられないため、相続税が割高になることがあります。
また、遺産分割が終わっていない状態の遺産は各相続人の共有になりますので、相続人全員の合意がなければ物納することも、売却して相続税の納税資金にすることもできません。
被相続人の相続トラブル対策
残された方がトラブルにならないように、被相続人ができることをご紹介します。
遺言書を作成する
生前に遺言書を作成すると、相続トラブルを予防できます。
遺言書があると、遺族には次のようなメリットがあります。
- 遺産の内容がわかる
- 遺産の分け方を話し合わなくてすむ
- 相続手続きの手間が少なくなる
遺言は、残された遺族がつつがなく遺産を相続できるようにするための、最後の思いやりでもあります。
法定相続人を把握する
まず、調査をして法定相続人を把握してください。
法定相続人には遺留分があります。遺留分とは、法律で決められた相続人の最低限の取り分のことです。
たとえば法定相続人にAさんがいたとします。このAさんの相続について遺言書に書き漏らすと、Aさんは他の相続人から遺留分を侵害されたことになります。
そうなると遺言書が無効になるだけではなく、Aさんは他の相続人に対して遺留分相当の支払いを請求する遺留分侵害額請求ができます。
このように法定相続人の把握を漏らしてしまうことで、相続人同士でのトラブルの原因になる可能性があります。
財産目録を作る
遺言書を作成するときは、あわせて財産目録も作成しておくとよいでしょう。
財産目録とは、被相続人の財産や債務の一覧表です。
財産目録があると、相続人の調査の負担を軽減できます。
財産調査は手間と時間がかかります。特に金融機関や役所での調査は平日の昼間に行わなければならず、相続人は仕事を休まざるを得ません。
また、調査を漏らした財産があると、遺産分割協議や相続税の申告・納付をやり直さなければならない場合もあります。
このようなトラブルを避けやすくなるので、財産目録があると相続人は非常に助かります。
遺言書の内容を弁護士に確認してもらう
遺言書の書式や形式には、さまざまな決まりごとがあります。
遺言書が決まりごとに沿ったものでなければ、無効になることがあります。
このような事態を防ぐため、遺言書の内容を弁護士に確認してもらうことがおすすめです。
遺言書の確認だけではなく、財産や法定相続人の調査も依頼できます。
弁護士に依頼することで、適切な内容の遺言書を作成できます。
相続人の相続トラブル対策
続きまして、相続人がトラブルを最小限にするためにできることをお伝えします。
遺言書を探す
遺言書の保管場所としては、以下が考えられます。
- 法務局
- 公証役場
- 信託銀行
- 自宅あるいはその周辺
相続が発生したら、上記のような場所を探して遺言書の有無を確認してください。
もし見つからなければ、すみやかに遺産分割協議の準備を始めましょう。
相続放棄を検討する
相続では財産だけではなく、負債も相続人に引き継がれます。
もし、被相続人の財産が債務よりも少ない場合は、相続放棄を検討してください。
相続放棄とは、遺産に関するすべての権利・義務を相続人が放棄することです。
注意点は、相続放棄をするには相続発生後3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があることです。これをしないと相続を単純承認したことになり、負債を引き継ぐことになります。
弁護士に相談する
相続でトラブルが発生したときは、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
実績と経験をもつ弁護士に依頼することで、トラブルが悪化を防ぐことが期待できます。
相続トラブルを弁護士に相談するメリット
最後に、相続で弁護士に依頼するメリットを整理していきましょう。
他の相続人と直接交渉しなくてよくなる
相続トラブルにより、当事者の関係性が修復できないくらい悪化することも。
弁護士に依頼すれば、他の相続人と直接話し合う必要がなくなります。
話し合いが困難になった場合、弁護士は相続人の意見を調整しながら、トラブルの解決を目指します。
法的根拠に基づいた解決を目指せる
相続人同士の話し合いでは、お互いの感情や欲がぶつかり合い話し合いが進まないこともあります。弁護士が間に入ることで、法的に妥当な落とし所を模索しやすくなります。
相続関係の手続きを任せられる
トラブルになっていなくても、相続の手続きは時間と労力がかかります。
弁護士に相続手続き依頼すれば、依頼者は仕事や家庭のことに専念できます。
まとめ
相続トラブルは、早めの対処が早期解決の糸口になりやすいものです。
もし相続が発生したら、早めに弁護士にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。