遺留分侵害額を請求されたら確認すべきことは?対処法を解説
相続手続きが完了してホッとしたのもつかの間、他の相続人から遺留分侵害額請求の通知を受け取ったら困惑することでしょう。
そのような事態に陥った場合、どのような対応をすればよいでしょうか?
この記事では、以下の点について解説します。
- 遺留分侵害額を請求されたら確認すべきこと
- 遺留分侵害額を請求された場合の対処法
- 遺留分侵害額を請求された場合にしてはいけないこと
- 遺留分侵害額を請求されたら弁護士に相談すべき理由
目次
遺留分侵害額を請求されたら確認すべきことは?
遺留分侵害額を請求されたら、以下の4点について確認しましょう。
遺留分が認められる者からの請求か
請求をしてきた相手方が、遺留分が認められる者かどうかを確認しましょう。
以下に該当する人は、遺留分の請求ができません。
- 被相続人の兄弟姉妹
- 相続放棄した人
- 相続欠格者
- 相続廃除された人

相手方が特別受益を受けていないか
請求をしてきた相手方が、特別受益を受けていないか、確認をしましょう。
特別受益とは、婚姻または養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与や遺贈です。
特別受益は相続分の前渡しと捉えられるため、遺留分算定の基礎となる財産に含めて遺留分額を算定し、遺留分侵害額を算定する際にも遺留分額から特別受益を控除します。
請求者に特別受益があり、それが遺留分侵害額の算定に反映されていない場合は、請求者の計算を見直すことで減額できる可能性があります。

消滅時効期間が経過していないか
遺留分侵害額請求の消滅時効期間が経過していないか確認しましょう。
遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ってから1年が経過すると、遺留分侵害額請求権は時効によって消滅します(消滅時効期間)。
遺留分権利者が相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知らなくても、相続の開始から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は消滅します(除斥期間)。
上記の期間を経過した後に遺留分侵害額を請求された場合、そのことを理由に請求を拒否できます。
請求された遺留分侵害額が適正か
請求された遺留分侵害額が適正かどうか、確認しましょう。
遺留分侵害額は、以下の順に計算式を用いて算出します。
① 遺留分の基礎となる財産額を計算する
| 【遺留分の基礎となる財産額】=被相続人が相続開始時に有していた財産の価額+贈与した財産の価額-相続債務額 |
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② 個別的遺留分の割合を計算する
③ 遺留分額を算定する
| 【相手方の遺留分額】=【遺留分の基礎となる財産額】×【相手方の個別的遺留分】 |
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④ 遺留分侵害額を計算する
| 【遺留分侵害額】=【相手方の遺留分額】 -(相手方の特別受益財産額+相手方の遺贈財産額+相手方が相続によって得た財産額)+ 相手方が負担すべき相続債務額 |
|---|

遺留分侵害額を請求された場合の対処法は?
遺留分侵害額を請求された場合の対処法は、以下の2つです。
請求内容が妥当であれば支払いに応じる
請求内容が妥当であれば、支払いに応じましょう。
2019年6月30日以前に発生した相続については旧民法が適用されるため、遺留分減殺請求権を行使された側は、現物を返還するのが原則ですが、価格で弁償することも許されます。
2019年7月1日以降に発生した相続については、遺留分侵害額に相当する金銭を支払うのが原則です。
請求内容が妥当かどうかを判断できない場合は、支払う前に弁護士への相談をおすすめします。
支払いが困難な場合は期限の延長を求める
請求内容が妥当だと認めるものの、支払いが困難な場合には、相手方に支払い期限の延長を求めましょう。相手方との話し合いで合意に至った場合は、その旨書面に残すことをおすすめします。
相手方が応じてくれない場合は、裁判所に期限の許与を求められます。相手方が遺留分侵害額に相当する金銭を請求する訴訟を提起している際はその中で主張できますが、そうでない場合は、期限の許与を求める訴えを提起する必要があります。
裁判所が期限を許与した場合は、その許与をした金銭債務の全部または一部について弁済の期限が変更されるため、遅延損害金が発生しません。
遺留分侵害額を請求された場合にしてはいけないことは?
遺留分侵害額を請求された場合、決して無視をしてはいけません。
無視をした場合、相手方が裁判を起こす可能性が高く、その対応をしなければいけません。
誠実に応じていれば避けられた争いに巻き込まれないように、初期対応を間違えないようにしましょう。
遺留分侵害額を請求されたら一度は弁護士に相談すべき理由
遺留分侵害額を請求されたら、一度は弁護士に相談すべきです。
その理由は以下の2つです。
請求された遺留分侵害額が正しいとは限らない
請求された遺留分侵害額が正しいとは限りません。
この記事で説明したとおり、遺留分侵害額の計算は複雑です。
被相続人の財産を正確に把握できていなければ、遺留分の基礎となる財産額自体に誤りが生じます。相手方が計算の基礎とした相続財産の評価額が適正とも限りません。
請求された遺留分侵害額が適正かどうかの判断は難しいため、弁護士に相談したほうがよいです。
調停や訴訟になった場合も対応を任せられる
調停や訴訟になった場合、弁護士であれば対応を任せられます。
遺留分侵害額を請求する側は、ほとんどの場合不満を募らせ悪い感情を持っています。
当事者同士で解決を図るのは困難なケースが多いため、弁護士に対応を任せたほうがスムーズにことが進みます。
まとめ
他の相続人から遺留分侵害額を請求されたら、動揺する人がほとんどだと思います。
納得できないからといって無視をせず、相手方の主張に対して誠実に向き合いましょう。その場合は弁護士のアドバイスが不可欠ですので、早い段階での相談をおすすめします。
ネクスパート法律事務所には、相続全般に詳しい弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、ぜひ一度お問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。
