遺言執行者になるには資格が必要?相続人や法人も遺言執行者になれる?

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言者の死後、遺言の内容を実現する人です。
テレビや映画では、弁護士等の専門家が遺言執行者として手続きを進める場面が描かれていることがよくありますが、遺言執行者になるには、何らかの資格が必要なのでしょうか?
この記事では、遺言執行者になるには特別な資格が必要かどうかについて解説します。
弁護士を遺言執行者に指定するメリットも紹介しておりますので、ぜひご参考になさってください。
目次
遺言執行者になるための資格や要件はある?
ここでは、遺言執行者になるには資格や要件が必要かどうかについて解説します。
資格は不要
遺言執行者になるには特別な資格は必要ありません。
後述する欠格事由に該当しなければ、相続人や受遺者も遺言執行者に指定できます。
要件はある
民法は、遺言執行者の欠格事由を規定しています。
以下の者は、欠格事由にあたるため遺言執行者になれません。
- 未成年者
- 破産者
遺言執行者が破産手続開始決定を受けたときは直ちに遺言執行者の地位を失います。
弁護士等の資格を持った人や法人を遺言執行者に指定するのはどんなケース?
遺言者の家族や友人だけでなく、弁護士等の専門家や法人も遺言執行者に指定できます。
ここでは、弁護士等の専門家や法人を遺言執行者に指定するのは、どのようなケースなのかについて解説します。
相続人間で争いが発生する可能性が高い場合
将来、相続人間で紛争が発生する可能性があれば、弁護士等の専門家を遺言執行者に指定するのが相当な場合があります。
遺言の内容によっては相続人の利益に反することがあるため、相続人以外の者に遺言を執行させた方がスムーズに手続きできます。
相続人の一人を遺言執行者に指定すると、遺言執行時に他の相続人から不正を疑われたり、手続きに時間がかかることに不満を漏らされたりすることがあります。
中立的な第三者である弁護士を遺言執行者に指定すれば、相続人間の対立や紛争を避けられます。
相続の内容が複雑な場合
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために様々な手続きを行います。
相続財産が多岐にわたる場合や第三者への遺贈が含まれる場合などは、相続手続きに相当な手間や時間がかかります。
弁護士なら、知識や経験に基づき相続手続きを迅速かつスムーズに進められます。
弁護士を遺言執行者に指定しておけば、相続人に負担をかけずに済みます。
遺言執行者の死亡に備えたい場合
遺言執行者に指定した人が死亡しても、その指定をした遺言書が無効になることはありません。
遺言執行者による執行を要する遺言事項がなければ、遺言執行者を新たに指定・選任しなくても、相続人や受遺者が手続きに関与すれば遺言の内容を実現できます。
しかし、遺言執行者による執行を要する遺言事項がある場合は、次のいずれかの方法で新たな遺言執行者を指定・選任しなければなりません。
- 相続開始前:遺言者が新たに遺言書を作成して遺言執行者を指定する
- 相続開始後:相続人や受遺者等が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てる
法人を遺言執行者に指定すれば、その法人が消滅しない限り代表者や担当者が変わっても遺言の内容を実現できます。
例えば、弁護士個人ではなく弁護士法人を遺言執行者に指定しておけば、事務所内で弁護士の入れ替わりがあっても法人内の別の弁護士が遺言を執行できます。
遺言執行者には弁護士等の資格を持った人を指定した方がいい?
ここでは、遺言執行者の職務内容と弁護士を遺言執行者に指定するメリットを解説します。
遺言執行者の職務内容
相続人その他利害関係人への通知
遺言執行者は、就職を承諾することによってその任に就きます。
相続人や受遺者は、遺言の存在・内容や遺言執行者の存在によって相続人の処分行為が制限されることを知らないことがあります。
そのため、遺言執行者は、相続人その他利害関係人に対し、遺言書の写しを添えて遺言執行者に就職したことを通知します。
相続財産の管理
遺言執行者は、就任と同時に遺言の内容に従って相続財産に対する管理処分権を有します。
遺言執行の対象となる相続財産の存否を調査し、相続財産を自己の管理下に移して適切な保管措置を講じます。
財産目録の作成
遺言執行者は、遺言執行の対象となる相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。
遺言事項の執行
相続財産目録の作成後、あるいは作成に並行して、遺言の内容を実現する手続きを進めます。
具体的な手続きは遺言の内容によって異なりますが、例えば以下のような手続きです。
- 認知届の提出
- 家庭裁判所への推定相続人の廃除・取消しの申立て
- 預貯金や有価証券の解約・名義変更手続き
- 不動産の所有権移転登記手続き
- 受遺者への財産の引渡し
執行の完了
遺言執行者の任務が終了したときは、遺言執行者から相続人及び受遺者に任務完了を通知します。
遺言執行に関し受け取った金銭その他の物や収受した果実を相続人に引き渡し、任務終了後遅滞なく執行の顛末を相続人及び受遺者に報告します。

弁護士を遺言執行者に指定するメリット
弁護士を遺言執行者に指定すれば、遺言内容の実現に必要な相続手続きを一任できるため、相続人に負担をかけずに済みます。中立・公平な第三者を遺言執行者に指定することで、相続人間に紛争が生じるリスクも回避できます。
遺言書の作成・遺言執行をセットで依頼すれば法的に不備のない遺言書を作成でき、相続開始後の手続きもスムーズに進められます。

まとめ
遺言内容の実現には法的な知識が必要になることがあるため、弁護士を遺言執行者に指定しておけばスムーズに手続きを進められます。
中立・公平な立場である弁護士に遺言執行を委ねれば、相続人間の感情の対立も避けられるため、相続人の精神的な負担も軽減できます。
遺言書の作成や遺言執行者の指定にお悩みの方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。法的に不備のない遺言書を作成し、スムーズな遺言執行をサポートします。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。