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負動産とは|10万円でも売れない・処分できない場合の対処法

不動産は本来、資産として所有者に利益をもたらす存在です。しかし、地方の空き家や管理困難な山林など、処分が困難で維持費ばかりかかる負動産と呼ばれる物件が社会問題化しています。

相続や所有継続によって、意図せず負担を強いられるケースも少なくありません。

本記事では、負動産の定義や発生の背景、売却や処分方法、相続時の対処法などについて詳しく解説します。損失リスクのある不動産に、どのように対応すべきかをわかりやすく解説します。

負動産とは

負動産とは、不動産を所有することによって収益が見込めず、維持費や管理コストのみが発生する“負の資産”を意味する言葉です。資産価値のある不動産とは異なり、むしろ経済的負担を伴う不動産として、近年注目されています。

背景には、人口減少・少子高齢化・地方の過疎化といった社会構造の変化があります。利用価値のない土地・建物が放置され、買い手がつかない状態が続くことで、たとえ10万円で売りに出しても買い手が現れないといったケースも珍しくありません。

とくに以下のような物件は、負動産化しやすいとされています。

負動産化しやすい例 主な特徴
地方の空き家 築年数が古く、修繕費が高額
山林・原野 利用用途が乏しく、需要が限定的
私道・袋地 権利関係が複雑で流通性が低い
建築制限のある土地 法規制で再建築が困難

不動産の所有には、固定資産税や管理費、草木の伐採・倒壊リスクへの対応といったランニングコストが不可避です。

このように、価値を生まず費用負担だけが継続する物件が、負動産として問題視されています。

負動産を相続するリスク

負動産を相続した場合、単に資産価値が低いだけでは済まされません。放置すれば損害賠償責任を負うリスクが生じ、手放そうとしても買い手がつかないなど、複数の法的・経済的負担が発生します。

以下では、負動産を相続することで発生する主なリスクを7つに分けて整理します。

遺産を押し付け合い手続きが進まない

不動産は現金と異なり分割しにくいため、相続人間での調整が難航しやすい資産です。特に負動産のように価値が乏しい物件では、誰も引き取りたがらず、相続登記や遺産分割協議が進まないケースが多くあります。

このような事態が続くと、不動産の名義が被相続人のまま放置されることになり、管理義務や税負担の所在も曖昧になります。結果として、管理不全による行政からの指導や、相続人全員が不利益を被るおそれがあります。

処分や管理に費用や手間がかかる

負動産と化した物件の多くは、建物の老朽化や権利関係の複雑さから処分コストが非常に高額です。解体には数十万円から数百万円の費用がかかることもあり、自治体の補助金があっても自己負担は避けられません。

加えて、空き家管理にかかる費用(見回り、清掃、草木の伐採など)も無視できません。現地が遠方である場合、移動や委託の手間も相応に発生します。相続しただけで、費用と時間を継続的に求められる点が大きな負担となります。

固定資産税がかかる

不動産を所有すれば、“固定資産税や都市計画税などの法定税負担”が毎年課されます。土地には住宅用地の特例が適用される場合がありますが、建物が著しく老朽化し、行政により特定空き家に指定されると、軽減措置が解除されることがあります。

【特定空き家とは】

・倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
・著しく衛生上有害となるおそれがある状態
・景観を損なう状態等

空家等対策の推進に関する特別措置法第2条【参考:e-GOV

この指定を受けると、本来1/6に軽減されていた固定資産税が通常税率に戻るため、税負担が数倍に膨らむリスクがあります。

放置していると損害賠償リスクを負う

管理の不十分な空き家は、屋根材や外壁、ブロック塀などが劣化して飛散・倒壊し、第三者の生命・身体・財産に損害を与えた場合、民法上の不法行為責任(716条、717条)により賠償義務が生じます 。

たとえば、日本住宅総合センターによる試算では、東京都郊外で空き家が倒壊し隣家住民に死亡者が出た場合、合計で2億円近くの賠償責任が発生する可能性があるとされています。

年数が経過すると10万円でも売れない状況になる

負動産の中には、売却額が10万円以下でも買い手が見つからない物件も存在します。これは建物の老朽化だけでなく、立地や用途、再建築不可物件などの制約が重なることが原因です。

参考例では、建物解体費用や登記手続きの煩雑さを理由に、譲渡条件付きで無料で引き渡しても引き取り手が現れないというケースも確認されています。

長期間放置すると市場価値はさらに低下し、売却の難易度も年々上がるため、早期対応が求められます。

相続すると手放すのが難しい

不動産は、相続した後に売却すればよいと考えられがちですが現実には譲渡手続きにおいて多くの制約が伴います。たとえば、相続登記が未了であると売却は不可能ですし、共有人数が多いと意思決定も難航します。

さらに、売却には買主との契約締結、媒介業者の選定、測量や境界確認などが必要であり、時間・手続き・費用の面で手離れが悪い資産といえます。

負動産であるほど、これらの手続きの障害が顕在化しやすくなります。

処分しないと子どもが相続することになる

不動産を処分せずに所有し続けていると、自身の死亡時に次世代に自動的に相続されることになります相続人が複数いる場合、より複雑な権利関係となり、処分の難易度も飛躍的に高まります。

特に、相続人が負動産の存在を知らないまま承継してしまうと、後から不要な税金や管理義務、損害賠償リスクを負うことにもなりかねません

放置は将来的なトラブルの原因となるため、可能な限り早期に対処しておくことが求められます。

遺産に負動産がある場合は相続放棄をする

相続財産の中に価値のない不動産、いわゆる負動産が含まれている場合、早期に相続放棄を検討する必要があります。不動産は一度相続すると、原則として売却・処分・管理義務などを含めてすべてを引き受けることになります。

以下では、相続放棄の方法や期間、放棄後も残る管理義務について整理します。

相続放棄の手続き方法

相続放棄は、家庭裁判所での手続きを通じて行います。遺産分割協議や遺言によって放棄を申し出ても、法的な効力はありません

相続放棄をするためには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続放棄申述書と必要書類を提出する必要があります。

具体的には、以下のような流れとなります。

手続きの流れ 内容
①申述書の作成 所定の様式に記入(家庭裁判所HPで入手可能)
②必要書類の準備 被相続人の戸籍、相続人の戸籍、住民票等
③申立書の提出 管轄家庭裁判所に提出(郵送可)
④審査・照会書対応 内容確認後、照会書が届くため記載して返送
⑤受理通知書の受領 相続放棄が正式に認められる

提出後に家庭裁判所で受理されると、法的に初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。

相続放棄の期間

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に手続きを行う必要があります(民法第915条1項)。

この“相続の開始を知った時”とは、通常は被相続人の死亡を知った日を起算点とします。ただし、当初は遺産の存在に気づかず、のちに負債や負動産の存在が判明したような場合には、例外的に熟慮期間の起算点が後ろ倒しになる可能性もあります。

期限を過ぎると、相続を単純承認したとみなされるリスクがあるため、早期に家庭裁判所へ相談することが推奨されます。

相続放棄をしても管理義務は残る

相続放棄を行ったとしても、次の相続人に財産が引き継がれるまでの間、一定の管理義務が残る点には注意が必要です(民法第940条)。

相続放棄により当該不動産の所有権を免れたとしても、実質的に管理不全の状態を放置すると、必要な管理義務を怠ったとして損害賠償リスクが生じる可能性があります。

とくに、相続人全員が相続放棄をした場合、他に相続人がいないときには、家庭裁判所が相続財産清算人を選任するまでの間、最初に放棄した者に一時的な管理義務が課されることがあります。

この間、草木の繁茂防止や近隣住民への安全確保など、最低限の維持管理を行う責任が発生する可能性があるため、専門家と相談しながら対応することが重要です。

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負動産を相続した場合の対処法

相続した不動産が活用できず、維持費やリスクのみが発生する負動産である場合、放置せず早期に処分・活用方法を検討する必要があります。

ここでは、実際に負動産を相続した際に取りうる主な対処法を6つのパターンに分類し、制度や注意点を交えて整理します。

売却する

まず検討すべきは、市場での売却です。築年数が古い空き家や立地が悪い土地であっても、近隣に需要があれば売却できる可能性があります。

特に近年は格安物件を求める層も存在しており、専門の不動産業者やオンラインサービスを活用することで、10万円〜数十万円での現金化も視野に入ります

売却が難航する場合は、“古屋付き土地”や“更地として解体後引き渡し”など、物件の見せ方を変える工夫も有効です。

ただし、測量・境界確定・未登記建物の処理といった前提整理が必要になるため、専門家の関与が不可欠です。

自治体や公益法人などに寄付する

自治体や公益法人などに無償譲渡(寄付)できれば、所有権と管理義務を手放すことが可能です。

ただし、受け入れには厳しい条件があります。多くの自治体は、以下のような要件を満たさなければ寄付を受け入れません。

主な受け入れ条件 内容例
公共目的に合致する 道路拡幅、施設建設に利用可能など
管理・修繕負担が少ない 建物が倒壊の危険がない等
境界が明確で権利関係が整理済み 測量済・抵当権なし

条件を満たしてもなお、審査に時間がかかるため、寄付は簡単には成立しない手段である点に留意する必要があります。

相続土地国庫帰属制度を利用する

2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度は、一定の条件を満たす土地について、国に引き取ってもらえる制度です。

相続登記を終えたうえで申請し、審査を経て許可されると、所有権と管理義務から解放されます(国有財産法第9条の3以下)。

【利用できるケース】
・建物のない更地(宅地・山林など)
・境界が明確で所有権に争いがない
・土壌汚染や担保権が付いていない など

【利用が難しいケース】
・建物付きの土地(空き家含む)
・崖地や私道、工作物がある土地
・相続登記が完了していない土地

申請時には審査手数料(14,000円)と、負担金(原則20万円程度)が必要で、時間も要します。制度を利用できるかどうか、専門家への事前相談が不可欠です

土地の活用方法を考える

一見価値がないように見える土地でも、活用によって価値を生む可能性があります。

たとえば、家庭菜園・太陽光発電・月極駐車場など、初期投資を抑えて収益を生む使い方を検討するのも一つの方法です。

ただし、用途地域や接道義務など、都市計画法や建築基準法の規制を受ける場合もあるため、事前の調査が重要です。

企業に有料で引き取ってもらう

近年は、“負動産買取サービスを展開する民間企業”も登場しています。これは、譲渡時に費用を支払うことで、企業が物件を引き取ってくれる仕組みです。

たとえば、以下のような企業が引き取りを行っています。

  • 無償譲渡型サービス(譲渡+費用負担)
  • 査定型サービス(条件付き買取)
  • 活用目的を前提とした引き受け型(リノベ前提)

多くの場合、建物解体や登記整理費用として10〜50万円前後の費用がかかりますが、他の方法では処分できない物件に対する現実的な選択肢となります。

リフォームやリノベーションを検討する

古い建物でも、適切なリフォーム・リノベーションを施すことで再販が可能になるケースがあります。

特に近年では、地方移住・古民家再生・セカンドハウス需要といった市場ニーズが拡大しており、築年数が古い物件でも、若年層の購入希望者が現れることがあります

地方自治体の中には、以下のような支援制度を設けている場合もあります。

【自治体支援の例】

・空き家改修補助金
最大50万円程度の補助金支給

・定住促進事業
改修後の定住を条件に補助

・移住体験住宅
賃貸活用に向けた支援

こうした支援を活用しながらリノベーションを行えば、長期的に不動産価値を高める可能性もあります

負動産を買いたい人を見つける方法

不動産を手放すためには、売却先となる買主の存在が不可欠です。しかし、負動産に該当する物件では通常の市場ではなかなか売却が成立しにくくなります。

そこで、ここでは負動産でも売却や譲渡につながりやすい5つのアプローチ方法について解説します。

近隣の所有者に声をかけてみる

対象不動産の隣接地を所有している個人や法人は、その土地の利用価値を最も高く評価できる立場にあります。たとえば、通路確保・敷地拡張・商業的利用など、隣地としての特性に魅力を見出してもらえる可能性があります。

個人間の売買では価格交渉が柔軟で、10万円以下での現金譲渡や無償譲渡も成立しやすい点がメリットです。ただし、後々のトラブルを避けるため、契約書を作成することは必須です。

登記費用や測量などの事務負担も発生するため、司法書士や行政書士に相談しながら進めると安全です。

不動産引取サービスを利用する

売却や譲渡が難しい物件でも、引取専門の民間サービスを利用することで手放すことが可能となるケースがあります。

これらのサービスは、売れない不動産を引き取る代わりに、一定額の手数料(引取料)を請求する仕組みです。

引取の対象は主に次のような物件です。

  • 老朽化した建物がある土地
  • 再建築不可の敷地
  • 私道や袋地など権利調整が困難な不動産

費用相場はおおよそ10万円〜50万円前後ですが、処分が難しい物件に対する現実的な選択肢として活用されつつあります。

サービス内容は業者ごとに異なるため、契約内容や費用の内訳を事前に確認することが重要です。

訳あり物件を買い取る不動産業者を探す

事故物件や築古物件など、一般には売れにくい訳あり物件を専門に扱う業者も存在します。これらの不動産会社は、リノベーションや再販を前提に積極的に仕入れを行っていることが多く、多少のリスクや瑕疵があっても価格次第で買い取ってもらえる可能性があります。

こうした業者に相談する場合、以下の情報を整理しておくとスムーズです。

提示すべき情報 内容
登記情報 権利関係の確認
建物・土地の状態 写真・劣化状況
インフラ整備状況 上下水道、電気の有無

ただし、実勢価格よりも大幅に低い金額での買い取りが前提となることが多いため、他の手段と併せて検討することが望ましいです。

空き家バンクに登録する

自治体が運営する“空き家バンク”に登録することで、自治体内の移住希望者や定住促進事業の対象者に向けて情報発信を行うことができます。

空き家バンクは、以下のような仕組みで運営されています。

  • 地方自治体がサイト上で物件情報を掲載
  • 地元の不動産業者やNPO法人と連携して売買や賃貸契約を支援
  • 登録や利用料が無料または低額に設定されているケースが多い

空き家バンクに登録すると、補助金制度や仲介支援制度が使える場合もあります。

ただし、買主が見つかるまでに時間がかかることもあるため、即時の売却を希望する場合は並行して他の手段も検討する必要があります。

建物を解体して更地にして売却する

老朽化した建物がある場合には、建物を解体して更地にすることで、流通性を高める方法もあります。

特に住宅地にある物件では、更地にすることで再建築が可能となり、購入検討者の幅が広がります。

ただし、建物解体には30〜150万円前後の費用がかかるほか、自治体によっては「建物がある土地」に軽減されていた固定資産税が更地にすることで増税される可能性もあります(住宅用地の特例が外れるため)。

コストと売却価格のバランスを見極めながら判断する必要があり、事前に不動産業者や税理士と相談することが重要です。

まとめ

負動産は、相続時や所有中に多くの法的・経済的リスクを伴います。放置すれば損害賠償責任や税負担が発生し、後々の世代にも負担が及ぶことになります。

売却、寄付、国庫帰属制度の活用など、状況に応じた対処法を知り、早めに動くことが不可欠です。個別の事情に応じて、弁護士・司法書士・不動産業者など専門家の支援を得ながら、最適な選択肢を検討することが重要です。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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