相続人関係図とは何か?作成するメリットや書き方について解説

相続が発生した場合、相続に関するさまざまな手続きが必要となります。その際に有効活用できるのが相続人関係図です。
この記事では相続人関係図とは何か、作成するメリットや書き方等について解説します。
目次
相続人関係図とは?
相続人関係図とは、被相続人を中心に相続人が誰なのか、被相続人との続柄などを一覧にまとめたものです。家系図をイメージするとわかりやすいかもしれません。相続関係図、相続関係説明図とも呼ばれます。
相続の手続きをする際に必ず必要なものではないですが、手続きをスムーズに行うために作成したほうがよいとされています。
相続人関係図を作成するメリットは?
相続人関係図を作成するメリットは以下の2点です。
戸籍謄本等の原本還付を受けられる
相続人関係図を作成したら、相続手続きにおいて戸籍謄本等の原本還付が受けられます。
相続登記や預貯金の解約等をする際に、被相続人や相続人の戸籍謄本等の提出が求められます。戸籍謄本を取得するには1通450円の手数料がかかりますので、手続きのために何通も請求したらかなり負担になります。
原本還付の請求に相続人関係図の提出は必須ではありませんが、相続関係図を提出すれば、戸籍謄本等のコピーの作成・提出が不要となる場合があります。何通も戸籍謄本を取得したり、コピーを作成したりする手間や経済的な負担が避けられます。
相続関係が明確になる
相続人関係図を作成したら、相続関係が明確になります。
相続人がたくさんいたりするなど、相続関係が複雑な場合は、相続人関係図を作成すれば一目で被相続人と相続人の関係がわかります。弁護士、司法書士、税理士などに相談する際にも相続人関係図を提出すれば、スムーズに手続きが進む可能性があります。
相続人関係図作成のために必要な準備は?
相続人関係図の作成のために必要な書類は、以下のとおりです。
被相続人の戸籍謄本等を取得する
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得します。
相続人関係図を作成するには相続人が誰なのか調査しなければいけないため、被相続人の出生から死亡までの戸籍から相続人を特定します。相続人関係図には被相続人の本籍地の記載も必要となります。
被相続人の除票か戸籍の附票を取得する
被相続人の住民票の除票か戸籍の附票を取得します。
相続人関係図には、被相続人の最後の住所を記載しますので、それがわかる住民票の除票もしくは戸籍の附票が必要です。
相続人全員の戸籍謄本等を取得する
相続人全員の戸籍謄本等を取得します。
相続人が生存しているかどうかを確認するために必要です。
相続人の住民票か戸籍の附票を取得する
相続人の住民票か戸籍の附票を取得します。
相続人関係図には、相続人の現住所を記載しますので、これらの書類が必要です。
相続人調査の方法や戸籍の読み取り方については、以下の記事で詳述しています。

相続人関係図の書き方は?
相続人関係図の書き方については、特に決まった書式はありません。
最近では相続人関係図作成用のツールもあるようですが、一般的には以下のような書式で、WordやExcelで作成ができます。
被相続人と相続人の氏名を記入する
被相続人と相続人の氏名を記入します。
被相続人の子が複数いる場合や、兄弟姉妹が相続人となる場合は、生まれた順番に上から記載します。
親族関係を線で結ぶ
被相続人と相続人の親族関係がわかるように線で結びます。配偶者は二重線の縦線、親子関係(養子を含む)は横線、兄弟姉妹は縦線で結びます。
被相続人と相続人の生年月日等を記入する
被相続人については、以下の事項を記入します。
- 最後の住所
- 最後の本籍
- 生年月日
- 死亡日
相続人については以下の事項を記入します。
- 現住所
- 生年月日
- 被相続人との関係(続柄)
相続人関係図が必要な場面は?
相続人関係図が必要になるのは、以下3つの場面が考えられます。
相続登記の申請
法務局に相続登記の申請をする際、相続人関係図があったほうがスムーズに手続きができます。
相続財産の中に不動産が含まれていれば、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければいけません。相続人は誰なのか、新たに不動産の名義人になるのは誰なのかを特定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等や相続人の戸籍謄本等の提出が必要です。
戸籍謄本等の原本還付をしてもらうためには、還付を請求する戸籍謄本等のコピーを作成し、そのコピーに「原本に相違ありません。」と記載の上、申請人が署名(記名)・押印したものを、原本と一緒に提出しなければいけません。
相続人関係図を提出すれば、登記原因を証する書面(登記原因証明情報)として添付する戸籍謄本等のコピーの作成・提出は不要となるため、手間を省けます。
預貯金の解約・払戻し
被相続人が生前使っていた銀行の口座の解約や払戻しをする場合、相続人を確認するために被相続人や相続人の戸籍謄本等の提出が求められます。金融機関における相続手続きでも、ほとんどの場合、原本還付の希望を申し出ることによって、戸籍謄本等の原本を返却してもらえます。
原本還付の請求に相続人関係図の提出は必須ではありませんが、提出することで手続きにかかる時間を短縮できます。
遺産分割調停の申立て
遺産分割調停を申立てる場合は、相続人関係図を提出しなければいけません。
相続人の間で話し合いがまとまらず、遺産分割協議が合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てますが、その際に相続人関係図の提出が求められます。
なお、裁判所によって相続人関係図のフォーマットや記載方法が若干異なる場合があります。申立てをする家庭裁判所の窓口やウェブサイト等で、あらかじめ具体的な書式例や記載例を確認しましょう。
相続人関係図に関するよくある質問
相続人関係図を作成するにあたり、よくある質問について回答します。
離婚や再婚をした場合はどのように記載するか?
被相続人が離婚したあとに再婚した場合、離婚していることがわかるように前の配偶者との間の二重線には×印をつけ、現在の配偶者は二重線で結びます。前配偶者は相続人とならないため氏名のみの記載で足りますが、前配偶者との間に子どもがいれば相続人となりますので、氏名、住所、生年月日を記載します。
代襲相続の場合はどのように記載するか?
代襲相続が発生している場合は、被代襲者の死亡年月日を記載し、その子どもの氏名、住所、生年月日を記載し続柄を記載します。代襲相続とは被相続人よりも先に相続人となる人が亡くなっている場合、その人の子どもが相続人になることです。よくあるのは、親よりも先に子どもが亡くなり、孫が相続人になるケースです。
数次相続の場合はどのように記載するか?
数次相続が発生している場合は、被相続人ごとに相続人関係図を作成しなければいけません。
数次相続とは、被相続人が亡くなったあとに遺産分割協議を行わないうちに相続人が亡くなり、新たな相続が起きた状態をいいます。複数の相続が発生しているため、それぞれの相続ごとに相続人関係図を作成しなければならず、相続人関係図を1枚にまとめることはできません。
数字相続が発生している場合の相続手続きの詳細は、以下の記事をご参照ください。

まとめ
相続が発生した場合、さまざまな手続きが必要となりますが、その前提として行うのが相続人の調査です。相続人が特定できたら、相続手続きをスムーズに進めるためにも被相続人と相続人の関係が一目でわかる相続人関係図を作成しましょう。
遺産分割協議など相続に関する手続きを弁護士に依頼した場合は、相続人関係図の作成も任せられます。
ネクスパート法律事務所では、相続全般に強い弁護士が在籍しています。初回30分相談無料となりますので、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。