一人っ子が相続する際に気を付けるべき3つのことを解説

相続人が多いと話し合いがなかなかまとまらず、相続手続が進まないケースがあります。
それでは、一人っ子であれば、スムーズに相続手続ができるのでしょうか?
この記事では、一人っ子が相続する際に気を付けるべきことと、一人っ子の親が子のためにできる相続対策について解説します。
目次
一人っ子が相続する際に気を付けるべき3つのことは?
相続が発生し、一人っ子が相続人となる場合、もう一方の親が健在であれば、親とともに共同相続人となりますが、そうでなければ相続人は一人っ子のみとなります。
その際に相続で気を付けるべき点は何か、以下でそれぞれ解説します。
自分以外に相続人がいないか調査をする
両親とも亡くなっている場合、自分以外に相続人がいないか調査をしましょう。「自分だけだ」と思っていても、異母・異父兄弟がいる可能性もあります。
亡くなった親(以下、被相続人)が、自分の父母以外の人と結婚していたことがないか、結婚していた場合は、その間に子どもがいなかったかどうかを確認する必要があります。過去に養子縁組をしている子がいるかもしれませんし、婚姻関係にない人との間に子をもうけているかもしれません。
他に相続人がいないかどうかは、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて調査をします。他に子がいた場合は、その子も相続人として被相続人の遺産を受け取る権利があります。
相続手続きは、相続人全員が合意して行わなければ無効となりますので、気を付けましょう。
遺言書がないか確認する
被相続人が遺言書を遺していないかどうかを確認しましょう。
被相続人が遺言書を遺している場合は、原則その内容のとおりに相続手続きを行います。
被相続人が生前、遺言書を作成したと言っていたら、自宅で探すか、遺言書保管所(法務局)や公証役場に問い合わせをしましょう。
自宅で自筆証書遺言が見つかった場合、その場で開封せずに家庭裁判所で検認の手続きを取らなくてはいけません(法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している場合を除く)。
二次相続になっていないか確認する
今回発生した相続が、二次相続になっていないかどうか確認をしましょう。
二次相続とは、両親のどちらかが亡くなったあとにもう一方が亡くなった2回目の相続を指します。両親の一方が亡くなる一次相続では、もう一方の親も相続人となるため、配偶者控除の適用により相続税の負担が少なくなることがあります。
しかし、二次相続では一人っ子がすべての財産を相続するため、高額の相続税がかかる可能性があります。
一人っ子の親が子のためにできる相続対策は?
一人っ子の親が子のためにできる相続対策について、以下4つのポイントを解説します。
生前贈与をする
相続税の節税につながる生前贈与を検討しましょう。
生前贈与とは、生きている間に自分の財産を他者に渡すことです。
贈与を受けた人には贈与税がかかりますが、贈与税は年間110万円までは非課税枠があります。これを利用して少しずつ贈与(暦年贈与)すれば、財産を減らせるため相続税の節税につながります。
ただし、相続開始前3年以内(2024年6月以降の贈与については相続開始前7年以内)の贈与は、相続時に相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。
孫に贈与する
孫への贈与を検討しましょう。
一人っ子が相続した財産は、いずれ孫が相続することとなります。
財産が次の世代に引き継がれる際には、相続税が、親から子、子から孫へと2回課税されますが、孫に贈与をすれば、これを避けられます。
教育資金としての一括贈与は1500万円まで非課税になりますので、これらの制度を利用した孫への贈与も検討してみましょう。
納税資金として生命保険を活用する
納税資金として、生命保険の活用を検討しましょう。
財産が多いため相続税が高くなりそうなときは、一人っ子を生命保険の受取人に指定して、納税資金を確保する方法があります。
生命保険の死亡保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象になる場合がありますが、課税対象となる場合でも、次の計算式で求められる非課税枠が適用されます。
500万円×法定相続人の数 |
遺言書を作成する
一人っ子の相続をスムーズに行うために、遺言書の作成を検討しましょう。
例えば、両親のどちらかが認知症になってしまった場合、残された子が困らないように遺言書で遺言執行者を指定しておけば安心です。一人っ子が唯一の相続人となる場合でも、遺言書があれば名義変更等の手続きをスムーズに進められるため、負担を軽減できます。
相続人が一人っ子のみの場合、財産の一部を法人や個人に遺贈すると遺言しておけば、相続税の負担が軽減できる可能性があります。
一人っ子の相続に関するQ&A
一人っ子の相続でよくある質問とそれに対する回答を紹介します。
一人っ子でも遺産分割協議書を作成しなければならないか?
両親とも亡くなっていたり、相続人が他にいないことが確定していたりすれば、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
遺産分割協議書は、相続人が複数人いる場合に作成するものだからです。
もっとも、遺言書がない場合は、相続手続きにおいて、ご自身が唯一の相続人であることを証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提示しなければいけません。
独身の一人っ子が死亡したら相続はどうなるか?
独身の一人っ子が死亡し、子をはじめとした相続人が誰もいない場合、財産は国庫に帰属されます。
財産が国庫に帰属されるのを避けたい場合は、遺言書を作成して知人や法人に財産を遺贈する旨を記載しておくとよいでしょう。
まとめ
一人っ子だったら相続手続きに関して問題は起きないだろうと思うかもしれませんが、一人っ子だからこそ気を付けなければいけない点があります。
あなた以外の相続人が判明し、遺産分割協議を進めることに不安がある場合には、弁護士にご相談ください。弁護士に依頼すれば、他の相続人との交渉や裁判所の手続きを代理してもらえます。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。