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遺言書が破られたときの効力と対処法|破った人にペナルティはある?

遺言書が破られたら?破られた遺言書に効力はある?

遺言書が破られたり、捨てられたり、書き換えられた疑いがあると、相続手続きが中断し、家族間の不信感から紛争に発展しやすくなります。
本記事では、以下の点について解説します。

  • 遺言書の破棄・偽造・変造・隠匿の意味
  • 遺言の種類ごとの効力への影響
  • 取るべき行動や破った人に生じ得るペナルティ
  • 再発防止策

遺言書の破棄・偽造・変造・隠匿とは

遺言書が破られたといっても、法律上は破棄・偽造・変造・隠匿など複数の類型があり、該当する行為によって手続きや結論が変わります。
相続の現場では、遺言書そのものが見つからない、見つかったがボロボロで読めない、内容が不自然に書き換えられているなど、複数のパターンが起きます。ここを一括りにすると、やるべき手続きや主張がずれてしまいます。
まず重要なのは、行為の中身を言葉で正確に言い換えることです。物理的に滅失させたのか、隠して出せない状態にしたのか、内容を書き換えたのか、そもそも本人以外が作ったのかで、争点が変わります。
また、同じ「破られた」状態でも、復元できる程度なのか、判読不能なのかで、遺言を使って相続手続きを進められる可能性が変わります。最初に分類して整理することが、無駄な対立や遠回りを減らす近道です。

遺言書の破棄にあたる行為の例

破棄は、遺言書の効用を害する行為全般を指し、典型例は遺言書を破る、捨てる、燃やすなど、物理的に遺言書を滅失させる行為です。シュレッダーにかける、細かく裂くなども同様に破棄と整理されます。

また、紙を水に濡らして文字を滲ませ判読不能にする、薬品で消すなど、見た目は残っていても内容の実現を妨げる行為も破棄に含まれます。重要なのは、遺言として使えない状態にする点です。
似た言葉に隠匿があります。破棄が滅失や判読不能化であるのに対し、隠匿は遺言書を隠して他の相続人に見せず、見つからない状態にして手続きを妨げるイメージです。遺言書が後で出てくるのは隠匿の典型で、燃やしたのか隠したのかは初動の証拠確保で差が出ます。

遺言書の偽造・変造にあたる行為の例

偽造は、作成権限がない人が遺言者名義で遺言書を作ってしまう行為です。たとえば、相続人が本人の署名のように見せかけて自筆証書遺言を作成し、日付や押印も整えて提出するようなケースが想定されます。
変造は、真正な遺言書に手を加えて内容を変える行為です。具体的には、金額や不動産の表示を不正に追記する、受遺者名を消して別人に書き換える、遺言書のページを差し替える、特定の条項だけ切り取るなどが問題になります

疑いの手掛かりとしては、筆跡の不自然さ、日付の書き方の違い、押印の位置や朱肉の新旧、同じ文書内で筆圧やインクが不揃いといった点があります。ただし見た目だけで断定はできないため、発見時の状態を写真で残し、後から説明できるようにしておくことが大切です。

遺言書が破られた場合の効力はどうなるか

遺言の効力が失われるかは、遺言の種類(自筆証書/公正証書)や、破られ方・復元可能性などで結論が分かれます。
遺言書が破られたときに最初に確認すべきなのは、遺言の種類です。自筆証書遺言のように原本が手元にしかないものは、現物が使えないと相続手続きが止まりやすい一方、公正証書遺言は原本が公証役場に残るため影響が小さくなります。
次に、破損の程度です。完全に滅失して内容が分からない場合と、一部が欠けているだけで大半が読める場合では、遺言として活用できる余地が違います。実務では復元の可能性があるか、内容を再現できるかが判断の分かれ目になります。
さらに、誰がどの意図で破ったのかも争点になります。遺言者本人の撤回行為として扱われるのか、第三者の不正として扱われるのかで、その後の主張や責任追及の組み立てが変わります。

自筆証書遺言が破られた場合

自筆証書遺言は原本の存在が実務上とても重要です。原本が判読不能だったり滅失して内容を確定できなかったりすると、遺言に基づく名義変更や預貯金の払戻しができず、結果として遺産分割協議に移行することがあります。
ただし、破損が一部で、残りから内容が読み取れる、あるいは破れた断片を合わせれば復元できる場合は、その範囲で遺言の内容を主張できる可能性があります。ポイントは、後から見ても復元の過程が合理的で、恣意的に作ったものではないと説明できるかです。
また、自筆証書遺言は検認手続きが関係します。検認は遺言の有効無効を決めるものではありませんが、発見時の状態を公的に記録する意味があり、写真やコピー、検認調書などが後の立証材料になります。破られた状況では、現物を触り過ぎず、証拠として残す意識が重要です。

公正証書遺言が破られた場合

公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため、手元にある正本や謄本が破られても、原則として遺言の効力自体は失われません。相続手続きで必要なのは内容を確認できる公的な書面なので、再取得できる点が強みです。
実務上は、公証役場で謄本等の交付を受け直し、遺言に基づく登記や金融機関手続きを進める流れになります。破られたこと自体で遺言が無効になるわけではないため、まずは作成した公証役場を特定することが優先です。
もっとも、公正証書遺言であっても別の争点が出ることはあります。たとえば遺留分の問題で争いになる場合などです。破られた事実に引きずられず、どの手続きが止まっているのかを冷静に切り分けると解決が早まります。

遺言書が破られたときにまずやること

感情的に問い詰めたり、自己判断で処分したりすると、かえって立証が難しくなります。証拠保全と適正手続の確認が重要です。
遺言書が破られた疑いがある場面は、相続人同士の関係が悪化しやすく、つい相手を追及したくなります。しかし初動でやるべきは犯人探しより、後で争っても揺らがない証拠を固めることです。
遺言書は一度状態が変わると、誰がいつどう触ったのかが曖昧になり、疑いを晴らすことも不正を立証することも難しくなります。相続の争いは証拠の優劣で流れが決まるため、最初に手順を誤らないことが重要です。
もう一つの軸は、遺言の種類と保管状況を確認し、必要な手続きに沿って動くことです。自筆証書か公正証書か、法務局保管か自宅保管かで、家庭裁判所や公証役場など次の行き先が変わります。

現物・写真・周辺事情の証拠を確保する

破損した遺言書が手元にあるなら、まず現物をこれ以上傷めない形で保全します。セロテープで貼り合わせる、書き込みをする、のり付けするなどは、後から改ざんを疑われたり鑑定の妨げになったりするため避けた方が安全です。
できるだけ早く写真を撮るのも有効です。全体像に加え、破断面、欠損箇所、日付・氏名・押印の部分、封筒の表裏、同封物、保管されていた箱や引き出しの状況など、第三者が状況を再現できる撮り方がおすすめです。可能なら撮影日時が残る設定にし、データのバックアップも確保します。
周辺事情も証拠になります。発見日時、発見場所、同席者、直前に部屋へ出入りした人、保管を任されていた人、関連しそうなメモやコピー、送付状、鍵の所在などをメモに残し、まとめて保管します。遺言書そのものだけでなく、状況証拠の積み重ねが後の説得力になります。

検認が必要か確認し、勝手に開封しない

自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。検認前に開封すると過料の対象になり得るため、見つけた封筒を自己判断で開けないことが基本です。すでに破られている場合でも、どの段階でどのように開封されたかが争点になるので、状況を記録して手続きを確認します。
一方で、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している遺言は検認不要です。この違いを誤ると時間を無駄にしたり、金融機関や法務局で書類が揃わず手続きが止ったりします。
まず遺言の種類と保管状況を確認し、必要なら家庭裁判所や弁護士に相談をして、適正なルートで進めるのが安全です。焦って動くほど証拠の価値が下がる点を意識しておくとよいでしょう。

遺言書を破った人のペナルティと相続欠格

遺言書の破棄・偽造・変造・隠匿は、民法上の相続欠格に該当し得るほか、状況によっては刑事・民事責任が問題になります。
遺言書を破った人は相続権を失う可能性があり、さらに損害賠償や刑事事件の問題に発展する可能性があります。
ただし相続欠格に当たるか、犯罪が成立するかは、行為の態様や目的、証拠の有無で争点になり、立証のハードルもあります。
実務で重要なのは、感情的に断罪するより、欠格や責任追及に必要な要件を満たす証拠が揃うかを冷静に見極めることです。これにより、交渉で解決できる範囲と、訴訟が不可避な範囲が見えてきます。

相続欠格になる条件

遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿は、民法891条5号の相続欠格事由になり得ます。欠格になると、その人は相続人としての資格を失い、遺産を受け取れないのが原則です。
もっとも、実務では行為の目的や態様が争点になります。判例上、相続に関して不当な利益を得る目的があったかどうかが問題となり、単に管理の混乱や誤解があっただけでは相続欠格と評価されない可能性もあります。誰が、いつ、何のために、どんな方法で行ったのかを証拠で示せるかが重要です。
欠格者は遺産分割協議に原則として関与できず、欠格者を除いて手続きを進めます。さらに、欠格者に子がいる場合は代襲相続が起こり得るため、相続人の範囲を再調査することになります。欠格をめぐる争いがあると手続きが止まりやすいので、早い段階で専門家と方針を固めるのが現実的です。

民事・刑事上の責任

民事面では、不法行為に基づく損害賠償が問題になります。たとえば、遺言書が破棄されて本来取得できた財産が得られなくなった、紛争対応で弁護士費用等の負担が増えたといった主張が考えられます。また、遺言の有効無効や相続人としての地位を争う訴訟に発展することもあります。
刑事面では、遺言書を破棄した行為が私用文書毀棄罪に当たる可能性、偽造があれば有印私文書偽造罪等が問題になる可能性があります。ただし、相続の事案は家庭内の経緯が複雑で、誰が行ったかの直接証拠が乏しいことも多く、捜査や立証にはハードルがあります。
そのため現実的な対応としては、刑事面で一気に解決を狙うより、相続手続きを前に進めるために必要な証拠と手続きの整理を優先し、並行して民事上の請求や和解の可能性を検討する形になりやすいです。

遺言書が破られた後の相続手続きの進め方

遺言書が破られた後の相続手続きは、遺言が使えるか否かで、相続手続きのルートが分かれます。実務では遺言の内容を立証できるかどうかが判断基準になります。
遺言に基づいて進めるのか、法定相続に戻して話し合うのかで大きく変わります。ここを見誤ると、必要書類が揃わず手続きが止まる原因になります。
実務では、遺言書の内容を客観的に示せるかがポイントになります。遺言書が読める、遺言書の写真やコピーがある、検認調書に写真が添付されている、公正証書の原本が公証役場にあるなど、提出先が納得できる形で内容を示せるかを確認します。
また、相続欠格が絡む場合は、相続人の範囲が変わる可能性があります。相続人が誰になるのか確定させる作業が、手続きの前提になります。

遺言が使えない場合の進め方

遺言書が滅失して内容が分からない、判読不能で復元もできないといった場合、遺言による手続きは難しく、法定相続に基づく遺産分割協議に移るのが一般的です。相続人全員で財産目録を作り、遺産の分け方を合意し、まとまらなければ調停を検討します。
ただし、遺言書を破棄等した人物が相続欠格に当たる場合は、その人を相続人から外して協議します。ここで問題になるのが、本人が欠格を認めないケースです。欠格が争われると、相続人の範囲が確定しないため、金融機関や法務局で手続きが進まないことがあります。
この場合、欠格該当性を確定させる訴訟などが必要になることがあり、時間と費用が増えます。だからこそ破られた事実だけで相手を追求せず、欠格を証する証拠があるか、別ルートで解決できないかを初期段階で精査することが重要です。

遺言の内容を立証できる場合の進め方

遺言書の写真やコピー、検認調書、または公証役場保管の原本などにより内容を再現できる場合は、遺言に基づく相続手続きを進めることが検討できます。不動産なら相続登記、預貯金なら解約や名義変更など、遺言の記載に沿って進めるのが基本です。
自筆証書遺言の場合、通常は検認済みであることが実務上求められます。法務局保管制度を利用している場合は、遺言書情報証明書の取得により検認を省略できます。いずれにしても、提出先が求める形式で遺言の存在と内容を示せるように準備します。
提出先によって必要書類は異なり、同じ遺言でも金融機関ごとに運用が違うこともあります。二度手間を避けるには、事前に提出先へ確認し、争点がある場合は弁護士や司法書士に資料一式を見せて進め方を検討するのが有効です。

遺言書の破棄を防ぐ方法

トラブルは発生後よりも、作成・保管の段階で予防することが理想的です。破棄・偽造リスクを下げる代表的な方法を押さえておきましょう。
遺言書トラブルは、起きてから解決しようとすると証拠不足と感情対立で長期化しがちです。遺言者が生前にできる対策として、改ざんや破棄が起きにくい形で作り、確実に発見される形で保管することが重要です。
特に自筆証書遺言は手軽に作成できますが、自宅保管によって遺言書の改ざんや破棄のリスクが高くなる可能性があります。第三者機関が関与する仕組みを使うだけで、紛争リスクを大きく下げられます。また、方式の不備で無効になると、破られていなくても結局は争いになります。保管だけでなく遺言書の作成に気を配ることも重要です。

公正証書遺言を作成する

公正証書遺言は、公証役場で作成し原本が保管されるため、破棄・偽造・紛失のリスクが極めて小さくなります。手元の書面が破られても再取得でき、相続開始後も手続きが中断しにくいのがメリットです。
また、公証人が関与することで方式不備による無効リスクが下がり、検認も不要なため、相続人の負担が軽くなります。相続ではスピードが重要な場面も多く、検認待ちがないだけでも実務上の価値があります。
遺留分を無視した遺言書の内容は別の紛争を生みやすいです。公正証書遺言を作る際に弁護士等の専門家と文案を考え、遺留分等に関する問題を解決しておけば、紛争が予防できる可能性が高まります。

自筆証書遺言書保管制度を利用する

自筆証書遺言書保管制度を使うと、法務局が遺言書を保管するため、紛失や破棄、隠匿、改ざんのリスクを減らせます。自筆証書遺言書を作りたい人にとって、現実的な予防策となります。
この制度を利用した遺言は検認不要になり、相続開始後に遺言書情報証明書などを使って手続きを進められます。遺言書が見つからない、勝手に開けられたといった典型的なトラブルが避けやすくなります。
ただし、法務局は遺言書の内容の有効性まで保証するわけではありません。方式や記載が不適切だと無効になり得るため、作成段階で要件を確認し、可能なら専門家にチェックを受けることが安全です。

まとめ

遺言書が破られても、遺言の種類や破損状況、立証可能性によって手続きの進め方が変わります。
遺言書が破られた場合は、破棄・隠匿・偽造・変造のどれに当たるのかを整理し、遺言の種類と破損の程度から、遺言を使えるかを見極めることが出発点です。特に自筆証書遺言では、現物の保全と写真撮影などの初動が、その後の手続きと交渉力を左右します。
破った人には相続欠格や損害賠償、刑事責任の可能性がある一方、実際に進めるには目的や態様の立証が重要になります。感情的な追及よりも、証拠を固めて適正手続で進める方が結果的に早い解決につながります。
再発防止としては、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度の利用が有効です。遺言書が破られた疑いがある場合は、手続きが滞る前に、資料を揃えて専門家へ相談し、どのような進め方が最も有効かを考えましょう。
ネクスパート法律事務所には、遺言書作成をはじめとして相続全般を手掛ける弁護士が在籍しています。初回相談は30分無料ですので、遺言書を破られてしまったり、破れた遺言書を見つけて困っている方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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