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債権は相続できる?相続の対象となる債権の種類や分割方法を解説

相続開始後、相続財産を調査しているうちに、父名義の不動産に賃料が発生している、知人にお金を貸しているなど、債権があることが判明するケースは少なくありません。

この記事では、相続の対象となる債権の種類債権の分割方法について解説します。

債権は亡くなった親が残してくれた大切な財産のひとつです。この記事を読んで債権の取り扱い方について知っていただき、債権回収にお役立ていただければ幸いです。

貸金や賃料などの債権は相続できる?

債権には貸金や賃料、養育費などさまざまな種類があり、すべての債権が相続の対象となるわけではありません

相続の対象となる債権とならない債権を、以下で説明します。

相続の対象となる債権

相続の対象となる債権の典型例として、以下の5つが挙げられます。

  • 預貯金債権(預貯金契約に基づく預金者の金融機関に対する権利)
  • 貸金債権(知人に貸したお金など債務者に対して返済を請求できる権利)
  • 賃料債権(未払いの家賃など賃貸不動産の賃料を受け取る権利)
  • 売掛債権(商品やサービスの提供に伴い対価(代金)を受け取る権利)
  • 損害賠償請求権(交通事故の被害者となった場合など、故意または過失に基づいて他人の利益や権利を侵害した際にその損害について補償を求める権利)

相続の対象とならない債権

相続の対象とならない主な債権として、以下の2つが挙げられます。

  • 養育費の請求権
  • 年金や生活保護の受給権

権利の性質上、その個人のみが行使できる権利(一身専属権)は第三者に譲渡できません。そのため、一身専属権に当たると考えられている上記2つのような債権は、相続の対象とはなりません。

ただし、既に請求権の内容が確定し、履行期も到来したものについては、通常の債権同様に相続の対象となると解されています。

相続した債権はどうやって分割すればいい?

相続した債権の分割方法は、債権の種類によって異なります。

債権は、可分債権不可分債権2つに分類されます。

可分債権相続人で分けられる債権不可分債権相続人で分けられない債権です。例としては、可分債権は主に金銭債権、不可分債権は物の引き渡しなどが挙げられます。

可分債権・不可分債権の取扱いについては、以下の4つのルールがあります。

  • 可分債権は法定相続分に応じて分割(当然分割)できる
  • 可分債権は相続人全員の合意があれば遺産分割も可能
  • 可分債権のうち預貯金債権は相続人の合意の有無に関わらず遺産分割が必要
  • 不可分債権は遺産分割が必要

以下で、詳しく解説します。

可分債権は法定相続分に応じて分割(当然分割)できる

可分債権は、法定相続分に応じて当然分割できます

相続財産の中に金銭その他の可分債権があるときは、その債権は、法律上当然に分割され各相続人がその法定相続分に応じて権利を承継するものと解されています(最高裁―昭和2948日判決 )。

そのため、可分債権は、遺産分割を得ずとも、各相続人が法定相続分を確定的に取得できます。

例えば、被相続人である父が生前叔父に貸した300万円の貸金債権を相続したケースで、相続人が子3人である場合、子3人はそれぞれ100万円を返済するよう叔父に請求できる権利を相続します。

可分債権は相続人全員の合意があれば遺産分割も可能

可分債権は、相続人全員の合意があれば遺産分割も可能です。

各相続人が法定相続分を取得すると債権回収の効率が悪い、相続人に債権の請求ができない未成年者がいるなど、法定相続分に応じて当然分割しない方がいいケースも少なくありません。

可分債権を法定相続分に応じて当然分割したくない場合は、相続人全員の合意を得ることで、相続人で話し合って分割方法を決められます。

可分債権のうち預貯金債権は相続人の合意の有無に関わらず遺産分割が必要

可分債権のうち、預貯金債権は相続人の合意の有無に関わらず遺産分割が必要です。

預貯金債権は、平成28年まで法定相続分に応じて当然分割できるものとして扱われてきました。しかし、相続人が法定相続分に応じて預貯金を引き出せることでさまざまな弊害が起こったため、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると最高裁判所が判示しました(最高裁平成281219日判決)

そのため、預貯金債権は相続人の合意の有無に関わらず、遺産分割が必要になります(遺言書がある場合を除く)。

なお、平成31年の相続法改正により、相続人が生活費や葬儀費用に充てるために必要な場合、遺産分割前に被相続人の預貯金の一部を引き出せるようになりました。

遺産分割前の預金引き出しの詳細は、以下関連記事をご参照ください。

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不可分債権は遺産分割が必要

不可分債権は遺産分割が必要です。

不可分債権は、その性質上、当然に分割できません。

そのため、遺言書がなく相続人が複数いる場合には、遺産分割協議を行う必要があります。

債権には時効がある!相続した権利が消滅しないよう債務者に請求を

債権には時効があるため、相続した権利が消滅しないよう債務者に請求する必要があります。

相続した債権は、以下の期間が経過すると時効により消滅します。

債権が債務者に対して、内容証明郵便などによる履行の催告や裁判上の請求を行うことで、消滅時効の完成を阻止できます。

債権を相続したら、まずは債権を相続した旨と請求内容を通知しましょう。相続した債権の時効が迫っているときには、債務者に対して内容証明郵便で履行を催促することをお勧めします。内容証明郵便で履行の催告をすることで、6か月間時効の完成が猶予されます。

完成猶予期間である6か月の間に返済や債務の承認がなければ、裁判上の請求や支払督促など、時効期間をリセットする時効の更新手続きを行うことを検討しましょう。

相続した債権は相続税の対象になる

相続した債権は相続税の対象になるケースがあります。

貸付金は被相続人が貸したお金であり、返済してもらわなければなりません。その返済してもらう権利を相続人が引き継ぐため、貸付金には相続税が発生します

ただし、相続税は債権を相続したら必ず発生するわけではありません。一定の金額を超える財産を相続した場合にのみ発生します。

相続税が発生するかどうかは、以下の計算式で算出した基礎控除額が相続財産の総額よりも大きいかどうかで判断します。

3000万円+(600万円×法定相続人の人数)=相続税の基礎控除額

相続財産の総額が基礎控除額を下回れば、相続税は発生せず、申告も不要です。

相続した債権を回収できない3つのケース

相続した債権を回収できない主なケースは、以下の3つです。

  • 債務者が自己破産した場合
  • 債務者が亡くなり相続人がいない場合
  • 債務者が亡くなり相続人が相続放棄した場合

以下で、詳しく解説します。

債務者が自己破産した場合

債務者が自己破産した場合、相続した債権を回収できません

自己破産とは、債務の返済ができなくなった債務者が裁判所に申し立てることにより、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。

債務者について免責が認められると、非免責債権を除いて、借金の返済義務がなくなります。

なお、次の2つの損害賠償請求権は、破産法で非免責債権とされているため、債務者が自己破産をしても、免責されません。

  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 故意または重過失により人の生命や身体を侵害した不法行為に基づく損害賠償請求権

債務者が亡くなり相続人がいない場合

債務者が亡くなり相続人がいない場合、相続した債権を回収できません

債務者が亡くなり相続人がいない場合、未回収債権の請求先がないため、返済するよう請求できないためです。

債務者が亡くなり相続人が相続放棄した場合

債務者が亡くなり相続人全員が相続放棄した場合、相続した債権を回収できません

相続放棄とは、相続財産である資産や負債などの一切を引き継がず、権利や義務を放棄することです。

すべての相続人が相続放棄した場合、未回収債権の請求先がなくなるため、債権を回収できなくなります。

まとめ

被相続人が残した債権が相続の対象となる場合、その権利は相続人が引き継ぎます。

遺産分割協議を行う必要がある預貯金債権・不可分債権や、時効期間が経過することで権利が消滅する貸金債権・賃料債権など、債権の種類は多岐にわたります。

債権の種類によって取り扱いが異なるため、対応方法に悩んだり、相続人間で争いが起こったりすることも少なくありません。

債権を含む相続財産の分配や相続した債権の回収に悩んだら、弁護士への相談・依頼も視野に入れることをお勧めします。

弁護士に依頼することで、相続財産を適切に分割し、相続手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。話し合いや煩雑な手続きのストレスからも解放されるため、あなたの負担が最小限で済むでしょう。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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