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墓地を相続したらどんな手続きが必要か?相続登記との関係も解説

亡くなった人が墓地を残していた場合、墓地を誰が承継するか問題となります。

この記事では、亡くなった人から墓地の承継を依頼された場合、どのような手続きをしなければならないか、2024年から義務化された相続登記の要否も含めて解説します。

墓地の相続はどのように行うか?

墓地は、法律上、相続財産には含まれません。墓地や墓石等の祭祀財産は、祭祀を主宰すべき者 (祭祀承継者)が承継するものとされています。

以下で詳しく解説します。

墓地は相続財産ではない

墓地は相続財産ではありません

民法上、墓地は神や先祖をまつるための祭祀財産として扱われているからです。墓地以外にも家系図、仏壇仏具、神棚、位牌などが祭祀財産となります。

これらの祭祀財産は相続財産(遺産)には含まれず、通常の相続財産とは別の処理をします。

墓地は祭祀承継者が相続する

墓地は祭祀承継者が承継します

祭祀承継者とは、祭祀財産や遺骨を管理し、祖先の祭祀を主宰すべき人のことです。1人が選ばれることが多いですが、2人以上が共同で承継するケースもあります。

祭祀承継者はどのように決めるか?

祭祀承継者の選任については民法897条に規定がありますが、必ずしも親族から選ばなければいけないわけではありません。

どのように決めるのか、いくつか方法がありますので解説します。

被相続人が指定する

被相続人が祭祀承継者を指定していた場合、その人が祭祀承継者となります。

指定の方法に決まりはないため、生前行為として書面・口頭で指定しても良いですし、遺言でも指定できます。明示の指定である必要はなく、黙示でも、被相続人が祭祀主宰者を指定したと読み取れる外形的事情があればよいと考えられています。

被相続人の指定の意思が推認される具体的なケースは、以下のような場合です。

  • 生前贈与や遺贈として祭祀財産が承継された場合
  • 被相続人がお墓の建立者として墓碑に特定の人物の名前を刻んだ場合

なお、祭祀承継者の指定は法定遺言事項ではないので、遺言としての効力が生ずるわけではありませんが、遺言書に祭祀承継者の指定があれば、指定の効力自体は生じるので、遺言で祭祀承継者を指定しておくことは有用です。

地域や家族内の慣習に従う

被相続人が特定の人を指定していない場合、原則として地域や家族内の慣習に従って祭祀承継者を選びます。

被相続人の親族でなくても問題はありませんが、墓地を管理している寺院や霊園によっては、祭祀承継者を3親等内の親族と指定しているケースがあります。

家庭裁判所に祭祀承継者指定の申立てをする

被相続人による指定がなく、適用すべき慣習もない場合は、家庭裁判所に申し立てをして、裁判所に祭祀承継者を指定してもらいます。

家庭裁判所は、被相続人との関係が密であったかどうか、墓地を承継する人の職業や祭祀承継の意思や能力があるかどうかなど、さまざまな観点から祭祀承継者を選びます。

1人が選ばれることが多いですが、特別の事情がある場合は2人以上が共同で承継するケースもあります。

相続人全員で話し合って決める

相続人全員の合意があれば、話し合いで祭祀承継者を指定できます。

墓地は遺産分割の対象ではありませんが、相続人全員が合意していれば、(家庭裁判所に祭祀承継者指定の申し立てを行わなくても)相続人全員の協議によって決められます。

遺産分割調停が係属中の場合も、当事者全員で合意ができる場合は、手続きの中で祭祀承継者を指定して、祭祀財産を取得させる旨の調停を成立させることもあります。

祭祀承継者はどのような役割を担うか?

祭祀承継者に指定された人には、どのような役割が求められるか、以下で解説します。

墓地を維持管理する

祭祀承継者は、承継した墓地を維持管理する役割があります。

墓地の維持管理を法的に義務付けられるわけではありませんが、一般的には定期的に墓参りをして掃除をして清潔に保ち、周辺墓地に迷惑をかけないようにします。

さらに墓地を管理している寺院や霊園へ管理費を支払う義務も生じます。

法事を執り行う

祭祀承継者は、回忌法要を主宰して執り行うケースが多いです。

墓地の維持管理と同様に法的に義務付けられているわけではありませんが、一周忌、三回忌、七回忌といった節目の法要を率先して行います。

墓地を相続したら登記は必要か?

墓地を承継した場合、相続登記が必要になるケースと不要なケースがあります。以下でそれぞれ解説します。

墓地がある土地の所有者で判断する

承継した墓地がある土地の所有権が、被相続人になっているかどうか相続登記の有無判断します。

承継した墓地の種類 相続登記の要否
個人墓地 必要
寺院墓地、公営墓地、公営墓地 不要

墓地は、昭和23年に施行された墓地、埋葬等に関する法律によって都道府県知事の許可を受けなければ経営ができません。墓地経営を許可する判断材料の一つとして、墓地がある土地の所有が条件になります。寺院墓地、公営墓地、公営墓地の所有者は、原則それらを経営している地方公共団体もしくは法人となるため、相続によって墓地を承継しても相続登記は不要となります。

都心部ではあまり見られませんが、地方には墓地、埋葬等に関する法律が施行される前に作られた墓地がまだまだ見受けられます。それらの墓地は、そのまま所有して使用ができるため、所有者が亡くなった場合には、相続登記が必要です。

墓地の登記手続きは2パターンある

墓地の登記手続きは、対象の墓地を祭祀財産として承継したのか、または相続財産として承継したのかによって手続き方法が変わります

祭祀財産として相続した場合

墓地を祭祀財産として承継した場合、遺言書がある場合、祭祀承継者として指定された人遺言執行者(遺言執行者の指定がない場合は法定相続人全員)、遺言書がない場合は、祭祀承継者法定相続人全員共同して登記申請を行います。

登記原因は民法第897条による承継とし、地目が墓地になっている土地に関しては登録免許税が非課税となります。

遺言書がある場合、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を利用しているケースを除いて、家庭裁判所の検認が必要となります。

その他、登記申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 祭祀承継者に指定されたことが分かる書類
  • 登記識別情報通知(登記済証)
  • 祭祀承継者の住民票または戸籍の附票
  • 遺言執行者または相続人全員の印鑑証明書
  • 遺言書(遺言書がある場合)

相続財産として相続した場合

墓地を相続財産として承継した場合、相続を登記原因とする通常の相続登記を申請します。祭祀財産と同様に地目が墓地の場合は、登録免許税は非課税となります。

遺言書がある場合は、遺言書の内容のとおりに登記申請をし、遺言書がない場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて法定相続人を確定させ、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が墓地を承継するか決定します。

相続登記申請に必要書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までつながりが分かる戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
  • 墓地を承継する人の戸籍謄本
  • 墓地を承継する人の住民票もしくは戸籍の附票
  • 遺言書(遺言書がある場合)
  • 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
  • 法定相続人全員の印鑑証明書(遺言書がない場合)
  • 法定相続人全員の戸籍謄本(遺言書がない場合)

墓地の登記が不要でも必要な手続きは?

寺院墓地、公営墓地、民営墓地を承継し、相続登記申請が不要な場合でも名義変更の手続きは必要です。

寺院墓地を相続した場合

寺院墓地とは、さまざまな宗派の寺院によって管理・運営されている墓地です。

寺院の敷地内に墓を建て檀家となるケースがほとんどです。寺院とのつながりが強いことから、通常、墓地の所有者が亡くなったら、法要などの関係上真っ先に連絡を入れるため、名義変更を忘れることはあまりないと思いますが、寺院が定める方法で名義変更の手続きを依頼される場合もあります。

公営墓地を相続した場合

公営墓地とは、地方公共団体が運営・管理している墓地です。

公営墓地は公的サービスの一つとなるため、使用料や管理料が安く人気が高いです。墓地の所有者が亡くなった場合は、地方公共団体が定める方法で名義変更を行う必要があります。

民営墓地を相続した場合

民営墓地とは、宗教法人などの団体が運営している墓地です。

宗派を不問とする場合がほとんどで、空きがあれば比較的簡単に手に入れられますが、利用料が高額になるケースが多いです。民営墓地の場合も所有者が亡くなった場合は、運営している法人の定める方法で名義変更手続きを進めます。

墓地も相続登記の義務化の対象となる

2024年4月から相続登記の義務化がスタートしましたが、墓地も義務化の対象となります。相続登記が必要な場合は、迅速に対応しましょう。

墓地を承継すると相続税はかかる?

墓地は、相続財産ではないため相続税はかかりません仏壇・仏具や神棚などの祭祀財産も非課税となるため相続税はかかりません

ただしローンを組んで仏壇を購入したら、残額は債務控除の対象とはなりませんし、過度に派手な仏壇を購入した場合は、相続税を逃れるためだと判断される可能性がありますので、気を付けましょう。

まとめ

先祖代々の墓地を承継することになった場合、何をすればいいのか戸惑う人も多いと思います。まずは墓地がある場所が個人墓地なのか、寺院墓地、公営墓地、民営墓地なのかを確認しましょう。

個人墓地の場合は、相続登記の義務化対象となりますので、早めに登記申請をしましょう。

 

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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