ゆうちょ銀行の相続手続きの進め方と注意すべき3つのポイント

親が亡くなると、その時点から自動的に相続が発生します。
大切に育ててくれた親が亡くなり、あなたは今、大きな喪失感を抱えていることでしょう。しかし、深い悲しみの中で苦しんでいるとしても、相続手続きを進めていく必要があります。
ゆうちょ銀行は日本全国に支店があり、転勤や結婚などで居住地が変わっても利用できるため、口座を持っている人は多いでしょう。ゆうちょ銀行の相続は他の金融機関と手続きが異なるため、戸惑ってしまうことも少なくありません。
この記事では、ゆうちょ銀行の相続手続きの進め方や、相続手続きをする際に注意すべき3つポイントなどについて解説します。
目次
ゆうちょ銀行の相続は他の金融機関と異なる!3つの特徴
ゆうちょ銀行の相続手続きには、他の金融機関と異なる以下の3つの特徴があります。
- 相続確認表の作成・提出が必要
- 相続手続きの一部をwebで行える相続web案内サービスの利用が可能
- 払戻金の受け取りは代表相続人のゆうちょ銀行口座への振替もしくは現金のみ
以下で、詳しく解説します。
相続確認表の作成・提出が必要
ゆうちょ銀行の相続の特徴として、相続確認表の作成・提出が必要なことが挙げられます。
相続確認表とは、亡くなった人と相続する人との関係や、ゆうちょ銀行との取引内容を確認するための書類で、主な記入項目は以下の5つです。
- 遺言書等の有無
- 亡くなった人(被相続人)の情報
- 相続手続きをする人(代表相続人)の情報
- すべての相続人の情報
- 亡くなった人(被相続人)の口座情報
相続関係や遺言書等の有無等により、相続手続きに必要な書類は異なります。
ゆうちょ銀行では、相続確認表に記載された情報をもとに、それぞれの状況に合わせた必要書類をまとめ、相続手続きをする人に対して個別に案内してくれます。
相続確認表は、ゆうちょ銀行の窓口・ホームページで取得できます。
参考:相続確認表-ゆうちょ銀行 (japanpost.jp)
相続手続きの一部をwebで行える相続web案内サービスの利用が可能
ゆうちょ銀行の相続の特徴として、相続手続きの一部をwebで行える相続web案内サービスの利用が可能なことが挙げられます。
相続web案内サービスは、システムの音声案内・画面案内に従って入力した相続の状況や亡くなった人の家族関係図などにもとづき、相続手続きに必要な書類をインターネット上で案内するサービスです。
相続web案内サービスを利用することで、相続確認表の作成・提出を省略できます。
ただし、亡くなった人がゆうちょ銀行で投資信託の取引をしていた場合など、口座の状況等により相続web案内サービスを利用できない場合があります。
参考:相続Web案内サービスのご案内-ゆうちょ銀行 (japanpost.jp)
払戻金の受け取りは代表相続人のゆうちょ銀行口座への振替もしくは現金のみ
ゆうちょ銀行の相続の特徴として、相続払戻金の受け取りは代表相続人のゆうちょ銀行口座への振替もしくは現金のみであることが挙げられます。
ゆうちょ銀行以外の金融機関の口座を相続払戻金の入金先に指定できません。
ゆうちょ銀行口座への振替で受け取る
ゆうちょ銀行口座への振替での受け取りを選択した場合、代表相続人の通常貯金口座に相続払戻金の全額が入金されます。代表相続人がゆうちょ銀行の通常貯金口座を持っていない場合は、新たに口座を開設する必要があります。
代表相続人以外の相続人の通常貯金口座は入金先に指定できません。
現金で受け取る
現金での受け取りを選択した場合、払戻証書の送付を受けてから、その証書をゆうちょ銀行の窓口に持参して、相続払戻金の全額を現金で受け取る(換金する)ことになります。
ゆうちょ銀行の相続手続きの進め方
ゆうちょ銀行の相続手続きの進め方には、以下の6つのステップがあります。
- 相続を申し出る
- 相続確認表を作成する
- 相続確認表を提出する
- 必要書類を準備する
- 必要書類を提出する
- 相続払戻金を受け取る
以下で、順を追って詳しく解説します。
①相続を申し出る
近くのゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に、名義人が亡くなったこと(相続が開始したこと)を申し出ましょう。
なお、名義人が亡くなったことを申し出た時点で口座の停止設定が行われ、貯金の引き出しや口座自動振替などはできなくなります。
窓口で相続を申し出て、相続確認表をもらいましょう。相続確認表は、ゆうちょ銀行のホームページでも取得できます。
参考:相続確認表-ゆうちょ銀行 (japanpost.jp)
②相続確認表を作成する
相続確認表を作成しましょう。
相続確認表には亡くなった人や相続する人の情報を記入する必要があるため、相続関係が分かる戸籍謄本などを確認しながら記入しましょう。
相続確認表には、把握している口座以外に亡くなった人の口座がないか確認できる、貯金等照会書が付属しています。
相続確認表と合わせて貯金等照会書も記入し、念のため貯金照会を行うことをお勧めします。亡くなった人の財産は、全て相続手続きをする必要があるためです。
貯金照会は無料ですが、その結果判明した口座の残高証明書の発行を希望する場合は、所定の手数料がかかります。
なお、貯金照会で判明した口座についても停止設定が行われるため、判明した後に貯金は引き出せません。
貯金等照会書を提出する際は、以下の書類が必要です。
- 名義人が死亡したことが確認できる戸籍謄本
- 相続人であることが確認できる戸籍謄本
- 相続人本人であることが確認できる本人確認書類
- 相続人の印鑑
③相続確認表を提出する
作成した相続確認表をゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出しましょう。
相続確認表の提出から、約1〜2週間で必要書類の案内が郵送されます。
なお、前述の通り、相続web案内サービスを利用することで相続確認表の作成・提出を省略できます。
➃必要書類を準備する
案内された必要書類を準備しましょう。
相続関係や遺言書等の有無などそれぞれの状況により必要になる書類は異なりますが、標準的な書類は以下のとおりです。
遺言書がない場合
遺言書がない場合に必要な書類の例は、以下のとおりです。
- 亡くなった人の婚姻(未婚の場合は16歳)から死亡までの連続した戸籍謄本
- 亡くなった人の貯金口座の通帳や証書等
- 相続人の印鑑登録証明書
- 相続払戻金を受け取る代表相続人の実印
- 遺産分割協議書(作成した場合)
遺言書がある場合
遺言書がある場合に必要な書類の例は、以下のとおりです。
- 亡くなった人の婚姻(未婚の場合は16歳)から死亡までの連続した戸籍謄本
- 亡くなった人の貯金口座の通帳や証書等
- 遺言書(検認済みの自筆証書遺言、秘密証書遺言を含む)
- 相続人、遺言執行者の印鑑登録証明書
- 相続人、遺言執行者の実印
- 遺言執行者選任審判書(家庭裁判所が遺言執行者を選任した場合)
ゆうちょ銀行の相続手続きの専門部署から送られてくる必要書類の案内には、それぞれの相続状況に合わせた必要書類が記載してあります。
【注意事項】
上記書類は、あくまで標準的な必要書類を示したもので、個々のケースで必ずしも必要になる書類ではありません。上記以外の書類が必要になるケースもあります。
そのため、実際に相続手続きを進める際には、ゆうちょ銀行の相続手続きの専門部署から送られてくる案内をしっかり確認し、案内に従って必要書類を準備しましょう。
不明点があれば、手続きに出向く予定のゆうちょ銀行または案内書面に表示されている専門部署に直接電話をして確認することをお勧めします。
⑤必要書類を提出する
準備した必要書類をゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出しましょう。
戸籍謄本や印鑑証明書などの必要書類は、原本を提出する必要があります。
他の金融機関の相続手続きでも必要となる場合は、書類を返却してほしい旨を窓口で伝えましょう。手続き完了後に郵送で原本を返却してくれるか、その場でコピーを取って、原本を返却してくれます。
⑥相続払戻金を受け取る
相続払戻金を受け取りましょう。
ゆうちょ銀行口座への振替を選択した場合は、不備がなければ、必要書類の提出から約1〜2週間で代表相続人の通常貯金口座に相続払戻金が入金されます(ゆうちょ銀行側の処理状況等によっては、入金までの期間が更に伸びる場合もあります)。
現金での受け取りを選択した場合は、貯金払戻証書が郵送されてきます。受領した貯金払戻証書に記名押印し、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口で現金化(換金)しましょう。
相続払戻金が高額である場合は現金が用意できない可能性があるため、あらかじめ連絡をしてから窓口に行くことをお勧めします。
ゆうちょ銀行の相続手続きをする際に注意すべき3つのポイント
ゆうちょ銀行の相続手続きをする際に注意すべき主なポイントは、以下の3つです。
- 代理人がゆうちょ銀行の相続手続きをする場合は委任状が必要
- ゆうちょ銀行の相続に期限はないが相続税の申告には期限がある
- ゆうちょ銀行に貯金があるか不明なら相続手続きの前に現存調査を
以下で、詳しく解説します。
代理人がゆうちょ銀行の相続手続きをする場合は委任状が必要
ゆうちょ銀行の相続手続きをする際に注意すべきポイントとして、代理人がゆうちょ銀行の相続手続きをする場合は委任状が必要であることが挙げられます。
相続人が窓口に行くことが難しい場合は、代理人による手続きも可能です。
代理人に手続きを委任する際は、相続手続きに必要な書類に加えて委任状が必要になるため注意しましょう。委任状には、代表相続人本人の署名・実印での押印が必要です。
委任状はゆうちょ銀行所定の書式があり、ゆうちょ銀行または郵便局の郵便窓口のほか、ゆうちょ銀行のホームページでも取得できます。
参考:委任状について−ゆうちょ銀行 (japanpost.jp)
ゆうちょ銀行の相続に期限はないが相続税の申告には期限がある
ゆうちょ銀行の相続手続きをする際に注意すべきポイントとして、ゆうちょ銀行の相続に期限はないが相続税に申告には期限があることが挙げられます。
相続税の申告期限は、相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
申告期限を過ぎた場合、無申告加算税や延滞税がかかる可能性があり、相続税に関する控除が利用できなくなるなどの不利益が生じてしまいます。
ゆうちょ銀行の相続手続きに期限は設けられていませんが、相続税の申告期限が到来するおそれがあるため、遺産分割協議が難航することが予想される場合は、早い段階で弁護士への相談・依頼を検討することをお勧めします。
ゆうちょ銀行に貯金があるか不明なら相続手続きの前に現存調査を
ゆうちょ銀行の相続手続きをする際に注意すべきポイントとして、ゆうちょ銀行に貯金があるか不明なら、相続手続きの前に貯金の有無を調査(現存調査)することが挙げられます。
ゆうちょ銀行の口座の有無を把握していない場合は、相続手続きに着手する前(相続確認表の提出前)でも、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に、貯金等照会書を提出することで、亡くなった人の貯金があるかどうかを調査してもらえます。
貯金があれば残高証明書を発行してもらえます。
なお、貯金の調査は無料ですが、残高証明書の発行には所定の手数料が必要です。
貯金の調査を依頼するには、以下の書類が必要です。
- 名義人が死亡したことが確認できる戸籍謄本
- 相続人であることが確認できる戸籍謄本
- 相続人本人であることが確認できる本人確認書類
- 相続人の印鑑
参考:現存調査(貯金の有無の調査)-ゆうちょ銀行 (japanpost.jp)
ゆうちょ銀行を含む預貯金等の相続手続きは弁護士にも依頼できる
ゆうちょ銀行を含む預貯金等の相続手続きは、弁護士にも依頼できます。
相続手続きに関する調査や必要書類の収集は、あなたが考えている以上に時間や労力が必要になるでしょう。
弁護士に依頼すると煩雑な手続きを任せられるため、あなたの日常に支障をきたさずに済みます。
ネクスパート法律事務所では、預貯金・株・投資信託・保険等の金融資産の解約手続きのご依頼を承っております。
相続手続きをしなければいけないが時間がない、相続関係が複雑で戸籍の収集が難しいなどでお困りでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
ゆうちょ銀行の相続手続きは、他の金融機関と異なるため、難しく感じることもあるでしょう。
相続手続きについて分からないことがあれば、ゆうちょ銀行の窓口で相談することをお勧めします。ゆうちょ銀行のホームページにて、相談日時を事前に予約できる予約サービスが利用できますので、ぜひ活用してみてください。
遺産分割協議が必要なのに、財産調査や煩雑な書類収集がスムーズに進まずお困りでしたら、弁護士への依頼を検討することをお勧めします。
弁護士であれば、財産調査や書類収集をした上で、遺産分割協議も一任できるため、あなたの負担が最小限で済むでしょう。必要書類を返却してくれる金融機関を事前に確認するなど計画的に手続きを行えるため、早期の相続手続き完了も望めます。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。