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遺留分の計算方法や具体的な手順|計算例を用いてわかりやすく解説!

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に最低限保証される相続財産の取り分です。

遺言や生前贈与により遺留分を侵害されていることが判明した場合は、遺留分侵害額請求権を行使できます。

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遺留分が侵害されているかどうかを判断するためには、自己の遺留分額を求めなければなりません。算定した遺留分額をもとに遺留分侵害額を計算することで請求可能な金額を導けます。

この記事では、遺留分額や遺留分侵害額の計算方法や具体的な手順をわかりやすく説明します。

 

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遺留分の計算式

ここでは、遺留分の計算式を紹介します。

遺留分の額は、以下の計算式で求められます。

遺留分額=遺留分算定の基礎となる財産額×個別的遺留分

遺留分を計算するための具体的な手順

ここでは、遺留分を計算するための具体的な手順を解説します。

遺留分権利者を確定する

遺留分権利者が誰であるのかを確定します。

民法は、遺留分権利者について、兄弟姉妹以外の相続人と規定しており、配偶者、子、直系尊属に遺留分が認められています。

相続放棄、相続欠格・廃除によって相続権を失った人は遺留分権も失います。相続放棄の場合は次順位相続人が、相続欠格・廃除の場合は代襲相続人がそれぞれ遺留分権を取得します。

遺留分の割合を確認する

遺留分権利者が確定したら、遺留分の割合を確認します。

遺留分割合は、遺留分権利者全員に留保される相続財産に対する割合としての総体的遺留分と、総体的遺留分に対する各遺留分権利者の取得割合としての個別的遺留分とに分けられます。

総体的遺留分

総体的遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1であり、その他の場合は2分の1です。

個別的遺留分

個別的遺留分は、遺留分権利者が複数いる場合に、総体的遺留分に法定相続分を乗じた割合です。

例えば、配偶者と子3人が相続人の場合の個別的遺留分は、以下のとおりです。

配偶者の個別的遺留分=総体的遺留分(1/2)×法定相続分(1/2)=1/4

3人の個別的遺留分=総体的遺留分(1/2)×各人の法定相続分(1/2×1/3)=1/12

基礎となる財産を確定する

遺留分を算定するためには、基礎となる被相続人の財産を確定しなければなりません。

遺留分額を算定するための基礎となる財産は、相続開始時に被相続人が有していた財産(遺贈を含む)の価額に、贈与した財産の額を加えて、その中から債務全額を控除したものです。

計算式は以下のとおりです。

遺留分算定の基礎となる財産額=被相続人が相続開始時に有していた財産の価額+贈与財産の価額-相続債務の全額

遺留分侵害額請求の対象である遺贈、死因贈与、生前贈与の有無を調査し、その財産価格の評価を経て、控除されるべき債務を確認します。

遺贈

遺贈の法的性質ないし効力については争いがありますが、いずれにせよ相続開始時に有していた財産に変わりはないので、遺贈は遺留分算定の基礎となる財産に含みます。

死因贈与

死因贈与は、贈与契約自体は被相続人の生前になされますが、その効力は遺贈に関する規定が準用されるため、遺留分の算定にあたっては死因贈与を遺贈として扱うべきであるというのが多数説です。

生前贈与

遺留分算定の基礎となる財産に算入される贈与は以下のとおりです。

  • 相続開始前1年間にされた贈与
  • 遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与
  • 贈与とみなされる不相当な対価の有償行為
  • 相続開始前10年間にされた特別受益に該当する贈与
  • 贈与とみなされる無償処分(例 貸付金の免除)

なお、特別受益に持ち戻し免除の意思表示がある場合も、その贈与は遺留分算定の基礎となる財産に加算されます。

基礎となる財産を評価する

遺留分算定の基礎となる財産の範囲が確定したら、その財産の価値を評価します。

評価方法

基礎となる財産の評価は、客観的基準に従ってなされます。通常は、目的物の交換価値(取引価格)によります。

不動産

不動産を評価する方法には、土地の場合は公示価格、路線価、固定資産税評価額など様々な方法があります。不動産会社に査定書を作成してもらい、その査定額を基準にすべきと主張されることもあります。

実務上は、これらの評価方法について、当事者が合意すれば、その評価額・評価方法に基づいて価額を算定します。

相続開始時点で抵当権が設定されている不動産は、当該不動産の価格から被担保債権額を控除したものが評価額となります。

当該抵当権が相続債務について設定されたものである場合は、基礎財産の算定にあたっては、被担保債権を相続債務として独立して控除するのではなく、抵当不動産の評価額を、当該債務額を差し引いたものとすべきであるとされています。

預貯金

預貯金は金額が明らかなので、残高証明書により相続開始時の残高を基準に評価をします。

現金

現金は、現存する額面をそのまま算入します。

生前贈与された現金について、その後に貨幣価格の変動があった場合には、相続開始時の貨幣価値に換算した価格をもって評価します。

株式

上場株式の場合は取引相場があるので、相続開始時の取引価格を基準に評価します。

非上場株式の場合は、以下のいずれかにより評価する方法が考えられます。

  • 会社法上の株式買取請求における価格の算定方法(純資産価格方式、収益還元方式等)
  • 相続税を算定する際の方式(財産評価基本通達)

実務上は、これらの方式を参考に、当事者間での合意を図ります。

債権

債権は、債務者の資力や担保の有無などを具体的に斟酌して評価します。債務者が十分な資力を有し、かつ、これを担保する抵当権等が存在する場合には債権額と同額程度の評価となります。

ただし、担保物権が設定されている場合でも被担保債権額を限度として評価しなければならないため、担保物権の価格は算入しません。

回収不能な債権は遺留分算定の基礎となる財産から除外します。

その他

個々の動産・不動産または権利が集合して経済上1個の営業または設備を形成する場合には、個々の物または権利の価額を合算するのではなく、これらの物または権利は一体として評価します。

評価の基準時

評価の基準時は、相続開始時、つまり被相続人の死亡時とされています。

遺留分権が具体的に発生して遺留分の範囲が確定するのは相続開始時だからです。

過去の贈与は、目的財産が受遺者の行為により滅失したり価格の増減があったりしても、原状のままあるものとみなして相続開始時を基準に評価します。

控除すべき債務を確認する

遺留分算定の基礎となる財産額を算定する際は、相続債務を相続財産から控除します。

これは、遺留分制度が、相続人が現実に取得する価額を基礎として一定割合を留保する制度だからです。

債務の範囲

相続財産から控除すべき債務は、被相続人が負担していた私法上の債務だけでなく、公法上の債務(公租公課、罰金等)も含みます。

以下の費用は、相続財産の負担となるべき費用であるため、遺留分算定の基礎となる財産からは控除できません。

  • 相続税
  • 相続財産管理費用等
  • 遺言執行に関する費用

保証債務の取り扱い

保証債務は、債務の履行が不確実な場合や保証人が複数存在する場合もあるため、遺留分算定の基礎となる財産から控除すべき債務に含まれると解する必然性がありません。

そのため、主たる債務者が無資力で求償権の行使による補てんの実効性がない場合に限り、相続財産から控除します。

遺留分侵害額の計算式と具体的な計算例

ここでは、遺留分侵害額の計算式と具体的な計算例を紹介します。

遺留分侵害額の計算式

遺留分侵害額の算定は、以下の計算式により行います。

遺留分侵害額=(遺留分額)-(遺留分権利者が相続によって得た財産額-相続債務負担額)-(特別受益額+遺贈額)

上記計算結果がゼロよりも大きい場合は、遺留分侵害があると考えられます。

具体的な計算例1|遺言により相続人の1人がすべての財産を取得した場合

<事例>

被相続人Aは、Aの有する財産全部を長男Bに相続させる旨の公正証書遺言を残して死亡しました。Aの相続人には、長男Bのほか長女Cがいます。

Aは、相続開始時に不動産を含む積極財産として3億円、消極財産(債務)として28,000万円の各財産を有していました。

本件遺言により、遺産全部の権利が相続開始時に直ちにBに承継されました。

CがBに対して遺留分侵害額請求権を行使する場合、Cの遺留分侵害額はいくらになるでしょうか。

<計算方法>

相続人の1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がなされた場合は、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないとされています。

本件遺言によりBは、相続債務をすべて負担することになるため、Cの遺留分侵害額の算定では、遺留分額に相続債務の額を加算できません。

Cの遺留分侵害額は、以下のとおりです。

(被相続人が相続開始時に有していた資産3億円-28,000万円)×(総体的遺留分割合1/2×法定相続分1/2)=500万円

具体的な計算例2|相続人の1人に多額の生前贈与がなされた場合

<事例>

被相続人Aの相続人として、妻Bと長男C、次男Dがいます。

相続財産として評価額6,000万円の土地建物と預貯金2,000万円があります。

Aは、土地建物をBに、預貯金をCとDにそれぞれ半分ずつ相続させる遺言を作成していました。

Cは、Aが亡くなる5年前に自宅購入資金として2,000万円の贈与を受けていました。

Dが遺留分侵害額請求権を行使する場合、遺留分侵害額はいくらになるでしょうか。

<計算方法>

Aが相続開始時に有していた資産として土地建物、預貯金があります。

Cが自宅購入資金として贈与を受けた2,000万円は、特別受益としての贈与にあたるので、Aが亡くなる5年前に受けた贈与も遺留分算定の基礎となる財産に含みます。

総体的遺留分は2分の1、Dの法定相続分は4分の1なので、Dの遺留分額は、以下のとおりとなります。

(被相続人が相続開始時に有していた資産6,000万円+2,000万円)+(贈与財産の価額2,000万円)×(総体的遺留分割合1/2×法定相続分1/4)=1,250万円

Dが相続によって得た財産額は、預貯金の半分なので1,000万円です。

よって、Dの遺留分侵害額は以下のとおりとなります。

遺留分額(1,250万円)-Bが相続によって得た財産額(1,000万円)=250万円

具体的な計算例3|相続人以外の人に負担付贈与がなされた場合

<事例>

被相続人Aの相続人は、妻Bのみです。

相続財産は、預貯金1,000万円のみでした。Aは、亡くなる3か月前に知人Cに対し、4,000万円をNPO法人に寄付することを条件に5,000万円を贈与していました。

BがCに対して遺留分侵害額請求権を行使する場合、Bの遺留分侵害額はいくらになるでしょうか。

<計算方法>

AのCに対する贈与は、亡くなる3か月前になされたものなので、持ち戻しの対象となります。いわゆる負担付贈与にあたります。

この場合、遺留分算定の基礎となる財産額の算定では、贈与財産額全額を算入します。

Bの遺留分割合は2分の1なので、Bの遺留分額は以下のとおりです。

1,000万円+5,000万円)×1/23,000万円

Bは預貯金1,000万円を相続しているので、遺留分侵害額は以下のとおりとなります。

遺留分額(3,000万円)-Bが相続によって得た財産額(1,000万円)=2,000万円

Bは、Cに対し2,000万円の支払いを求めたいところですが、Cが遺留分侵害額請求を受ける範囲は、贈与財産額から引受債務額を差し引いた額に留まります。

したがって、BはCに対し、以下のとおり、1,000万円のみ請求できます。

贈与財産額5,000万円-引受債務額4,000万円=1,000万円

 

遺留分侵害額の計算方法|相続債務がある場合

ここでは、相続債務がある場合の遺留分侵害額の計算方法を解説します。

<事例>

被相続人Aに、相続人として妻Bと長男Cがいます。

相続財産として預貯金4,000万円がありますが、Aには過去の取引によって負った債務が1,000万円ありました。

Cは、Aが亡くなる半年前に自宅購入資金として総額5,000万円の贈与を受けていました。

上記預貯金は、Aの遺言によりBCにそれぞれ2,000万円ずつ分配されました。

BがCに対して遺留分侵害額請求権を行使する場合、Bの遺留分侵害額はいくらになるでしょうか。

<計算方法>

Cに対する5,000万円の贈与は持ち戻しの対象となり、1,000万円の債務は遺留分算定の基礎となる財産から控除されます。

よって、遺留分算定の基礎となる財産の額は、以下のとおりです。

4,000万円+5,000万円-1,000万円=8,000万円

Bの遺留分割合は、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(2分の1)の4分の1となるため、Bの遺留分額は、以下のとおりとなります。

8,000万円×1/42,000万円

Bの遺留分侵害額の算定にあたっては、Bの遺留分額からBが相続により得た財産を控除し、Bが負う相続債務を加算します。

Bは、4,000万の預貯金のうち2,000万円を得ており、相続債務の2分の1である500万円を負担します。

これらを遺留分侵害額の計算式に当てはめると、以下のとおりとなります。

遺留分額(2,000万円)-{Bが相続によって得た財産額(2,000万円)-相続債務負担額500万円}=500万円

この事例のBの遺留分侵害額は500万円です。

まとめ

遺留分額や遺留分侵害額の計算方法を紹介しましたが、実際の計算は複雑で法律の知識が不可欠です。

遺留分侵害額請求は、遺言や贈与により遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内に行う必要があるので、少しでも難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。

これから遺言書の作成や生前贈与を検討している方は、遺留分を侵害しないよう注意することで、遺された家族のトラブルを回避できる可能性があります。

遺言や遺留分に関してお困りの方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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