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相続財産目録とは?作り方・見本・注意点を解説

相続財産目録(そうぞくざいさんもくろく)とは、財産と負債を一覧化したものです。

相続財産目録を作成するメリットは、以下のとおりです。

  • 相続財産の隠匿が難しくなる
  • 遺産分割をスムーズに進められる
  • 相続トラブルを防止できることがある

この記事では、相続財産目録を作成するメリットや作成方法を解説します。

 

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相続財産目録の見本

相続財産目録は、財産の種類ごとに誰が見ても財産の状況をわかりやすく正確に把握できるように作成することがポイントです。以下は相続財産目録の見本です。

金融資産

種類 金融機関名 支店名 種類 口座番号 銘柄等 相続税評価額
預金 ○○銀行 〇支店 普通 ○○○○ 〇〇円
預金 ○○信用金庫 〇支店 定期 ○○○○ 〇〇円
株式 ○○証券 〇支店 特定 ○○○○ 〇社株式 〇〇円
投資信託 ○○証券 〇支店 特定 ○○○○ 〇〇ファンド 〇〇円

不動産

種類 所在 地目・構造 権利 用途 地積・床面積 相続税評価額
土地 ○県〇市〇町〇番〇 宅地 所有権 自用 〇㎡ 〇〇円
土地 ○県〇市〇町〇番〇 宅地 所有権 貸宅地 〇㎡ 〇〇円
建物 ○県〇市〇町〇番〇 木造瓦葺

2階建

所有権 自用 1階〇㎡、

2階〇㎡

〇〇円

保険

種類 保険会社 保険番号 保険金・返戻金 受取人
生命保険 ○○生命保険 証券番号○○ 〇〇円 〇野〇子

負債

種類 債権者 債務残高 返済条件 その他
事業ローン ○○銀行 ○○円 月〇〇円、元利均等 保証人無し

会員権

種類 名称 所在 会員番号 預託金額
ゴルフ会員権 ○○カントリーリークラブ ○県〇市〇町〇〇 ○○ 〇〇円

その他の動産

種類 名称 所在 価額 備考
書画 ○○作〇〇 自宅 ○○円 価額は○○骨董店鑑定評価額による

相続財産目録で一覧化が必要な理由

相続財産目録を作成しておくべき理由を整理しておきます。

相続対策に役立つ

相続財産目録を作成することは、相続対策に役立ちます。

相続対策には、以下3点が挙げられます。

  • 相続人同士の円満な遺産分割
  • 相続税の軽減
  • 相続税納税資金の準備

いずれの相続対策も、まずは相続財産目録を作成して財産の全体像を把握することから始めます。そして以下のような観点から相続財産の分け方をシミュレーションします。

  • 相続人同士で円満に分割できるか
  • 遺族、特に配偶者の老後のために必要な資産はどのくらいか
  • 現時点で自分が死亡したら、どのくらいの相続税が発生するか
  • 現金や預金の範囲内で相続税を支払えるか
  • 生前贈与や不動産の活用で、相続税を軽減できるか

相続財産目録を作成し現状を分析すると、納税資金の過不足や各相続人への相続割合のバランスが把握できます。これが具体的な相続対策の第一歩になります。

相続財産調査にかかる相続人の手間が省ける

生前に自身が保有する財産目録を作成しておけば、相続財産調査にかかる相続人の手間が省けます。

相続が発生すると、その翌日から10ヶ月以内に相続人は誰が・何を・どの割合で相続するか相続人同士で決め(遺産分割協議)、名義変更し相続税の申告・納税しなければなりません。

この10ヶ月間は、相続人にとって長いようで実はかなり短いといえます。

特に相続人にとって手間となりがちなのが、財産調査です。財産調査は平日に役所や金融機関で行うものが多く、相続人の財産状況が何もわからない状態から始めたら10ヶ月では終わらない場合があります。

また、相続人の財産調査に漏れがあり税務調査などで発見され財産隠しと判断されると、重加算税が課税されるうえに相続税額控除などが使えなくなるおそれがあります。

相続が発生した時点で、それまで財産を管理していた本人はいません。

生前に相続財産目録を作成して相続に備えておくことで、相続人の手間を省くことにつながります。

弁護士コメント:すでに相続が発生していて、これから財産調査をされる方は一度ご相談ください。相続財産を正確に把握しないと、相続放棄するかどうか判断するのが困難です。

遺産分割協議の最中にあらたな財産が見つかると、話し合いがやり直しになる恐れがあります。財産調査は弁護士にお任せください。

 

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遺言書作成に必要

生前に遺言書を作成しておくと、その内容に遺留分(法律で決められた遺産の最低限の取り分)の侵害がないかぎり、相続人同士で争ことなく相続財産を円満に分けることが期待できます。

遺言書では、どの財産を・誰に・どのくらい相続させるか明記したうえで相続財産目録を添付することが一般的です。

遺言書に相続財産目録を添付することが望ましい背景は、本文で相続させる財産の記載に漏れがあると、漏れた財産について遺産分割協議が必要になるためです。これにより相続人の手間が増えますし、遺言書の記載に漏れた財産をめぐり相続人間でトラブルになる可能性があります。

このような事態を防ぐために、遺言書を作成するときは相続財産目録を作成し、相続させる財産の漏れがないようにすることがお勧めです。

遺産分割協議に必要

遺産分割協議は、すべての相続人に相続財産すべてが正確に開示されている前提で進めます。

このとき、相続財産を口頭で開示すると、他の相続人に正確な財産状況が伝わらないだけではなく、財産隠しを疑われる可能性があります。

相続財産目録を作成し相続財産の状況を明らかにしておくことで、このようなトラブルの防止につながります。

相続放棄や限定承認の検討に役立つ

相続では、財産だけではなく借金などの負債も引き継ぎます。もし被相続人の財産よりも負債が多い場合、相続放棄または限定承認することで負債を相続せずにすみます。

相続財産目録を作成しておくことにより、被相続人の財産だけではなく負債の状況も明らかになります。相続財産目録は相続放棄や限定承認をするか・しないか検討するときに役立ちます。

相続財産目録で一覧化すべき財産

相続財産目録で一覧化すべき財産と、それぞれの財産について記載すべき内容を説明します

金融資産

金融資産には、預貯金のほか株式や投資信託などの有価証券も含まれます。

金融機関と取扱支店名の名称・口座番号・金融商品の種類と銘柄名・価額を記載してください。

不動産

不動産は、土地と建物それぞれについて以下を記載します。

  • 土地…所在地・地目・地番・権利の種類・地積(面積)
  • 建物…所在地・家屋番号・構造・権利の種類・床面積

上記の情報は、登記識別情報(権利証)や登記簿謄本、固定資産税・都市計画税納税通知書などから調べます。

保険

保険会社の名称および契約の種別を記載してください。

会員権

ゴルフ会員権やリゾート会員権などは、場所や会員権の種類を記載してください

負債

負債は金融機関からの借入金のほか、賃貸不動産の預かり敷金や保証金も該当します。

その他の動産

家財道具、美術品、無形固定資産など、遺産分割の対象や相続税の課税対象となる財産のすべてを記載します。

相続財産目録の作り方

相続財産目録の作り方をご案内します。

  • 財産調査する
  • 評価額を記載する
  • 自筆証書遺言に添付するものには押印を忘れず
  • 名義預金に注意

財産調査する

相続財産目録を作成するうえで、財産調査は最も重要です。

生前に相続財産目録を作成する方は、財産の全容を把握しておかないと適切な相続対策ができません。また、財産調査により今まで把握していなかった財産を見つける場合があります。

特に相続発生後の財産調査は、漏れが無いようにしておかなければなりません。遺産分割協議や相続税の申告・納付後に新たな財産が見つかると、その財産についての新たな遺産分割協議や相続税の修正申告が必要になることがあります。

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評価額を記載する

相続財産目録には、作成時点の評価額を記載します。

このとき、評価額は相続税の計算基礎である相続税評価額を用いるのが一般的です。

各財産の相続税評価額は、国税庁の財産評価基本通達による方法で算出します。

金融資産

  • 預貯金…預入元本+経過利息源泉徴収税額
  • 投資信託…死亡時の基準価額
  • 上場株式…死亡日の終値・死亡日が属する月中・その前月・その前々月の終値の月平均額のうち最も低い価額
  • 未上場株式…類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式
  • 公社債…発行価額+経過利息源泉徴収税額

不動産

  • 自分で使っている土地(自用地)…市街地およびその周辺は路線価方式、それ以外は倍率方式
  • 他人に貸している土地(貸宅地)…自用地評価額×(1-借地権割合)
  • 貸家(アパートなど)が建っている土地…自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
  • 借りている土地の使用権(借地権)…自用地の評価額×借地権割合
  • 自用の建物…固定資産税評価額×0
  • 他人に貸している建物…固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

会員権

取引相場の70%、未上場株に準じた評価方法、預託金の額など

保険

死亡保険額、満期・解約時の返戻金

その他の動産

売買実例価額、鑑定価額など

上記のように相続税評価額の計算は専門的な知識が必要になるため、税理士に依頼することも一案です。

自筆証書遺言に添付するものには押印を忘れず

自筆証書遺言に添付する財産目録は、パソコンによる作成のほか、預金通帳や不動産権利証などのコピーを添付することで財産目録とする方法が認められています。

ただし、相続財産目録を自筆以外で作成する場合は相続財産目録の前ページにわたり自筆の署名・押印が必要です。

名義預金に注意

相続人の名義で作成した預金口座にある残高、いわゆる名義預金は被相続人の相続財産と扱われ、相続税の課税対象になります。親族名義の証券会社口座の預かり資産も同様です。

もし、名義預金(有価証券)を放置してあとから税務署に発覚した場合、ペナルティとして税務署から過少申告加算税などが課税される可能性があります。

したがって、このような資産は相続財産目録に記載しておく必要があります。

相続財産目録を作成したあとの注意点

生前に相続財産目録を作成した場合、その後は時間の経過に伴い預貯金が増減するだけではなく、マーケットの変動により不動産や有価証券の評価額が変動することがあります。

これにより当初作成した遺産分割案に遺留分(各相続人に法律で保障された遺産の最低の取り分)侵害などトラブルの原因が発生することになりますし、相続税対策も見直さなければならなくなることがあります。

相続財産目録を作成したあとは、財産や相続人の状況に大きな変動があったときはもちろんのこと、定期的に評価額を見直すようにしてください。

相続財産目録の作成は弁護士に相談

相続財産目録を作成するうえで最も重要で、かつ最も手間がかかるのが財産調査です。

財産が多い場合や仕事の都合などで調査に時間や労力を割けない場合は、相続財産調査を弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士には依頼者に代わり財産を調査する権限があります。相続財産調査に知見と経験のある弁護士に依頼すれば、漏れのない正確な財産調査が期待できます。

また、弁護士には相続財産目録の作成を依頼することもできます。特に財産が多い方にとって相続財産目録の作成は手間になりますので、相続財産の調査および評価額の算定と合わせて作成を依頼することがお勧めです。

まとめ

生前や相続発生後によらず、相続財産目録を作成しておくことには多くのメリットがあります。

弁護士に依頼し、正確な相続財産目録を作成することをお勧めします。

この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)

はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。

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