遺産分割で弁護士を立てるべきケースと依頼する5つのメリットを紹介

身近な人が亡くなると、亡くなった人(被相続人)の財産(遺産)を引き継ぐ相続が発生します。
遺言書がなく、財産をもらう人(相続人)が複数名いる場合、遺産を分割する必要があります。
しかし、どのように分割するか相続人の間で意見が食い違い、トラブルに発展するケースは少なくありません。
この記事では、遺産分割で弁護士を立てるべきケースや弁護士に依頼するメリット、弁護士費用について紹介します。
被相続人が残してくれた遺産を円滑に相続するために、この記事をお役立ていただければ幸いです。
目次
遺産分割は弁護士なしでも大丈夫?弁護士を立てるべきケースは?
遺産分割は、弁護士なしで相続人だけでも対応できます。
しかし、たとえこれまで仲が良かった兄弟であっても、自分の取り分を増やすことだけを考えて無理な主張を押し通そうとするかもしれません。不仲であれば、そもそも話し合いができないことも考えられます。
以下のようなケースに該当する場合は、積極的に弁護士への依頼を検討することをお勧めします。
- 相続人間での話し合いに不安やストレスを感じる
- 相続人の人数や相続財産が多い
- 相続財産の全容が把握できない
- 相続人の中に重度の認知症の人がいる
- 相続人の中に未成年者がいる
- 相続人の中に連絡がつかない・行方不明の人がいる
- 他の相続人による遺産の使い込みが疑われる
- 特別受益や寄与分等の法律上の主張をしたい
- 相続人の一部に弁護士がついた
遺産分割を弁護士に依頼する5つのメリット
遺産分割を弁護士に依頼する主なメリットとして、以下の5つが挙げられます。
以下で詳しく紹介します。
相続人・相続財産を正確に調査してもらえる
遺産分割を弁護士に依頼すれば、相続人・相続財産を調査してもらえます。
相続人が多い、前妻の子どもがいるなどの場合は、相続関係が複雑になりがちです。
相続人を確認するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得して子どもの有無や人数を確認する必要がありますが、この作業は簡単ではありません。
相続人が多い場合、取得しなければならない戸籍の数も増えるため、そのぶん時間と労力がかかります。戸籍を正確に読み解くのは難しく、相続人を見落としてしまうおそれもあります。
相続財産についても、被相続人のすべての財産を洗い出す必要があるため、地道に調査する必要があります。
手続きが複雑な金融機関も多いため、想像以上に困難な作業となるでしょう。どのような財産があるかわからない、どの金融機関に預貯金があるかわからないなどの場合は、調査をしようにも何から手をつけていいかわからず困惑してしまうかもしれません。
弁護士に依頼すれば、相続人や相続財産の調査も任せられるため、安心して相続手続きを進められるでしょう。
相続財産をどのように分割すべきか適切なアドバイスがもらえる
遺産分割を弁護士に相談すれば、相続財産をどのように分割すべきか適切なアドバイスをもらえます。
現金や預貯金などの分割しやすい財産は、公平に分けやすいです。しかし、分けるのが難しい不動産や株式などが含まれている場合、どのように分割すべきか悩むこともあるでしょう。
遺産分割方法は、主に現物分割・換価分割・代償分割・共有分割の4種類があり、相続人の状況や財産の種類に応じて適切な方法を選択して分割します。
弁護士に依頼すれば、相続人の数や相続財産の種類に合った分割方法をアドバイスしてもらえるため、相続人全員が納得できる分割がしやすいでしょう。
弁護士が窓口となるため負担が最小限で済む
遺産分割を弁護士に依頼すれば、弁護士が窓口となるため負担が最小限で済みます。
相続人が多い場合、話し合いがスムーズに進まないケースも多くみられます。話し合いが長引けば、貴重な時間が無駄になるだけでなく、精神的な疲労も蓄積されることが予想されます。
弁護士に依頼すれば、弁護士が窓口となるため、相続人同士の話し合いを避けられます。話し合いが難航してしまっても、あなたにかかる負担は最小限で済むでしょう。
調停・審判を含めた遺産分割に関するすべての手続きを任せられる
遺産分割を弁護士に依頼すれば、調停・審判を含めた遺産分割に関する手続きを任せられます。
相続人同士で話し合ったが合意ができない、そもそも話し合いに応じてくれない場合、調停や審判を利用して遺産分割をすることになるでしょう。
調停となった場合、管轄の家庭裁判所で調停委員を交えて分割方法について話し合い、分割方法を決めます。調停でも合意できなければ、裁判官が分割方法を決める審判を行うことになります。
弁護士であれば、調停・審判となった場合も代理人として行動できます。
遺産分割後のトラブルを防ぎやすい
遺産分割を弁護士に依頼すれば、遺産分割後のトラブルを防ぎやすいです。
遺産分割協議が成立したにもかかわらず、「やっぱり親の財産は長男が多くもらうべきだ」「遺産分割をやり直したい」など、無茶な要求をされてトラブルになるケースは少なくありません。遺産分割協議成立後に、相続人のひとりが遺産を隠していたことが判明するケースもみられます。
弁護士に依頼すれば、法律に則って遺産分割を進められるため、不当な言い分に対して正しく反論できます。相続人・相続財産も正確に調査してもらえるため、隠された遺産も明らかになるでしょう。
弁護士のサポートを得ることで、遺産分割後のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
遺産分割にかかる弁護士費用の種類と相場
遺産分割にかかる弁護士費用の主な種類として、以下の5つが挙げられます。
- 法律相談料
- 着手金
- 報酬金
- 手数料
- 実費・日当
それぞれの費用について、相場を交えて紹介します。
法律相談料
法律相談料は、弁護士に依頼する前に法律相談をした際にかかる費用です。一般的に、相談後に支払います。
法律相談料の相場は、30分につき5000円~1万円程度です。
初回の相談料を無料にしている事務所もあります。
着手金
着手金は、弁護士に依頼した際にかかる費用です。
思い通りの結果を得られなかった場合、途中で弁護士との契約を解除した場合も、基本的に返金されません。
それぞれの法律事務所や相続財産の金額により大きく異なりますが、遺産分割協議の交渉代理を依頼する場合の着手金の相場は、20〜30万円程度です。
なお、調停・審判など裁判手続きに移行する場合は、追加着手金が必要になる事務所もあります。
報酬金
報酬金は、事件が終了した際にかかる費用です。
弁護士に依頼した事件の終了時に得られた経済的利益を基準として、それぞれの法律事務所の報酬基準に従って算出されます。
それぞれの法律事務所により大きく異なりますが、遺産分割協議の交渉代理を依頼する場合の報酬金の相場は、得られた経済的利益の10〜20%程度です。
弁護士会の旧報酬基準を採用している法律事務所の報酬金を紹介しますので、参考にしてください。
手数料
手数料は、弁護士に書類作成などの事務を依頼した際にかかる費用です。
遺産分割協議書の作成、相続放棄・限定承認の申立てなど、依頼内容ごとに手数料額を定めていることが一般的です。
相続財産の評価額や分割方法によって異なりますが、遺産分割協議書の作成を依頼する場合の手数料の相場は、10〜30万円程度です。
実費・日当
実費は、弁護士が受任した事件を処理するために実際にかかった費用です。
具体的には、次の費用などが挙げられます。
- 戸籍謄本などの取り寄せのための定額小為替代
- 鑑定費用
- 相手方とのやり取りにかかる通信費
- 裁判所に納める印紙代・郵便切手代
日当は、弁護士が遠方へ出張する際にかかる費用です。遠方の裁判所に出廷する場合などに発生するケースが多いです。
それぞれの法律事務所により異なりますが、日当の相場は1時間あたり1~3万円程度です。
遺産分割を弁護士に依頼した場合の費用シミュレーション|ケース別で紹介
遺産分割を弁護士に依頼した場合の費用シミュレーションを、以下の2つのケースに分けて紹介します。
- 遺産分割協議を依頼し協議が成立したケース
- 遺産分割協議を依頼したがまとまらず調停で成立したケース
遺産分割にかかる弁護士費用の参考にしてください。
遺産分割協議を依頼し協議が成立したケース
弁護士に遺産分割協議を依頼し協議が成立したケースとして、以下の2つの場合の相場に基づく弁護士費用を紹介します。
経済的利益が1,000万円の場合
得られた経済的利益が1,000万円の場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
経済的利益3,000万円
得られた経済的利益が3,000万円の場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
遺産分割協議を依頼したがまとまらず調停で成立したケース
弁護士に遺産分割協議を依頼したがまとまらず調停で成立したケースとして、以下の2つの場合の相場に基づく弁護士費用を紹介します。
経済的利益1,000万円
得られた経済的利益が1,000万円の場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
経済的利益3,000万円
得られた経済的利益が3,000万円の場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。
遺産分割を弁護士に依頼する際に考慮すべき2つのこと
遺産分割を弁護士に依頼する際に考慮すべき主なこととして、以下の2つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
遺産分割にかかった弁護士費用は原則として自己負担になる
遺産分割にかかった弁護士費用は、原則として自己負担になります。
弁護士は依頼した人の代理人であり、相続人全員の代理人ではないためです。
たとえ他の相続人によるトラブルが原因で弁護士に依頼したとしても、他の相続人に弁護士費用の負担を強制できません。
弁護士費用は自己負担になることを考慮した上で、弁護士への依頼を検討しましょう。
遺産分割にかかった弁護士費用は相続税から控除できない
遺産分割にかかった弁護士費用は、相続税から控除できません。
遺産分割にかかる弁護士費用は、相続開始後に発生するためです。
相続税を計算する際に控除の対象となるのは、相続開始前までに発生していた費用です。具体的には、葬儀費用や未払いの医療費・公共料金・税金などが挙げられます。
弁護士費用は相続税から控除できないことを考慮した上で、弁護士への依頼を検討しましょう。
まとめ
大切な人が亡くなり悲しみに暮れていることとお察ししますが、身近な人との別れは相続の始まりでもあります。
遺産を相続する際は、相続人の間でトラブルが起こりやすいです。遺産分割について揉めて親族との関係が悪化することのないよう、弁護士への依頼を積極的に検討することをお勧めします。
遺産分割についてお悩みなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。初回相談は原則30分無料のため、費用を気にせずご相談いただけます。
相続問題に精通した弁護士が、あなたを全力でサポートいたします。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。