代襲相続がある場合の相続登記に必要な書類や注意点ついて解説

本来、相続人になるべき被相続人の子どもまたは兄弟姉妹が、被相続人よりも先に死亡していたり、相続権を失っていたりする場合、代襲相続が起きます。代襲相続がある場合、相続登記はどのようにすればよいでしょうか。
今回は、代襲相続がある場合の相続登記に必要な書類や注意点について解説します。
代襲相続がある場合の相続登記の必要書類
ここでは、代襲相続がある場合の相続登記の必要書類について解説します。相続登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に相続を原因とする所有権移転登記を申請します。
遺言がある場合
遺言に基づいて法務局に相続登記申請する際には、下記の書類が必要です。
- 所有権移転登記申請書(決められた書式で作成する)
- 遺言書(自筆の遺言書の場合は、家庭裁判所の検認済証書も必要※)
- 被相続人の死亡の事実のある戸籍謄本(被相続人と不動産を相続する相続人の関係が分かれば足りるので、死亡の事実の記載のある戸籍謄本のみでよい)
- 不動産を相続する相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 登記申請時の年度の固定資産評価証明書
※自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除く。
遺言がない場合
遺言がない場合、遺産分割協議に基づいて相続登記をする場合と法定相続分による相続登記の場合で、それぞれ必要な書類が違うので注意しましょう。
遺産分割協議による相続登記の場合 | 法定相続分よる相続登記の場合 |
・登記申請書(決められた書式で作成する) ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 ・相続人全員の戸籍謄本 ・被相続人の住民票の除票 ・不動産を取得する相続人の住民票 ・遺産分割協議書 ・相続人全員の印鑑証明書 ・相続関係説明図(必須ではないが、添付しておけば戸籍謄本の原本還付が簡易になる) ・固定資産評価証明書(登記申請時の年度のもの) |
・登記申請書(決められた書式で作成する) ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 ・相続人全員の戸籍謄本 ・被相続人の住民票の除票 ・相続人全員の住民票 ・相続関係説明図(必須ではないが、添付しておけば戸籍謄本の原本還付が簡易になる) ・固定資産評価証明書(登記申請時の年度のもの) |

遺言がない場合、戸籍謄本はどこまで必要?
遺言がない場合、代襲相続する人によって必要な戸籍謄本が違います。
被相続人の孫が代襲相続人となる場合
遺言がない場合の相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本が必要です。
被相続人の孫が代襲相続人となる場合は、先に死亡した被相続人の子の戸籍謄本等(出生から死亡までのもの)も追加で必要です。
被相続人の甥または姪が代襲相続人となる場合
例えば、被相続人Aには、配偶者と子どもがおらず、両親を含む直系尊属もすでに死亡していたとします。Aには兄Bと弟Cがいるため、本来はこの2人が相続人となりますが、Bがすでに他界していた場合、Bに子D(被相続人の甥または姪)がいたら、Dが代襲相続人となります。
この例の場合、必要な戸籍謄本は、以下のとおりです。
- Aの戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- 相続人全員(CとD)の戸籍謄本
- Aの両親の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- Aの祖父母の死亡が分かる除籍謄本
- Bの戸籍謄本等(出生から死亡までのもの)
代襲相続の相続登記は1回で済む?
ここでは、代襲相続による相続登記は1回で済むのかについて解説します。
代襲相続の場合は通常の相続登記と同じなので1回で済む
代襲相続になった場合でも、通常の相続登記と手続きは同じなので、相続登記は1回で済みます。
数次相続の場合は相続ごとの登記手続きをしなければならない
第一の相続が開始した後、相続登記を含む遺産分割が完了するまでの間に、第二、第三の相続が起きた場合(数次相続)、相続ごとに登記手続きをする必要があります。この場合、相続登記は1回で済みません。
数次相続とは?|代襲相続との違い
数次相続とは、不動産の所有者の死亡後、相続登記を含む遺産分割を完了する前に、相続人が死亡して第二の相続が起きるケースです。
例えば、被相続人Aの相続人が、配偶者Bと子CおよびDとします。Aの死亡による相続登記をしないうちにCが死亡すると、数次相続が発生した状態となります。
CがAよりも先に死亡した場合は代襲相続となります。代襲相続と数次相続の違いは、相続人(となるべき人)が、被相続人よりも先に死亡したか後に死亡したかの違いです。
数次相続で中間省略登記が認められるケース
数次相続が発生した場合、原則、相続登記は2回に分けて申請しなければいけません。ただし、以下の場合には、中間者を経ないで所有権移転登記ができます。これを中間省略登記といいます。
- 中間の相続人が最初から一人だったとき
- 中間の相続人が複数いたが、遺産分割協議で最終的に一人になったとき
先述の例でみると、被相続人Aが死亡したときに遺産分割協議で子Cが不動産を取得することが決まっていたら、被相続人AからDに直接所有権移転登記ができます。
代襲相続がある場合の相続登記の注意点
ここでは、代襲相続がある場合の相続登記の注意点について解説します。
代襲相続人の相続分は?
代襲相続人の法定相続分は、被代襲者が相続するはずだった分をそのまま相続します。
例えば、被相続人Aの相続人が子BとCだった場合、法定相続分は2分の1ずつとなります。子Bが被相続人Aよりも先に死亡していて、Bの子Dが代襲相続人となる場合、Dの相続分はBが相続するはずだった2分の1となります。
代襲相続がある場合の相続登記における注意点
代襲相続がある場合、相続登記で最も注意をしなければいけないのは、戸籍謄本です。代襲相続人が誰なのかを確定する意味で、被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本等を揃えなければいけません。
被相続人の甥または姪が代襲相続人となる場合は、相続の第二順位にあたる直系尊属(被相続人の両親や祖父母など)が生存していないことを証明するための戸籍謄本等が必要です。
代襲相続の相続登記について弁護士に相談・依頼するメリットは?
ここでは、代襲相続がある場合の相続登記について、弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。
代襲相続人を含む相続人調査や遺産分割交渉を任せられる
代襲相続が起きると相続人調査が複雑になります。被相続人のほかに被代襲者の相続人を確定する必要があるからです。
弁護士に依頼すれば、こうした複雑な調査や相続人が確定したあとの遺産分割交渉を任せられます。
司法書士や税理士と連携して、相続登記や相続税に関する注意点をアドバイスできる
遺産に不動産が含まれている場合は、相続登記が必要なほか、相続税がかかる場合には不動産の評価や申告書の作成も必要です。
相続案件を積極的に扱う弁護士は、司法書士や税理士との連携体制を備えていることが多いです。不動産相続に詳しい弁護士に相談すれば、他仕業との連携により、相続登記や相続税の手続きの注意点について、より詳しいアドバイスを受けられるでしょう。
まとめ
代襲相続が起きると、二世代、三世代にわたって相続関係を調査しなければならないことがあるため、手続きが複雑になる可能性があります。
代襲相続が発生した場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。不動産相続に詳しい弁護士に相談すれば、的確なアドバイスを受けられるので安心です。相続手続きを弁護士に依頼すれば、時間と手間がかかる戸籍謄本等の取り寄せもスムーズに行えます。
ネクスパート法律事務所には、さまざまな相続手続きに関わってきた弁護士が多数在籍していますので、少しでも疑問に思うことがあれば、お気軽にご相談ください。
この記事を監修した弁護士

寺垣 俊介(第二東京弁護士会)
はじめまして、ネクスパート法律事務所の代表弁護士の寺垣俊介と申します。お客様から信頼していただく大前提として、弁護士が、適切な見通しや、ベストな戦略・方法をお示しすることが大切であると考えています。間違いのない見通しを持ち、間違いのないように進めていけば、かならず良い解決ができると信じています。お困りのことがございましたら、当事務所の弁護士に、見通しを戦略・方法を聞いてみてください。お役に立つことができましたら幸甚です。